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1. Stone Free
2. Valleys Of Neptune
3. Bleeding Heart
4. Hear My Train A Comin'
5. Mr. Bad Luck
6. Sunshine Of Your Love
7. Lover Man
8. Ships Passing In The Night
9. Fire
10. Red House
11. Lullaby For The Summer
12. Crying Blue Rain
昨年リリースされた作品でレビューしていなかったものというのが沢山あり、これもそうした中の一つ。オリジナルアルバムのリイシューや、その後追い打ちをかけるようにボックスセット「West Coast Seattle Boy」もリリースされ、完全に追い切れなくなってしまった。とりあえず一つずつ消化していきたい。
まず死後あまりにも多くのライブ音源や未発表曲がリリースされ続けているが、この人は生前一体どれだけ創作意欲に溢れていたのかと考えると本当に脱帽する。これについてファンなら素直に喜ぶところなのだろうが、ただ今作みたいに「奇跡の新作」と言われるとどうもピンと来ない。97年にリリースされた「First Rays of the New Rising Sun」に比べるとなおさらだ。しかし音自体は素晴らしいものだと思う。タイトル曲のM2と、Elmore JamesのカバーM3やCreamのカバーM6はこれまで未発表音源で、あとは既発曲の新録バージョン。69年あたりの後期の録音にも関わらず、音作りもまだ初期段階だからかシンプルなものとなっており、各楽器の音が際立っている。特にギターの音が中央に聞こえ、とにかくJimiが弾きまくっているのが聴きごたえある。やはりこの人はギタリストとして全時代の中で際立った存在であることが再認識できる。
ちなみに今回の再発はJimiの版権管理会社であるExperience Hendrix社(以下EH社)とSony Music Entertainmentが提携をしたことにより、実現したものである。EH社は、Jimiの父親であるAl Hendrixが息子の版権を買い戻した後、1995年に養子であるJanny Hendrixと設立した会社である。しかし同社は、Jimiの右腕だったベーシストNoel Reddingから、正当な著作権の支払いがなされていないという訴訟を受けたことがある。またJannyはAlの死後、Jimiの実の弟であるLeonから、不当に遺産相続したという訴訟も起こされている。
誰が正しいのかは分からない。しかしJimiの死後、彼の残した音源が生み出し続ける遺産について、多くの利害関係が渦巻いているということは確かだろう。今回の再発によって血縁も功績もない人に莫大な利益が入ったであろうことに少し複雑な気持ちを抱きつつも、純粋に音を楽しみたいとも思うのだった。
★★★★