Live Reports

Cynic 30th Anniversary Refocus / Remembrance Japan Tour 2023

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昨日12月9日にCynicの2度目の来日公演を観に行ってきた。前回は2015年なので8年振りだが、その間にドラムのSean ReinertとベースのSean Maloneが相次いで他界してしまったため、隔世の感がある。ちょうどこの公演日がMalone先生の命日だったのも偶然ではなかったかもしれない。

会場のShibuya Cycloneは地下の小さなハコだが、完売の300人で一杯。20〜50代男性が多いが、女性もいた。私はステージ前の左手を陣取る。

18:30 オープニングのExist Immortalというバンドはスクリーモタイプ。短髪ヒゲ面イケメンのボーカルは歌い上げたり叫んだりしながら、場内の反応に嬉しそうだった。

19:30 続いてはCyclamen。このバンドのボーカルHayatoさんがこのイベントの主催者で、この方のお陰で我々はCynicを日本で観ることが出来る。Cyclamenの音楽性はハードコアからメロウな曲まで多様で、Hayatoさんも歌い上げから咆哮まで幅広かった。この日はイベンターとしても随所で細やかなアナウンスなどをして下さり頭が下がる。

20:30 不穏なSEから大歓声の中、お待ちかねのCynicが登場。フロント右手にボーカルギターPaul Masvital、左手にボーカルギターMax Phelps。後方右手にベースBrandon Giffin、左手にドラムMatt Lynch。曲は"Veil Of Maya"でスタート。

Paulは短髪の右半分が白、左半分が黒というクールなヘアスタイルをしていた。メガネをかけ、ヴォコーダーを通して歌う甲高い歌声が知的な雰囲気をまとっている。ヘッドレスギターもトレードマークだが、この日は何と全員がヘッドレスのギターやベースを手にしていた。

私の目の前のもう1人のギターは、ロン毛でいかにもメタルな風貌だが、今回のツアーはこの人が要だ。前回の来日時のデスボイスは同期音源だったが、今回はこの人がリアルに叫んでくれる。やっぱりこの毒の要素があってこそのCynicなのだ。ギターソロもPaulと弾き分けていて、なかなか巧かった。

さてベースだが、5弦の指弾きが今は亡きMalone先生を彷彿させる。目の前にあるスピーカーからもベース音がダイレクトに響いているのだが、およそメタルらしからぬ雄弁なベースラインに終始耳を奪われた。

ドラムも同様で、せわしないリズムチェンジや変拍子を力強くも正確に叩く様子はReinertを思い出させてくれた。予想はしていたが、やっぱりここにあの2人の最強リズムセクションがいれば、と思わざるを得なかった。

今回のツアーは30周年の名盤「Focus」の完全再現となっている。冒頭の"Veil Of Maya"は前回も演っていたが、その後の"Celestial Voyage", "The Eagle Nature"への展開は待望の流れだ。どの曲も怒涛の勢いの動パートから、中間部の幻想的な静パートへと突如変化するのだが、バンドの演奏は息がピッタリだ。Paulが何度もMaxと向き合って演奏していて、こうした和やかな雰囲気は前回はなかったものだった。

Focusからはどの曲も良かったが、特にインストの"Textures"はいかにもMalone先生らしいジャズテイストが印象的だった。最後の激しいリフとジャズフレーズが対位的に重なる箇所など最高だった。

FocusのラストでPaulが「次の曲は知ってるだろう?」と言ったが、いや、全部知ってるから。珍しくPaulがハンズクラップを煽り"How Could I"に雪崩れ込む。

Focusが終わり 、ここでPaulがMCで「亡くなったSean達のために数分間の静寂を」と言っていたと思ったのだが、フロアからはアンコールを求めるCynicコールが巻き起こり、これもやむなしかなと思った。

一旦ステージから降りた彼らは、再び戻ってきて第二部がスタートする。"Kindly Bent To Free Us"や"Adam's Murmur"などここでは新旧織り交ぜる。

さらにPaulだけがステージに残り、アコースティックセットが始まった。これは海外ではなかったセットだ。まず前回と同様に"Integral"。エコーを効かせたボーカルとアルペジオが綺麗な一曲だ。「2人のSeanと最後に演奏したのがこの日本だったから、またここに来られて嬉しい」というMCにしんみり。「次はRetracedアルバムから一曲演ろう。これを演るのは初めてだよ」の言葉に歓声が上がる。デジタルリズムをバックにした"Space"で、この曲が元々持っていたメロディラインがダンサブルなリズムと見事に調和していた。

再びバンドメンバーが全員登場。新しめの"In A Multiverse"の後、最後に演奏されたのは2ndの代表曲"Evolutionary Sleeper"。大盛り上がりで終演し、メンバー4人が並び大歓声を浴びていた。

1. Veil of Maya
2. Celestial Voyage
3. The Eagle Nature
4. Sentiment
5. I'm but a Wave to...
6. Uroboric Forms
7. Textures
8. How Could I
9. Kindly Bent to Free Us
10. Adam's Murmur
11. Box Up My Bones
12. Integral
13. Space
14. In a Multiverse Where Atoms Sing
15. Evolutionary Sleeper

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MR.BIG 「The BIG Finish」ライブレポート

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先日7月26日にMR.BIGのライブを観に日本武道館に行ってきた。「The Big Finish」と銘打った彼らのフェアウェルツアーであり、名古屋・大阪に続く日本での最終公演だった。

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会場の外にはパーキンソン病により亡くなったPat Torpeyが日本公演で使っていたドラムセットが飾られていた。これは今回開催されていたパーキンソン病医療に寄附されるオークションに出品されていたものだった。

会場内は追加公演にも関わらず満員御礼。以外と若い人もいた。私は南東2階席の後ろの方だった。

19:00に暗転し早くもオールスタンディング。ステージのスクリーンには、楽屋からステージに向かって来るメンバー達が映っていて、場内の期待感を否応なしに盛り上げる。そして右手からメンバーが登場すると大歓声。

勢いよく"Addicted To That Rush"からスタートした。ステージ右手にギターPaul、中央にEric、左手にBilly、後方にドラムNick。冒頭から4人のハイボルテージの演奏に場内も一気に盛り上がる。「ドモアリガト、トーキョー」とEricのMC。Patについて言及があり、NickのドラムからTake Overへ。

Ericは高いキーは出なくなったが、相変わらずハスキーの良い声をしていた。少年のようだった見た目も流石におじさんになったが、中身はお茶目なまま変わっていなかった。

Paulは眼鏡を掛け髭も生やし、Eric Claptonに似てきた。流麗なプレイは流石で、最初は黒のギブソンを弾いていたが、その後曲毎に替えていた。

Billyは昔から老け顔だったせいで、一番変わっていなかった。ライトブルーのフェンダーベースの指弾きで良い音を聴かせてくれている。

バックスクリーンには、各メンバーのアップの映像以外に、アニメーションやイメージ映像などが流されていたが、あいにく私の席からは巨大な照明器具が邪魔になり、良く見えなかった。

3曲目"Undertow"が終わり一旦暗転。皆上着を脱いで再登場し、ここから「Lean Into It」アルバムが始まる。オープニングは"Daddy, Brother, Lover, Little Boy
"。PaulとBillyがドリルでソロを魅せてくれる。

印象的なギターフレーズの"Green Tinted 60s Mind"はラスサビの入りで皆で綺麗なアカペラで歌っていた。"CDFF"からはBillyがダブルネックに持ち替える。"Voodoo Kiss"の前ではEricが女性オーディエンスに黄色い歓声を上げさせていた。バラード"Just Take My Heart"では場内一杯のスマホライトがホタルの光のようで幻想的。"A Little Too Loose"の前ではEricがBillyと低音ボイスの張り合いをしていた。

最後はPaulだけアコギに持ち替えて"To Be With You"。全米No.1にもなった名曲バラード。この時、無性にここにPatがいないことに対する感傷におそわれた。ここで「Lean Into It」アルバムは終了となる。

次に4人がランウェイを通ってフロントの小さなステージに移動してくると、そこでアコースティックセットが始まった。「34年前に俺達が最初に集まって作ったのがこの曲だ」と"Big Love"でスタートする。

Nickはスネアとバスドラだけの簡易セットを立ったまま叩く。Blllyのベースはエレキのまま。続いて"The Chain"からはEricがアコギを持って歌う。しっとりした"Promise Her The Moon"、ノリ良い"Where Do I Fit In"と変化に富んだ演奏を楽しんだ。

元のステージに戻り、Paulはアコギのまま"Wild World"。そしてPaulだけステージに残り、エレキに持ち替えてギターソロが始まった。かなり長く超絶プレイを聴かせた後に、勢いよくアップテンポの"Colorado Bulldog"へと繋げる。

続いてBillyのベースソロ。高速ライトバンドや左手だけのハンマリングなど、あらゆる超絶プレイを披露し圧巻だった。この人はまたすぐ秋にWinery Dogでも来日予定だが、あのようなプログレッシブなバンドも彼にはやはり必要なのだろうと思った。

思い切りアップテンポの"Shy Boy"で駆け抜けた後、Eric「これでショーは終わりかな?まだ何か曲あったっけ?29と31の間の曲?」とわざとらしいMCから"30 Days In The Hole"。

ここで「ちょっとスイッチしようか」と言って、何と降りてきたNickがPaulのギターを受け取り、Paulはドラムセットに座った。そしてBillyがEricにベースを渡すと、ハンドマイクを持って歌い出したのは、The Olympicsのカヴァー。Billyは良い声をしているし、他のメンバーも普通に上手かった。

Billyが1人ステージに残ってMC。「34年間本当にありがとう。他のバンドが皆日本でのMR.BIGを羨ましがっていたよ」最初の結成時の話を紹介し、Ericを呼び込む。その後Paulと2人の子供、Nickと奥さんと、Billyの奥さん、とそれぞれメンバーの家族も一緒にステージに並ぶ。そして最後にPatの奥さんと息子が登場すると場内に驚きのどよめきが起こった。

家族達と皆で写真撮影した後に、ステージにはメンバー4人が残る。「もう1曲いいかな」と最後にThe Whoの"Baba O'Riley"で大団円。演奏後に4人が並んでお辞儀をし、彼らの最終公演のステージが終了した。

この日観て痛感したのは、本当に息の合った良いバンドだったなということ、そしてそんな彼らがこの日本でいかに愛されていたのかということだった。

さてこれが本当に最期となるのだろうか。Billyは「またどこかで何らか形で会おう」と言っていた。またインタビューでは新作を作るかもしれないような話まで出ていた。それが本当なら意外と近いうちに次があるのかもしれない。

01 Addicted to That Rush
02 Take Cover
03 Undertow

<Lean Into It>
04 Daddy, Brother, Lover, Little Boy
05 Alive and Kickin'
06 Green-Tinted Sixties Mind
07 CDFF-Lucky This Time
08 Voodoo Kiss
09 Never Say Never
10 Just Take My Heart
11 My Kinda Woman
12 A Little Too Loose
13 Road to Ruin
14 To Be With You

<Acoustic>
15 Big Love
16 The Chain
17 Promise Her The Moon
18 Where Do I Fit In?

19 Wild World
20 Guitar Solo
21 Colorado Bulldog
22 Bass Solo
23 Shy Boy
24 30 Days in the Hole
25 Good Lovin'
26 Baba O'Riley 


BAND-MAID Tokyo Garden Theater Okyuji

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先週1月9日に東京ガーデンシアターへBAND-MAIDのライブを観に行ってきた。彼女らを知ったのは2020年の春のことで、世の中は既にコロナ禍。予定されていたライブも中止となり、オンライン配信での開催となった。その後何度もオンラインで鑑賞したものの、実際に目の前で観たいという気持ちが募った。

しばらくコロナ禍により対面ライブを控えていたバンドだったが、昨年から本格的に再始動。しかしこの時は残念ながらチケットが取れなかった。秋のアメリカツアーを大成功に終え、帰国直後にはさいたまスーパーアリーナでのGuns N Roses来日公演前座も務めた。

今回の東京ガーデンシアターは初めてだったが、有明に出来た新しいホールらしくキャパは8000人。単独では過去最大規模の会場だが、今年結成10周年を迎えるバンドの記念すべき公演として相応しい会場だろう。直前にソールドアウトとなった場内は予想通りおっさん率が高いが女性や小さな子供までいて驚いた。私の席は1Fバルコニーの中央後方でステージは遠いが良く見えた。

オルタナ系のSEが流れた後18時過ぎに暗転。大歓声の中、左手からメンバーが1人ずつ登場。オープニングは"Unleash!!!!!"。今まで見た配信でしか見たことなかった彼女らが目の前にいた。ステージは右からギターKANAMI、ボーカルSAIKI、ギターボーカルMIKU、ベースMISA、後方のドラムセットにAKANEと見慣れた立ち位置。のっけから勢いのあるバンドサウンドに酔いしれる。そして曲は"Play"から"influencer"へ。

まずSAIKIは本当に存在感のあるボーカリストだった。ハンドマイクで力強く歌う姿は綺麗でもあり、かつカッコ良い。正に黒姫。
もう一枚の看板MIKUもトレードマークの銀色のZemaitasを掻き鳴らしながら、高音のハモりが印象的で良いコンビ。
KANAMIのギターはとにかく巧いの一言。ソロの度にフロントに出てきて魅せてくれた。
MISAのベース音は生で聴いて一番配信との違いを感じた箇所だった。バキバキベースが非常に主張が強く、時折派手なスラップも聴かせてくれていた。
AKANEに関しては、あの細い身体でこんなにもパワフルなドラミングで、しかも笑顔を見せる余裕もあるのが不思議だった。

ステージのバックには巨大な映像が流れていてなかなか凝った作りは見応えがある。さらには左右にもスクリーンがあり、演奏しているメンバーのアップも映されていた。遠くからだとKANAMIやMISAの手元が見えなかったので、これは有り難かった。

4曲目にも彼女らのレパートリーの中でも特にアッパーな"Black Hole"が来た。もの凄い勢いで駆け抜けていく。もうこの時点でこの日がどんなセットリストになるのか想像できない。

ここでMIKUのMC。「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様。くるっぽー!」お決まりのセリフに加え新年ということで「あけましておめでとうございますっぽー」とも。

続いてラスト曲のイメージの強い"DOMINATION"が早くも来た。今日は短い声出しもありということで「ハローハロー」も大合唱が上がる。

実はあまり新しい曲は把握しきれていなかったのだが、8曲目の"I'll"は印象に残った。赤黒いダークなバックドロップに、ミドルテンポの重低音はもはやヘヴィメタルだった。

個人的なハイライトの1つ目は名曲"alone"からのインスト"onset"への流れ。爽快な演奏に思わず身体が動き汗をかいた。一旦ステージから下がったSAIKIの代わりにMIKUがボーカルを取って"サヨナキドリ"も披露された。

メンバー全員が下がり、SAIKIが1人戻ってMC。感慨深く10周年について緩く語っている間にMISAから順に1人ずつステージに戻ってきて緩いトークが続く。福袋に各メンバーが私物を入れていたらしく、それぞれ入れたものを披露していた。アメリカで盛り上がったというMISAのエンターテイメントコーナーは、単にMISAが2本目のビール缶をプシュと開けるだけというのもMISAらしい。そして恒例のMIKUのおまじないタイムは盛り上がっていたが、改めてこの人は芸人だなと思った。

16曲目"About Us"はコロナ禍で書かれたバラード。絶望感に包まれていた頃に一条の光となっていた歌詞が聴く者を感傷的にさせた。続いて披露された新曲"Memorable"もバラードだったが、これもまた綺麗な曲で、SAIKIの高い歌唱力が際立っていた。

"from now on"は新しいインストだが、まるでらプログレメタルのようなテクニカルな曲で、彼女らのプレイヤビリティの高さを見せつけていた。

その後も勢いのある曲が続き、最後は"Choose Me"。1人でピンスポットに照らされたSAIKIがソロでイントロを歌った後にバンド演奏へ雪崩れ込み、大歓声の中大団円のうちに幕を閉じた。

アンコールはなかったが、トータル26曲、2時間45分も演ってくれたので場内も満足していた。今回のセットリストは割と新しい曲を中心に組まれていて、進化した彼女らの今を強烈に印象付けるステージだった。個人的には"DICE"や"Blooming"、"Daydreaming"あたりも聞きたかったところだが、それはまた次回への楽しみにすることにしよう。今年はまだ始まったばかりなのだから。

01 Unleash!!!!!
02 Play
03 influencer
04 BLACK HOLE
05 DOMINATION
06 H-G-K
07 the non-fiction days
08 I’ll
09 I still seek revenge.
10 alone
11 onset
12 サヨナキドリ
13 Sense
14 Hibana
15 Corallium
16 about Us
17 Memorable
18 Manners
19 Puzzle
20 HATE?
21 from now on
22 Balance
23 After Life
24 endless Story
25 NO GOD
26 Choose me


The Black Crowes Live Report 2022

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昨日The Black Crowesの来日公演を観に立川へ行ってきた。デビュー30周年を記念したこのツアーは2020年に発表されたが、コロナのために延期となっており、今年からようやく開始されていた。しかしまさか日本にまで来てくれるとは全く予想していなかった。彼らの来日は17年振りだが、私にとっては念願の初公演である、

そもそもバンドは兄弟の不仲により2013年から活動を停止していた。その原因はChris側がバンドメンバーに正当なギャラを払わなかったというもの。これは当時マネージャーをしていたChrisの妻が噛んでいたらしい。しかしRichの最新インタビューによると、既にChrisは離婚しており、今回の復縁はそれとも関係ないらしい。要するに時間が解決したということなのだろう。

さて気になったバンドメンバーだが、兄弟以外でかつてのメンバーはベースのSven Pipienのみであり、それ以外は友人やオーディションによるサポートという扱いのようだ。出来れば往年のメンバーで集まって欲しかったのだが、またギャラで揉めるのを避けたのかもしれない。

会場の立川ステージガーデンに入ると、3階席まであり思っていたよりも大きなハコだった。私の席は1階席の12列目の中央で、予想外に良席だった。年齢層は30〜50代といったところか。ヒッピーぽい人や女性も少なくなかった。

17:35にオープニングアクトとして日本のリフの惑星というバンドが登場した。エモっぽかったりThe Black Crowesとは少し毛色が違ったが、"Helter Skelter"をカヴァーしていたりなかなか好演だった

どんでん中に2羽のカラスのバックドロップが現れると場内に拍手が沸き撮影する人が多かった。18:30にThe Black Crowesのメンバーが右袖から登場すると、場内は大歓声にて早くもオールスタンディングとなる。そして始まったのは"Twice As Hard"。ゆったりとしたギターリフからボトムの効いたバンドサウンドが重なった後に、Chrisが高らかに歌い始めた。

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ステージの中央にボーカルChris Robinson、右手にギターRich Robinson、左手にはベースのSven Pipienともう1人のギターIsaih Mitchell。後ろには右からキーボードErik Deutsch、ドラムBrian Griffin、そしてバックコーラスの女性が2人。計8人の大所帯だ。

Chrisは青いジャケットに羽の付いた黒のシルクハットが良く似合っている。初めてその姿を拝んだが、重ねた歳が渋みを増しており、手を振り上げたり、マイクスタンドを回したり等、一挙手一投足がサマになる。観客の煽り方も非常に上手く、やはり彼のカリスマ性に納得。

Richは3年前のMagpie Saluteで見たが、さらに貫禄が出たかな。髪型もChrisと同じようで、こうして見るとやっぱり兄弟だなと感じる。SvenもMagpieで見たが、この人は以前から老け顔だったせいか一番変わってない。終始にこやかで楽しそうにベースを弾いていた。

「ありがとうトーキョー。The Black Crowesショーへようこそ」とChrisのMC。そして2曲目はピアノがご機嫌なR&Rナンバー"Jealous Again"に、思わず身体が揺れ動く。一度だけ中央のマイクでChrisとRichが顔を近づけて歌う場面を見て、あぁ今The Black Crowesを観ているのだと実感した。3曲目のスローナンバー"Sister Luck"ではChrisの伸びやかな歌い上げを堪能した。

今回は1stアルバム「Shake Your Money Maker」全曲演奏ということなのだか、正直私の中ではこのアルバムにはそれほど強い思い入れがなかった。他のアルバムから先に聴いていたので、後追いになってしまったからだ。しかしこうして聴いていると、やはり素晴らしい曲ばかりの名盤だと痛感させられた。

他のメンバーは名前も分からなかったが、一番強く印象に残ったのが、もう1人のギターIsiah。オールマンのような渋い風貌をしていたが、リードギター担当ということもあり、鋭いギターソロやスライドなどのプレイには何度も目を奪われた。

「次はゴスペル曲を演ろうか」と言って始まった"Seeing Things"では特に女性コーラスが良かった。2人とも若くてセクシーな美女揃いで、曲に合わせて踊りながら綺麗な歌声を重ねていた。また「ジョージアはOtis Reddingが作ったんだ」と言って演奏したのが"Hard To Handle"。アメリカ南部を強く感じさせるステージだ。

Richはテレキャスターやファルコンなど曲が変わる度に毎回ギターを変えていたが、一度だけアコギを持って弾き始めたのが"She Talks To Angel"。Chrisの歌声との重なりが綺麗だった。

私がこの日驚いたのは、ステージ上もさることながら、観客のノリの良さだ。冒頭から曲に合わせて全員が思い思いに踊っていて、あまり日本では見られない光景に、思わずここはアメリカかと思ってしまった。またここ最近のコロナ禍のライブでは、観客は声を出すことが禁止されていたが、この日は皆歌ったり歓声を上げていた。さらに撮影もOKらしい。私も終始歌い踊り撮影し、これ以上ない居心地の良さを感じていた。

"Struttin' Blues", "Stare It Cold"と立て続けにノリの良いR&Rで盛り上がり「Money Maker」アルバムは終了した。ここからは何を演るかは分からない。始まったのは"Sometimes Salvation"。沈み込むようなリフが腹に響く。

軽快な"Soul Singing"の後は"Wiser Time" 。最も聴きたかった内の1曲だ。静かに始まり徐々に盛り上がっていき、終盤ではIsiahがソロを弾いた後に今度はRichもソロを弾き、最後は2人でツインリードを聴かせてくれて酔いしれた。

"Thorn In My Pride"ではChrisがハーモニカを吹き出し、Richのギターとの掛け合いで楽しませてくれた。最後はぶっといグルーヴの"Remedy"で首を痛くした。

本編終了しメンバーは一度退場するも、止まぬ拍手に再登場してくれた。「最後にR&R曲を1曲演ろう」と言って始まったのはRolling Stonesの"Rocks Off"。先日リリースしたカヴァーEPの冒頭曲である。そして20時過ぎに大歓声の中で全公演が終了した。

今思えば少し短かったかなとか、あんな曲も聴きたかったなどないこともないが、とにかく楽しく大満足なR&Rライブだった。もう思い残すことはない。

01 Twice As Hard
02 Jealous Again
03 Sister Luck
04 Could I've Been So Blind
05 Seeing Things
06 Hard To Handle
07 Thick N' Thin
08 She Talks To Angels
09 Struttin' Blues
10 Stare It Cold
11 Sometimes Salvation
12 Soul Singing
13 Wiser Time
14 Thorn In My Pride
15 Remedy
<encore>
16 Rocks Off

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downy「Re:雨曝しの月 2022」

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昨日7月9日downyのライブを観に渋谷のwww xに行ってきた。大阪・名古屋に続く「Re雨曝しの月」ツアーの最終日である。本当は2020年に活動20周年を記念したツアーを開催する予定だったのが、コロナ禍によって延期になっていた待望のツアーだ。私が彼らを観るのは2004年の一時活動停止前だから実に18年振りである。

downyは日本のエクスペリメンタルロックバンドである。2004年に「第四作品集『無題』」を聴いて衝撃を受け、ライブを観てさらに度肝を抜かれた。緻密なエレクトロニクスを全て人力で演るというコンセプトの元で、超絶技巧を駆使して非常に実験的なロックを展開していた。一時期の活動停止を経て活動再開した後も独自の進化をし続けている。

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会場は満員御礼。20〜40代が中心で女性も少なくなかった。私は後方やや右手。18:00過ぎに拍手の中メンバー登場。フロント右手にギターボーカルの青木ロビン氏、左手にベースの中俣和宏氏。後方右手にサンプラー・シンセのSUNNOVA氏、左手にドラム秋山タカヒコ氏。そして"酩酊フリーク"でスタート。オープニングから初期曲が来たことに意表をつかれた。

私と同じく歳を重ねているはずだが、ロビン氏は変わらずカッコ良かった。古いストラトを掻き鳴らしたり、マイクに歌う姿など、一挙一投足が様になる。ボーカルは綺麗なハイトーンが特徴的だが、日本語で歌っていても日本語に聴こえない歌い回しが独特だ。歌詞も非常に抽象的で難解なのだがそこがまた良い。

ベースの中俣氏は超絶技巧の持ち主だ。鳴らす音はバキバキの低音で気持ち良いのだが、たまにあるブレイク以外はとにかく早いパッセージをひたすら弾き続けているのが凄い。ピック弾き、指弾き、時々聴かせてくれるコードストロークも良かった。

そしてドラムの秋山氏がまた凄い。基本的にdownyのリズムはほとんどが変拍子だ。何分の何拍子なのか、一体どうやって叩いてるのか分からないようなリズムを、マスクを付けたまま涼しげに叩いている。はっきり言ってノリ辛い曲も多いのだが、そういう時は秋山氏のドラムを見続けた。

以前はここにもう1人のギター青木裕氏がいたのだが、2018年に白血病のため他界してしまった。もう裕氏の演奏を観ることが出来ないことが悲しかったのだが、かつての曲では裕氏のギターも聴こえていた。恐らくSUNNOVA氏がサンプラーで流してくれていたのだろう。

裕氏の代わりに加入したのがSUNNOVA氏である。今回初めてステージングを観たが、要するにギター・ベース・ドラム以外の全ての音を出しているのがSUNNOVA氏だった。金髪の美青年でアクションも激しく、ロビン氏と毎曲終わる度にアイコンタクトしていて、もはやバンドに不可欠な存在であるのは明らかだった。

4作目の'△"、2作目の"象牙の塔"、7作目から"good news"に"stand alone"と新旧織り交ぜながらセットは進んで行く。以前は完璧過ぎてどこか人間離れしてエレクトロニクスっぽい少し冷たい印象を受けたものだったが、なぜだろう、今はもっとロックの熱さを感じさせる演奏だと思った。ロビン氏やSUNNOVA氏が楽しそうに演奏している姿からもそれが伝わってきた。

前回観た時は確かMCも一切なかった気がしたが、それもそのはずで、曲間は常にチューニングを調整したり、ギターを変えたり忙しそう(レパートリー全曲チューニングが違うというのも凄いが)。しかしこの日は違った。「こんばんわ。ありがとうございます」という思いがけないロビン氏のMCに拍手をする。喉スプレーをした後に「これは蜂蜜なんだけどね」「物販に出したら売れるかな」と結構お茶目な面を知る。しかしあまりMCは好きではないようで「だから喋りたくないんだよ。誰かMC連れて来ようか」と笑わせてくれていた。

ロビン氏がキーボードの前に座って演奏したのは"凍る花"と"春と修羅"。キーボードを弾く姿も様になっているが「やっと座れる。4曲目から座りたいと思ってたんだよね」と笑いを取っていた。

ロビン氏は今度は立ち上がってアコースティックギターを抱えた。始まったのは"視界不良"。重低音をバックに澄んだギターストロークが心地良い。

ちなみにdownyのライブでは照明の代わりにバックに映像が流れるのだが、代表曲のMVだけでなく曲毎に全て異なる映像が制作されており、非常に手が込んでいる。特に"視界不良"の映像は正にアートだった。

"喘鳴"、"驟雨"、"枯渇"という3曲の新曲も披露してくれたが、どれも非常にプログレッシブな曲だった。特に秋山氏のリズムが複雑で、よくこんなリズムで曲を作ったものだと感心してしまった。そしてそんなリズムに合わせて演奏できる他メンバーも凄い。これらの新曲は次のアルバムに収録されるらしい。

これまでの22年間のキャリアを総括するようにセットリストは進んでいく。カオティックに激しく叩きつけたと思ったら、静かで耽美的な空間に漂っていたり、息のピッタリと合った4人の演奏に終始目を離すことが出来ない。冒頭にロビン氏が「今日のテーマはゆっくりです」と言っていて、曲中もチューニングやMCを挟みながら腕のストレッチをしていた理由が、数日前の名古屋公演で左手の靭帯を損傷していたからだったということを後で知ったのだが、そんなことは微塵も感じさせない熱い演奏だった。

「今日は本当にありがとう。これからもdownyをよろしくね」と言って始まったのは"猿の手柄"。初めて観たライブのラストを飾っていた曲で、彼らには珍しくメジャーコードが印象的な名曲だ。そして激しくパンキッシュな"安心"に雪崩れ込む。これが来たら今日はもう終わりかと残念に思っていたが、最後の音の余韻が残っている中で、ロビン氏が秋山氏とアイコンタクトをしているのに気付いた。その瞬間始まったのは"弌"。私が初めて聴いた曲であり、一番好きな曲をここに持ってきてくれたことが嬉しい。秋山氏の変態ドラミングと、中俣氏の超絶ベースの轟音に歓喜しながら、最後の至福の時を堪能した。

20曲2時間という濃密なパフォーマンスを目撃して、改めてdownyは国内最強のバンドだと痛感した次第。コロナで頓挫していた世界進出もいよいよ始まるらしいが、もっと日本も世界もこのバンドを知るべきだろう。

1. 酩酊フリーク
2. Δ
3. 象牙の塔
4. good news
5. stand alone
6. 凍る花
7. 春と修羅
8. 視界不良
9. ゼラニウム
10. 喘鳴
11. 或る夜
12. 海の静寂
13. 驟雨
14. 砂上、燃ユ。残像
15. 枯渇
16. 左の種
17. 曦ヲ見ヨ!
18. 猿の手柄
19. 安心
20.  弌

BAND-MAID ONLINE ACOUSTIC

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先日のクリスマスの日にBAND-MAIDのアコースティックライブ(お給仕)が開催された。今回も無観客のオンライン配信ライブだったのだが、これまでと全く次元の異なる素晴らしい内容だったので、レポートを書かずにいられなくなってしまった。

始まった画面の向こうに映し出されたのは、何処かホテルのバンケットホールのような場所で、バックに見えるのはベイブリッジだろうか。大きな周囲の窓からは眩しい陽の光が差し込み、これまでと全く異なる明るい雰囲気に満ちている。

椅子に座った5人は、フロントの右手にSAIKI、左手にMIKU。バックは右にKANAMI、中央にMISA、左にAKANEの順番。いつもの戦闘服であるモノクロのメイド服とは異なり、この日は皆クリスマスらしくベージュやワインレッドの服を着ている。その中でMISAだけ真っ赤な服で目立っていた。リラックスした雰囲気だが、本人達は慣れない私服にいつもより緊張していたらしい。

そしてスタートした"Smile"を聴いた瞬間にその美しさに息を飲んだ。MIKUのコードストロークとKANAMIのアルペジオ。2本の澄み切ったアコギの重なり合いの上に、伸びやかなSAIKIの歌声が響き渡る。そこに寄り添うMIKUやAKANEの高音コーラスがまた極上だ。シャララ〜♪というAKANEのウィンドチャイムを合図にリズム隊も加わる。MISAだけエレキだが、彼女の指弾きベースの低音が、全体のバンドサウンドの音数が少ない分だけ余計に映えて最高に心地良い。

しっとりとした"At the drop of a hat"の後には、アップテンポな"NO GOD"と"H-G-K"と続いた。痛感するのは各楽曲の持っていたメロディが際立っている点だ。歌メロだけでなく、全楽器が歌っている。また今回のセットのためにKANAMIが全楽曲のアレンジを変えてきており、通常の倍の時間が準備に掛かっていたらしい。

ここでセットが変わり、SAIKIとKANAMIの2人だけで向かい合って"Different"と"Manners"が披露された。ボーカルとアコギだけのシンプルな編成が美しさを強調する。SAIKIを独り占め出来るKANAMIが嬉しそう。そしてMISAが加わり3人で"Awkward"と"Wonderland"。ベースが重なることで安定感が違う。MISAのプレイから目と耳が離せなかった。

続いてはMIKU、MISA、AKANEの3人。ギター、ベース、ドラムのミニマムバンド編成で、"TIME"と"サヨナキドリ"のMIKUボーカル曲。もはやKANAMIがいなくても1人でギターを張れるMIKUの成長が頼もしく感じる。驚いたのはAKANEとMISAも高音でコーラスを歌っていたことだ。これもかなり練習を積んだらしい。

さらに今度はSAIKI、MIKU、AKANEの3人で"FORWARD"。重なり合うツインボーカルに、AKANEはカホンを巧みに叩いている。このバンドのメンバー層の厚みに感心させられる。

再び5人が集まって"カタルシス"を演り始めた。これだけ色々な編成を見せられた後に見るフルメンバーは、最初とは違って見え無敵感が半端なかった。夕焼けから夜景に変化していく窓の外の情景も、重なり合う5人の演奏とハーモニーに調和していく。

"Mirage"から和やかなメンバートークを交えた後、ラストに演奏されたのは"Page"と、終盤はアルバム「CONQUEROR」からのナンバーが彩った。彼女らのディスコグラフィーの中でも特にメロディアスなアルバムである今作は、私が最も好きな1枚。メンバー達もこのアルバムを作って良かったと言っていた。

これまで彼女らはハードロックバンドとしてゴリンゴリンに攻め立てるライブを信条としていたし、それが魅力だった。しかし今回のアコースティックライブでは、彼女らの備えていた美しいメロディに焦点を当てたものだった。それは確かな演奏力を備えた今の彼女達だから成し得たものなのだが、もはや別のバンドを見ているかのような驚きがあった。

ちなみに、配信映像にはオーディオコメンタリーバージョンもあり、全編に渡ってメンバー全員のコメントも聞くことが出来た。アコースティックセットの準備の裏話など愉しませてもらったが、売れていなかった結成2年目に解散の危機があったという話は衝撃的だった。お給仕終了後に来年の全米ツアーが発表されたように、今や彼女らは世界中から熱い呼び声を集めるまでに至った。結成10周年を控えてもなお底の知れないこのバンドの今後のさらなる飛躍を願ってやまない。

1. Smile
2. At the drop of a hat
3. NO GOD
4. H-G-K
5. Different
6. Manners
7. Awkward
8. Wonderland
9. TIME
10. サヨナキドリ
11. FORWARD
12. カタルシス
13. Mirage
14. PAGE

07

BAND-MAID ONLINE OKYU-JI 2021.2.11

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2月11日にメイドハードロックバンドBAND-MAID のオンラインお給仕が開催された。本来ならこの日は長い間待ち望んでいた初の日本武道館公演となるはずだった。昨年7月に初めてオンラインお給仕を観戦した時は、翌年には流石に収束し晴れて武道館で観られるだろうと楽観視していた。しかし収束するどころか、2回目の非常事態宣言が発令中の有り様。さぞメンバー達は落胆したことだろうと思っていた。

しかし彼女達はそんな様子は一切見せていなかった。ライブに先立って先月リリースされた新作「Unseen World」では、長きに渡るステイホーム期間中にただひたすら演奏テクニックの磨き上げと、楽曲制作に打ち込んだ結果を見せつけた強力なアルバムだった。そしてそれはライブでも同様だった。

オープニングはアルバムと同じく厳かなイントロから勢いよく"Warning"でスタート。そこから立て続けに"DICE", "Screaming", "I Can't Live Without You"とアッパーなナンバーを叩きつける。5曲目には新作から歴代最も激しい"BLACK HOLE"。限界突破なセットリストとは聞いていたが、それを痛切に実感する。

MIKUのMCの後、スクリーンには時計が巻き戻される様子が映し出される。Road to BAND-MAIDということで、このパートでは歴史を俯瞰するようにデビュー曲"Thrill"から"Don't You Tell Me"まで計7曲が時系列順に演奏された。

黒姫SAIKIのボーカルは無観客もお構いなしに強力にバンドを牽引する。左に立つメイドMIKUのリズムギターも小気味良くハモリも綺麗。KANAMIの天を駆けるようなギターソロには引き込まれるし、MISAの地を這うようなベースも相変わらず良い音をさせている。KANAMIはタッピング、MISAはスラッピングというそれぞれお得意の飛び道具も披露し魅了していた。AKANEのドラミングも凄いのだが、カメラに映る度に笑顔や変顔を見せる余裕が一体どこにあるのかよく分からない。

MIKUとSAIKIのMCの後、今度は現在のBAND-MAIDということで、"After Life"や"NO GOD"など主に新作からテクニカルな4曲。彼女らの成長が感じられる構成だ。

お約束のMIKUのおまじないタイムに続いてはMIKUボーカルによる"サヨナキドリ"も披露された。

意外だったのはSAIKIのMC。彼女の慣れないMCと、それに続いてKANAMIのアコギのみをバックに歌い始めた"about Us"では、コロナ禍におけるファンへの想いに溢れるものだった。そこから名バラード"Daydreaming"への流れも最高だった。各楽器が大暴れするインストの名曲"onset"に至ってはもうじっとしていられず。

この後に機材トラブルがあり、しばらくゆる〜いおしゃべりタイムが展開した。なかなか演奏が再開しなかったが、各メンバーの新楽器紹介やSAIKIの誕生日祝い、楽器隊3人による盛り上げなど、メンバー間の仲の良さが垣間見れた。この中で英会話を練習しているというKANAMIが海外に向けて英語で話していたが、MIKUもせめてこれ位話せれば良いのにと思った。この日Twitterの全米トレンド4位になるほど海外視聴者がいるのだから。

再開した"Choose Me"からはラストスパート。"Blooming", "Different", "Giovanni"と怒涛のナンバーで攻め立て、最後は"DOMINATION"で大団円となった。

計28曲、2時間半に渡るライブはこれ以上ないほどの充足感を与えてくれた。それだけにやはりこれを武道館で見たかったという思いを抱いた。曲間に歓声を届けられないのはどうしても寂しいものがあるのだが、しかし実際に武道館で決行していたとしても結局歓声を上げることも一緒に歌うことも出来なかったのだろう。収束後のリベンジ武道館が早く実現することを待つとしよう。

<setlist>
01.Warning!
02.DICE
03.Screaming
04.I can't live without you.
05.BLACK HOLE
MC (MIKU)
06.Thrill
07.REAL EXISTENCE
08.Don't let me down
09.alone
10.FREEDOM
11.YOLO
12.Don't you tell ME
MC (MIKU & SAIKI)
13.After Life
14.NO GOD
15.輪廻
16.without holding back (instrumental)
MC (MIKUおまじない)
17.サヨナキドリ
MC (SAIKI)
18.about Us
19.Daydreaming
20.Mirage
21.Bubble
22.Manners
23.onset (instrumental)
MC (スーパーぐだぐだタイム)
24.Choose me
25.Blooming
26.Different
27.Giovanni
28.DOMINATION


BAND-MAID ONLINE OKYU-JI 2020.7.23

IMG_1343

先週はメイドハードロックバンドBAND-MAIDを取り上げた。オフィシャルサイトを見たところ、どうやらこの7月から予定されていたZEPPツアーはコロナの影響により中止になってしまっていた。その代わりに無観客オンラインライブが企画されていた。

無観客とは演奏する側はやり辛いだろうが、現況下では仕方ないだろう。観客側としてもやはり生の迫力に及ぶものではない。でも単なるライブ動画とは違うオンタイムな繋がりを感じることは出来る。何よりも世界中から同時に繋がることが出来るというのは画期的だ。チケット代も1500円と安いので購入してみた。

当日開演の16:00前に自宅のノートPCの前にビールとつまみを用意してスタンバイする。通常に比べれば早い時間だが、日本では祝日なのと、世界中からアクセスがあることを考慮しての設定なのだろう。

JULY 23, 2020
ONLINE OKYU-JI
1 MINUTE LEFT

という黒画面が10秒前からカウントダウンが始まり、バックスクリーンに白いリボンが掲げられたステージが映し出される。激しいロックサウンドのSEの中、メンバーが1人ずつ登場。KANAMIのギターリフから"DOMINATION"で勢いよくスタートした。

ステージ右手からギターKANAMI、ボーカルSAIKI、ギターボーカルMIKU、ベースMISA、後方のドラムセットにAKANE。イヤホン聴きでボリュームを上げると、SAIKIの歌声と1人1人の楽器がダイレクトに聴こえる。5人が一体となって疾走するバンドサウンドが繰り広げられる。観客がいなくても全力投球だ。

映像は予想以上に綺麗だった。昔ならこんな大容量の映像に全世界からアクセスしていたら、確実にフリーズしていただろう。カメラも何台入ってるんだか、メンバー全員のアップと引きの絵が次々と絶妙に切り替わり続けて、生配信なのにまるで既に完成されたパッケージを観てるかのようだった。

まずSAIKIのボーカルに感嘆した。綺麗なルックスの黒姫は、非常にロック然とした迫力あるボーカルを聴かせてくれている。目の前に観客がいないのはさぞやり辛いだろうに、そんなことはお構いなしに「かかって来いよー!」と煽り立ててくれる。

隣では白いメイド姿のMIKUがハイトーンのボーカルを重ねている。バンドを始めてから練習したとは思えないほどにリズムギターも堂に入っている。飛び跳ねながら非常に楽しそう。

もう1人のメイド姿がギターのKANAMI。細い可憐な容姿とは裏腹に物凄いテクニックの持ち主で、海外でも彼女のファンは多い。毎曲見事なソロで魅せてくれるので、出来れば彼女の手元をずっと凝視していたかった。もっとも映像ではそのスピードは捉えきれていなかったが。

ドラムのAKANEも海外ファンが多い。彼女も細いのにパワフルで手数も多いドラミングで、終始笑顔で楽しそう。

MISAは黒衣装で仁王立ちになって5弦ベースを弾いている。フットライトに片足をのせて弾く姿がカッコ良い。3曲目の"PLAY"の冒頭ではインストパートが拡大されていたが、ここでのスラップは見ものだった。

MIKUのMC。「お帰りなさいませ、ご主人、お嬢様。BAND-MAIDのオンラインお給仕の始まりだっぽー!」メイドなので、彼女らのライブはお給仕であり、観客はご主人お嬢様なのだ。ちなみに「ぽ」は彼女の苗字が小鳩だかららしい。

ステージ前には観客がいない代わりに、世界中から繋がっているチャット画面が映るモニターが設置されているようで、メンバー皆で楽しそうに覗き込んでいた。バックに写ったMISAの片手には既にスーパードライが握られていたり、AKANEが緊張で本番前にトイレに6回行ったことが暴露されたりと、メンバー同士のゆるい会話が和ませる。

お約束のMIKUのおまじないタイム、画面の向こうの観客とメイド独特のコールレスポンスでは、MIKUのギターがハウリングして笑わせてくれた。

後半も怒涛の展開が続く。MIKUがフライングVに持ち替えて始まった"輪廻"は、彼女らのレパートリーの中で最もアッパーなナンバーの1つで、AKANEも前のめりになって高速リズムを叩く。"DICE"ではMISAのバキバキいうベースを堪能。メロディアスな"Endless Story"で一旦クールダウン。"Freedom"ではKANAMIがフロントに出てきてネックを振り上げギターソロ。名曲"Blooming"に至ってはもはやじっと観ていることも出来ず汗だくになってしまった。

きっかり1時間でお給仕は終了。通常は2時間近く演るはずなので、正直ここで休憩を挟んで第2部でもあるのかと思っていたが、初の試みとしてはこれ位がちょうど良いのだろう。次を観たいと思わせる濃密な1時間だった。

ちなみにこの日はTwitterも合わせて見ていたが、日本語と英語のツイートが開演前から凄い勢いで上がり続けていて、日本国内ではトレンド2位を記録したらしい。

ライブ映像は終わった後もすぐに見直せるというのも嬉しかった。4日間は再視聴が可能になっていたので何度も見返したのは言うまでもない。

1.DOMINATION 
2.Dilemma
3.Play
MC Time 1
4.The Non-Fiction Days
5.Glory
6.Don't You Tell Me
7.輪廻
MC TIME 2
8.DICE
9.Endless Story
10.Freedom
11.Blooming


leave them all behind 2020 - Cave In

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ドラムとギターのサウンドチェックが聴こえてきた。恐らく先ほど出演していなかったJRとAdamと思われた。そして最後のトリとしてCave Inが登場した。右手にStephen、中央にNate、左手にAdamが並び、後方のドラムセットにJRが座っている。前回の来日で観たのが2006年だから、もう14年振りになる。

SEとして"Sonata Brodsky"が聴こえた後に、綺麗な高音のトレモロと高速のスネアのイントロの"Luminance"からスタートした。スペーシーサウンドが強めのエコーで広がっていく。さっきまでOld Man Gloomのステージを繰り広げていたばかりのStephenとNateには全く疲れが見られないのは流石だ。咆哮ではなく、ちゃんと歌っているStephenは先ほどとは全く別モードだ。

3曲目の"Off To Ruin"では、グルーヴィなリズムに乗って中央のNateが咆哮する。先ほどのOld Man GloomではStephenが中央に立っていたが、このCave InのステージではNateが中央に立っている。その意味を考えてハッとする。2人とも今は亡きCalebを中央に立たせているのだった。そして実はNateが弾いているのはCalebの白いフェンダーベース。彼らのそうした心遣いに泣けた。

今回一番観たかったのがJRのドラムだった。黒いキャップの彼はさっき観客フロアで見かけていたが、それがJRだとは気付かなかった。前回の来日時に彼は怪我のため来られず、ConvergeのBen Kollerが代役を務めていたので、彼のドラムを観るのは初。手数足数が多くて正確かつ力強いドラミングは、観ていて爽快だった。

4曲目に初期カオティックハードコアナンバー"Moral Eclipse"のイントロが流れた途端、荒くれ者達は待ってましたとばかりにフロアにモッシュピットを作って暴れ出す。やっぱりこれがないと。本当はここに"Jaggernaut"もあったはずなんだが。

この日Calebの遺作となった新作「Final Transmission」の直筆サインCDが物販で残り1枚となっていたので購入していた。ここからは計4曲が披露されていたが、どれもスロー~ミドルテンポだったので少し盛り上がりに欠けた感は否めなかった。"Night Crawler"や"Led To The Wolves"といったCalebらしい曲を聴きたかった。

「Antenna」アルバムからも"Joy Opposite"と"Youth Overrided"が演奏された。個人的にはここで"Woodwork"が聞きたかった。特にメロディアスなこのアルバムは彼らの音楽性の幅広さを物語る。Stephenが「It's commercial ~なんとか」とか言っていたようで気になったが。

色んな時代のアルバムを順番にまんべんなく演ってくれて、スペーシーアルバム「Jupiter」からはタイトルナンバーと"Big Riff"。どのアルバムも作り上げたサウンドが異なるため、曲間のSEが流れている間に、メンバー皆ギターとベースのチューニングに忙しい。途中StephenとAdamが2人向き合って何度も一緒にギターを振り上げていて楽しそうだった。

本編最後は"Trepanning"。いかにもCalebらしいアッパーな曲で、Nateが咆哮する。やっぱりこの曲は盛り上がる。

アンコールで戻ってきて、NateがMCする。Calebのベースを高く持ち上げて紹介した後に、「これは俺が一番好きなCalebのナンバーだ」と言って始まったのは"Inflatable Dream"。前半アッパーだが後半はメロディアスで非常に良い曲なのだが、かなりレア曲で入手が困難なのが勿体ない。

ラストは"Sing My Loves"。StephenはこれがCalebの曲で一番好きだと言っていた。重戦車のような重低音ミドルテンポで突き進んだ後に、幾重にも重なるギターフレーズが浮遊していく名曲。最後はフロント3人とベースとギターを天にいるCalebへ向けて高々と掲げて、大歓声のうちに終幕した。

この日のステージを観て痛感したのは、Calebの遺した功績の大きさ、そして彼がいかに皆に愛されていたかということだった。しかし同時に彼の意志を継いで前に進んでいることも確認できた。こちらも変わらず応援していきたい。

1. Luminance
2. Dark Driving
3. Off to Ruin
4. Moral Eclipse
5. Lanterna
6. Winter Window
7. Joy Opposites
8. Youth Overrided
9. Jupiter
10.All Illusion
11.Shake My Blood
12.Big Riff
13.Trepanning
encore:
14.Inflatable Dream
15.Sing My Loves

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leave them all behind 2020 - Old Man Gloom

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今年もハードコアの祭典leave them all behindに参戦してきた。2月1日の会場は下北沢Garden。この日は前に日本人のバンド3組も出演していたのだが、申し訳ないけど体力が持たないので見合わせて、途中から会場入りさせてもらった。

19:30頃しばらくサウンドチェックの音が聴こえた後に幕が開き、そこにOld Man Gloomの一同が並んでいた。右手に元IsisのAaron Turner、中央にCave InのStephen Brodsky、左手にConvergeのNate Newton、後方にZozobraのSantos Montano。改めて凄い面子が並んでいることに感心する。

曲は"Shoulder Meat"からスタート。しばらく嵐のようなSEが流れた後に、凄まじい迫力の轟音が鳴り響く。このバンドは各自のバンドにはないhave funの精神が特徴的だが、ステージングは至ってシリアスだ。

Aaronは巨漢で髪も髭も長くまるで海賊のようで、見た目の迫力から凄い。その髪を振り乱しながら、凄まじい咆哮とギターの轟音を響かせている。Isisのライブも観たことがなく、ハードコアレーベルHydraheadの統帥にして、ボストンハードコア界の中心的存在である彼のステージを観ることができたことは感慨深かった。

StephenはCalebの代役として中央に立ち、弾いているのもギターではなくベースだった。髪を丸刈りにし、体格も一回り大きくなったようで、少しCalebに似て見えた。仁王立ちでのっしのっしと貫禄が出ていた。

Nateは昨年のConvergeのステージを観て以来1年振りで髪も伸びたようだ。Convergeではベースだが、ここではギター。皆よく色々弾けるものだ。

ボーカルはずっとAaronが担当していたので、StephenとNateは次のCave Inのステージまで温存するのかと思ったら、4曲目の"Simia Dei"でStephenが、5曲目の"A Hideous Nightmare"でNateも咆哮していた。

曲間はアルバムにもあった不穏なSEで全て繋がっていたが、不気味な笑い声の部分だけはなぜか執拗に繰り返されて、フロアからは失笑が漏れていた。

"Sleeping With Snakes"や"Skullstorm"など後半に行くにつれて、アップテンポの曲が演奏され、ほとんど半狂乱のような轟音で場内を圧倒していった。

Old Man Gloomと昨年のNeurosisは、ジャンルとしては同じスラッジコアに属すると思うが、Neurosisの音楽は精神的な闇の世界に引き摺り込まれる感じだった。それに対してOld Man Gloomはもっと直情的というか、真っ赤な激情を叩きつけられた感がある。いずれにせよ凄いものを目撃することが出来た。

1. Shoulder Meat
2. Common Species
3. Burden
4. Simia Dei
5. A Hideous Nightmare Lies Upon the World
6. Gift
7. new song
8. Sleeping With Snakes
9. Skullstorm
10.To Carry the Flame

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