先日7月26日にMR.BIGのライブを観に日本武道館に行ってきた。「The Big Finish」と銘打った彼らのフェアウェルツアーであり、名古屋・大阪に続く日本での最終公演だった。
会場の外にはパーキンソン病により亡くなったPat Torpeyが日本公演で使っていたドラムセットが飾られていた。これは今回開催されていたパーキンソン病医療に寄附されるオークションに出品されていたものだった。
会場内は追加公演にも関わらず満員御礼。以外と若い人もいた。私は南東2階席の後ろの方だった。
19:00に暗転し早くもオールスタンディング。ステージのスクリーンには、楽屋からステージに向かって来るメンバー達が映っていて、場内の期待感を否応なしに盛り上げる。そして右手からメンバーが登場すると大歓声。
勢いよく"Addicted To That Rush"からスタートした。ステージ右手にギターPaul、中央にEric、左手にBilly、後方にドラムNick。冒頭から4人のハイボルテージの演奏に場内も一気に盛り上がる。「ドモアリガト、トーキョー」とEricのMC。Patについて言及があり、NickのドラムからTake Overへ。
Ericは高いキーは出なくなったが、相変わらずハスキーの良い声をしていた。少年のようだった見た目も流石におじさんになったが、中身はお茶目なまま変わっていなかった。
Paulは眼鏡を掛け髭も生やし、Eric Claptonに似てきた。流麗なプレイは流石で、最初は黒のギブソンを弾いていたが、その後曲毎に替えていた。
Billyは昔から老け顔だったせいで、一番変わっていなかった。ライトブルーのフェンダーベースの指弾きで良い音を聴かせてくれている。
バックスクリーンには、各メンバーのアップの映像以外に、アニメーションやイメージ映像などが流されていたが、あいにく私の席からは巨大な照明器具が邪魔になり、良く見えなかった。
3曲目"Undertow"が終わり一旦暗転。皆上着を脱いで再登場し、ここから「Lean Into It」アルバムが始まる。オープニングは"Daddy, Brother, Lover, Little Boy
"。PaulとBillyがドリルでソロを魅せてくれる。
印象的なギターフレーズの"Green Tinted 60s Mind"はラスサビの入りで皆で綺麗なアカペラで歌っていた。"CDFF"からはBillyがダブルネックに持ち替える。"Voodoo Kiss"の前ではEricが女性オーディエンスに黄色い歓声を上げさせていた。バラード"Just Take My Heart"では場内一杯のスマホライトがホタルの光のようで幻想的。"A Little Too Loose"の前ではEricがBillyと低音ボイスの張り合いをしていた。
最後はPaulだけアコギに持ち替えて"To Be With You"。全米No.1にもなった名曲バラード。この時、無性にここにPatがいないことに対する感傷におそわれた。ここで「Lean Into It」アルバムは終了となる。
次に4人がランウェイを通ってフロントの小さなステージに移動してくると、そこでアコースティックセットが始まった。「34年前に俺達が最初に集まって作ったのがこの曲だ」と"Big Love"でスタートする。
Nickはスネアとバスドラだけの簡易セットを立ったまま叩く。Blllyのベースはエレキのまま。続いて"The Chain"からはEricがアコギを持って歌う。しっとりした"Promise Her The Moon"、ノリ良い"Where Do I Fit In"と変化に富んだ演奏を楽しんだ。
元のステージに戻り、Paulはアコギのまま"Wild World"。そしてPaulだけステージに残り、エレキに持ち替えてギターソロが始まった。かなり長く超絶プレイを聴かせた後に、勢いよくアップテンポの"Colorado Bulldog"へと繋げる。
続いてBillyのベースソロ。高速ライトバンドや左手だけのハンマリングなど、あらゆる超絶プレイを披露し圧巻だった。この人はまたすぐ秋にWinery Dogでも来日予定だが、あのようなプログレッシブなバンドも彼にはやはり必要なのだろうと思った。
思い切りアップテンポの"Shy Boy"で駆け抜けた後、Eric「これでショーは終わりかな?まだ何か曲あったっけ?29と31の間の曲?」とわざとらしいMCから"30 Days In The Hole"。
ここで「ちょっとスイッチしようか」と言って、何と降りてきたNickがPaulのギターを受け取り、Paulはドラムセットに座った。そしてBillyがEricにベースを渡すと、ハンドマイクを持って歌い出したのは、The Olympicsのカヴァー。Billyは良い声をしているし、他のメンバーも普通に上手かった。
Billyが1人ステージに残ってMC。「34年間本当にありがとう。他のバンドが皆日本でのMR.BIGを羨ましがっていたよ」最初の結成時の話を紹介し、Ericを呼び込む。その後Paulと2人の子供、Nickと奥さんと、Billyの奥さん、とそれぞれメンバーの家族も一緒にステージに並ぶ。そして最後にPatの奥さんと息子が登場すると場内に驚きのどよめきが起こった。
家族達と皆で写真撮影した後に、ステージにはメンバー4人が残る。「もう1曲いいかな」と最後にThe Whoの"Baba O'Riley"で大団円。演奏後に4人が並んでお辞儀をし、彼らの最終公演のステージが終了した。
この日観て痛感したのは、本当に息の合った良いバンドだったなということ、そしてそんな彼らがこの日本でいかに愛されていたのかということだった。
さてこれが本当に最期となるのだろうか。Billyは「またどこかで何らか形で会おう」と言っていた。またインタビューでは新作を作るかもしれないような話まで出ていた。それが本当なら意外と近いうちに次があるのかもしれない。
01 Addicted to That Rush
02 Take Cover
03 Undertow
<Lean Into It>
04 Daddy, Brother, Lover, Little Boy
05 Alive and Kickin'
06 Green-Tinted Sixties Mind
07 CDFF-Lucky This Time
08 Voodoo Kiss
09 Never Say Never
10 Just Take My Heart
11 My Kinda Woman
12 A Little Too Loose
13 Road to Ruin
14 To Be With You
<Acoustic>
15 Big Love
16 The Chain
17 Promise Her The Moon
18 Where Do I Fit In?
19 Wild World
20 Guitar Solo
21 Colorado Bulldog
22 Bass Solo
23 Shy Boy
24 30 Days in the Hole
25 Good Lovin'
26 Baba O'Riley