Ozzy Osbourne

映画「ランディ・ローズ」

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あれは確か高校2年の夏だったと思う。「ランディ・ローズのビデオを買わねーか?」とギター弾きの悪友が持ち掛けてきた。当時はネットもYouTubeもない時代。雑誌で写真を見たことしかないギターヒーローの動く姿を見られるとあって、5000円と高額だったにも関わらず私はその話に乗ってしまった。しかし映っていたのは画質の悪いオーディエンスショットの酷い映像で、後で文句を言ったものだった。

今回そんなランディのドキュメンタリー映画が制作されたということで期待をして観に行った。日曜の横浜キノシネマは私のようなかつてのロックキッズで一杯だった。

まずは私もあまり知らなかった彼のQuiet Riot時代が長い時間を取って紹介されていた。ランディの母親や兄、ケヴィン・ダブロウ、ルディ・サーゾ等多くの関係者・バンドメンバー達のインタビュー、そして見たこともなかったランディの貴重な写真や映像の数々に見入った。

実は彼の伝記本も出版されていたことは知っていたが未読だったため、彼については知らなかったことが多かった。Quiet Riotの創設者であること、ケヴィンの元彼女と付き合っていたこと、ベースのケリーを解雇する際に掴み合いの大喧嘩をしたこと、デビュー前のエディヴァンヘイレンと張り合っていたこと、等々。女性のような綺麗な顔つきで、ステージ以外は大人しいというイメージとは異なる、彼の男らしい一面を知った。

一方で、Ozzy Osbourne Band時代は期待外れだった。飛行機事故の様子が見られたのは良かったが、オジーのインタビューは古いものばかり。何よりもオジーの楽曲を一切聴くことが出来なかった。"Crazy Train"のリフの話をしているバックに流れ出したのが、全く聞いたこともない無関係の曲だったのには思わず失笑してしまった。オジー側(というかシャロン)の協力を得られなかったらしいが、要するに使用料が高額だったのだろう。唯一のライブ映像が、先の私が悪友から買ったオーディエンスショットだったのは悲しかった。

Quiet Riot時代のライブ映像だけはたっぶりと収録されており、彼のステージでの見事なプレイを拝むことが出来た。その中で派手なソロの最後に彼がエレキであの"Dee"をしっとりと弾いていた。Ozzy Band時代も毎日クラシックを練習していたことは証言されていたが、この曲がそんな前から温められていたことに独り感動していた。


「God Bless Ozzy Osbourne (オジー降臨)」

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Ozzy Osbourne

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本年最後の週もまたOzzyネタで行かせて頂く。映画「オジー降臨」が公開されたからだ。師走は結果的にOzzy特集となってしまった。

この映画はOzzyの息子Jack Osbourneが製作企画をした作品である。当初家族ドキュメンタリー的な作品かと思っていたが、それだけではなく生い立ちからOzzyのキャリア全てを追った伝記映像となっていたため見応えがあった。ちょうど以前出版された自伝本を映像化したもの、または先日発売されたボックスセット付属DVDドキュメンタリーの拡大版という感じだ。

昔の映像はあまりないため静止画が中心にはなってしまうが、本人や家族、Sabbathのメンバー、Paul McCartneyに至るまで多くの関係者のインタビューから当時の様子が克明に証言されている。Sabbathの4人が身につけていた十字架がOzzyの父親が作ったものだったというのは初めて知った。またRandy他界についてのくだりでは、Rudy Sarzoのインタビューに泣けた。死の直後に一人になりたくて入った教会で悲しみに暮れていた時に、背後から聞こえてきた自分よりもさらに大きな嘆き声に、振り返るとOzzyだったという。

後半は彼の飲酒の悪習と、禁酒との闘いがつづられる。今思えば結局彼のクレイジーなキャラクターの多くの部分はアルコールやドラッグから来ていたのだろう。そしてその悪習は彼自身の先天的な劣等感と積み重なった喪失感が要因だったのだと思われる。結果的に禁酒に成功し、家族からの称賛を得たと同時に、初めて自分自身を認めることができたのは大きな成果だったと言える。一方でインタビューでろれつが回っていない様子や手の震えなど今なお残る後遺症を見ると、その代償は大きかったと思わざるをえない。

あと印象に残ったのが最後。楽屋のドアを閉じ鍵までして、ひとりうずくまってゴソゴソと何かやっていたシーン。まさか最後にこっそり酒でも出して飲んでいるんじゃないよな、そんなことをしたら全てパーだぞと思っていたら、実は神棚に向かってひざまずいて祈りを捧げていた。それを見て感慨深く思ったと同時に、疑ったことを申し訳なく思ってしまった。




ちなみにこの映画のプレ試写会が公開前に開催され、そこでBlack SabbathのトリビュートバンドBloody Sabbathのライブもあり楽しませてもらった。来年このOzzyの元気な姿とともに、Black Sabbathが来日してくれることを願っている。


Randy Rhoads "Dee"

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私がギターを初めて弾き始めたのは、今から20年以上前、中学3年の頃だった。親父が持っていたクラシックギターの弦を、アコースティックギターの弦に張り替えて練習を始めた。既に結構な腕前だった友人に習って、音階を覚え、指の痛みと戦いながらコードを覚えていった。その後、友人からいくつかスコアを借りて、知っている曲を弾いてみることにした。その中の1曲が、Randy Rhoadsの"Dee"だった。

はっきり言ってこの曲は、ギターを覚えたばかりの少年にとっては、死にそうになるほどに難しかった。早いスピードのコードチェンジ、アルペジオ、ハンマリングとプリング、ハーモニクス、等々。いきなり高度なテクニックの連続に、速攻で挫折しかけた。結局まぁこんなもんかなと、ある程度納得できるレベルに弾けるようになるまでは、かなりの時間を要したのだった。

この後、高校に上がり、新しい友人から譲り受けて、エレキギターやアンプ、エフェクターを揃えたりした。しかし大して上達もせずバンドを組むまでも至らないまま、高校卒業までにはエレキはもう既に別の友人に売り払ってしまっていた。しかしクラシックギターだけはいつまでも私の手元に残り、気が向いた時に手を伸ばすと、苦労して覚えた"Dee"を奏でては悦に入っていたものだった。

この曲は私にとってそんな思い出深い1曲である。初めて聴いた時以来、聴く度、弾く度に感じることだが、本当に美しいクラシックギターの名曲である。まるで美術工芸品のような小曲だ。Randy Rhoadsはワイルドかつテクニカルなプレイで、後世の多くのギタリストに影響を与えたわけだが、同時に繊細でメロディアスな面も持っていた。その背景にあるのは、彼のクラシックのバックグラウンドなのである。

Ozzy Osbourneの自伝の中に、Randyとの思い出が綴られていた。そこにはRandyが事故の前日にOzzyのところへ来てバンドを辞めたいと打ち明けたというくだりがあった。ロックヒーローにはなりたくない、バンドを辞めてクラシックの道へ進みたいと進言したらしいのだ。そしてその翌日、飛行機事故によってRandyは帰らぬ人となってしまった。

結果的に死して彼はロックギターのヒーローとして永遠に名を刻むこととなった。それは彼が望んだものではなかったのなら、皮肉なものである。では彼は生きていたら、どうなっていたのだろう。惜しまれつつもバンドを辞めて、クラシックアルバムを作っていたとしたら、きっとこの"Dee"のような素晴らしい曲をもっと聴くことができたのかもしれない。恐らくそれは世のロックファンが期待したものとは全くかけ離れたものであっただろう。ひょっとしたら今あるこの彼の名声にすら影響を与えていただろうか。それでも私は聴いてみたかったと願ってやまない。この小曲の続きを。


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Disc 4 (DVD) Thirty Years After The Blizzard
ADDITIONAL CONTENT:
MTV Interview 1981
THE PALLADIUM - 5/2/81
1. I Don't KNow
2. Crazy Train
3. Believer
4. Mr. Crowley
5. Flying High Again
6. Revelation Mother Earth
7. Steal Away The Night
8. No Bone Movies
9. Suicide Solution
10.Iron Man
11.Paranoid
AFTER HOURS - 5/8/81
1. I Don't Know
2. Suicide Solution
3. Ozzy interview
4. Mr. Crowley
5. Crazy Train
MTV NEWS 1982
ALBUQUERQUE, NEW MEXICO NEWS 1982
ALBUQUERQUE, NEW MEXICO - 1/7/82
1. Over the Mountain
2. Mr. Crowley

今年の5月に30周年を記念して輸入盤のみで発売されていたボックスセットは、欲しかったがあまりにも高くて手が出せなかった。しかし国内盤ボックスセットがその廉価版としてようやくリリースされた。

目当てはとにもかくにもDVD、動くRandy Rhoadsの姿が見たかったのである。今でこそYou Tubeがあり便利な世の中になったが、昔はRandyの映像なんて全く拝むことが出来なかった。思い出すのは私が高校生の頃、メタル悪友に「Randyのビデオを¥5000で売ってやるよ」とそそのかされ、買ってみたら酷いオーディエンスショットで暗すぎてほとんど姿も見えないという代物だった。

今回のDVDには当時のライブが何本か収められいる。まずはこれまで頻繁にブート化されてきたAfter Hours。何度も見たものではあるが、こうしてきちんとオフィシャル化されたのは嬉しい。スタジオライブではあるが、やはりこれが一番綺麗で見応えがある。しかし逆に言うとこれ以外はあまり良いライブ映像はなかった。

81年のPalladiumは、完全に客席からのオーディエンスショット。画質も音質も非常に悪く終始手ブレしているのでとても見辛い。たまにズームアップしても画角がずれて一体何が撮りたいのかも分からない。そして毎曲途中でホワイトアウトし次の曲へ行ってしまうといった具合だ。

もう1本は82年のAlbuquerqueから2曲のみ。こちらは向かってステージ左袖からのショット。近いため画質はまだ多少マシで手ブレもあまりないのは救い。81年のツアーに比べるとステージに巨大な神殿を組んだりして大掛かりになっているのが分かる。ただ左側から撮っているためRudyとOzzyは良く映っているのだが、肝心のRandyがOzzyの陰に隠れてあまり見えない。これが右側からの映像だったらどんなに良かったことか。

むしろ興味深かったのはドキュメンタリー映像の方だ。Ozzy、Sharon、Zack Wilde、Steve Vai、Nicky Sixxら多くの関係者のインタビューや、スタジオでのレコーディングトラックから、Randyがどれだけ非凡なギタリストだったかという証言が聞ける。最後に"Dee"を弾くZackと、同じく"Dee"のレコーディングトラックに耳を傾けるOzzyの姿に目頭が熱くなった。

最後になってしまったが、1stと2ndがオリジナル音源でリマスターになったのも嬉しい。この2枚は青春の想い出であると同時に、永遠の名盤である。また未発表ライブ音源も聞き物だ。もう少し「Tribute」とは違ったセットリストが聴けたら尚良かったが。あと意外と"Goodbye To Romance (2010 Guitar & Vocal Mix)"が浸れて良かった。

思い入れがある分色々書いてしまったが、こうしたRandyの功績に触れることができる品が出ただけ、本当はありがたいことなのだ。今後これ以上の何かが発掘されることを期待したい。



オジー・オズボーン 「アイ・アム・オジー」

アイ・アム・オジー オジー・オズボーン自伝アイ・アム・オジー オジー・オズボーン自伝
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 今年は新作も発表しラウドパークにも来日と、ソロデビュー30周年を迎え国内でも話題のOzzy Osbourneだが、昨年本国で出版されベストセラーになった自伝書の訳本もようやく出た。私は彼のことはBlack Sabbath時代からソロの「No More Tears」あたりまでしか知らないが、特にSabbath時代を読めることを楽しみにしていた。毎度のことだが、以下に内容に関することを多々書いているので、これから本書を読む予定の方は見ないで下さい。

  これまで多くのミュージシャンの伝記を読んできたが、大抵少年時代にギターの練習に没頭し努力の先に成功を夢見たというものがほとんどである。しかしこの人の若い頃は本当にどうしようもない。労働者階級の貧困家庭に生まれ育ち、読み書きが出来ないため学校でも落ちこぼれ、仕事も長く続かず、挙げ句の果てにはつまらない窃盗の罪で刑務所に入れられてしまう。出所した後に新しいことを始めるために、経験豊かなフロントマンという嘘の広告を楽器屋に出したところから、ようやく彼の人生は動き始めるわけだ。

 むしろ凄いのはTony Iommiだ。元々彼は巧いギタリストだったが、工場の機械に指を切断されてしまう。にもかかわらず、義指でそれまで以上に弾けるまでに乗り越えたという。またその腕前を買われJethro Tullに引き抜かれるものの、あくまでもSabbathでの成功に拘り、3日でバンドに戻ってきたという。この事実はこれまで知らなかった。

  デビュー後バンドは突如降ってわいた大成功にそれまでの生活は贅沢三昧に一変する。それに伴い、アルコールやコカインなどのドラッグに溺れることになる。また黒魔術信者であるとの誤解から様々なトラブルにも遭ったようだ。

 Sabbath時代の酷い日々と比べると、ソロでスタート直後の彼は全く別人のようだ。それは一重にRandy RhoadsとSharonの存在によるところが大きかったと思われる。ここら辺の時期は、以前Rudy Sarzoの伝記本もあったが、それとも重なっており、読み比べると興味深い。そしてもちろんRandyの飛行機事故についても触れられている。

 その後もアルコールやドラッグへの依存症は続き様々な問題を引き起こすことになるが、それは彼のLDによる劣等感や、ADHDによる自己制御不能、精神不安や脅迫概念など、先天的に彼が持っている性質によるところが大きかったことも分かる。しかしそんな彼が八方塞がりの少年時代から、最終的には「The Osbournes」という番組出演により世界的な人気者となり、イギリス女王やアメリカ大統領に接見するまでになるのだから、ドラマティックな人生である。


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