
この映画はひょっとしたら陽の目を見ることはないんじゃないかと思っていた。日頃音楽ニュースサイトを見ているのだが、この映画の製作はかなり前にスタートしていたにも関わらず、やれ監督がクビになったとか、主演が降板したとかいうニュースばかりだった。それがようやく公開されることになり、全米で大ヒット、日本でも絶賛されている。製作者の苦労も報われただろう。
サマソニ以降ライブの余韻が冷めやらぬ日々。ひたすら過去のアルバムを聴いて浸っている中で、また例によってトップ10ソングを考えてみた。かなり偏りがあるランキングになってしまったが。
① Orga Battle〜Funny How Love Is
② '39
③ Seven Seas Of Rhye
④ In The Lap Of The God Revisited
⑤ Long Away
⑥ My Fairy King
⑦ Father To Son
⑧ Teo Toriatte
⑨ Bohemian Rhapsody
⑩ Some Day One Day
① 「Queen Ⅱ」は私の中では生涯の3本指に入る名盤だが、その中でもFreddieのB面ブラックサイドを愛してやまない。これはThe Beatles「Abbey Road」B面のメドレーと同様に曲単位で切れるものではなく、極上の美意識と狂気がめくるめく展開される万華鏡のような世界。
② 数あるBrianの名曲の中でも最高峰。先日のサマソニでも聴きたかった。
③ この曲だけはブラックサイドの中で独立していると思っている。初期を代表する大名曲。
⑤⑩ Brianの曲はFreddieの曲に比べ展開が素直だが、ギターストロークの美しさが活かされた爽やかな曲が印象的。
⑥ 1stは未だにZep直系のハードロック的な評価をされているが、少なくともこの曲を聴けばその印象を改めてなければならないことが分かると思う。
⑧ 初来日の大歓迎ぶりに感動したBrianが感謝の想いで作曲した名曲。先日のライブで聴けたのは嬉しかった。
⑨ イギリス国民に最も愛されている名曲。これだけ複雑な曲がシングルヒットしたのも珍しい。
FreddieとBrianの曲がそれぞれ半分ずつの選曲になった。と言っても①をちゃんとカウントすれば断然Freddieの方が多いが。こうして並べてみると私の好みは完全に70年代の1st~5thの曲に偏っていることが良く分かる。もちろんそれ以降の80年代にも素晴らしい曲は沢山あるのだが、やはり私にとってのQueenは彼らの髪がまだ長く中性的な美学を追求していた初期。もうすぐリリースされる「Live at the Rainbow ‘74」も楽しみにしている。
最後は今回目当てのQueenを見るために再度Marine Stageへ。今度はアリーナもスタンドも完全に埋まっていた。じっくり観たかったので1階スタンド席に座るが、周りはあまりQueenのことを良く知らないような若い女の子達ばかりだった。
19:40頃、ステージに下からトレードマークをあしらった暗幕が上がってきてステージを隠した。イントロの”Procession”が流れてきて大歓声が上がる。そして”Now I'm Here”が始まり、Adam Lambertの”I'm justa !”で幕が落ちるとメンバーがそこに並んでいた。グラサンをかけたAdam、髪が白くなったが髪型は昔のままのBrian May、Roger Taylorもグラサンをかけてドラムセットにいる。バックにあるスクリーンは巨大なQの形をあしらっていた。その後怒涛の勢いの”Stone Cold Crazy”へ。この流れはこの秋にリリースされる74年の「Live At Rainbow」と同じだ。
”Another One Bites And Dust”と”Fat Bottomed
Girls”の中期の曲が続く。グラサンを外したAdamは非常に女性受けしそうな色男だったが、見た目だけでなく歌唱力も抜群。力強く高音も伸び、危惧していたようなQueenのボーカルとしての違和感はあまり感じなかった。Brianもレッドスペシャルで力強いリフとソロを聴かせる。Rogerのドラムもタイトだ。
この後また初期の曲を続けて演ってくれた。”In The Lap Of The Gods …Revisited”で合唱し、”Seven Seas Of Rhye”、そしてメドレー形式で”Killer Queen”へ。ここも「Rainbow」の再現であり、個人的に最初のクライマックスだった。Adamはステージに置かれたソファーに横たわって金の扇子を扇ぎながらかつてのFreddieをそのまま演じてくれた。
メンバーが全員下がりBrianが1人ステージに残る。アコギを手にして座るとMC。「日本に初めて来たのは1974年だった。その時の素晴らしい日本のファンのためにこの曲を書いたんだ。一緒に歌ってくれたら嬉しいな」と言って歌い始めたのは”Teo Toriatte”。これは予想外だったが、日本のためだけの選曲だろう。続いて「Freddieのために歌おうか」と”Love Of My Life”。途中でスクリーンにFreddieが写し出され、そのままFreddieの歌声がBrianのギターに合わさったのは感動的だった。ただこの後にあるはずだった”39”がカットされたのは痛かったが。
続いてマイクを握ったのはRoger。前に出てきて”These Are The Days Of My Lives”。バックにはかつてのメンバー達の映像が流れる。”Under
Pressure”はドラムセットに戻ったRogerとAdamがデュエットした。
その後Adamが歌ったのは”Born To Love You”。これも日本のための選曲だ。あまりQueenのことを良く知らなかった周囲の若い女の子達もこれには大喜びしていた。ここからはもう有名曲が並ぶ。”Radio Ga Ga”、”Crazy Little Thing Called Love”、そしてトドメは”Bohemian Rhapsody”。若い子も含めスタンドも総立ちに。
コール後メンバーが戻ってくる。Adamは上下キラキラの衣装に頭には女王のような冠を被っている。曲は”We Will
Rock You”、そして”We Are The Champions”へ。見渡す限り場内手を上げて大合唱。最後はメンバー並んで挨拶をし、バックには”God Save The Queen”が流れる。スタジアムの後方では大きな打ち上げ花火が上がり、涼しい夏の夜を鮮やかに彩っていた。
さて今回観る前からずっと思っていたのは、前回のPaul Rodgersとのライブと果たしてどちらが良かっただろうかということ。Paulはキャリアもあるため、あえてFreddieのことは意識せず、自分らしく歌ったことで成功した。しかし今回のAdamはPaulのようにキャリアがあるわけではなかったが、一方で若さがあった。そうした状況の中で彼らが選択したのが初期の再現だった。後期のマッチョイズムとは違い、初期の中性的な美を再現するのは、当時のFreddieと同じ様に若いAdamだからこそ実現できることだった。当初は風格が足りないのではと懸念されたが、場数を踏むにつれ非常に堂々としてきた。私もQueenを観に行ったわけだが、結果的に公演中はずっとAdamを目で追っていたのだ。
Adamは今回のツアー中に右腕に大きなQueenのロゴのタトゥーを入れていた。またステージ上では堂々としているが、どこでも他の2人を常に立てようとしていた。そんな彼のQueenに対する愛情と謙虚さも彼のことを好きになった理由でもある。今回AdamはPaulとのツアーとは完全に差別化を図ることに成功した。そして初期を愛する私にとっては、Adamのツアーこそが観たかったものだったと言える。もし改めて単独来日があるならば、今度は「Queen Ⅱ」の完全再現とか演ってくれたら最高だ。
1.
Now I'm Here
2.
Stone Cold Crazy
3.
Another One Bites The Dust
4.
Fat Bottomed Girls
5.
In The Lap Of The God... Revisited
6.
Seven Seas Of Rhye
7.
Killer Queen
8.
I Want It All
9.
Teo Torriatte
10.Love
Of My Life
11.These
Are The Days Of Our Lives
12.Under
Pressure
13.I
Was Born To Love You
14.Radio
Ga Ga
15.Crazy
Little Thing Called Love
16.Bohemian
Rhapsody
enc
17.We
Will Rock You
18.We
Are The Champions
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