1960s

Jeff Beck 急逝

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年始早々の訃報に驚いた。去る1月10日にJeff Beckが細菌性髄膜炎のため他界した。享年78歳だった。

Jimmy Page、Eric Claptonとともに世界三大ギタリストと称された名プレイヤー。正直言うと私は彼のソロ以降の作品はあまり聴いていなかったのだが、60年代末から70年代前半のバンド時代の作品は愛聴していた。Yardbirdsを抜けた後にRod StewartやRon Woodらと結成した自身のバンドJeff Beck Group。そしてTim Bogert、Carmine Appiceと結成したBBA (Beck, Bogert & Appice)。どちらも高いプレイヤビリティを誇るメンバーが集合しスリリングな演奏を聴かせつつ、素晴らしい楽曲揃いだった。

2006年に富士スピードウェイで開催されたウドーロックフェスティバルに出演した時のステージも拝んだ。"Beck's Bolero"の勇壮なプレイが夕方の夏空に響き渡っていた光景が思い出される。しかしこの時私はパフォーマンスの途中で他のステージに移動してしまった。今思えば最後まで観ておくんだったと後悔している。

ロックに留まらずフュージョンやジャズなどにもジャンルを超越し、どうやって弾いているんだか分からないようなトリッキーなプレイは誰にも真似出来ない強烈な個性を放っていた。

RIP


Phil Spector 他界

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今年は年明けから訃報が続く。60年代の名プロデューサーPhil Spector (フィル・スペクター)が他界した。享年81歳だった。

真っ先に思い返されるのは"Be My Baby"のイントロだ。タメとエコーの効いたドラムの後に流れてくる目眩くような音の洪水。この1963年の名曲はRonnieの歌声とも相まり、当時のドリーミンなアメリカを象徴している。

バンドサウンドに分厚いコーラスやらブラスセクションやらストリングスなど、とにかく片っ端から音を積み上げるこのウォール・オブ・サウンドが与えた影響は大きかった。彼がいなければ、Brian Wilsonの「Pet Sounds」も、Leon Russelのスワンプロックも産まれていなかったと断言して良いだろう。

後年はドラッグや奇行が目立つようになり、しまいに殺人まで犯し収監された。こうした悪行で名声が傷ついたのはもったいないが、音楽史に残した功績は消えることはないだろう。
 
RIP


Tim Bogert 他界

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Vanilla Fudge・Beck, Bogert & Appiceのベーシスト・ボーカルTim Bogert (ティム・ボガート)が去る1月13日に亡くなった。享年76歳だった。

Vanilla Fudgeは本当に強烈だった。1967年にアメリカの東海岸からSupremesのカヴァー"You Keep Me Hanging On"でデビュー。原曲を叩き壊すような斬新なアレンジと派手な演奏が鮮烈で、アルバムは全米6位を記録した。

特にTimとCarmine Appiceのリズムセクションは強力だった。個人的にはCreamのJack Bruce & Ginger Baker、Jimi Hendrix ExperienceのNoel Redding & Mitch Michelleと並ぶ60年代の3強リズム隊だったと思っている。

2人はVanilla Fudge解散後にCactusを結成。さらにその後は念願だったJeff BeckとともにBeck, Bogert & Appiceを組み来日も果たしている。

Vanilla Fudgeはその後も何度か再結成をしているが、近年Timは体調不良のため参加していなかった。

RIP


Ginger Baker他界

ginger

先週10月6日にGinger Bakerが他界した。享年80歳だった。

言わずと知れたCreamの名ドラマー。Jack Bruce, Eric Claptonと共に最強トリオを結成し、わずか2年半という短い期間で、ロック史を大きく塗り替えた。特にGingerの豪快でパワフルなドラミングは後世に与えた影響も大きく、今でも最も偉大なロックドラマーの1人と言われている。

解散の要因にもなったJackとの不仲は有名で、再結成はあり得ないと言われていた。そのため2005年の再結成時は驚きであり、日本にも来てくれることを願っていた。しかしJackが2014年に他界、そしてGingerも逝ってしまった。2人は向こうで再会できただろうか。

RIP


Marvin Gaye & Tammi Terrell 「You’re All I Need」 (1968)

ユアー・オール・アイ・ニード
マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル
ユニバーサル ミュージック
2013-11-20





1. Ain't Nothing Like the Real Thing
2. Keep on Lovin' Me Honey
3. You're All I Need to Get By
4. Baby Don'tcha Worry
5. You Ain't Livin' Till You're Lovin'
6. Give in, You Just Can't Win
7. When Love Comes Knocking at My Heart
8. Come on and See Me
9. I Can't Help But Love You
10. That's How It Is (Since You've Been Gone)
11. I'll Never Stop Loving You Baby
12. Memory Chest

先日アメリカ・テキサスのダラスでデモの最中に警官5人が射殺されるという衝撃的な事件がありました。これは黒人市民が警官に殺されたことに対する報復だったわけですが、アメリカにおける黒人と警官の溝は埋まることがなさそうです。

こうした黒人問題の事件が起きると、どうもいつもブラックミュージックが聴きたくなってしまいます。今週末は久しぶりに棚からMarvin Gayeを出して聴いていました。話の流れ的にはシリアスな71年の「What's Going On」の方が合うのでしょうが、今日は個人的に1番好きなこのアルバムを。

私が初めてベストでMarvinを聴いた時に最も印象に残ったのが“You're All I Need To Get By”でした。Marvinの優しく包容力のある歌声に絶妙に絡む可愛らしくも芯の強いTammi Terrellの歌声。静かに始まり徐々に盛り上がっていく中で高まっていく2人のデュエット、そしてクライマックス。劇的な名曲でした。

Marvinがデュエットをした相手は多くいましたが、1967~69年の3年に渡って3作も共作したのは彼女だけであることに、2人のコンビネーションの良さが表れています。しかし2人でステージに立っている最中にTammiはMarvinの腕に倒れ込み、脳腫瘍を患っていることが判明。そして1970年に彼女は帰らぬ人となりました。享年24歳でした。その後Marvinはショックのあまり対人恐怖症にかかり復帰まで1年掛かっています。

実際Tammiはその歌声の通り本当に可愛らしかった。個人的にも最も魅力的な黒人女性だと思います。Marvinも当時既婚でしたが、彼女に対してプラトニックな想いを抱いていたようです。ジャケットにも仲睦まじい様子がよく表れており、何よりもここで聴かれる2人の絶妙なデュエットが証拠でしょう。その後Marvinはソロとして新たな道を歩み大成功を収めるものの、離婚や麻薬依存に苦しみ、最後は実父に銃殺されてしまいます。

そんな悲劇的な運命の2人が最も幸せだった時代の名盤。


ジム・マーシャル写真展 「The Haight: Love, Rock and Revolution」

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先日都内で開催されているジム・マーシャル写真展「The Haight: Love, Rock and Revolution」を見に行ってきました。
 
ジム・マーシャル(Jim Marshall, 1936-2010)は特に60~70年代に活躍した写真家で、ロックを始めとする当時の多くのトップミュージシャンの撮影を手掛けました。彼の撮影した写真は多くのアルバムジャケットにも使われています。The Allman Brothers Band 「At Fillmore East」、Jimi Hendrix 「Live At Monterey」、Janis Joplin 「Janis」、Johnny Cash 「At Folsom Prison」。これらはその一例ですが、どれも時代を象徴するような写真であり、名盤ばかりですね。

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で、今回展示されていたのは、彼が1972年に密着撮影したRolling Stonesのレコーディング風景やライブ模様の写真14枚。この頃Stonesが制作していたのは「Exile On Main St.」なのですが、Mick JaggerやKeith Richardsらがスタジオで録音している様子が写っていました。有名なものも、初めて見たものもありますが、とにかくどれもカッコいい。この人の写真はシンプルでストレートなのですが、それぞれ最高の瞬間を捉えています。特に咥えタバコのKeithが静かにギターをつまびく写真は是非自分の部屋にポスターとして貼りたいものでした。少しだけ自分も一緒にスタジオにいる気分にさせてもらったひとときでした。

ちなみに今回開催されていたのはライカギャラリー東京ですが、同期間にライカギャラリー京都ではThe Beatlesの1966年のサンフランシスコでの最終公演の写真が展示されているそうです。展示の入れ替えがないのは残念でした。


Jeff Beck Group 「Beck Ola」 (1969)

ベック・オラ(紙ジャケット仕様)
ジェフ・ベック
EMIミュージック・ジャパン
2004-12-22


A1. All Shook Up
A2. Spanish Boots
A3. Girl From Mill Valley
A4. Jailhouse Rock
B1. Plynth (Water Down the Drain)
B2. The Hangman's Knee
B3. Rice Pudding

前回のVanilla Fudgeのリズムセクションは後にJeff BeckとBeck, Bogert & Appiceを組んでいます。私はJeff Beckのことはスゴいとは思うものの、あまりインスト以降は追っていません。Udo Music Festivalで観た時も3曲ほど聴いたら他のステージに行ってしまった不届き者です。。で、私が好きなのはボーカル入りバンドだった頃の第1期です。

何しろボーカルはRod Stewart、ベースにRon Woodという後のFaces組が参加しています。ここにJeff Beckのギターが暴れる訳ですから最高です。1968年のデビューアルバム「Truth」はブルースロックの名盤でしたが、これはLed Zeppelinよりも早く、ライバルJimmy Pageもこれを参考にしたと言われています。

ということで第1期Jeff Beck Groupで注目されるのはいつも1stなんですが、私が最も好きなのは彼らが翌年に発表した2nd「Beck Ola」。これは似ていますが、実は結構質感が違います。

前作の楽曲は各メンバーの持ち寄りやカヴァー曲が多かったのですが、今作ではメンバーが全員で一緒に練り上げています。で、どれもかなりハードなナンバーで、バンドが一体となって攻め立てているのです。特にA1とB1は強力。B3のインストも名曲です (ちなみに最後がブツ切りなのですが、これ仕様なんですかね?)  Elvisのカヴァーもあり、全体的にブルースロックではなくハードロック&ロールといった趣になっています。

Jeffのギターもスゴいのですが、今作で特徴的なのはここで正式メンバーとなったNicky Hopkinsのピアノ。前作ではゲストとして少ししか露出がありませんでしたが、今作ではバンドサウンドの中心でかなり頑張っています。(Jeff Beckファンには気に入らないかもですが)  M3はNickyのソロ作ですが、静かで美しいピアノも印象的。後にNickyはRolling Stonesなどとのセッションで名を上げ、ソロアルバムも発表しますが、94年に亡くなっています。

もしこの第1期が解散せずに存続していれば、ZeppelinやDeep Purpleにも負けないハードロックバンドとして名を馳せていたと思うのですが。


Vanilla Fudge 「Vanilla Fudge」 (1967)

キープ・ミー・ハンギング・オン
ヴァニラ・ファッジ
ダブリューイーエー・ジャパン
1988-08-25


A1. Ticket to Ride 
A2. People Get Ready
A3. She's Not There 
A4. Bang Bang 
B1. Illusions of My Childhood - Part One 
B2. You Keep Me Hanging On 
B3. Illusions of My Childhood - Part Two 
B4. Take Me for a Little While 
B5. Illusions of My Childhood - Part Three 
B6. Eleanor Rigby

先日Deep Purpleも来日していて気になってはいたのですが、最近ライブ続きで金銭的に余裕がなく行けませんでした。で、今日はそのDeep Purpleではなく、DPに多大な影響を与えたVanilla Fudgeを取り上げたいと思います。

Vanilla Fudgeは一般的にアートロックとかサイケデリックとか呼ばれています。同時代のCreamやJimi Hendrixと並んで語られるべき存在であり、DPやUriah Heepなどへの影響の大きさを考えれば彼らはハードロックの原点の1つだとも思っていますが、どうも不当に評価が低い気がします。

彼らのデビューは1967年。重厚なオルガンとエキセントリックなギター、ヘヴィなリズムで彩られたファーストアルバムは当時相当なインパクトがあったと思います。曲間をつなぐ挿入曲以外は全てThe BeatlesやR&Bのカヴァーばかりでしたが、原曲も分からないほどに徹底的に叩き壊しています。またこのバンドはメンバー全員が歌えてハイトーンのコーラスが綺麗なのですが、不穏な曲調の中でそれが逆に不気味さを増しています。特にシングルとなったSupremesのB2は必聴です。

映像で観ると良く分かりますが、彼らは非常に高い演奏力を持っていたと同時に、とにかくパフォーマンスが激しかった。やたらとオーバーアクションなオルガンのMark Stein、まるで千手観音のようなドラムCarmine Appice、ベースのTim Bogertも激しい (実はギターVince Martelが一番地味ですが)。後のハードロック勢への影響も納得です。

彼らの音楽性の頂点は68年の3rd「Renaissance」。もうカヴァーではなくオリジナル曲ばかりとなり、美しくも狂気をはらんだダークさで、まるでホラー映画のような傑作です。

バンドは3年という短い活動期間に5枚のアルバムを残して1969年に解散。CarmineとTimのリズム隊2人は、この後Cactusとして活動した後に、Jeff Beckと合流してBeck, Bogert & Appiceを組みます。個人的にこのリズム隊は、CreamのJack Bruce & Ginger Baker、Jimi Hendrix ExperienceのNoel Redding & Mitch Michelleと並ぶ最強のコンビだったと思います。


Joe Cocker 逝去

joe

Oh my God ! Joe Cockerまで亡くなっちまった。享年70歳。
なんでみんなそんな急いで行っちゃうんだろう。

この人の声は好きだった。はっきり言ってルックスはイマイチだったし、ファッションセンスもなかった。熱唱している時の痙攣してるような動きもいつも変だなぁと思って見てた。でもあのソウルフルで力強いハスキーボイスは、唯一無二のものだった。

代表曲のほとんどはカヴァーばかりだったが、あの原曲を何倍も魅力的にしてしまうゴージャスなスワンプロックアレンジと、あの声。名演ばかりだった。

1. Darling Be Home Soon (1969)
2. I'm So Glad I'm Standing Here Today (1980)
3. She Came In Through The Bathroom Window (1969)
4. With A Little Help From My Friend (1969)
5. I Think It's Gonna Rain Today (1975)
6. Feeling Alright (1969)
7. You Are So Beautiful (1974)
8. Up Where We Belong (1982)
9. Something (1969)
10.When The Night Comes (1989)

 

『グリンプス』 ルイス・シャイナー著

グリンプス (ちくま文庫)
ルイス シャイナー
筑摩書房
2014-01-08


1. 帰還(ゲット・バック)
2. 蜥蜴の祝祭(セレブレーション・オブ・ザ・リザード)
3. スマイル
4. ブライアン
5. 移行中
6. 新しい日の出
7. ジミ
8. ヴ―ドゥー・チャイルド(つかのまの帰還)
9. 天国
10.レイ

普段読む本というのは大抵ミュージシャンの伝記物が多いのだが、最近は珍しく小説を読んでいた。もっともこれも音楽に関わるものなのだが。1960年代のロック好きには有名な小説、ルイス・シャイナーの「グリンプス」である。

60年代には幻の名盤と呼ばれたものがいくつか存在した。The Beatlesの「Get Back」、The Doorsの"Celebration Of The Lizard"、Beach Boysの「Smile」、Jimi Hendrixの「First Rays Of The Rising Sun」。これらの作品は後の90~00年代に当事者や関係者によって完成されたわけだが、この小説の舞台となる1989年の段階ではまだ幻だった。これはその幻を追いかけるというロック好きのロマン溢れる一冊だ。

ステレオ修理工の主人公Rayは、父親の死後のある日、思い描いた「Get Back」のセッションがステレオから流れてきたことに驚く。自分に不思議な能力があることに気付いた彼は、海賊盤レーベルのグレアムに促されながら、次々と幻の名盤に携わっていくことになる。

その過程の中で、実際に1966年のLAにタイムスリップしBrian WilsonにSmileを完成させるように促したり、1970年のロンドンに行ってはJimi Hendrixの死を止めようと奔走をする場面がハイライトだが、実在する当時の人物や情景が現実のものとして描写され、ロック好きな読み手をワクワクさせてくれる。

また同時にRayは崩壊していた父親や妻との関係にも悩み傷つき清算しようともがき続けるのだが、そんな彼に対してBrianやJimiがアドバイスを与えるというように、単に過去の人物としていないのも物語を興味深いものにしている。

秋の夜長にお勧めの1冊。

 
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