Heavy Metal

ジャーマンメタル傑作10選

先月竜ジャケを取り上げた際にHeavens Gateに触れて以来、かつてのジャーマンメタルばかりずっと聴いている。ルールに厳しく質実剛健なドイツ人の作る音楽は、昔から力強さと哀愁に溢れ、日本人の琴線に触れてきた。今日はそんなドイツのメタルを取り上げたい。

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① Scorpions 「Fly To The Rainbow」 (1974)
ジャーマンメタルではないが、ドイツのハードロックの始祖。クラウスの哀愁ボーカルとウリの泣きギターが絶品。世界中にドイツを知らしめた功績大。

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② Accept 「Restless And Wild」 (1982)
ウドの金切り声が強烈なヘヴィメタルだが、その音楽性はクラシックも導入したりと結構メロディアス。ファストチューンのM1は後世への影響大。

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③ Helloween 「Keeper Of The Seven Keys Pt.2」 (1988)
スピード・パワー・メロディという3本柱にコミカルさも加えて大成功したジャーマンメタルの立役者。後世に数多のフォロワーを生み出した。

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④ Gamma Ray 「Heading For Tomorrow」(1990)
Helloweenを脱退したカイ・ハンセンが結成したバンド。本家が失速しているタイミングにデビューし、本家のお株を見事に奪って行った。

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⑤ Running Wild 「Blazon Stone」(1991)
海賊のコンセプトや甲冑の衣装などで漢のイメージが強い。M1やM5の野太いボーカルもカッコ良いが、インストM11も好きだった。

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⑥ Pink Cream 69 「One Size Fits All」 (1991)
メタルというよりハードロックだが、妙に粘り着くようなメロディが秀逸だった。ボーカルのアンディがHelloweenに電撃移籍して驚いた。

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Heavens Gate 「Livin In Hysteria」(1991)
典型的なHelloweenタイプのバンドだが、その高い音楽性とプレイは日本でも人気を集め、BURRN!誌の表紙も飾っていた。

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Blind Guardian 「Somewhere Far Beyond」(1992)
ファンタジックな世界観とドラマティックな音楽性により、ヨーロッパでは絶大な人気を集めた。私は世界観にハマらなかったが。

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Rage 「The Missing Link」 (1993)
変わったリフでも強引にカッコ良くしてしまうパワーのあるトリオ。疾走曲のM1とM3、大曲M9が特に佳曲。

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Chroming Rose 「Pressure」 (1993)
このバンドもHelloweenタイプだったが、この3rdではミドルテンポで独自の個性を出してきた。特にM5は佳曲。

Edge Of Sanity「The Spectral Sorrows」 (1993)

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1.The Spectral Sorrows
2.Darkday
3.Livin' Hell
4.Lost
5.Masque, The
6.Blood of My Enemies
7.Jesus Cries
8.Across the Fields of Forever
9.On the Other Side
10.Sacrificed
11.Waiting To Die
12.Feedin' the Charlatan
13.A Serenade For the Dead

先月はヘヴィなものをということでスラッシュメタルのSepultraを取り上げてみた。その勢いで今月はデスメタルに行ってしまおうと思う。

90年代初頭まではデスメタルは忌み嫌われる異端の音楽だった。暴虐と混沌のノイズをバックに「ゔおぉぉー」というデスボイスが一部のマニア以外を寄せ付けなかった。

潮目が変わったのは1993年だったと思う。Edge Of Sanityの本作、Carcassの「Heartwork」、 Deathの「Indivisual Thought Pattern」、Cynicの「Focus」といった突然変異のような傑作が一気に世に出たのがこの年で、それまで否定的な態度を取っていたBURRN!誌も急に高評価を付け始めるようになった。

時代の変化もあった。当時グランジやモダンヘヴィネスが時代の主流となる中で、アメリカのパワーメタル・スラッシュ系のバンドが一斉にスタイルを変えてしまう。そこの空いてしまった穴を、時期を同じくしてメロディや整合性を増し始めたデスメタル勢が埋めることになったのだと思う。

狂気の淵という名のこのバンドは、プロデューサーをしていたDan Swanoを中心に、1989年にスウェーデンで結成されている。3rdになる本作は、割とオーソドックスなデスメタルだった初期とは大きく変化を遂げている。叙情的なメロディが大幅に増量し、聴いている随所でハッとさせられる瞬間がある。まず大仰なインストM1から怒涛のM2への展開に引き込まれる。動と静のコントラストや展開も多く、M5やM9は特に聴き所。

ボーカルさえ普通なら、曲によってはもはやデスメタルではない。いや実際にもうデスボイスを捨ててちゃんと歌っている曲もあり、M6のManowarのカヴァーはほとんど完コピだし、M10はまるでParadise Lostのようなゴシックメタルである。

こうした彼らのスタイルはメロデス(メロディックデスメタル)というジャンルを形成し、多くのフォロワーを産むことになる。しかし彼らはその後何枚かアルバムを出したものの、メンバー間の不和等により解散してしまった。


Sepultura 「Arise」 (1991)

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1 Arise
2 Dead Embryonic Cells
3 Desperate Cry
4 Murder
5 Subtraction
6 Altered State
7 Under Siege (Regnum Iraw)
8 Meaningless Movements
9 Infected Voice
10 Orgasmatro

このブログの名前との兼ね合い上、そろそろちゃんとロックを取り上げないといけない気がしてきた。昔ほどではないが、時々思い切りヘヴィなものを耳が求めたりする。ということで、今日はこれを取り上げる。

ブラジル出身でCavalera兄弟を中心に結成されたスラッシュメタルバンドSepultraの4作目の名盤「Arise」。当時私は取り立ててスラッシュが好きだったわけではなかったのだが、これを聴いた時は驚いた。1991年はViperの名盤「Theatre Of Fate」の日本版がリリースされた年でもあったので、ブラジルが一気に注目を集めていたのが印象深い。

Sepulturaというと世間的には恐らく1996年の6作目「Roots」の方が知名度は高いかもしれない。ブラジル音楽の気鋭Carlinhos Brownとコラボして導入したトライバルリズムが画期的だった。ただあちらは作風がモダンヘヴィネスで全く別物の感がある。

「Roots」のギターリフが太いナタだとするなら、「Arise」は日本刀だ。疾走感のある中で鋭利な切れ味で鼓膜を切り刻んでくるのが堪らない。また随所で聴けるツインリードがなかなかメロディアスで耳残りするのも美味しい。ただ面白いのが「お、このフレーズ最高だな」と思って聴いていると、曲調は8音節毎にどんどん展開して行ってそのフレーズは2度と出て来なかったりというのがよくある。そういう意味では結構プログレっぽいかもしれない。テンポチェンジを繰り返しながらも、しっかり重い弟Igorのドラムも素晴らしいし、野太いMax兄のボーカルも良い。

よく冒頭のタイトルトラックばかりが名曲とされているが、個人的にはM3やM6の方がもっと好き。

あと、このジャケットについて。当時はこのいかにもB級デスメタルみたいなジャケットが好きではなかったのだが、実はこれは元々Obituaryのために用意されたものだったらしい。

後年MaxはモダンヘヴィなSoulflyを始動するために脱退してしまう一方で、Sepultraは後任ボーカルを入れて活動を継続した。しかしそれ以後私はどちらも追っていない。


映画「ランディ・ローズ」

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あれは確か高校2年の夏だったと思う。「ランディ・ローズのビデオを買わねーか?」とギター弾きの悪友が持ち掛けてきた。当時はネットもYouTubeもない時代。雑誌で写真を見たことしかないギターヒーローの動く姿を見られるとあって、5000円と高額だったにも関わらず私はその話に乗ってしまった。しかし映っていたのは画質の悪いオーディエンスショットの酷い映像で、後で文句を言ったものだった。

今回そんなランディのドキュメンタリー映画が制作されたということで期待をして観に行った。日曜の横浜キノシネマは私のようなかつてのロックキッズで一杯だった。

まずは私もあまり知らなかった彼のQuiet Riot時代が長い時間を取って紹介されていた。ランディの母親や兄、ケヴィン・ダブロウ、ルディ・サーゾ等多くの関係者・バンドメンバー達のインタビュー、そして見たこともなかったランディの貴重な写真や映像の数々に見入った。

実は彼の伝記本も出版されていたことは知っていたが未読だったため、彼については知らなかったことが多かった。Quiet Riotの創設者であること、ケヴィンの元彼女と付き合っていたこと、ベースのケリーを解雇する際に掴み合いの大喧嘩をしたこと、デビュー前のエディヴァンヘイレンと張り合っていたこと、等々。女性のような綺麗な顔つきで、ステージ以外は大人しいというイメージとは異なる、彼の男らしい一面を知った。

一方で、Ozzy Osbourne Band時代は期待外れだった。飛行機事故の様子が見られたのは良かったが、オジーのインタビューは古いものばかり。何よりもオジーの楽曲を一切聴くことが出来なかった。"Crazy Train"のリフの話をしているバックに流れ出したのが、全く聞いたこともない無関係の曲だったのには思わず失笑してしまった。オジー側(というかシャロン)の協力を得られなかったらしいが、要するに使用料が高額だったのだろう。唯一のライブ映像が、先の私が悪友から買ったオーディエンスショットだったのは悲しかった。

Quiet Riot時代のライブ映像だけはたっぶりと収録されており、彼のステージでの見事なプレイを拝むことが出来た。その中で派手なソロの最後に彼がエレキであの"Dee"をしっとりと弾いていた。Ozzy Band時代も毎日クラシックを練習していたことは証言されていたが、この曲がそんな前から温められていたことに独り感動していた。


オリオン

orion

歳を取るにつれ寒い冬が苦手になりつつあるが、そんな冬にも楽しみはある。星空を眺めることはその1つで、澄んだ夜空を見上げるたびに冬の大三角や大六角をなぞっている。その中央にあるオリオン座は最も好きな星座である。

砂時計のような形の左上の赤いベテルギウスと右下の青白いリゲルは共に一等星だが、それぞれ異なる色を放ち主張し合う。対角線上の2つの星と、中央に横並びになる三つ星は二等星。さらにその下にはM42星雲。ここまで明るい星々が集まり均整の取れた配列をしている星座はなかなかない。

もっともパソコン仕事ばかりしているとどうにも目が悪くなり、最近は裸眼だと一等星しか見えなくなってしまった。しかもリゲルは見えるのに、ベテルギウスが見えないのは何故だろう。そう思っていたら、今冬のベテルギウスは過去100年で最も暗く、超新星爆発が近づいている前兆だということを知って驚いた。爆発すると半月の明るさが数ヶ月近く続いた後に消えてしまうという。

オリオンを見ると思い出すのが、Metallicaの"Orion"だ。今は亡きCliff Burtonが1986年に作曲したインストで、数あるHR/HMインストの中でも最もドラマティックな名曲である。ギターリフやツインリードも聴きものだが、特に印象的なのは静かな中間部で聴こえる知的で穏やかなベースの音色だ。彼が冬の夜空を見上げて作ったというこの曲の持つ寂寥感が胸に迫る。

永遠と思われた宇宙の時間の中で、ベテルギウスの終焉を見ることになるとは思わなかったが、もしCliffも生きていてこれを知ったらきっと驚くことだろう。


VIPER 「Theatre Of Fate」 (1989)

シアター・オヴ・フェイト
ヴァイパー
ビクターエンタテインメント
1991-07-21




1.Illusions
2.At Least a Chance
3.To Live Again
4.A Cry from the Edge
5.Living for the Night
6.Prelude to Oblivion
7.Theatre Of Fate
8.Moonlight

去る6月8日、ブラジルのHR/HMボーカリスト・ミュージシャンAndre Matosが急逝したということを音楽ニュースで知った。死因は心臓発作、享年47歳という若さだった。

Andre MatosといえばANGRA以降のキャリアに焦点が当たりがちだが、私にとって思い出深いのはVIPERである。1991年に日本盤でリリースされた2nd「Theatre Of Fate」がとにかく衝撃的で、こんな完成度の高いものが何故ブラジルから?と驚いた。Sepultraの「Arise」が出たのも同年だったので、ブラジルのHMシーンが一気に注目を集めた年だった。

フルートも交えた叙情的なインストで幕を開け、珠玉のファストチューンがずらりと並ぶ。適度にヘヴィでありながらもメロディアスで、テクニカルなギターソロも美麗。Andreの伸びやかなハイトーンも力強い。リズムチェンジし緩急織り交ぜたり、中間部で予想外の展開を見せるあたりはプログレっぽくもある。

本国の発表は1989年なので、Helloweenが「Keeper Of The Seven Keys Ⅱ」を出した翌年だ。その後ドイツで無数のHelloweenフォロワーが竹の子のように登場したが、そうした凡百のバンドが束になっても到達出来ない高みを既にブラジルで極めていたことに驚きを覚える。

マイナーキーの4曲が続いた後に、突き抜けるような高揚感のM6も素晴らしい。このアルバムは人生にもがく若者が自己を発見するというコンセプトアルバムにもなっているが、この歌詞も注目に値する。

そしてハイライトはAndre作曲のM8。ベートーヴェンのピアノ曲”月光”を大胆にアレンジしたこの曲は、クラシック素養のあるAndreの真骨頂。Andreの絶唱と、ラストのバイオリンが涙腺を刺激する名曲だった。

残念なことにその後VIPERはAndreが脱退したことで失速する。一方AndreはANGRAを結成し「Angels Cry」で華々しくデビュー。こちらは期待された方向性で人気を博したが、個人的には「Theatre Of Fate」を超えることは出来なかったと思った。VIPERとしては突然変異的に生まれた名盤だった。


Helloween 「Pumpkins United World Tour 2018 in Japan」

united

Helloweenのライブに行って来た。会場のZepp Tokyo。アリーナ中央の右手から入ると、ソールドアウトの場内は開演前からスゴい熱気だった。

SEの最後に”Let Me Entertain You”が流れると大歓声。幕が降りてメンバー登場。右手からWeikie、Kai Hansen、Markus Grosskopf、Sascha Gerstner、後ろのドラムセットにはDani Loble。オープニングはいきなり長尺の”Halloween”。そして歓声の中ボーカルの2人Andi DerisとMichael Kiskeもマイクを持って登場。これだけ豪華なメンバーがステージに並んでいることが信じ難い。

ボーカルの2人は花道で掛け合いをしたり肩を組んだり仲良さそう。かつては美青年だった2人も随分丸くなってしまったが (Kiskeに至っては頭部も見事に別人)、声は昔から変わらない。

ギタリスト達も交互に花道に出てきてくれるのだが、3人もいるとツインリードを弾いている時も後ろにもう1人リズムギターがいるわけで、やっぱり音の厚みが違う。さらにはトリプルリードなんてものまで見せてくれる豪華さ。

”Dr. Stein”の後にAndiのMC。「Good evening Tokyo。戻って来られて嬉しいよ。ちょっとまだ喉の調子が悪いから皆歌うのを手伝ってくれよな。日本人はアニメは好きかい?」「好きだと思うよ」とKiske。「SethとDocを紹介しよう」。バックスクリーンに2人のカボチャのアニメキャラクターが登場する。これはスペインのファンが作ったものらしいが、普通にどこかの大手プロダクションが作ったみたいによく出来ていた。ただこの後毎曲終わるごとに登場してくるのは、ちょっと閉口したが。

”I'm Alive”の後は、”If I Could”、”Are You Metal”と2曲続けてAndiボーカル。調子悪いと言っていたが、それでも高音も出ていたし、かなり頑張っていたと思う。一方で昨年はずっと調子を壊していたというMichaelは絶好調で、深みのある低音から伸びる高音まで流石だった。

AndiとKaiがシルクハットを被って演奏された”Perfect Gentleman”の後は、いよいよKaiの見せ所。中央のスタンドマイクに立ち「80年代のオールドスクールメタルの準備はいいか?」と煽り、”Happy Halloween”のアニメーションの後に強烈なスクリームから怒涛の勢いで”Starlight”に雪崩れ込む。場内はヘッドバンキングの嵐。その勢いのままメドレーで”Ride The Sky”, ”Judas”, ”Heavy Metal”と駆け抜けていく。ここはこの日のハイライトの1つだった。

それにしても場内凄まじい暑さ。まるでサウナにいるような熱気で、Tシャツも汗びっしょり。ステージで革ジャンを着たままのKiskeやSaschaが信じられない。たまに開くドアの外からの冷気だけが救いだった。

Kiske「この曲は俺がHelloweenに加入して初めてレコーディングした曲だよ」と言って始まったのは”A Tale That Wasn't Right”。この日初めてのバラード。紫のライティングの中しっとりとKiskeが歌い上げた。

新曲”Pumpkins United”に続いてはDaniのドラムソロ。するとスクリーンにビデオテープをセットする映像が流れて、在りし日のIngoが現れた。感傷を誘うIngoのドラムプレイが流れた後に、Daniがそれに合わせて同じリズムを叩き始めた。この演出は事前に知っていてもグッと来るものがあった。

その後も新旧織り交ぜて盛り上げた後にAndi「次は最後の曲だ。本編のね(笑)。この曲は俺が初めて聴いたHelloweenの曲だった。その時に俺はこう思ったんだ。なんでこの曲を書いたのが俺じゃないんだろうって」そう言って始まったのは”How Many Tears”。ボーカルの3人が交互に歌いながら疾風の如く駆け抜ける。Andiがそう感じたのもよく分かる名曲だ。最後静かにアルペジオを奏でながらメンバーが1人ずつ退場していき、最後にSashaだけが残った。

私はもうここで熱さに堪らず飛び出してドリンクを取りに行った。マシかと思って後方から再度中に入ったが熱さは変わらなかった。

アンコールは”Invitation”から”Eagle Fly Free”。ちゃんとイントロ付きでこの名曲を聴けるのが嬉しい。そしてここで大曲”Keeper of the Seven Keys”。2度目のアンコールは”Future World”に”I Want Out”。これでもかという名曲が立て続けで、最後は沢山のオレンジの大きな風船が降ってきて、このお祭りのフィナーレを飾った。今までZeppは何度も来ていたが、こんなに場内が熱かったことはないと思う。

1. Halloween
2. Dr. Stein
3. March of Time
4. If I Could Fly
5. Are You Metal?
6. Rise and Fall
7. Perfect Gentleman
8. Starlight / Ride the Sky / Judas / Heavy Metal
9. A Tale That Wasn't Right
10.I'm Alive
11.Pumpkins United
12.Drum Solo
13.Livin' Ain't No Crime / A Little Time
14.Why?
15.Power
16.How Many Tears
encore1
17.Invitation / Eagle Fly Free
18.Keeper of the Seven Keys
encore2
19.Future World
20.I Want Out


Riot 「Thundersteel 30th Special In Japan」

riot

Riotの来日公演に行って来た。会場の川崎クラブチッタは10数年ぶり。クラブチッタは最近独自でHR/HMバンドの招致やイベント開催に力を入れているらしく、こうした呼び屋を介さずハコ独自の招致は頼もしい。

18:00場内暗転し歓声が上がる中、演奏が始まると幕が降りた。現れたメンバーは全員黒に赤いラインの入った衣装を着ている。後ろにはメンバーが大きく描かれたバックドロップ。オープニングは来月リリース予定という新作からの新曲”Armor Of Light'。早くてRiotらしい曲。2曲目もそのまま畳み掛けるように”Ride Hard Live Free”。

ボーカルのTodd Michael Hallは噂に違わずスゴかった。確かにTony Mooreに声が似てるが、声の伸びや力強さはTony以上なんじゃないかとすら思った。しかもなかなかのイケメンでムキムキ。

3-4曲目は”On Your Knees”と”Metal Soldiers”と2曲続けてアルバム「The Privilege Of Power」から披露し、オールドファンを喜ばす。ここでToddのMC。「ドモアリガト。今日は寝れたし移動もないから良い日だった。今日は沢山提供するものがあるよ。投げるピックも沢山あるしね。次は”Fall From The Sky”。」

正直最近の曲はあまり予習もせずに今回参戦したのだが、どの曲もファストでカッコ良い曲ばかりで、特に”Angel Eyes”が印象的だった。またどれだけ早くても余裕を見せながら終始息のピッタリ合った演奏を魅せるバンドの演奏力も流石だった。

オールドメンバーのベースDon Van Stavernはステージ右手の定位置をあまり動かなかったが、終始嬉しそうな笑顔。彼作の”Land Of The Rising Sun”はタイトル通り日本愛に溢れる曲で、最後に指でハートマークを作ってみせていた。

左手のギターMike Flyntzもオールドメンバー。この日はMark Realeと同じような黒のレスポールを持って見事なソロを弾いていた。

見ていて面白かったのは一番右手のギターNick Lee。若いこともあり一番元気で、飛び跳ねたりステージを所狭しと走り回ったり。Mikeと並んでのツインリードも見所だった。

15分の休憩を挟み、ここからは第2部として「Thundersteel」の完全再現。白幕に映し出された雷と戦士の映像をバックに詩が朗読された後、タイトル曲のリフが聴こえ大歓声の中幕が降りた。ステージ左右にはアルバムジャケットのバックドロップが追加されていた。

ここからはお祭り状態。場内腕を突き上げ、ヘッドバンキングと大合唱。メンバーも皆楽しそうに笑顔で演奏していた。個人的なハイライトは名曲”Flight Of The Warrior”と”Johnny's Back”。また”Bloodstreet”でのMark Realeの泣きのギターソロを、Mikeが同じ黒のレスポで情感たっぷりと弾いていたところは感動的だった。唯一残念だったのは、”Buried Alive”前半のインストパートが暗転したまま録音音源だったこと。出来ればここも演奏してほしかった。

アンコールは「今度はずっと戻って79年の曲だよ」と”Road Racin”からスタート。続いてToddが「今日ここにMarkにいて欲しかった」と初めてMarkに言及。Donのテキーラを皆で天に捧げて回し飲みしてから”Sword and Tequila”を演奏した。

最後は”Warrior”かと思ったら、ここで「マサヨシを呼ぼう」と何とLoudnessの山下昌良氏が登場した。さらにはステージ両脇からアザラシの被り物をした人達が大勢現れてからスタートした。大名曲でのラストで大合唱ではあったが、正直アザラシ達はいらなかったなと思った。

この日は11台のビデオカメラが入り撮影しており、後日映像作品として発表される予定とのこと。終了は20:30頃だったので約2時間半、純度100%のパワフルなヘヴィメタルの一夜だった。

1. Armor of Light
2. Ride Hard Live Free
3. On Your Knees
4. Metal Soldiers
5. Fall From the Sky
6. Wings Are for Angels
7. Land of the Rising Sun
8. Take Me Back
9. Messiah
10.Angel Eyes
11.Metal Warrior
12.Thundersteel
13.Fight or Fall
14.Sign of the Crimson Storm
15.Flight of the Warrior
16.On Wings of Eagles
17.Johnny's Back
18.Bloodstreets
19.Run for Your Life
20.Buried Alive
encore
21.Road Racin'
22.Swords and Tequila
23.Warrior

 

正統派ヘヴィメタル名盤10選

Riotの来日を記念して、今日は正統派ヘヴィメタルの名盤を選んでみました。
正統派HMとは、言ってしまえば最もオーソドックスなへヴィメタルのこと。適度なヘヴィさとメロディを兼ね揃えながら、英国的(欧州的)な哀愁を漂わせているというのが一般的な定義です。80年代のアメリカでHR/HMが市民権を得る中、LAメタルやらスラッシュやらへヴィメタルが多様化していく一方で、本来のオーソドックスなスタイルが衰退し、それを憂う向きが懐古的に名付けたものと思われます。
90年代以降は欧米にならいパワーメタルと呼ばれるようになりましたが、それによって定義の枠が広くなったような気がします。なのでここではあくまでも懐古的にかつて正統派と呼ばれた名盤を選出してみました。
 
Judas Priest「Defenders of the Faith」 '84
defenders
鋼鉄神の黄金時代の名盤。ヘヴィでアグレッシブな中でもKKとGlenのツインリードが美しい。

Iron Maiden 「Number of the Beast」 '82
beast
初期も好きなのだが、正統派ならこっち。新ボーカルBruceの表現力が楽曲の幅を広げました。

Accept 「Metal Heart」 '84
heart
ジャーマンメタルのパイオニア。Udoの金切り声、重金属リフ、野太いコーラス、これぞヘヴィメタル。

Manowar 「Sign of the Hummer」 '85
mano
失笑もねじ伏せるほどの説得力のあるテクニックと名曲と本気度で魅せる漢のマッチョメタル。

Riot 「Thundersteel」 '88
riot
劇的にパワーアップした復活作。Tony MooreのハイトーンボーカルとMark Realeのギターが圧巻。

Pretty Maids 「Red, Hot and Heavy」 '84
maids
北欧勢の中でも珍しく正統派。骨太なRonnie AtkinsのハスキーボーカルとKen Hammerのギターが○。

Dio 「Holy Driver」 '83
dio
故Ronnie James Dioの名唱が光るデビュー作。オーソドックスなHMだがそこが良かった。

Vicious Rumors 「Degital Dictator」 '88
vicious
故Carl Albertの歌唱が光る初期の傑作。当て馬など不要だとのGeoffの意地が感じられます。

Crimson Glory 「Transcendence」 '88
crimson
マスクが少し色もの的だったが、Midnightの金属ハイトーンボーカル含め高い音楽性を誇っていました。

Leatherwolf 「Leatherwolf」 '87
leatherwolf 
トリプルリードギターと分厚いコーラスがなかなかゴージャス。LAのバンドらしからぬ正統派。


結果的にやっぱり80年代の作品ばかりになってしまいました。上記以外で好きだったのは、TankとかArmored Saintとか、Metal Church、Savatage、Heathen、Powermad、Artch、などなど。意外とアメリカのバンドが多かった。良い時代でしたね。

Riot 「Thundersteel」 (1988)

サンダースティール
ライオット
SMJ
2009-10-07


01. Thundersteel
02. Fight or Fall
03. Sign of the Crimson Storm
04. Flight of the Warrior
05. On Wings of Eagles
06. Johnny's Back
07. Bloodstreets
08. Run for Your Life
09. Buried Alive (Tell Tale Heart)

今月はメタル系の来日が相次ぎ、Riotも来日します。

2012年に創始者であるギタリストMark Realeが亡くなったため、以降バンドはRiot Vと改名し活動を存続していますが、今回の来日では1988年の名盤「Thundersteel」を完全再現してくれるそうです。

実は彼らは秋のLoud Parkへの来日も決まっており、そこでも「Thundersteel」の完全再現をすることになっています。しかもそちらでは当時のボーカルTony MooreとドラムBobby Jarzombekも参加予定とのこと。本来ならそちらの方を観るべきなのかもしれませんが、先だしどうなるか分からないのと、単独の方が長いセットリストを期待できるはずということで、今回参戦することにしました。

「Thundersteel」は言わずもがな80年代正統派HMの名盤です。もっともこれは彼らにとって4年振りの復帰作であり、HR然としたそれまでの作風からは劇的な変化を遂げています。冒頭M1でいきなりMarkの高速ギターリフが切りこんできて、疾走感のあるリズム隊とともに加速し、さらにTonyの強力なハイトーンボーカルが扇情する。どこを切ってもメタル然としていながらメロディアス。このタイトル曲が全てを物語っていますが、以降も最後までテンションが落ちません。全曲素晴らしいですが特にM4、M6は名曲で、M7の湿り気のある哀愁も堪りません。

完全無欠な名盤ですが唯一惜しいのはこのジャケット。Riotは本当にジャケットに恵まれないバンドでしたが、この安っぽいアメコミジャケットもずっと残念に思っていました。もう今となっては愛着がありますが。


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