Book

ズッコケ中年三人組

ズッコケ中年三人組
那須 正幹
ポプラ社
2005-12


大抵週末の午前中というのは、仮に予定や娘の習い事がなかったとしても、娘とともに妻に家を追い出されます。掃除の邪魔だからパパと何処かに行ってきなさいというわけです。以前はよく公園に行ってましたが、最近は大抵すぐ近くにある児童図書館へ。娘はしばらくここで絵本や伝記漫画などを読んで大人しくしてくれます。

で、そこに並んでいたのが昔懐かしのズッコケシリーズ。ハチベエ、ハカセ、モーちゃんの3人組が毎回騒動を繰り広げる児童書。子供の頃好きでよく読んでいました。と言っても私が知っているのは86年の13作目まで。それが50作目まで続いていたなんて知りませんでした。

最も好きだったのは「あやうしズッコケ探検隊」。ハチベエの行動力とハカセの博学に感心し、当時読みながらワクワクさせられましたが、大人になった今読んでも結構楽しめました。きっと子供椅子に座って児童書にハマっていた私は変なオッさんだったことでしょう。

で、これ実は「ズッコケ中年三人組」という続編があったんですね。小学校6年から一気に40歳まで歳を取っていました。不惑を超えた私が読むべきなのはむしろこっち。コンビニ店長、中学教師、レンタルビデオ店員と、それぞれ家族を持ちながらも冴えない姿がリアルですが、非日常な事件の数々にやっぱりワクワクさせられました。こちらは毎年1歳ずつ歳を取り、50歳になった昨年の「ズッコケ熟年三人組」で完結しています。

ちなみにズッコケの舞台となっている瀬戸内海の町は広島がモデルになっています。作者の那須正幹先生の出身であり、その兼ね合いで原爆関連の著書も執筆されています。

「マチネの終わりに」

matinee

先日毎日新聞の連載小説「マチネの終わりに」が完結しました。昨年3月に連載開始して以来、毎朝通勤電車の中で読むのを楽しみにしていました。この小説は恋愛小説で、私は普段恋愛小説には全く興味がないのですが、読み始めた理由はこの主人公がクラシックギタリストだったからでした。

私もクラシック好きだった親父からお下がりでもらったクラシックギターを1本持っています。もっとも早々に弦はスチールに張り替えてアコギとして使ってきたので、クラシック曲は何も弾けませんが。クラシックギタリストの世界がどういうものか全く知らなかったので興味を持ちました。

主人公の蒔野は私と同世代の40前後。10代のデビュー時から天才として注目され20年のキャリアを重ねてきたが、ここへ来て深刻なスランプに陥る。同時に所属レコード会社も吸収合併されたり担当も変わったりと、色々な流れに翻弄されます。今までロックギタリストの話は多く見聞きしてきたが、クラシックギタリストというのは常に1人でステージに上がり演奏にミスも許されない大きなプレッシャーを受け続けるということも読んで納得しました。

彼が心を寄せるのが洋子。著名映画監督である東ヨーロッパ人の父と日本人母のハーフで、本人はパリ在住の新聞記者。イラク戦争後のバグダッド派遣時にテロに遭いPTSDに悩みます。この洋子も一般的な恋愛小説にはなかなかないような人物設定ですが、これにより色々な世界情勢が絡んできて読み応えがあり、恋愛の行方も途中から予想外の展開で楽しませてもらいました。

これ単行本化されないんですかね。文中に出てきたブローウェルなどの数々のクラシックギターの楽曲も改めてちゃんと聴いてみたいと思いました。

 

「クリムゾン・キングの宮殿 - 風に語りて」 シド・スミス著

クリムゾン・キングの宮殿―風に語りて
シド・スミス
ストレンジ・デイズ
2007-07-27


第1章 どこでもないどこかへ
第2章 世界征服
第3章 勝利の始まりの終わり
第4章 スローリー・アップ、スローリー・ダウン
第5章 インサイド・ザ・サーカス
第6章 沈黙を破って
第7章 マジカル・アクト
第8章 フライング・ハイ
第9章 レッド・ゾーン
第10章 再始動
第11章 再び解体へ
第12章 後ろ向きで進む未来
第13章 未来に見えるもの

来日公演も間近に迫るKing Crimson。1969年のデビュー以来、断続的ながらも長いその歴史の中で、常にメンバーを変えながら音楽を進化させてきたため、奥が深くとっつき辛い印象もある。私も結構好きでアルバムも色々聴いてきたが抜けは多いため、予習にと以前出版されていた本書を改めて読んでみた。当時買って途中まで読んだまま放置してしまっていた。押入れにはそんな本が結構多い。。

Crimsonの歴史には多くの名ミュージシャンが携わっている。発表されてきたアルバムはほぼ毎回違うメンバーで制作されており、つまり毎回誰かが入って誰かが脱退しているわけだ。デビュー当時こそ誰がリーダーというわけではなかったようだが、以降はRobert Frippが絶対君主である。過去のメンバー達は皆彼に対して一定の評価をする一方で否定的なコメントもしているが、それに対するRobertの意図や捉え方というのは全く異なっているのが面白い。Robertは一緒に仕事をするには難しい相手なのだろうとは思うが、それでも彼が牽引し続けたからこそ今のCrimsonがあるのだと思う。

90年代にはオリジナルメンバーで再結成する可能性があったという。結局この話は流れているが、あまりRobert自身同窓会的なものに興味がないようだ。加えてどうにもRobertとGreg Lakeとの不仲も原因のようで、RobertはGregの代わりにJohn Wettonを入れる計画まで立てていたらしい。オリジナル再結成は夢のような話だが、今後も期待できないだろう。

文中でGordon Haskellが当時加入を躊躇っていた理由として「Kings Crimsonの音楽は冷た過ぎて自分には合わないと思った」と言っていた。実際彼らの曲の中には”Cadence And Cascade”のような穏やかな曲や、”Cat Food”のようなコミカル曲もあるものの、このコメントも分からないでもない。ただ単に冷たいとか温かいというものではなく、もっと壮大で革新的な音楽だと思う。だからこそいつまでも根強いファンがいるのだと思う。

私はCrimsonはもっと世界的に成功したバンドだと思っていたが、それほどでもないようで、レコーディング前に資金を調達するためにコンサートを打ったりもしていたらしい。そんな中で日本というマーケットは彼らにとっても大きいようで、今回のジャパンツアーも長い日程が組まれている。恐らく今回が最後の来日だと思うので愉しみたい。

 

『グリンプス』 ルイス・シャイナー著

グリンプス (ちくま文庫)
ルイス シャイナー
筑摩書房
2014-01-08


1. 帰還(ゲット・バック)
2. 蜥蜴の祝祭(セレブレーション・オブ・ザ・リザード)
3. スマイル
4. ブライアン
5. 移行中
6. 新しい日の出
7. ジミ
8. ヴ―ドゥー・チャイルド(つかのまの帰還)
9. 天国
10.レイ

普段読む本というのは大抵ミュージシャンの伝記物が多いのだが、最近は珍しく小説を読んでいた。もっともこれも音楽に関わるものなのだが。1960年代のロック好きには有名な小説、ルイス・シャイナーの「グリンプス」である。

60年代には幻の名盤と呼ばれたものがいくつか存在した。The Beatlesの「Get Back」、The Doorsの"Celebration Of The Lizard"、Beach Boysの「Smile」、Jimi Hendrixの「First Rays Of The Rising Sun」。これらの作品は後の90~00年代に当事者や関係者によって完成されたわけだが、この小説の舞台となる1989年の段階ではまだ幻だった。これはその幻を追いかけるというロック好きのロマン溢れる一冊だ。

ステレオ修理工の主人公Rayは、父親の死後のある日、思い描いた「Get Back」のセッションがステレオから流れてきたことに驚く。自分に不思議な能力があることに気付いた彼は、海賊盤レーベルのグレアムに促されながら、次々と幻の名盤に携わっていくことになる。

その過程の中で、実際に1966年のLAにタイムスリップしBrian WilsonにSmileを完成させるように促したり、1970年のロンドンに行ってはJimi Hendrixの死を止めようと奔走をする場面がハイライトだが、実在する当時の人物や情景が現実のものとして描写され、ロック好きな読み手をワクワクさせてくれる。

また同時にRayは崩壊していた父親や妻との関係にも悩み傷つき清算しようともがき続けるのだが、そんな彼に対してBrianやJimiがアドバイスを与えるというように、単に過去の人物としていないのも物語を興味深いものにしている。

秋の夜長にお勧めの1冊。

 

エリック・クラプトン 自伝 (2008)

エリック・クラプトン自伝エリック・クラプトン自伝
エリック クラプトン Eric Clapton

イースト・プレス 2008-04-01
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Eric Claptonが来日している。チケットまで買っておきながら正直に言うと、私はそれほど熱心な彼のファンではなかった。それでもCreamからDerek & The Dominos、ソロまでの彼の代表的なアルバムは20枚弱ほど持っているし、彼の紆余曲折の人生とそれらが反映された名曲の数々はよく知るところではあった。今回は予習の意味で、かねてから気になっていた彼の自伝を読んでみた。

祖母を母親だと信じていた少年期、親友George Harrisonの妻Pattiへの恋心、事故で他界した愛息など、彼の稀有な悲劇の数々を知ってはいたが、実際に彼自身の言葉で読むと、それがどれほど辛い経験か良く分かる。

音楽的なエピソードも盛り沢山。常に業界の中心にいたため、登場人物もビッグネームばかり。デビュー当時のStonesとは気が合ったが、The Beatlesのことは気に入らなかったとか、親友のJimi Hendrixに左利き用ギターをプレゼントしようとNew Yorkに行った日にJimiが死んだという話等々。

しかし音楽的な成功とは裏腹に、本書のずっと重いテーマとなっているのが彼のアルコール依存症である。それによる人間関係の崩壊や繰り返す入退院などについて赤裸々に吐露されている。だからこそ最終的に依存症を克服しただけでなく、自らリハビリセンターも設立し、幸せな家庭を築くに至るというハッピーエンドが読み手に良い読後感を与えてくれる。

彼はギターの天才である。それだけでなく、絶世の色男であり、大金持ちだ。そんな全てを持っているように見える男が、反面様々なものを失う悲劇の数々に遭い苦悩する。そしてそれらが元になり彼のブルース音楽が生まれてきたわけである。

最後に、非常にベタだけど私がライブで特に聴きたいと思っている楽曲ベスト10を挙げておきつつ、今日の横浜アリーナに向かいます。

1. Layla (electric version)
2. White Room
3. Bell Bottom Blues
4. Tears In Heaven
5. Sunshine Of Your Love
6. Let It Grow
7. Badge
8. River Of Tears
9. Wonderful Tonight
10.Running On Faith (acoustic version)


「アイアンマン」 トニー・アイオミ著

アイアン・マン トニー・アイオミ
アイアン・マン トニー・アイオミトニー・アイオミ 三谷 佳之

ヤマハミュージックメディア 2012-08-31
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へヴィメタル誕生
第1章 カブ・スカウト入団
第2章 イタリア人気質
第3章 パーク・レーンの店
第4章 苦難の学校生活
第5章 シャドウズからの出発
第6章 義指を作ってくれませんか?
第7章 細い弦に助けられたキャリア
第8章 ビル・ワード、そしてレストのメンバーとの出会い
第9章 フリーター生活
第10章 3人の天使、へヴィメタルを救う
・・・

昨年出版されていたTony Iommiの自伝。来日に備えて読んでみた。Sabbathの歴史は長いのでエピソードは山ほどあるのだろう、全部で90章もある。しかしこの手の自伝には珍しく1章ずつはとても短く簡潔にまとまっており、彼独特のユーモアもたっぷりで非常に読みやすい。

まず初期の有名なエピソードな1つは、彼が仕事中の事故で指を切断してしまったというものだ。これは知っていたが、それがこれからバンド活動を本格的に始めるために、止めるはずだった最後の仕事の日に起きたことだったというのは知らなかった。これはあまりにも悲劇だ。しかしそのために、ない指にサックをはめてプレイができるようになるために努力をした不屈の精神は感嘆に値する。

Ozzyも自伝の中でSabbathの初期について回顧しているが、同じ内容でもまた違う角度から見ており興味深い。Ozzyはドラッグやアルコールでハイになってはとにかく悪ふざけばかりしていたわけだが、Tonyについてはバンドを管理しなければいけない立場として、バンドとは少し距離を置いていた様子が書かれている。もちろんドラッグやBillへの悪戯には彼もある程度手を出していたようではあるが。

曲作りについても、他のみんながバーに行っている間、自分一人でやらなければいけないプレッシャーは大変なものであったことを告白している。また音により厚みを加えるためにチューニングを半音下げたことや、初期には曲作りの時間がなかったためにできている曲を長くアレンジしなければいけなかったという話も興味深い。

後年バンドを存続させるために孤軍奮闘するが、なかなか安定しないメンバーたちや、利益を搾取するマネージャー、2度の離婚など、とにかく苦労していた様子が綴られている。そんな中で、いつも彼の心にあったのは、オリジナルメンバーとの再結成であったようだ。この自伝は2度目の再結成に至る前までで終わっているが、オリジナルメンバーで新作を作る心境や、Bill Ward脱退の真相、ガンの克服などについても読んでみたかったものだ。

さて、ではこれから彼に会いに行ってきます。


「ザ・バンド 軌跡」 リヴォン・ヘルム著



プロローグ 死の時間
1 ターキー・スクラッチからの道
2 ホークとの出会い(成功に血眼になって)
3 敵をみなごろしにする男、ホーク
4 さらなる上昇を求めて
5 ディラン、エレクトリックに転向
6 感じるべきほんとうのもの
7 ザ・バンド
8 分断と征服
9 ラスト・ワルツ
10 ネクスト・ワルツ

長いこと捜し続けていた。絶版になって久しい本書は、どこの中古本屋にもネットオークションにも見当たらなかった。何年もの捜索の末、ようやくお茶の水のDisc Unionで発見した。\4,900とプレミアが付いていたがもはや金額は問題ではなかった。The Bandの伝記本としてはもう一冊「流れ者のブルース」があるが、あちらはあくまでも第三者が書いたものであるだけでなく、著書の批判的論調があまり気に入らなかった。しかしこちらはLevon自身の自伝である。その価値は雲泥の差だ。

Levonは南部の生き証人だ。1940年にArkansas州の綿畑の農家の長男として生まれた。9歳から家業を手伝い、給水係やトラクターの運転をしていた。正に南部ミシシッピデルタの生活を体現しており、厳しい自然環境の中で貧しいながらも逞しく生きる当時の様子が興味深く描かれている。音楽好きな両親のもと、Levonも様々な音楽に触れた。ラジオから聞こえるGrand Ol Opryやブルース、一家で見に行ったBill MonroeやFS Walscot、Sonny Boy Williamson。素晴らしい時代である。やがて自分でもギターを演奏するようになり、妹と組んだコンビでは地区コンテストの優勝を総なめするようになる。そして1958年にドラマーとしてRonnie Hawkinsのバンドに招かれてから、彼のプロとしてのキャリアがスタートするのだった。

その後のあらましは周知の通りだが、The HawksにRobbie、Rickと一人ずつ加入してくる過程はやはり読んでいてワクワクさせられる。そしてこの若いバンドの力量が当時でもどれだけ高かったかが分かる。晩年のSonny Boy Williamsとのジャム、詐欺契約、マリファナによる逮捕、Bob Dylanのバンドを一人抜けたLevonが南部に帰り何をしていたか、 などデビュー前の数々のエピソードも興味深い。

しかしデビュー後は成功とは裏腹にむしろ暗い話題の方が多い。特に著作権などを巡るRobbieとの確執が顕在化していく。そしてこれが最も深刻な状況となるのが「ラストワルツ」である。もうツアーをすることにうんざりし、バンドの解散を華々しく飾ろうとしたRobbie。それに対しあくまでもバンドを続けていきたかったLevon。ここではそんな彼の行動と心情が赤裸々につづられている。 また85年のツアー中にRichardがアルコールで自殺するくだりも壮絶だ。

この著書を書いたのは1995年。再結成したThe Bandはまだ活動していたが、当時は全く売れていなかった。しかしこの時の彼もまだ知らない。自分が晩年グラミーを獲るほどに再び成功を収めることを。そして旅立つ数日前にRobbieと和解することも。

この著書を読んで彼が人生の中で大事にしていたものも分かった気がする。文化や農業といった南部の伝統。関わった人達との友情。そして最後まで音楽を演奏し続けることである。大統領をはじめとする多くの人に愛されたLevon Helm。彼は真のミュージシャンであり、アメリカの心であったと思う。改めてご冥福を祈りたい。


「クリーム STRANGE BREW」 クリス・ウェルチ著



序 章 至上のトライアングル・マジック
第1章 クリーム誕生前夜
第2章 頑強な天才ドラマー
第3章 早熟で、歌えるベーシスト
第4章 スローハンドの秘密
第5章 ヤードバーズの憂鬱
第6章 アット・ザ・クロスロード
第7章 クリーム始動
第8章 レコード・デビュー
第9章 即興詩人ピート・ブラウン
第10章 希望の地!?アメリカ
第11章 変速ギア、カラフルなクリーム
第12章 ツアー・サーキット
第13章 素晴らしきクリームの世界
第14章 崩壊の足音
第15章 解散効果
第16章 クリームを終えて
最終章 至上の瞬間よ、ふたたび

Levon Helmの自伝をずっと探し続けていて、古本屋を色々回っているのだが、なかなか見つからない。CDと違って書籍というものは、絶版になるのが早い。そしてひとたび絶版になってしまうと、見つけるのに本当に苦労するのである。そうした中でいつも目的とは違う本を見つけて買ってしまう。このCreamの伝記本もそうだった。

Creamは活動期間わずか2年半という短期間に、ロックの歴史に大きく影響を与えた、言わずと知れた偉大なるバンドである。Eric Clapton、Jack Bruce、Ginger Baker、一級の凄腕が集まった奇跡のスーパーグループだ。音楽的な革新性もさることながら、彼らのルックスやファッションも最高にカッコよかったと思う。この書籍の著者はイギリスの歴史ある音楽誌メロディーメイカーの記者であるが、Creamの結成前から各メンバーとも互いに知った仲であり、Gingerから結成のニュースを直接聞くことができたために、MM誌にもいち早くすっぱ抜くことができている。

これを読むと当時の3人の複雑な力関係も見えてくる。バンドを集めたのはGingerであり、年長の彼が当初はリーダーであった。しかしほとんどの曲を書いていたのはJackであり、彼がフロントマンとしてボーカルを取っていたわけで、後年にはCreamは彼のバンドであったと見る向きも強い。だが、実際当時メディアやファンから注目を集めていたのは、神と呼ばれたEricなわけで、かのアトランティックレコードの社長Armet Artiganですら他の2人はEricのバックバンドであったという認識でいたらしい。これではお互いの人間関係も上手くいくはずがない。

この中でEricが結果的に疲れてしまったようだ。それはブルースギタリストだった彼がジャズプレイヤーだった2人に毎晩即興演奏を求められたことや、常に険悪なJackとGinger2人の仲介をしなければならなかったこと、さらには自身が常に追いかけられる有名人であることなど、様々なことが要因のようだ。そして彼はこの後全く異なる音楽キャリアを歩んでいくことになる。

彼ら3人は1968年にロイヤルアルバートホールでフェアウェルコンサートを行った。そしてそれから37年後の2005年に、同じ場所で再結成するのである。是非この目で拝んでみたかったものだが、恐らくもう2度と再結成することはないのだろう。


「ペット・サウンズ」 ジム・フリーリ著

ペット・サウンズ (新潮文庫)ペット・サウンズ (新潮文庫)
ジム フジーリ Jim Fusilli

新潮社 2011-11-28
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第1章 「ときにはとても悲しくなる」
第2章 「僕らが二人で口にできる言葉がいくつかある」
第3章 「キスがどれも終わることがなければいいのに」
第4章 「ひとりでそれができることを、僕は証明しなくちゃならなかった」
第5章 「しばらくどこかに消えたいね」
第6章 「自分にぴったりの場所を僕は探している」
第7章 「でもときどき僕はしくじってしまうんだ」
第8章 「答えがあることはわかっているんだ」
第9章 「この世界が僕に示せるものなど何ひとつない」
第10章「美しいものが死んでいくのを見るのはとてもつらい」
エピローグ 「もし僕らが真剣に考え、望み、祈るなら、それは実現するかもしれないよ」

Beach Boysのライブがいよいよ今週となった。例によって気分を盛り上げるために彼らに関する書籍を漁っていたところ、軽く読めそうな本書を見つけた。「Pet Sounds」は言わずと知れた彼らの名盤であるし、個人的に最も好きなアルバムである。

「Pet Sounds」に関わる様々なストーリーはよく語られるところであるし、私もおおまかには知っていたが、本書はBrianの活動や情緒を時系列で詳細に説明している。1964年末、Brianはツアーから離脱し、音楽製作に専念するようになった。しかしこの時彼は、成功から来る様々なストレスや父親との確執、The Beatlesに対するプレッシャーなどから、統合失調症と鬱病を患っていた。逃げ込んだドラッグは彼を助けるよりもむしろそうした症状を増長した。そんな状態にも関わらず彼はこの名盤を作り上げた。むしろそんな状態だからこの作品ができたという方が正しいかもしれない。

このアルバムに収録された楽曲はどれも神々しさをたたえている。瑞々しいメロディと極上のハーモニー、大仰なインストと斬新な展開、様々な楽器を用いた分厚いアレンジ、どれを取っても他の作品とは異なっていた。筆者は音楽的理論からその斬新さを解説してくれており参考になる。これが作りながら試行錯誤したのではなく、最初からBrianの頭の中にあったというから恐れ入る。

またこのアルバムを特徴づけている要素として、BrianとTony Asherの内省的な歌詞がある。ここでは大人へと成長する過程での無拓の喪失感や孤独感が綴られているが、それはそれまでのサーフィンやホットロッド・女の子を題材にした享楽的な路線とは全く違う方向を向いている。当時の時代を考えてもこれはかなり早い。Mike Loveでなくとも違和感を覚えるのは当然かもしれない。

実際当時はあまり売れなかった。しかし時代を超えて、後に多くの人々に再評価をされることになる。またこの本の著者は冒頭に自身の生い立ちを書いているが、中流階級に生まれながらも心に闇を抱えていた。そんな若者にもこのアルバムは訴えたのだった。

長い年月を超えてBrianがBeach Boysとしてやってくる。こんな日が来るとは思わなかった。 このアルバムの曲も何曲か披露されるはずだろう。私は"Here Today"が一番聴いてみたい。


スティーブン・タイラー自伝 「Does the noise in my head bother you?」

スティーヴン・タイラー自伝スティーヴン・タイラー自伝
スティーヴン・タイラー Steven Tyler

ヤマハミュージックメディア 2012-02-23
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第1章 周りばかり見てる夢想家
第2章 ニキビとチクビ
第3章 誰も吹かない笛(パイプ)
第4章 俺の真っ赤なパラシュート(そして、そのほかの夢)
第5章 "韻文中毒者"の告白
第6章 羊飼いの少女(リトル・ボー・ピープ)、グリッター・クイーン、そして黄色いコルベットの女
第7章 屋根裏部屋のノイズ(粉雪の日々)
第8章 チン士淑女の皆様……俺は悪いやつじゃない(ただエゴが強いだけだ)
第9章 いい面、ワルな面、惨めな面……ヘミングウェイ攻め
第10章 一家団らんのピクニックで食中毒騒ぎ
第11章 中年期に差しかかった男の迷い
第12章 お前が終わり、俺が始まる場所……もう一度(女神)
第13章 楽園でトラブル(すばらしい生活が制御不能に)
第13.5章 ビルボード誌のアバズレ女神
第14章 ホーリー・スモーク、グランド・パシュミナを求めて、残り20サマーの恐怖
第15章 ザンジバルに往きて帰りし物語
第16章 恋に落ちるとヒザを傷める
第17章 俺の心の中を歩く

昨年来日して全国ツアーを行い、素晴らしいショーを見せてくれたAerosmith。そのAerosmithのボーカルSteven Tylerの自伝が昨年本国で出版されて話題になっていたが、半年ほど遅れて和訳版がようやく出版された。

全編を通して妙にテンションの高い文体で、様々な雑学と独特の感性がつづられている。イジメから逃げるために不良グループの仲間入りし、そのままドラマーとして音楽人生をスタートした。そしていつしかボーカルになった。Mick Jaggerに似ていたこともあり、Rolling Stonesの不良性にはやはり影響を受けていたようだが、歌唱やファッションについてはむしろJanis Joplinの影響が強かったようだ。

Joe Perryとの出会いについては詳しく書いていた。ただ一方で他のメンバーとの出会いはほぼ何も記載がない。これにはStevenの各メンバーに対する姿勢も垣間見えた。確かに彼の作曲能力・パフォーマンス・マネジメント能力がなければ、Aerosmithは今のような成功を収めることはできなかったと言っても過言ではないだろう。しかしそれによる主従関係に耐えられなくなったバンドがStevenに対して三下り半を突きつけたこともある。これだけ長い間同じメンバーでやってきたのは驚異的だが、やはり内実は色々ある。

またその内容の多くを占めるのはドラッグと女性のことばかりだった。散々やったドラッグの種類や量、グルーピーとの酒池肉林、繰り返されるリハビリの苦労、等々。当時のロックスターなら当然のことではあるし、この手は話題になるが、個人的にはあまり興味がなかった。

Aerosmithの楽曲のほとんどを手掛けてきたStevenの自伝なのだから、もっと音楽的な内容を期待していた。しかし作詞については記載がある一方で、作曲面は残念ながらほとんどなかった。確かに今やアメリカを代表する大物スターがプライベートを赤裸々に綴った自伝はセンセーショナルかもしれない。しかし個人的には正直言ってこの自伝は期待外れだった。

もうすぐ出るという新作はどうだろうか。



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