Accoustic

Simon & Garfunkel 「Parsley, Sage, Rosemary and Thyme」 (1966)

Parsley Sage Rosemary & ThymeParsley Sage Rosemary & Thyme
Simon & Garfunkel

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1. Scarborough Fair/Canticle
2. Patterns
3. Cloudy
4. Homeward Bound
5. Big Bright Green Pleasure Machine
6. 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)
7. Dangling Conversation
8. Flowers Never Bend With The Rainfall
9. Simple Desultory Philippic
  (Or How I was Robert McNamara'd Into Submission)
10. For Emily Whenever I May Find Her
11. Poem On The Underground Wall
12. 7 O'clock News/Silent Night

さて先週からの流れで今日はSimon & Garfunkelを取り上げたい。

彼らの出身はニューヨークのフォークシーンである。1964年のデビューアルバム「Wednesday Morning, 3AM」ではPaul Simonのフォークギターのみをバックにした非常にシンプルなフォークを演っている。ただ他と違っていたのは彼らの美しいハーモニーで、それが最も顕著なのが”The Sound Of Silence”だったが、当初は全く売れなかった。

ところがこの曲に勝手にロックのアレンジがされたものが大ヒット。そのため急遽2作目「Sound Of Silence」が制作されている。良作だが、いささか賑やかなフォークロックなプロデュースが彼らの個性に合っていなかった。

私が最も好きなのは1966年の3作目「Parsley, Sage, Rosemary & Thyme」だ。まずこの作品で聴かれる、バックにドラムやベースは入りながらも、あくまでもメインは美しいアコースティックギターの調べと2人のハーモニーに置いている音作りが理想的であり、彼らの魅力を最大限に引き出している。

スコットランド民謡を編曲した冒頭のこの上なく美しいM1。彼らの代表曲であり大名曲M4。M12の当時のニュースに重ね合わされた美しい詠唱は、まるで無情な世界を清めんとするように降り注ぐ真っ白い雪のようである。他にも先週紹介したM8を始め、小美術品のような楽曲が並んでいる。

楽曲やハーモニーの美しさのみならず、Paulの紡ぐ詩にも注目したい。内省的な面が評価されることが多いが、同時にストーリーや情景の描写、社会に対する深い洞察も特筆に値する。異色なのはM9で、Paulはここで強烈にBob Dylanを皮肉っているが、これはフォークロックへの決別でもある。

私は高校生の頃アコギでよくM4やM8を弾いて練習をしていたものだ。教員をしていた頃は、授業の中でM4を弾き語ってみせたりしたが、今の若い子達はS&Gを全く知らないことが残念だった。2009年の彼らのコンサートにも行き確認したが、彼らの素晴らしさはもっと後世に伝えていきたいものだ。

★★★★★

Pete Seeger 逝去

The Essential Pete SeegerThe Essential Pete Seeger
Pete Seeger

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アメリカンフォーク界の巨匠Peter Seegerが去る1月27日に亡くなった。享年94歳、老衰だったらしい。

彼はWoody GuthrieやLeadbellyらと同時期の1940年代初頭から活動を始め、"We Shall Overcome"や"Where Have All The Flowers Gone?"、"Turn! Turn! Turn!"など数々の名曲を後世に残している。左寄りな姿勢によって50年代には赤狩りにも遭ったが、60年代にはフォークリバイバルを通して自由や反戦のメッセージが再評価され、公民権運動などにも大きな影響を及ぼした。Peter Paul & Mary、Bob Dylan、Joan Baez、Simon & Garfunkelといった後世のフォークシンガー達をはじめ、The Byrds、Ry Cooder、Bruce Springsteenなど多くのミュージシャンにも影響を与えている。

味わい深いバンジョーの音色と低くて暖かい唄声が印象的で、その歌唱力とユーモアセンス、そして真摯な社会的メッセージが聴く人の心を掴んだ。アメリカの音楽と社会に遺した彼の功績に敬意を表したい。

RIP


秋の夜長に (アメリカ編)

めっきり風が冷たくなり、秋めいてきた。この季節生まれの人間には、この寂寥感も嫌いではない。普段は仕事から遅く帰ってきて、夕飯と風呂を済ますと、疲れて早々と寝てしまうことが多いのだが、こんな秋の夜長はそれではもったいないと思ってしまう。そんな時は部屋の明かりを少しだけ暗くし、部屋に隅に置いてある安ワインと冷蔵庫にあるチーズを持って来る。そしてそれらをちまちまやりながら耳を傾けたくなるのはこんな曲である。いずれも愛してやまない名曲の数々で、静かな男の哀愁が疲れた心に染み入る。


Bob Dylan "Spanish Leather Boots" (1963)
最近はロック期よりむしろフォーク期のDylanの方が味わい深くて好きだ。プロテストだけではない、彼のストーリーテラーとしての才華が発揮された初期の隠れた名曲。



Ry Cooder "Boomer’s Story " (1972)
とぼけた中にも男の哀愁とロマンが溢れる一曲。この頃のJim Dickinsonをプロデューサーにしたシンプルな音作りが一番心地よい。



The Band "Twilight (Early Alternate Version)" (1975)
The Bandの数ある名曲の中で最も好きな曲の1つ。特にこのEarly Alternate Versionがいい。Richardのピアノと3人のコーラスがどこまでも美しい。



The Black Crowes "The Last Place That Love Lives" (2009)
希代のRock & Rollバンドの近年の名曲。哀愁溢れる調べと、Chris Robinsonのボーカルが染みる。



Levon Helm "Growin Trade" (2009)
2012年に惜しまれながら他界したLevonが最後に遺してくれた名曲。これを聴きながら、今夜も彼に逢いに行くとしよう。動画はMarley’s Ghostのカヴァー。

Randy Rhoads "Dee"

TributeTribute
Ozzy Osbourne

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私がギターを初めて弾き始めたのは、今から20年以上前、中学3年の頃だった。親父が持っていたクラシックギターの弦を、アコースティックギターの弦に張り替えて練習を始めた。既に結構な腕前だった友人に習って、音階を覚え、指の痛みと戦いながらコードを覚えていった。その後、友人からいくつかスコアを借りて、知っている曲を弾いてみることにした。その中の1曲が、Randy Rhoadsの"Dee"だった。

はっきり言ってこの曲は、ギターを覚えたばかりの少年にとっては、死にそうになるほどに難しかった。早いスピードのコードチェンジ、アルペジオ、ハンマリングとプリング、ハーモニクス、等々。いきなり高度なテクニックの連続に、速攻で挫折しかけた。結局まぁこんなもんかなと、ある程度納得できるレベルに弾けるようになるまでは、かなりの時間を要したのだった。

この後、高校に上がり、新しい友人から譲り受けて、エレキギターやアンプ、エフェクターを揃えたりした。しかし大して上達もせずバンドを組むまでも至らないまま、高校卒業までにはエレキはもう既に別の友人に売り払ってしまっていた。しかしクラシックギターだけはいつまでも私の手元に残り、気が向いた時に手を伸ばすと、苦労して覚えた"Dee"を奏でては悦に入っていたものだった。

この曲は私にとってそんな思い出深い1曲である。初めて聴いた時以来、聴く度、弾く度に感じることだが、本当に美しいクラシックギターの名曲である。まるで美術工芸品のような小曲だ。Randy Rhoadsはワイルドかつテクニカルなプレイで、後世の多くのギタリストに影響を与えたわけだが、同時に繊細でメロディアスな面も持っていた。その背景にあるのは、彼のクラシックのバックグラウンドなのである。

Ozzy Osbourneの自伝の中に、Randyとの思い出が綴られていた。そこにはRandyが事故の前日にOzzyのところへ来てバンドを辞めたいと打ち明けたというくだりがあった。ロックヒーローにはなりたくない、バンドを辞めてクラシックの道へ進みたいと進言したらしいのだ。そしてその翌日、飛行機事故によってRandyは帰らぬ人となってしまった。

結果的に死して彼はロックギターのヒーローとして永遠に名を刻むこととなった。それは彼が望んだものではなかったのなら、皮肉なものである。では彼は生きていたら、どうなっていたのだろう。惜しまれつつもバンドを辞めて、クラシックアルバムを作っていたとしたら、きっとこの"Dee"のような素晴らしい曲をもっと聴くことができたのかもしれない。恐らくそれは世のロックファンが期待したものとは全くかけ離れたものであっただろう。ひょっとしたら今あるこの彼の名声にすら影響を与えていただろうか。それでも私は聴いてみたかったと願ってやまない。この小曲の続きを。


The Black Crowes 「Croweology」

Croweology (Eco)Croweology (Eco)
Black Crowes

Megaforce 2010-08-03
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CD1
1. Jealous Again
2. Share The Ride
3. Remedy
4. Non-Fiction
5. Hotel Illness
6. Soul Singing
7. Ballad In Urgency
8. Wiser Time
9. Cold Boy Smile
10. Under A Mountain

CD2
1. She Talks To Angels
2. Morning Song
3. Downtown Money Waster
4. Good Friday
5. Thorn In My Pride
6. Welcome To The Good Times
7. Girl From A Pawnshop
8. Sister Luck
9. She
10. Bad Luck Blue Eyes Goodbye

 今年流れたニュースの中で特にショックだったのがこれ。「The Black Crowesまた無期限の活動休止」 過去2002年にも一度解散をしたが2005年に再結成をし、その後はまた積極的に活動していたばかりだった。やっぱりあまり売れていないからなのだろうか。まだこの目でライブを見ていないのに。せめてもう一度来日してほしかった。

 彼らは現代の南部ロックの雄である。しかしデビュー当初はハードロック・へヴィメタルのフィールドで紹介され、単なる70年代指向のRock & Rollバンドと見なされていた。初期の頃はそれでも良かったかもしれない。実際時代の中でそれは新鮮に映り、1stは400万枚、2ndは初登場No.1と大成功を収める。しかしいよいよ泥臭さが強くなった3rd「Amorica」あたりからHR/HMファンは離れていき、セールスも徐々に落ち始めていく。かく言う私も当時はまだ若かったせいか、彼らの良さがさっぱり分からなかったものだ。

 そんな彼らの本質が理解できたのは、色んな音楽を聴いてきた後のここ数年のこと。彼らの出身はGeorgia州のAtlantaであり、その出自もあってブルース、カントリー、ゴスペルなど南部のルーツミュージックの影響が散在していることが分かった。土臭さを増しているスライドギターやべダルスティール、マンドリンやバンジョー、ドブロなどの様々な楽器の使用もそれでうなずけたし、Allman Brothers Bandのサザンロック、Flying Burrito Brothersのカントリーロック、Joe Cockerのスワンプロックなど、彼らがカヴァーする70年代の各種アメリカンルーツロックへの敬意も強く感じられた。

 今回の活動休止に際してリリースされたこのアルバムには、キャリアの中から20曲が選ばれ収録されているが、単なるベストではなく、全てアレンジを変えての再録であるところが嬉しい。アコースティックアルバムと聞いていたが、ギターはアコギでもそれ以外もちゃんとしたバンドとしての演奏になっており、曲によってはライブの時のように余韻たっぷりに長尺のジャムが展開されるのも良いところだ。彼らのノリノリのRock & Rollも大きな魅力なのだが、私は彼らの土臭いところが大好きなので、この作品はアタリである。こうした味わい深さが彼らの活動再開後は特に感じられたが、年と経験を重ねた末での境地であると言えるだろう。

 しかしラストに“Bad Luck Blue Eyes Goodbye”を持ってくるのは反則だ。こうなるとやはり惜しむべくは未だにライブを体験していない我が身である。前回の活動休止の際と同様に、ChrisやRichのソロを挟みながら、(最近仲の良いLevon Helm御大と何らかのプロジェクトをやるなんてのも大歓迎だ)、数年後にまた帰ってきてくれることを信じてやまない。

★★★★☆


Carole King & James Taylor 「Live At The Troubadour」

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キャロル・キング&ジェイムス・テイラー

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1. Blossom
2. So Far Away
3. Machine Gun Kelly
4. Carolina in My Mind
5. It's Too Late
6. Smackwater Jack
7. Something in the Way She Moves
8. Will You Love Me Tomorrow?
9. Country Road
10. Fire and Rain
11. Sweet Baby James
12. I Feel the Earth Move
13. You've Got a Friend
14. Up on the Roof
15. You Can Close Your Eyes

 以前勤務していた学校で担任をしていた専攻科生が先日修了式を迎えるということで、久しぶりに顔を出し列席をしてきた。彼女は私が持っていた軽音部でもギターを担当してくれており、歌声も綺麗でセンスのある生徒だった。若い割にEric ClaptonやThe Beatles、Carpentersなど古めなころが好きだったため、私も気を良くしてよくCDを貸したりしたものだった。その彼女に最後の贈り物として何かCDを渡そうと考えたのだがなかなか決まらず、迷った末にCarole Kingの「Tapestry」を贈った。1971年にリリースされ、新たなソロデビューとしてだけでなく、シンガーソングライターブームの火付け役としても金字塔となった名盤である。あの作品が今後の彼女の人生の癒しと励みになってくれればと、押しつけがましく思っている。

 そのCarole Kingだが、4月にJames Taylorと来日していた。これも残念ながら見に行くことができなかったのだが、行った人は皆口々に素晴らしかったと絶賛していた。そして今回タイミング良くその2人が2007年11月にLAのTroubadourで行ったライブがリリースされた。
アメリカを代表するシンガーソングライターであり、当時から仲の良いコンビである2人が、交互にお互いの名曲の数々をエピソードを交えながら、次々と披露してくれているのだが、やはり素晴らしいの一言。

 まずCarole King、今年68歳なはずだが、全くその歳を感じさせない。外見も若々しく、歌声も衰えていない。終始見せる笑顔がその素朴な人間性を表しているようで暖かい。また私はこれまで彼女のライブを見たことがなく、その音楽性からもっと大人しい人なのかと思っていたが、実際の彼女は立ち上がって客を煽るなど、かなり力強い女性だった。それでもこのTroubadourは小さなクラブなため比較的控え目だったようで、もっと大きなホールだとさらにパワフルなようだ。

 一方62歳のJames Taylor。かつての色男も、帽子をかぶっているジャケットだけでは分からないが、失礼ながらその頭は見事なほどにハゲあがっており、やはり歳を感じずにはいられない。しかし優しくアコギを奏でながら非常に穏やかに歌う様子は変わっていない。また曲間のMCでユーモアたっぷりにトークをしてくれ会場を暖かい笑いで包んでくれてもいる。この2人が微笑み合いながら、歌声を重ね合い、極上のハーモニーを紡ぎ出している。それは見る者、聴く者を、思わず幸せな気分にしてくれる

 バックの演奏陣も素晴らしい。Danny Kortchmar、Leland Sklar、Russell KunkelというJamesのバックバンドであり、当時西海岸で名をはせたセッショングループThe Sectionの面々が、味のあるギターと熟練のリズムを聴かせてくれている。どうせDannyがいるならThe Cityの曲なんかも聴きたかったところだが、まぁそれは言うまい。せめて日本公演で演奏してくれたくらいのフルのセットリストで見たかった気はする。

 こんなハートウォーミングなショーを見て、私もこのように素敵な歳の取り方をしたいと思った次第だった。

★★★★



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