昨日12月9日にCynicの2度目の来日公演を観に行ってきた。前回は2015年なので8年振りだが、その間にドラムのSean ReinertとベースのSean Maloneが相次いで他界してしまったため、隔世の感がある。ちょうどこの公演日がMalone先生の命日だったのも偶然ではなかったかもしれない。
会場のShibuya Cycloneは地下の小さなハコだが、完売の300人で一杯。20〜50代男性が多いが、女性もいた。私はステージ前の左手を陣取る。
18:30 オープニングのExist Immortalというバンドはスクリーモタイプ。短髪ヒゲ面イケメンのボーカルは歌い上げたり叫んだりしながら、場内の反応に嬉しそうだった。
19:30 続いてはCyclamen。このバンドのボーカルHayatoさんがこのイベントの主催者で、この方のお陰で我々はCynicを日本で観ることが出来る。Cyclamenの音楽性はハードコアからメロウな曲まで多様で、Hayatoさんも歌い上げから咆哮まで幅広かった。この日はイベンターとしても随所で細やかなアナウンスなどをして下さり頭が下がる。
20:30 不穏なSEから大歓声の中、お待ちかねのCynicが登場。フロント右手にボーカルギターPaul Masvital、左手にボーカルギターMax Phelps。後方右手にベースBrandon Giffin、左手にドラムMatt Lynch。曲は"Veil Of Maya"でスタート。
Paulは短髪の右半分が白、左半分が黒というクールなヘアスタイルをしていた。メガネをかけ、ヴォコーダーを通して歌う甲高い歌声が知的な雰囲気をまとっている。ヘッドレスギターもトレードマークだが、この日は何と全員がヘッドレスのギターやベースを手にしていた。
私の目の前のもう1人のギターは、ロン毛でいかにもメタルな風貌だが、今回のツアーはこの人が要だ。前回の来日時のデスボイスは同期音源だったが、今回はこの人がリアルに叫んでくれる。やっぱりこの毒の要素があってこそのCynicなのだ。ギターソロもPaulと弾き分けていて、なかなか巧かった。
さてベースだが、5弦の指弾きが今は亡きMalone先生を彷彿させる。目の前にあるスピーカーからもベース音がダイレクトに響いているのだが、およそメタルらしからぬ雄弁なベースラインに終始耳を奪われた。
ドラムも同様で、せわしないリズムチェンジや変拍子を力強くも正確に叩く様子はReinertを思い出させてくれた。予想はしていたが、やっぱりここにあの2人の最強リズムセクションがいれば、と思わざるを得なかった。
今回のツアーは30周年の名盤「Focus」の完全再現となっている。冒頭の"Veil Of Maya"は前回も演っていたが、その後の"Celestial Voyage", "The Eagle Nature"への展開は待望の流れだ。どの曲も怒涛の勢いの動パートから、中間部の幻想的な静パートへと突如変化するのだが、バンドの演奏は息がピッタリだ。Paulが何度もMaxと向き合って演奏していて、こうした和やかな雰囲気は前回はなかったものだった。
Focusからはどの曲も良かったが、特にインストの"Textures"はいかにもMalone先生らしいジャズテイストが印象的だった。最後の激しいリフとジャズフレーズが対位的に重なる箇所など最高だった。
FocusのラストでPaulが「次の曲は知ってるだろう?」と言ったが、いや、全部知ってるから。珍しくPaulがハンズクラップを煽り"How Could I"に雪崩れ込む。
Focusが終わり 、ここでPaulがMCで「亡くなったSean達のために数分間の静寂を」と言っていたと思ったのだが、フロアからはアンコールを求めるCynicコールが巻き起こり、これもやむなしかなと思った。
一旦ステージから降りた彼らは、再び戻ってきて第二部がスタートする。"Kindly Bent To Free Us"や"Adam's Murmur"などここでは新旧織り交ぜる。
さらにPaulだけがステージに残り、アコースティックセットが始まった。これは海外ではなかったセットだ。まず前回と同様に"Integral"。エコーを効かせたボーカルとアルペジオが綺麗な一曲だ。「2人のSeanと最後に演奏したのがこの日本だったから、またここに来られて嬉しい」というMCにしんみり。「次はRetracedアルバムから一曲演ろう。これを演るのは初めてだよ」の言葉に歓声が上がる。デジタルリズムをバックにした"Space"で、この曲が元々持っていたメロディラインがダンサブルなリズムと見事に調和していた。
再びバンドメンバーが全員登場。新しめの"In A Multiverse"の後、最後に演奏されたのは2ndの代表曲"Evolutionary Sleeper"。大盛り上がりで終演し、メンバー4人が並び大歓声を浴びていた。
1. Veil of Maya
2. Celestial Voyage
3. The Eagle Nature
4. Sentiment
5. I'm but a Wave to...
6. Uroboric Forms
7. Textures
8. How Could I
9. Kindly Bent to Free Us
10. Adam's Murmur
11. Box Up My Bones
12. Integral
13. Space
14. In a Multiverse Where Atoms Sing
15. Evolutionary Sleeper