Faith No More

Faith No More Live Report 2015

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90年代後半から2000年代中盤くらいまで、ヘヴィロック・ミクスチャーロックは世界的なムーブメントとなっていた。それの直接的なルーツにあたるのがFaith No Moreだったのだが、彼らはちょうどその時代には活動をしていなかった。彼らの2009年の再結成以来、来日の発表をずっと期待していたが、全く来る気配はなく諦めていた。しかしここへ来て18年振りの新作の制作を始め、これに伴いワールドツアーを再開。そしてようやく来日公演が実現した。

今回の日本公演は東京の2回のみ。会場は新木場Studio Coast。私は2日目に参戦した。当日職場から凍えるような寒さと雨の中、強風に傘も壊れ散々な思いで会場入りした。場内にはガタイのいい外国人の率が高かった。

前座は2組。Le Butcherettesは急遽開演時間前に追加されていた。女性のボーカルとドラムに男性ベースの3人組。ボーカル女性が暴れたり金切り声を上げたり倒れたりする、かなりエキセントリックなバンドで、Mike Pattonが好きそうな感じだ。

もう1組はOmarとCedricのアフロ2人組を擁するAntemasque。2人のことはデビュー時のMars Voltaだけ聴いたことがあったので知っていた。テクニックは折り紙付きだが、猛烈なアグレッションで駆け抜けていく様は見応えがあった。

どんでんではローディーに交じってギターのJonが自身の機材のセッティングをしていた。ステージには沢山の観葉植物が飾られる。「Angel Dust」でカヴァーしていたMidnight Cowboyの原曲がSEで流れると場内歓声。そして20:15頃に大歓声の中、真打Faith No Moreが登場。中央にMike Pattonが立ち、左手にキーボードRoddy Bottum、左手後方にベースBilly Gould、右手にギターJon Hudson、中央後方ドラムMike Bordin。全員真っ白の衣装で、Mikeは赤いマスクをしている。オープニングは新曲”Cone Of Shame”だった。

曲後Mikeの「ハイ、ドーモ」に場内笑い。そして2曲目でいきなり名曲”Epic”がスタートすると場内のボルテージは一気に上がり合唱。そのまま3曲目”Ricochet”へ。Mikeは拡声器を持ってきて絶叫する。MikeのMC、「昨日のショーを見た奴はいるか?昨日と今日とどちらが良かったか後で投票しようか。最低のショーと最高のショーでな」前日キーボードがトラブルでほとんど音が出ていなかったらしいが、これは彼ら自身も相当悔しかったようだ。

今日はキーボードはしっかり音が出ており、Roddyは正に水を得た魚のよう。昨日の鬱憤を晴らすかのように気合いの入ったプレイを見せていた。彼のピアノやシンセサウンドを生で聴くと、それがどれだけFNMサウンドの大事な要素であるかを実感する。これがなかったという前日のステージは想像出来なかった。

バンド全体もとにかく貫禄溢れ現役感バリバリだ。Mike Bordinはかつてのドレッドは白髪交じりのグレーになってしまったが、その重くタメを効かせたグルーヴィなプレイは変わらない。彼がOzzy Osbourneバンドで活躍していた時のことは知らないが、バークレイ音楽院でアフリカンリズムを専攻していたという彼のトライバルなスタイルはFaith No Moreにこそ相応しいと思う。Billyのベキベキ響く低音ベースも耳に嬉しい。彼ももういいおっさんだが、ノリノリで楽しそうに動きながら弾いているのが印象的だった。

そして何よりもMike Pattonだ。昔に比べて少しだけ丸くはなったが、今でも変わらずカッコ良く、そのボーカルは凄まじいの一言。ずっと現役でやってきたというのもあるが、歌い上げもスクリームも文句の付けようがないし、ステージングの一挙手一投足が様になる。この人はロックボーカリストとして最高峰の1人だと思う。

ちなみに私はステージの右手にいたので、ギターのJonのプレイが一番良く見えた。定位置から動かなかったが、ヘヴィリフでもソロでも非常に良い仕事をしていた。またRoddyと2人スキンヘッドでステージ両脇を固めていたのも、なかなか何気にイカついものがあった。

MikeはMCで色々話していた。「昨日オンセンに行ってきたんだ。オエドオンセンモノガタリ」とか「花見はないのか?」などなかなか日本を楽しんでいるようだった。また嬉しそうに「Eat the poop!」(とても日本語には出来ない) と連呼しているあたり、歳取っても悪ふざけっぷりは変わらないなと思った。

個人的なハイライトは”Everything's Ruined”。この曲が一番好きなので、これが聴けたのは嬉しかった。また”Easy”では会場の天井にあった巨大なミラーボールが回り、Mikeが「見ろ、まるでディスコだろ」と嬉しそうに、浪々と歌い上げていた。一方続く”Cuckoo For Caca”は正に破壊衝動そのもので、このバンドの尋常でない振幅の広さを見せつけていた。

新曲”Superhero”で本編終了。アンコールを呼ぶコールの熱さが半端ない。アンコールでは日本人が登場し、和風な感じのグロウルボイスを聞かせた。ヒカシューの巻上公一という方らしく、モンゴルのホーミーという歌唱法らしい。そのまま新曲”Spirit”を共演していた。アンコール2曲目も新曲で”Matador”。最後はやはり”We Care A Lot”あたりで締めて欲しいと思っていたが、残念ながらこのまま終了してしまった。「次はまた20年後かな、それはないか」とMikeは言っていたが、本当にまた次回があるなら期待したい。

1. Cone Of Shame
2. Epic
3. Ricochet
4. Get Out
5. Last Cup of Sorrow
6. Evidence
7. Midlife Crisis
8. Everything's Ruined
9. The Gentle Art of Making Enemies
10.Easy
11.Cuckoo for Caca
12.King for a Day
13.Ashes to Ashes
14.Superhero

Encore
15.Spirit
16.Matador 

 

Faith No More 「Angel Dust」 (1992)

Angel Dust
Faith No More
Reprise / Wea
1992-06-16


1. Land Of Sunshine
2. Caffeine
3. Midlife Crisis
4. RV
5. Smaller And Smaller
6. Everything's Ruined
7. Malpractice
8. Kindergarten
9. Be Aggressive
10. A Small Victory
11. Crack Hitler
12. Jizzlobber
13. Midnight Cowboy
14. Easy
15. As The Worm Turns

待望の来日公演をあと3日後に控えたFaith No More。2009年の再結成に喜んだものの、
その後ずっと待ちぼうけで、諦めていた末の念願の来日発表だった。今予習のためヘヴィローテーションになっているのは数年前のライブブートとこの名盤である。

前作「The Real Thing」の成功を牽引したのは”Epic”のシングルヒットだったが、これはヒップホップとファンクをヘヴィメタルに大胆に導入したミクスチャーの先駆けとなった名曲だった。しかしこれに続く「Angel Dust」ではそうした単純なミクスチャーは見られず、もっと混沌としている。

一本ブチ切れたようなカオティックハードコア、アヴァンギャルド、M7ではショスタコーヴィチ弦楽四重奏8番、M9ではカレッジチアリーダー達の掛け声、M10にはオリエンタルな中国音階、M13は1963年Ferrante & Teicherのイージーリスニング、M14はR&BグループThe Commodoresの77年のカヴァー、もはやジャンルなどどうでもよくなるレベルだ。あらゆる音楽要素がまるでプログレのように曲毎・曲中変化していく。恐ろしい程のヘヴィさと爽快な程のキャッチーさが同居しているのもこの作品のスゴいところだ。

Mike BordinのタイトなトライバルドラムとベキベキいうBill Gouldのベースの上に、ヘヴィに刻むJim Martinのギターと荘厳なRoddy Bottumのキーボードが被さる。バンドサウンドだけでも強力だが、この上に乗るMike Pattonのボーカルが凄まじい。天も引き裂くような断末魔、オペラ歌手のような歌い上げ、気が狂ったような高笑い、渋い低音の囁き。まるで多重人格者のように目まぐるしく表情を変え続けるその表現力は筆舌に尽くし難い。楽曲の幅が最大限に広がったのはこのボーカルに呼応した部分が大きい。

それにしても前作でのMikeは妙にミャーミャーした声だったのに、どうしてこうも急に声変わりしたのかが不思議だ。出来るならこの声でもう一度前作を再録して欲しい位だ。

この後ギターのJim Martinが解雇された際には当時のメタルファンはかなり落胆していた。バンドの中で唯一ヘヴィメタルな要素を持ち、バンドのスポークスマン的な存在だっただけにショックは大きかった。しかし今思えば時代も変わりつつある中で、音楽的にもファッション的にもJimがバンド内で浮いていたのは明らかだった。まぁそれで嫌がらせをするというバンド側も大人気ないのだが。

98年に解散。この後本国でヘヴィロックが隆盛を極めるわけだが、これに与えていたFaith No MoreそしてMike Pattonの影響は絶大だった。にも関わらずここ日本では同時代のミクスチャーの先駆けだったRed Hot Chili Peppersと比べると、その扱いは不当と言わざる得ない。この偉大なバンドをようやくまた国内で目にすることが出来る。

★★★★★

 

Faith No More 再結成

Faith No Moreが再結成し本格的に活動を再開したようですね。98年の解散以来もう復活はないだろうと諦めていただけに、今年のはじめに再結成のニュースを聞いた時は大喜びしました。

Download Festivalにトリで出演した際の映像を見る限り、見た目は皆おっさんになりましたが、衰えは全くないようですね。Mike Patton氏も、なんか体が全体的に貫禄が出てマフィアのボス(笑)のようになってますが、FantomasやTomahawkなどずっと精力的に活動を続けてきただけあり、完全に現役です。

85年にデビューし、Red Hot Chili Peppersとともに異端と言われながらも時代を先取りし、やがていわゆるミクスチャーの先駆けとして大きな影響力を持つに至った彼ら。特にボーカルのPatton氏は、System Of A DownのSerj Tankianや、IncubusのBrandon Boydなど多くのボーカリストに、最も影響を受けたといわしめたものです。

長いこと放置プレーだったオフィシャルページもリニューアルされてますが、欧州のツアーしか発表されてませんね。観客の熱狂に気を良くして、本国ツアー→ワールドツアー→じゃぱーん と発表してくれることを切に願っています。

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