第二章 傘のしたで
第三章 愛の泉
第四章 プールサイドの犬
第五章 しずかな湖畔の
第六章 流れる水は淀まない
娘の中学校では、授業の前に朝読書なる時間がある。皆それぞれが好きな本を10分間読むことになっているのだが、これはなかなかに良い習慣だと思う。娘はそこで読むために何か面白そうな本をということで、本書を買ってきた。彼女が読み終わった後に、私も借りて読んでみたが、なかなか考えさせられる本だった。
主人公は中学1年の男子生徒 清澄。友達はおらず、毎日帰宅すると同居する祖母と裁縫に熱中している。彼の姉 水青(みお)が結婚することになるのだが、真面目で固い姉はウェディングドレスを着たがらない。そんな姉のために彼がオリジナルのドレスを作るというのが、大まかなストーリー。
清澄が主人公だと思っていたが、第2章は姉の水青の目線で綴られていた。そして第3章は母、第4章は祖母、と主人公が次々と変わっていく。これは家族それぞれの視点でストーリーを見るという面白い構成だと思った。実は離婚した父が金銭感覚のないファッションデザイナーで、ストーリーの中では結構重要な存在なのだが、残念ながら父目線の章は最後までなかった。これもきっと意図があるのだろう。
さて、本書のテーマとなっているのが、色んな人達が抱えている生き辛さについてである。登場人物は皆周囲から男らしさや女らしさを求められるのだが、自分の異なる価値観とのギャップに思い悩む。今の時代らしい小説だと感じた。
かく言う私は、正直言えば古い価値観の人間である。男たるもの男らしさが大事で、弱音も吐かず心身共に強くあるべきだと信じて生きてきた。もし私に息子がいたら、きっとそのように強制していた可能性は高い。しかし娘に対してはとかく気を使うもので、可愛らしい服や習い事なども強制しなかったし、できなかった。
今の時代は社会に女性視点やLGBTQも認められつつあり、時代が変わっているということを痛感する。古い世代は価値観をアップデートすることに苦労しがちだが、相手の気持ちに寄り添うといことを意識すれば、それほど難しいことではないだろう。