Gipsy Kings

Gipsy Kings Live Report 2015

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去る10月28日にGipsy Kingsの来日公演を観に行ってきた。14年振りの来日だが、私は今回初。前回の時は全く情報が入って来なかったので、気付いた時には後の祭だった。いや、そもそも情報を得るには普段からアンテナを張っていなければいけなかったのだ。そう後悔し続けた14年間だった。

東京3日間のうち最終日の赤坂Blitzで、この日のみスタンディング会場だった。彼らの音楽を座ってなんて聴いていられないと思ったので、私はこの日を選んでいたのだが、恐らく同じ理由の人も多かったのではないだろうか。会場に入り何とかステージ前2列目を確保できた。

時間直前からステージ左端でメンバーかローディーか分かんないおじさんがチューニングを始めて、少し時間を押して暗転。歓声の中まずはバックバンドが登場、右からキーボード、ベース、ドラム、パーカッションの4人で、音出しついでのインストを奏で始める。次にフロントに立つうちの若者達4人が登場し、ギターを掻き鳴らし音を重ねる。ファミリーネームがよく分からなかったのだが、Reyes家かBaliardo家の息子達なんだろうか。そこへ真打のToninoが黒いギターを持って登場。この人は太った。昔はあどけない顔をしてたのに、今ではどこからアゴでどこから首なのかよく分かんない位だ。だがそのプレイは変わらず素晴らしかった。

最後に大歓声の中Nicholasが登場し”A Ti A Ti”を歌い始める。こちらも腹はぷっくり出ているが、シルバーヘアに派手なTシャツ、貫禄のある風貌はどこか地中海のマフィアっぽい感じ。そして何よりのその歌唱力。ハスキーがかった歌声は昔から変わらない張りがある。陽気な”A Ti A Ti”では情熱的に、続くしっとりした”Quiero Saber"では哀愁を湛えて歌い上げる。

次は聴いたことのないインスト。ここの主役はTonino。私は目の前だったのでずっと彼の右手を観ていたが、例の爪先でのトレモロから、ネックまで広く弾いて、最後はパーンと手を払うように決めるその見事な動きに釘付けだった。彼はやっぱり私の最も好きなギタリストの1人である。丸いけど。

若者達もボーカルを取る曲もあった。”Atu Vera”ではNicholasが引っ込み右端にいたYohanが、”Ben Ben Maria”では左側にいたJoseが担当していた。また彼らは観客を煽ったり、ギターの弾き鳴らし合戦をしたり、フラメンコを踊ったりと、ステージを大いに盛り上げていた。当初CanutもPachaiもいないと知りショックだったが、実際にステージを見る限り、彼ら若者がグループに活気と刺激を与えていることが分かった。

フラメンコにおいてパルマ(手拍子)は重要な要素だが、実際にこのパルマのリズムを取るのは日本人には非常に難しい。メンバーが先導したり、私の前例にいた詳しそうな人が叩いてリズムに習ってやっていたが、複雑な上に曲によって全部違うリズムで、ライブに集中できなくなりそうなので途中で諦めた。いいのだ、ジプシールンバは愉しむことが前提なのだから…。

中盤の"Yo So A Quel"ではメンバーが皆引っ込み、NicholasがベースのPagaだけをバックにギターを弾きながらしっとりと歌った。Nicholasは左利きなのだが、逆手であのギターを弾いているのは傍目で非常に難しそうに見えた。またベースも非常に巧くて見物だった。できればここに以前のようなToninoのアコースティックソロも残しておいて欲しかった気もした。

個人的に最も嬉しかった曲は”La Dona”。会場の反応は薄かったが、個人的にはこの初期の名曲は聞き物だった。またCanutの名曲”La Montana”も聴けたのは嬉しかったが、逆にCanutがいない寂しさも感じた。

日本で人気の高い”Inspiration”で場内のボルテージは上がり、以降は”Samba Samba”に”La Quiero”と立て続けにノリの良い曲が並ぶ。そしてトドメは”Bamboleo”。ここでは何と「ひょっとこ連」と書いた着物を着た6人の女性方が阿波踊りをしながら踊り出てきた。”Inspiration”でジプシールンバが日本の時代物とマッチすることを証明していたわけだが、これは全く予想していなかったため驚きだった。マッチしていたかどうかは分からないが、面白い企画だと思った。ここで本編終了。

アンコールではバックバンドと若者組のみで再登場して、”Baila Me”からスタートした。その後Toninoが加わり最初期の”Pena Penita”を演ってくれた。ラストにNicholasも加わり締めは”Volare”。今回の来日のスポンサーにもなっているキリンのCMのお陰で、日本での一番の人気曲、場内も大合唱。終わった後にメンバー整列した際に、1人の観客が歌っていたのに合わせてNicholasが再度アカペラで”Volare”をサビだけ唄ってくれた。そして他のメンバーが下がった後もスペイン語でずっと語りかけてくれたのだが、よく分からず。ただ聞き取れた「Merci」や「Gracias」そして「We love Japon」だけでも意味は充分通じていたと思う。

他会場ではここでMy Wayのカヴァー”A Mi Manera”をアカペラで歌ってくれたという噂があったので、アリーナにいた人達は明るくなりアナウンスがあっても尚アンコールを求め続けていたが、結局この日はそれはなし。1曲多く演ってくれていたので時間がなくなってしまったのだろう。それでも充分満足だったし、本当に素晴らしいステージだった。

1. Intro
2. A Ti A Ti
3. Quiero Saber
4. Tucson
5. Atu Vera
6. Djobi Djoba
7. Bem Bem Maria
8. La Dona
9. Yo So A Quel
10.Fairies
11.La Montana
12.Inspiration
13.Samba Samba
14.La Quiero
15.Palmero
16.Bamboleo
encore
17.Baila Me
18.Pena Penita
19.Volare 

 

Gipsy Kings 「Allegria」 (1982)

Allegria
Gipsy Kings
Euro Parrot
1993-07-05


1. Pena Penita
2. Allegria
3. La Dona
4. Solituda
5. Sueno
6. Djobi, Djoba
7. Un Amor
8. Papa, No Pega La Mama
9. Pharaon
10.Tristessa
11.Recuerda

今週も間近に迫ったGipsy Kingsの来日公演。今日は彼らの最初期の作品を取り上げてみたいと思う。

彼らのメジャーデビューは1987年。デビューアルバム「Gipsy Kings」の楽曲が、まずフランスのパリコレクションで使われたことをきっかけに、各国のお洒落な人々の間で話題が広まった。やがてそれは他の民族音楽などとも相まって、世界中で未曾有のワールドミュージックブームとなっていく。日本でも”Bamboleo”や”Volare”がTVCMで、”Inspiration”がNHKドラマで使われ浸透した。

彼らのルーツは流浪の民ジプシーが辿り着いた南フランス。そこで名カンテ(歌)のReyes家と名ギタリストのBaliardo家の兄弟達が結成したのがGipsy Kingsとなる。彼らはインディーから1982年に「Allegria」、83年に「Luna De Fuego」と2枚のアルバムを出しているのだが、ここには後のメジャーデビュー後とは全く異なる魅力が溢れている。

彼らが世界的成功を収めたのは、勿論演奏や楽曲の素晴らしさもあるのだが、最大の要因はそのアレンジやプロデュースにあるとされている。元来フラメンコは最小限の楽器でストイックな音楽とされてきたが、Gipsy Kingsはそこにベースやパーカッション、キーボードなどを加え現代的なポップスとして提示したことにより注目を集めたわけだ。

しかしこの初期の記録で聴けるのは、ギターとカンテ(歌)とパルマ(手拍子)のみで、装飾は一切なし。また恐らく一発録りだったのだろう、曲間ではメンバー達のハレオ(掛け声)が飛び交い非常に臨場感がある。彼らの本来の姿が堪能できる。この時点ではまだCanutはいないが、NicholasとPachaiの情熱的なボーカルを聴かせ、Toninoの見事なギターソロに聴き惚れる。

このうち陽気なM6と哀愁溢れるM7は後のメジャーデビューアルバムに再録をされて彼らの代表曲となった。またインストの名曲M2とブリジットバルドーに捧げられたM3も、アレンジを変えて後のベストアルバムに再録されている。しかしどれもこの原曲の方が格段に味わい深いと思う。ここら辺をライブで演ってもらえると嬉しい。

★★★★★ 



Gipsy Kings 来日決定

gipsykings


Gipsy Kingsの来日が決定した。前回から14年振りだという。今まで見逃してきたので、この機会をずっと待っていた。

しかし喜び勇んでサイトを見た途端ビックリ。誰だ、この後ろに写ってる若僧たちは?Canutは?Pachaiはどこに行ったんだ?

ここ数年また追っていなかったのだが、どうやらその間にメンバー間でいさかいがあったらしく、NicholasとToninoを残して皆脱退してしまったようだ。「featuring Nicholas & Tonino」とあるが、ずっとメンバーだった人間をfeaturingっておかしいだろう。あぁ、どうしてあと数年早く来日してくれなかったのか。こんなことなら前回観ておきたかったと悔やまれた。

と、色々文句言いはしたが、無論チケットは確保済みだ。むしろ2人になっても存続してくれて、来日してくれることに感謝すべきなんだろう。メインボーカルとソロギタリストという中枢が残ってくれているわけなので、彼らのパフォーマンスを堪能したいと思う。

 

Chico & The Gypsies Live Report



 先日Chico & The Gypsiesの公演を見に行ってきた。会場となったBlue Note東京はその名の通りNYにある由緒正しいジャズクラブの国内店舗。先日Matthew Sweet & Susanna Hoffsを見に行ったBillboard Liveと同じような小さなステージをテーブルが囲むようなスタイルは似ているが、受付をすると一人一人テーブルまでエスコートがつくあたり、少しこちらの方が格調が高い感じか。

 今回の彼らの来日は4日間に1日2回ずつここで公演する予定だが、今日はその初日の1stステージとなる。18:00ちょうどに暗転し拍手の中メンバーが登場。横一列に7人の男達がフラメンコギターを持って並んだ。左からBabato、Joseph、Mounin、Kema、Manolo、Chico、Tane、そしてその後ろには右手にベース、左手にパーカッション。私はちょうどChicoの前から3つ目のテーブルだ。



 オープニングはインストの“Liberte”から。中央に白いギターを持ったKemaが座り、他は3人ずつ両サイドに立ってリズムを刻む。ソロのKemaは新加入だが、Manitas De Plataという巨匠の孫らしく、噂に違わぬ名手ぶりであった。私も以前ある知り合いにフラメンコギターの弾き方を少し教わったことがあるが、1弦に親指を置きながら他の指で爪弾く例の奏法で、絶品の指さばきを披露してくれていた。また他の6人のリズムギターも、それぞれ違うコードを弾きながらも、右手は全員一糸乱れず刻んでいる様子に見とれてしまった。

 2曲目は“Baila Me”。陽気なこの曲を小太りで愛嬌のあるManoloがカンテ(ボーカル)を取り盛り上がった。3曲目では今度はBabatoがカンテを取った。当初カンテは常にManoloがメインだと思っていたが、どうやら曲毎に交代するようだ。サビまで聴いてEaglesの“Hotel California”だと分かった。この曲を演るのは珍しい。インストを挟み、5曲目はJoseph、6曲目はMouninがカンテを取った。Josephは拳を入れて歌い上げるタイプで、Mouninは観客とからむのが好きなタイプ。それぞれ個性があるが、皆なかなか上手い。こんなに皆が歌えるグループだったとは知らなかった。

 一方リーダーのChicoは、特にボーカルもソロも取るわけでもないため、実際あまり目立たない。みんなが黒いシャツを着て木目調のギターを持っている中で、1人だけ白シャツと黒いギターを持っているくらいか。ただ曲が終わるたびにそれぞれのメンバーの紹介はしていた。演奏中はあくまでも他のメンバーと一緒にひたすらリズムギターに徹している、縁の下の力持ち的な存在であった。

 また彼らはさすがライブで慣らしてきただけあって客の煽り方が上手い。Chicoの誘いによって、途中から会場内はオールスタンディングとなり、“Todos Todos”ではMouninが観客に「Ole!」の掛け声をかけるように煽り、最高も盛り上がりを見せた。しかし気になったのは観客の手拍子。みんなでリズムに合わせて手を叩くのは楽しいのだが、やはり日本人の手拍子は4拍子になってしまうのである。一方フラメンコのパルマ(手拍子)は8拍子でかなり速く打たなければいけない。(実際はこれだけではなく、もっと複雑なリズムもからんでくるのだが。) 曲によっては、ここぞという時に、ChicoとTaneが8拍子のパルマを先導して一時的に観客もスピードアップする場面もあったが、やはりその後息切れしてしまっていたようだった。

続いて“Inspiration”のイントロが奏でられ歓声が上がった。日本ではNHKの鬼平犯科帳のエンディングテーマ曲に使われたことで非常に人気の高い曲。個人的には鬼平を観ていなかったため、あまり思い入れはないのだが、これも哀愁に満ちた非常に美しい一曲だった。

 本編ラストは“Bamboleo”、GKの代名詞的な名曲に喜んでいたところ、1番が終わったところで“Djobi Djoba”のサビへとなだれこんだ。今年はメドレーで来たのかと思っていたら、今度は“Volare”のサビへと続いた。正直これはメドレーにはしてほしくなかったところだ。恐らく他にもそう思った人は多かったのではないだろうか。そしてメドレーのラストは“Marina”。最後に自分たちのオリジナルを持ってきたのは自信の表れだろう。オリジナル曲の中では私も好きな曲だが、GKの曲ほど知名度はなかったかもしれない。

 終了後鳴りやまぬ拍手の渦に対して、彼らはステージから降りることもなく、そのままアンコールに突入した。1発目は“Allegria”、初期GKのインストの名曲。数多くGKのインストの中で私が最も好きな曲である。そしてラストは“A Mi Manera”。Frank Sinatraの“My Way”のカバーだが、これはもう原曲以上に素晴らしい。カンテは交代で、1番をManolo、2番はMounin、3番をJosephが歌った。Chicoが最後に「ドモアリガトー!See you soon!」と言い残して、メンバーはステージを後にした。

さて今回は本当に素晴らしいライブであった。本場の妙技により名曲の数々を味わうことができたのだから。しかし死ぬまでにGKのライブを見るというのが私の夢だったわけだが、その夢がこれで叶ったかというと少し違う。今回予想以上にオリジナル曲を多く演奏してくれて、それはそれで良かったのだが、本当に聴きたかった3曲がメドレーであったことには、やはり思いが少し残ってしまった。こうなればやはり今度は本家GKのフルセットのライブを見てみたいところである。

Setlist
1.Liberte
2.Baila Me
3.Hotel California
4.Moorea
5.?
6.Madre Mia
7.Todos Todos
8.Inspiration
9.?
10.?
11.Buona Sera
12.?
13.Bambo~Djobi~Volare~Marina
14.Allegria
15.A Mi Manera


Chico & The Gypsies 「Vagabundo」

VagabundoVagabundo
Chico & The Gypsies

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1. Vagabundo
2. Patio
3. Tu Dueno
4. Arles
5. Dile
6. Marina
7. El Ritmo Gitano
8. Cristo
9. Fragilidad (Fragile)
10. El Verano
11. Ultimo Baile

 かねてより一度でいいからライブを見たいと願っていたGipsy Kings。しかし長いことそれは叶わずにいたのだが、そんな折Chico & The Gypsiesが今回また来日することを知った。

 Chico & The GypsiesはGipsy Kingsのオリジナルメンバーながら90年に脱退したChico Bouchikhiが自ら結成したグループ。本家が全く日本にやって来ない一方で、こちらはもう5年連続で来日をしている。存在はデビュー当時から知っていたし気にはなっていたのだが、ちゃんとアルバムを聞いたことがなかったため、来日もこれまでスルーしてきた。

 しかし今回の来日に際して何気なく招致先のBlue Noteのホームページにあったライブ動画を見てみたら、なんとGipsy Kingsナンバーのオンパレードではないか。なるほどそういうことなら話は別だ。毎年日本に来るニーズもこういうことかと妙に納得できた。

 これまで彼らは6枚のオリジナルアルバムと2枚のライブアルバムをリリースしている。今回初めて彼らのこの1stアルバムを聞いてみたのだが、底抜けにポップなメロディと哀愁さが同居し、フラメンコギターのバックでドラム・ベース以外にも様々な楽器が味付けをしている。言ってみればいわゆるジプシー・ルンバなわけで、音楽性は本家Gipsy Kingsと全く同じと言えるが、そのポップさと多様さは本家以上かもしれない。結果的にこのアルバムは日本国内でも20万枚以上売れたらしい。

 しかしそんな良いオリジナル曲を持っている一方で、ライブでは"Volare"や"Baila Me"などのGKの代表曲ばかりが並んでいる。確かにChicoはGKのオリジナルメンバーだし、GKの曲を演る権利はもちろんあるわけだが、せっかく良いオリジナルもあるのだから、もっとそちらを演るべきなのではとも思ってしまう。しかしそれがショービジネスであるし、個人的にもそれが聴きたいわけだから、あえて何も言わないでおこう。

 さて実は今日がそのChico & The GypsiesのBlue Note東京における初日であり、その1stステージは既に予約済みだ。というわけで今から観に行ってこようと思う。レポはまた来週。


Gipsy Kings 「Live At Kenwood House In London」(2007)

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01. Rítmico
02. Rumba Tech
03. Lleve Me El Compas
04. Tristessa
05. Amigo
06. Petite Noya
07. Como Siento Yo
08. Sabroso
09. Como Ayer
10. A Mi Mora
11. Djobi Djoba
12. Boleria
13. Fandangos
14. Legende
15. Quiero Saber
16. Tampa
17. Poquito a Poco
18. Baila Me
19. Todos Todos
20. Bamboleo
21. Volare

 先日サッカーワールドカップにおいて、スペインが見事オランダを延長戦の末下し、初優勝を果たした。選手たちも素晴らしかったと思うが、それ以上に素晴らしかったのは、これまでの予想的中率100%だったドイツの水族館のタコのパウル君かもしれない。ここまで結果を出したなら、きっと焼きダコにされることもないだろう。

 さて普段大してサッカーに興味のない私は、日本戦が終わった後はあまり関心はなかったのだが、スペインが優勝したというのは、個人的にオランダやドイツよりも嬉しかった。なぜならスペインと言えば、フラメンコ。生のフラメンコを見にスペインの片田舎へ旅をするのが私の夢だからだ。ということで今日はワールドカップにちなんで、スペイン音楽をご紹介したい。

 で、Gipsy Kingsである。日本でも「ボーラーレ!オーオー!」というビールのCMで有名なあのグループである。爽やかなギターと歌メロが、夏にピッタリだ。流浪の民ジプシーの子孫として南フランスから80年代に登場し、伝統的なフラメンコに現代的なアレンジを加えて大衆化し、世界中にワールドミュージックの旋風を巻き起こしたという功績を持つ。私はこれまで彼らのことをフラメンコと理解していたが、実は違うのだということを最近知った。フラメンコとはギターとカンテ(歌)とパルマ(手拍子)のみで構成されるシンプルなものでなければならなく、Gipsy Kingsのようにベースやドラム、パーカッションやキーボードなどのアレンジが加わっているものは、ジプシー・ルンバというジャンルに分類されるのだという。要するに純粋なものしかフラメンコとは認めないということなのだろう。なかなか難しい。

 で、今回は2007年に出た彼らのライブDVD。客席との間に池を挟んでいる変わったステージのLondonのケンウッド・ハウスで演奏している。彼らもさすがに年を取った。髪にも白いものが混じり、体格も皆立派になっている。しかし演奏は流石に熟練の味わいだ。熱くフラメンコギターをかき鳴らし若い女性たちを躍らせ、代表曲M11では観客全員が立ち上がって踊っていた。

 これは先のアルバム「Roots」に伴うツアーだが、最初からリズム隊やキーボードもいるフルメンバーのバンド編成のため、シンプルだったアルバムの方向性とは大きくアレンジを変えている。これはこれで良いのだが、やはりアルバム通りのギター・カンテ・パルマのみのアレンジも聴いてみたい。と思いきや、小休止の後にギター2人とカホンとベースのみの少人数でしっとりと演奏を始めた。このパートはデビュー当時からずっと続いていたようだ。ここでの調べの美しさは聴きほれさせてくれ、特にToninoの美しいソロの調べはやはり絶品だった。

 クライマックスはインストの名曲M16と、代表曲M20、そしてアンコールでの名曲M21。興奮に湧き上がる観衆の中に自分がいないことが悔しくさえ感じられる。彼らは2000年と2001年にこっそり来日していたが、ちっとも情報が入って来ず、気づいた時には既に時遅しであった。死ぬまでに一度生で見たいので、もう一度来日を切に願うばかりである。

★★★★☆


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