World Music

Buena Vista Social Club 来日






今週いよいよBuena Vista Social Clubがキューバから来日します。これが最後のアディオスツアーということで非常に楽しみにしていました。

昨年アメリカはキューバと国交正常化交渉を進め始め話題になっていました。その一環で彼らがホワイトハウスに招かれ演奏していたのが報道されており、あぁまだ活動してるんだ観たいなぁ、と思っていた矢先の来日決定。

しかしチケット発売まで少し日にちがあるなと思っていたら、まさかの出遅れで完売。慌ててキューバ音楽コミュニテイの知り合いに聞いて回ってもチケット余っている人などいるはずもなく、オークションにも出て来ず。武蔵野市民文化会館なんていう小さい会場で1日のみの公演だから当然です。もう完全に諦めていたところに追加公演決定。感謝々々。

元々高齢のグループだったので、既に他界している人も多く、Compay SegundoやIbrehim Ferrer、Ruben Gonzalezなど主要メンバーはもう皆いません。またEliades Ochoaはまだ若いので健在なのですが、ちょうど同時期に本国でフェスティバルがあり、彼は自身の率いるグループでそちらに出演するらしく来日しません。でもOmara PortundoやGuajiro Mirabalなどまだ4人のオリジナルメンバーが残っています。名曲と名演を堪能したいと思います。

ちなみに昨年リリースされた未発表曲集「Lost and Found」も最高です。参戦予定で未聴の方は是非。 

 

Gipsy Kings Live Report 2015

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去る10月28日にGipsy Kingsの来日公演を観に行ってきた。14年振りの来日だが、私は今回初。前回の時は全く情報が入って来なかったので、気付いた時には後の祭だった。いや、そもそも情報を得るには普段からアンテナを張っていなければいけなかったのだ。そう後悔し続けた14年間だった。

東京3日間のうち最終日の赤坂Blitzで、この日のみスタンディング会場だった。彼らの音楽を座ってなんて聴いていられないと思ったので、私はこの日を選んでいたのだが、恐らく同じ理由の人も多かったのではないだろうか。会場に入り何とかステージ前2列目を確保できた。

時間直前からステージ左端でメンバーかローディーか分かんないおじさんがチューニングを始めて、少し時間を押して暗転。歓声の中まずはバックバンドが登場、右からキーボード、ベース、ドラム、パーカッションの4人で、音出しついでのインストを奏で始める。次にフロントに立つうちの若者達4人が登場し、ギターを掻き鳴らし音を重ねる。ファミリーネームがよく分からなかったのだが、Reyes家かBaliardo家の息子達なんだろうか。そこへ真打のToninoが黒いギターを持って登場。この人は太った。昔はあどけない顔をしてたのに、今ではどこからアゴでどこから首なのかよく分かんない位だ。だがそのプレイは変わらず素晴らしかった。

最後に大歓声の中Nicholasが登場し”A Ti A Ti”を歌い始める。こちらも腹はぷっくり出ているが、シルバーヘアに派手なTシャツ、貫禄のある風貌はどこか地中海のマフィアっぽい感じ。そして何よりのその歌唱力。ハスキーがかった歌声は昔から変わらない張りがある。陽気な”A Ti A Ti”では情熱的に、続くしっとりした”Quiero Saber"では哀愁を湛えて歌い上げる。

次は聴いたことのないインスト。ここの主役はTonino。私は目の前だったのでずっと彼の右手を観ていたが、例の爪先でのトレモロから、ネックまで広く弾いて、最後はパーンと手を払うように決めるその見事な動きに釘付けだった。彼はやっぱり私の最も好きなギタリストの1人である。丸いけど。

若者達もボーカルを取る曲もあった。”Atu Vera”ではNicholasが引っ込み右端にいたYohanが、”Ben Ben Maria”では左側にいたJoseが担当していた。また彼らは観客を煽ったり、ギターの弾き鳴らし合戦をしたり、フラメンコを踊ったりと、ステージを大いに盛り上げていた。当初CanutもPachaiもいないと知りショックだったが、実際にステージを見る限り、彼ら若者がグループに活気と刺激を与えていることが分かった。

フラメンコにおいてパルマ(手拍子)は重要な要素だが、実際にこのパルマのリズムを取るのは日本人には非常に難しい。メンバーが先導したり、私の前例にいた詳しそうな人が叩いてリズムに習ってやっていたが、複雑な上に曲によって全部違うリズムで、ライブに集中できなくなりそうなので途中で諦めた。いいのだ、ジプシールンバは愉しむことが前提なのだから…。

中盤の"Yo So A Quel"ではメンバーが皆引っ込み、NicholasがベースのPagaだけをバックにギターを弾きながらしっとりと歌った。Nicholasは左利きなのだが、逆手であのギターを弾いているのは傍目で非常に難しそうに見えた。またベースも非常に巧くて見物だった。できればここに以前のようなToninoのアコースティックソロも残しておいて欲しかった気もした。

個人的に最も嬉しかった曲は”La Dona”。会場の反応は薄かったが、個人的にはこの初期の名曲は聞き物だった。またCanutの名曲”La Montana”も聴けたのは嬉しかったが、逆にCanutがいない寂しさも感じた。

日本で人気の高い”Inspiration”で場内のボルテージは上がり、以降は”Samba Samba”に”La Quiero”と立て続けにノリの良い曲が並ぶ。そしてトドメは”Bamboleo”。ここでは何と「ひょっとこ連」と書いた着物を着た6人の女性方が阿波踊りをしながら踊り出てきた。”Inspiration”でジプシールンバが日本の時代物とマッチすることを証明していたわけだが、これは全く予想していなかったため驚きだった。マッチしていたかどうかは分からないが、面白い企画だと思った。ここで本編終了。

アンコールではバックバンドと若者組のみで再登場して、”Baila Me”からスタートした。その後Toninoが加わり最初期の”Pena Penita”を演ってくれた。ラストにNicholasも加わり締めは”Volare”。今回の来日のスポンサーにもなっているキリンのCMのお陰で、日本での一番の人気曲、場内も大合唱。終わった後にメンバー整列した際に、1人の観客が歌っていたのに合わせてNicholasが再度アカペラで”Volare”をサビだけ唄ってくれた。そして他のメンバーが下がった後もスペイン語でずっと語りかけてくれたのだが、よく分からず。ただ聞き取れた「Merci」や「Gracias」そして「We love Japon」だけでも意味は充分通じていたと思う。

他会場ではここでMy Wayのカヴァー”A Mi Manera”をアカペラで歌ってくれたという噂があったので、アリーナにいた人達は明るくなりアナウンスがあっても尚アンコールを求め続けていたが、結局この日はそれはなし。1曲多く演ってくれていたので時間がなくなってしまったのだろう。それでも充分満足だったし、本当に素晴らしいステージだった。

1. Intro
2. A Ti A Ti
3. Quiero Saber
4. Tucson
5. Atu Vera
6. Djobi Djoba
7. Bem Bem Maria
8. La Dona
9. Yo So A Quel
10.Fairies
11.La Montana
12.Inspiration
13.Samba Samba
14.La Quiero
15.Palmero
16.Bamboleo
encore
17.Baila Me
18.Pena Penita
19.Volare 

 

Gipsy Kings 「Allegria」 (1982)

Allegria
Gipsy Kings
Euro Parrot
1993-07-05


1. Pena Penita
2. Allegria
3. La Dona
4. Solituda
5. Sueno
6. Djobi, Djoba
7. Un Amor
8. Papa, No Pega La Mama
9. Pharaon
10.Tristessa
11.Recuerda

今週も間近に迫ったGipsy Kingsの来日公演。今日は彼らの最初期の作品を取り上げてみたいと思う。

彼らのメジャーデビューは1987年。デビューアルバム「Gipsy Kings」の楽曲が、まずフランスのパリコレクションで使われたことをきっかけに、各国のお洒落な人々の間で話題が広まった。やがてそれは他の民族音楽などとも相まって、世界中で未曾有のワールドミュージックブームとなっていく。日本でも”Bamboleo”や”Volare”がTVCMで、”Inspiration”がNHKドラマで使われ浸透した。

彼らのルーツは流浪の民ジプシーが辿り着いた南フランス。そこで名カンテ(歌)のReyes家と名ギタリストのBaliardo家の兄弟達が結成したのがGipsy Kingsとなる。彼らはインディーから1982年に「Allegria」、83年に「Luna De Fuego」と2枚のアルバムを出しているのだが、ここには後のメジャーデビュー後とは全く異なる魅力が溢れている。

彼らが世界的成功を収めたのは、勿論演奏や楽曲の素晴らしさもあるのだが、最大の要因はそのアレンジやプロデュースにあるとされている。元来フラメンコは最小限の楽器でストイックな音楽とされてきたが、Gipsy Kingsはそこにベースやパーカッション、キーボードなどを加え現代的なポップスとして提示したことにより注目を集めたわけだ。

しかしこの初期の記録で聴けるのは、ギターとカンテ(歌)とパルマ(手拍子)のみで、装飾は一切なし。また恐らく一発録りだったのだろう、曲間ではメンバー達のハレオ(掛け声)が飛び交い非常に臨場感がある。彼らの本来の姿が堪能できる。この時点ではまだCanutはいないが、NicholasとPachaiの情熱的なボーカルを聴かせ、Toninoの見事なギターソロに聴き惚れる。

このうち陽気なM6と哀愁溢れるM7は後のメジャーデビューアルバムに再録をされて彼らの代表曲となった。またインストの名曲M2とブリジットバルドーに捧げられたM3も、アレンジを変えて後のベストアルバムに再録されている。しかしどれもこの原曲の方が格段に味わい深いと思う。ここら辺をライブで演ってもらえると嬉しい。

★★★★★ 



ドス・ソネス・デ・コラソネス with Tomomita Live Report

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今週は他の文章を用意していたのだが、急遽差し替え。先の日曜日、ちょっとしたご縁があり、あるキューバ音楽の宴にお邪魔してきました。場所は町田のメキシコ料理店ラ・コロニータ。美味しい料理を頂いた後に出演されたのが、ドス・ソネス・デ・コラソネス with Tomomitaさんでした。

実は失礼ながら全く予備知識もなく行ってしまったのですが、ボーカルのMakotoさんとギターのMuchoさんはSON四郎という日本のキューバ音楽界を代表するグループのメンバーでもあり、毎年キューバ大使館の後援でキューバの国際音楽祭にも出演されており、エリアデス・オチョアやファミリア・バレラ・ミランダ等とも共演されているというスゴい方々でした。

この日の会場は割と小さめだったのもあり、私は最前列で演奏を堪能。Makotoさんは絶妙なトークを交えながらスペイン語で美しい歌声を聴かせてくれ、Muchoさんの扇情と繊細を自在に操る見事な指遣いには終始見惚れていました。

途中恐れ多いことに私にもクラーベスやマラカスを貸して下さったのだが、これが簡単そうに見えて実は凄く難しい。キューバ音楽のリズムは3-2や2-3という独特のもので、それを知った上で観ると、これを刻みながら歌っているMakotoさんやパーカッションのTomomitaさんがいかに凄いかを改めて実感した次第。

Buena Vistaでも演っていた”Chan Chan”や”Amor de Loca Juventud”や、有名な“グアンタナメラ”や”ベサメムーチョ”等も交えた贅沢なセットと名演に、場内はペアダンスなどで大盛り上がり。私も下手ながら女性方のお相手をさせて頂き、最後は皆でドンペリで乾杯。

MakotoさんとMuchoさんには色々なキューバのお話を聞かせて頂いたり、一緒に連れて行った娘のためにバースデイ祝いの曲を演奏頂いたり。お陰で本当に素晴らしい夜になりました。SON四郎とMakotoさんのCDも売って頂いたので、以来ずっとヘビロ中。素晴らしい音楽と出会いに感謝。


圧倒的なパフォーマンスに引き込まれます。Salud !

Buena Vista Social Club 「At Carnegie Hall」 (2008)





Disc 1
1. Chan Chan 
2. De Camino a la Vereda 
3. El Cuarto de Tula 
4. La Engañadora 
5. Buena Vista Social Club 
6. Dos Gardenias 
7. Quizás, Quizás 
8. Veinte Años 

Disc two
1. Orgullecida 
2. ¿Y Tú Qué Has Hecho? 
3. Siboney 
4. Mandinga 
5. Almendra 
6. El Carretero 
7. Candela 
8. Silencio

先日のハイチと同じカリブ海に浮かぶ美しい島キューバ。今年はこのキューバとアメリカの国交正常化交渉が話題になっており、先日遂にキューバのアメリカ大使館も再開したらしい。かつてのキューバ危機から続く冷戦時代の負の遺産を清算することができれば偉業である。

キューバには昔から固有の素晴らしい音楽がある。それを世界に紹介してくれたのが97年の「Buena Vista Social Club」だった。Ry Cooderが急遽集めたキューバの古参ミュージシャン達による至宝のような音楽は、後にWim Wenders監督の同名映画によって、ワールドミュージック史上空前の大ヒットとなった。

ここに参加していた面子はとにかく皆老練揃いだった。99年の映画が撮られた時点で、ボーカルのIbrahim Ferrerは72歳、ピアノのRuben Gonzalezは80歳、ギターのCompay Segundoに至っては何と92歳!そんな彼らが熟練の演奏を聴かせる。

今日取り上げたいのは、彼らが98年にニューヨークのカーネギーホールに出演した時の伝説のライブアルバム。これは2008年にようやくリリースされたものだが、何故10年もお蔵入りさせていたのか不思議な位素晴らしいものだった。ソンやグァヒーラ・ボレロなどの伝統音楽が、スタジオアルバム以上に生き生きとした演奏で繰り広げられる。特に女王Omaraの歌うM6の高揚感は感動的だし、M5で感極まって流す彼女の涙を拭うIbrahimの姿も思い出させる。愛すべき老演者達が強いお互いの絆から紡ぎ出す至宝のような音楽だ。

このように彼らがアメリカに入国することができたのは、当時比較的自由なクリントン政権だったからであった。しかし後のブッシュ政権になってからは両国間の往来は禁止され、このプロジェクトは頓挫を余儀無くされる。そしてそうしている間、悲しいことに2003〜2005年に主要メンバーが皆他界してしまうのである。

ちなみに今年の3月には未発表音源集「Lost & Found」がリリースされたが、これもまた素晴らしかった。毎年夏になると、こうした南国の音楽が心地良い。

★★★★★ 


Gipsy Kings 来日決定

gipsykings


Gipsy Kingsの来日が決定した。前回から14年振りだという。今まで見逃してきたので、この機会をずっと待っていた。

しかし喜び勇んでサイトを見た途端ビックリ。誰だ、この後ろに写ってる若僧たちは?Canutは?Pachaiはどこに行ったんだ?

ここ数年また追っていなかったのだが、どうやらその間にメンバー間でいさかいがあったらしく、NicholasとToninoを残して皆脱退してしまったようだ。「featuring Nicholas & Tonino」とあるが、ずっとメンバーだった人間をfeaturingっておかしいだろう。あぁ、どうしてあと数年早く来日してくれなかったのか。こんなことなら前回観ておきたかったと悔やまれた。

と、色々文句言いはしたが、無論チケットは確保済みだ。むしろ2人になっても存続してくれて、来日してくれることに感謝すべきなんだろう。メインボーカルとソロギタリストという中枢が残ってくれているわけなので、彼らのパフォーマンスを堪能したいと思う。

 

Wyclef Jean 「Carnival Featuring Refugee Allstars」 (1997)

THE CARNIVAL
ワイクリフ・ジーン
ソニーレコード
1997-07-16





1. Intro/Court/Clef/Intro (Skit/Interlude) 
2. Apocalypse
3. Guantanamera
4. Pablo Diablo (Interlude)
5. Bubblegoose
6. Prelude To 'All The Girls' (Interlude)
7. To All The Girls
8. Down Lo Ho (Interlude)
9. Anything Can Happen
10. Gone Till November
11. Words Of Wisdom (Interlude)
12. Year Of The Dragon
13. Sang Fezi
14. Fresh Interlude
15. Mona Lisa
16. Street Jeopardy
17. Killer M.C. (Interlude)
18. We Trying To Stay Alive
19. Gunpowder
20. Closing Arguments (Interlude/Skit)
21. Enter The Carnival (Interlude)
22. Jaspora
23. Yele
24. Carnival

1996年にFugeesというヒップホップユニットの2ndアルバム「The Score」が世界的に1700万枚という空前の成功を収めた。ここには元々映画「天使にラブソングを2」で子役として出演し注目を集めていたLauryn Hillがおり、後に彼女はソロとしても1200万枚という大成功を収めている。このユニットからもう1人有名になったのが、Wyclef Jeanであり、今日は彼のソロデビュー作を取り上げる。

ヒットしたM10を始め、無国籍な音楽性と流れるようなライムが印象的だったが、私が特に気になったのはハイチのクリオール語で歌っているM13、M22〜M24の4曲。彼は9歳の頃に家族とハイチからニューヨークへ移住しているが、ここではそうした移民や難民に対する差別や貧困問題が綴られている。後に彼は1枚丸ごとハイチ音楽のアルバムも出している。

ハイチはカリブ海に浮かぶ小さな島国。世界初の黒人による独立国であるが、世界最貧国の1つでもある。元はフランスの植民地であったため、フランス語を簡略化したクリオールが使われている。

2010年にハイチが震災に見舞われた際には、Wyclefは大規模な基金キャンペーンを主催した。また同年のハイチ大統領選にも立候補し話題になっていた。しかし震災の際には現地を見舞うこともなく、集まった基金を私的な費用に流用していたことが発覚した。そうしたこともあり、大統領選では支持が広まることはなかった。

またこのアルバムにはLaurynも参加しているが、最近出版されたWyclefの自伝によると、当時WyclefとLaurynは不倫関係にあったらしい。しかしその関係のもつれによって直後にFugeesは解散している。Laurynは浮気相手だったMarleyの子を出産後、ソロデビューしまたしても大成功を収める。ただ彼女も後年脱税などによって起訴されている。

後年は金にまみれてしまった感があるが、少なくとも彼らの音楽的才能や、当初音楽を通して訴えた難民問題や貧困問題には嘘はなかったはずである。

★★★


Arrested Development 「Zingalamaduni」 (1994)

Zingalamaduni
Arrested Development
Capitol
1994-06-06





1. WMFW (we must fight & win) Fm
2. United Minds
3. Achi'n For Acres
4. United Front
5. Africa's Inside Me
6. Pride
7. Shell
8. Mister Landlord
9. Warm Sentiments
10. The Drum
11. In The Sunshine
12. Kneelin' At My Altar
13. Fountain Of Youth
14. Ease My Mind
15. Praisin' U

先週の映画「Malcom X」に主題歌”Revolution”を提供していたのが、このArrested Developmentであり、映画とともに印象に残っている。

元々新聞に黒人問題を寄稿していたというSpeechを中心に南部アトランタにて結成。男女混成で、Baba O'Jayという老人までいる不思議なグループだった。92年にリリースされたデビュー作は700万枚売れグラミー賞も受賞、Hip Hopアルバムとしては驚異的な成功を収めた。巷に溢れるギャングスタラップを正面から否定し、黒人同士団結して社会問題に取り組もうとする姿勢が非常にセンセーショナルで、そうした中で「Malcom X」の主題歌を作ったのも自然な流れだった。

この2ndでは1stほどの成功には至らず地味な印象を持たれがちだが、個人的に好きな作品だ。特にM10〜M15の流れがハイライト。ポジティブなバイブと牧歌的な雰囲気、そしてSpeechの歌心のあるラップと生楽器(特にベース)が心地良い。そしてラストの名曲M15。Hip Hopの中で私がアルバム全体を通して好きな数少ないうちの1枚である。

この作品で特徴的なのはアフリカ回帰思想だった。スワヒリ語のタイトルやジャケット(別項でも紹介)、M5の歌詞も象徴的だし、M10ではアフリカンドラムも鳴り響く。全体的な印象として、これはヒップホップアルバムというよりも、現代的なアフリカ民族音楽というイメージが強い。この彼らにとってアフリカ回帰思想とは、自らのルーツの確認であるとともに、尊厳を取り戻し誇り高く生きることの意義を唱えたものだったのである。

Arrested Developmentはその後活動休止したが、Speechのソロ活動を挟みつつ、今でも断続的に活動を続けている。

★★★★


「Pulse - a Stomp Odyssey」 (2002)







1. Stomp House: Titles
2. Qwii Music Arts’ Trust Khoi San Music (ボツワナ)
3. Rooftop Stomp
4. Les Percussions de Guinee (ギニア)
5. Hip Hop & Tap
6. Moremogolo Tswana Traditional Dancers (ジーラスト、南アフリカ)
7. Native American Indian Dance Theatre (ニューヨーク、アメリカ)
8. 鼓童 (日本)
9. Bayeza Cultural Dancers (ヨハネスブルグ、南アフリカ)
10.Stomp Bicylces 1
11.The Winchester Cathedral Bellringers (ウィンチェスター、イギリス)
12.Eva Yerbabuena (グラナダ、スペイン)
13.Stomp Bicycles 2
14.Stomp Underwater
15.Shafatulla Khan (カルカッタ、インド)
16.Keralan Festival (ケララ、インド)
17.Brooklyn Bridge: Steppers v Surf (ニューヨーク、アメリカ)
18.Carlinhos Brown, Timbalada & Os Zarabe (サルヴァドール、ブラジル)
19.Beatbox
20.Pulse: Reprise
21.Stomp House: End Titles

ワールドミュージック特集の最後はこれ。
StompのSteveとLukeの2人が監督した音楽ドキュメンタリー「Pulse」。私は高校の教員だった頃には、異文化理解の授業で幾度となくこのDVDを使わせてもらったが、音楽を通じて世界を知るには最高の教材と言える。

ここには世界中のありとあらゆる民族音楽のリズムが集められてい
る。アメリカンインディアンの踊りや、ギニアのジャンベ、インドのタブラ、スペインのフラメンコ、アメリカのマーチングバンドなど素晴らしい音楽が続く。それぞれ各国のトップレベルの演奏家やダンサー達である。先々週取り上げたブラジルのTimbaladaもその内の1組だ。また和太鼓として日本の鼓童も登場するが、そもそもStompは彼らからインスピレーションを受けて結成されたという経緯がある。

こうした様々な民族音楽の間にStompの屋外パフォーマンスも
挿入されているが、身近な物でリズムや音楽を作り出すというStompの生い立ちは、こうした民族音楽と共通しているということにも気付く。

私の最もお気に入りはM6のMoremogelo Tswana Traditonal Dancers。南アフリカのジーラストとあるが、
実際彼らのツワナ村は国境沿いであり、彼らのルーツはその北のボツワナにある。少年少女達が足に打楽器を付けて踊るのも興味深々が、何よりも彼らの歌声が聴く者の心に響く。こんな素晴らしい音楽を生で体験するために、世界中を旅したいものだ。

ちなみにサントラも出ており、そちらにはStewart Copelandらのリミックスも収録されている。


 

Stomp 「Stomp Out Loud」 (1997)

Stomp Out Loud [DVD] [Import]
Michael Bove
2entertain
1999-10-15


1. Suspension 
2. The Truck 
3. Brooms 
4. Shack (1) 
5. Basketballs 
6. The Kitchen 
7. Waterphonics 
8. Tea Towels 
9. Shack (2) 
10. Buckets 
11. Poles 
12. Shack (3) 
13. Alley/Bins 
14. Encore 
15. Brooms

ブラジル特集は先週で終わりだが、今日は先週触れたStompについて少し紹介したいと思う。

Stompとはニューヨークを拠点に活動するパフォーマンス集団で、イギリス出身のLuke CresswellとSteve McNicholasの2人によって1991年に創設された。デッキブラシやバケツなど街中にあるガラクタを打ち鳴らすことで、圧倒的なリズムを作り出すパフォーマンスで、ブロードウェイをはじめ世界中で公演を行い絶賛された。

彼らの映像作品はいくつか出ている中で、これが最初のもの。上の2人が監督しエミー賞を受賞したHBOの「Stomp Out Loud」と、アカデミー賞にノミネートされたショートフィルム「Brooms」が収録されている。M3のデッキブラシ、M10の小バケツ、M11のポール、M13の大バケツあたりは彼らの普段のステージの演目として代表的なものだ。それぞれのガラクタでこんな多彩なリズムが生み出せるのかという驚きと、単にリズムを刻むだけでなく10人全員が息の合った動きで魅せるパフォーマンスに圧倒される。またM4のトランプ、M6のキッチン、M5のバスケットボール、M7の排水管など、ステージから離れ街中にも飛び出して、ストリートから生まれたこのパフォーマンスの身近な楽しさを魅せてくれる。

私は渡米中の1997年に初めて彼らのことを知り、2005年の来日公演で初めてそのステージを生で観た。メンバーは流動的なのだが、当時はちょうど日本人パフォーマーの宮本ヤコさんが在籍していて、その日本人離れしたリズム感に酔いしれた。同時に自分もあのステージに立って一緒にやれたらどんなに楽しいだろうと羨ましくもなった。


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