訃報

ドラゴンクエスト

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去る3月1日に漫画家・デザイナーの鳥山明氏が亡くなった。享年68才だった。「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」は少年時代に熱中した漫画だったが、今回は「ドラゴンクエスト」について書きたい。

昨年末のクリスマスに娘と実家に行く途中でBook Offに立ち寄った。「これ買って〜」と娘が持って来たのは、ドラゴンクエストⅪのSwitch用ソフトだった。クリスマスだしまぁいいかと思い買い与えると、それ以来娘は異世界の勇者となった。

しかし学年末試験の1ヶ月前になると、娘は冒険を中断しSwitch一式を私に預けた。なかなか潔いじゃないかと感心していると、娘曰く「テストが終わるまで預けるから、その間に父ちゃんもドラクエやって。」どうやら私とゲームの話をしたかったらしい。

私は日頃ゲームなど一切しない。毎日仕事でパソコンと睨めっこで目が疲れるから、他ではなるべく画面を見たくない。しかし娘に言われちゃ仕方ない。ドラクエなんていつ以来だろう。立ち上げると目耳に飛び込んで来たのは、あの懐かしいキャラクターデザインとテーマ曲だった。

小学生の頃うちにはファミコンがなく、友達の家で集まって遊んでいたのは初代のドラクエだった。ある時小学校で音楽鑑賞会なる行事があり、学年全クラスで市民ホールへ行った。知らないクラシックなど子供にとっては子守唄でしかない。私含む男子児童のほぼ全員が爆睡をかましていた。若い男性担任のK先生も同様だった。

そんな中で最後に演奏されたのが、ドラクエのテーマだった。聴こえてきた重厚なオーケストラで奏でられる勇壮なメロディに皆で飛び起きた。「なんで、なんで?」と興奮して顔を見合わせる私達。あの時の友人やK先生の喜ぶ顔は今でも良く覚えている。あのテーマを作曲したすぎやまこういち氏も3年前に他界してしまった。

ちなみにドラクエⅪはグラフィックも世界観も昔とは比較にならないほど見事なものだった。ただ私の冒険は未だ全く終わりが見えず、娘は嬉しそうに色々ネタバレをしてくれる。

鳥山氏の魅力的なキャラクター達とすぎやま氏の名曲。時代も国境も越えて愛される作品を作り上げた彼らの功績は大きい。


シェイン他界

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毎年の今頃になると、決まって訃報が舞い込んでくるのは何故だろうか。ザ・ポーグス(The Pogues)のフロントマンのシェイン・マガウアン(Shane MacGowan)が11月30日に他界した。享年65歳だった。

私がポーグスを知ったのは割と最近のことだ。アイルランド伝統音楽の陽気で郷愁のあるメロディを、パンクロックの勢いで掻き鳴らす彼らの音楽は、聴く者を否応なく楽しい気分にさせてくれた。

つい昨年彼の伝記映画「シェイン - 世界が愛する厄介者のうた」も上映されていたので観に行ったのだが、特に印象的だったのは彼のアルコール依存症による廃人ぶりだった。急な成功と転落によるストレスのためだったのだろうか、車椅子に乗り年齢以上に年老いた彼はまともに喋ることも出来ず、オジー・オズボーン以上に酷い有様だった。なので、この訃報に驚きはなかった。

しかし彼は多くの人に慕われ、彼が歌ったアイルランド移民の夢は多くの人の共感を得た。アイルランドの英雄の死には祖国の大統領も追悼を述べている。

RIP


「C.W.ニコルの森の時間」

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Spring春(北極光;バンクーバーの木々;勇魚 ほか)
Summer夏(虫刺されにご用心;野尻湖の命運;DNAの銀行 ほか)
Autumn秋(岩手県民の誇り;急流下り;諫早湾の埋め立て ほか)
Winter冬(開発という名の自殺行為;ワンワン狂奏曲;カワウソ一家 ほか)

去る2020年4月にC.W.ニコルさんが亡くなった。環境保護活動家として有名だが、色々な経歴の持ち主であり、昔は番組やCMなどテレビにも良く出演していた記憶がある。遅ればせながら図書館で著書を見つけたので読んでみた。

生まれは1940年イギリスのウェールズ。プロレスラーのアルバイトの後、北極調査員、捕鯨調査員、カナダ環境保護局員、エチオピア国立公園長などを経て、1962年に好きな空手の日本に来た。来日後は精力的に環境保護活動を行う傍ら、作家や音楽家などとしても活躍した。

長野県北部の黒姫山の麓に居を構え、長年に渡り再生に取り組んだ森林を「アファンの森」と名付けた。また日本全国の自然環境破壊を止めるには、自然を守るレンジャーを育成する必要があると提唱し、設立された東洋工学環境専門学校の副校長に就任している。

西洋人には珍しく日本の捕鯨に対しても理解があったが、それは元々北極のイヌイットと生活をした経験などがあったからだった。商用ではなく、あくまでも生活としての狩猟を行うことは、生態系を理解し自然を敬うことへと繋がっている。

スキー場は建設のために貴重な原生林を切り倒しただけでなく、雪が溶けるのを防ぐために使用される硫酸アンモニウムが水質低下を招くこと。生態系を壊す護岸工事の代わりに、河岸に柳の木を植えるのが効果的なことなど、知らなかった自然保護の視点も多くあった。

日本や世界各地の様々な木々や花々、動物や鳥や昆虫などへの深い洞察。それを破壊する政府や企業に対する厳しい提言。今から30年前の著書だが、改善された点もあれば、変わらない点もある。

晩年は毎日新聞に月1でコラムを書いていた。アファンの森から届けられるその文章を私は毎月楽しみにしていたのだが、急逝により連載もぱったりと終わってしまったのが寂しかった。今更ながら惜しい人を亡くしたと思う。

ロビー・ロバートソン他界

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ロビー・ロバートソン (Robbie Robertson, 1943-2023) が去る8月9日に他界した。享年80歳だった。

言わずと知れたザ・バンド (The Band) のギタリストであり中心的存在。リヴォン・ヘルム (Levon Helm) に代わってバンドを率いながら、ほとんどの楽曲の作詞作曲を手掛けた。そのことが、バンド内でのクレジットの問題も生むのだが、彼の能力の高さは認めざるを得ない。

後年は映画音楽やソロアルバムを精力的に制作し続けていた。しかしバンドの再結成には1人だけ参加しなかったのは、正直残念ではあった。それだけにリヴォンの死の直前に和解したことは喜ばしいことだった。

バンドであと残っているのはガース・ハドソン (Garth Hudson)1人だけになってしまった。一度でいいから5人が揃ったところを見てみたかった。

RIP

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ムツゴロウさん他界

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今春は訃報が多かった。ムツゴロウさんこと畑正憲氏も亡くなった。享年87歳だった。

子供の頃はいつも家族でテレビ特番「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」を観ていた。「よーしよしよし、可愛いですね」とライオンなどに噛まれながら笑顔を絶やさないムツゴロウさんの姿はかなり衝撃的だった。しかし大自然の中で動物に囲まれた生活に憧れ、大人になったら動物王国に弟子入りしたいと考えていた。

ムツゴロウさんが脚本・監督で製作した映画「子猫物語」も忘れ難い。北海道の大自然と動物達の交流は強く印象に残り、娘が小さい頃にも一緒に観返した。この音楽を製作したのが、時を同じくして他界した坂本龍一氏だったことを最近になって知った。

ムツゴロウさんの著者を読んだのは大人になってからだった。医学や映画製作から作家への転進、麻雀などのギャンブル好き、動物王国建設への準備などの背景が実直に綴られいて、好々爺というイメージが変わった。

実際に弟子入りに来る若者も多かったようだが、使い物にならなかった者も多かったようだ。人間に対して警戒心の強い野生動物を保護して育てるというのは、簡単なことではない。多様な動物の生態を理解し、愛情と根気をもって汚れ仕事も行った先に、初めて動物達のなつきや誕生に出会える。それを出来るのがムツゴロウさんだった。

RIP

従弟他界

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去る3月31日に私の従弟が他界した。享年44歳だった。

彼は本家の長男だった。子供の頃は毎年正月になると一族みんなで東京下町にある本家で集まった時に、子供同士でよく遊んだものだった。彼は人に気を遣う優しい性格で、それは大人になっても変わらなかった。

家は祖父の代から呉服屋を営んでいたが、時代が変わり伯父の代でチェーンのコーヒーショップに商いを変えた。その伯父も早逝し、後を継いだ彼は休みもなくその経営を頑張っていた。

数年前に晩婚した直後に胃がんが発症した。きっとストレスもあったのだろう。がんの進行は早かったため、胃を全摘出せざるを得ず、以降一切の固形物を口にすることは出来なくなった。

そんな中、昨年の私の父の一周忌に来てくれた。「もうみんなに会えるのも最期だから」と家族の反対を押し切っての参列だった。久しぶりに会った彼は、まるで別人のように痩せ細っていた。

私の父の葬儀を機に、従兄弟を中心に一族10人のLINEグループを作っていた。そこに3月1日に彼からの長いメッセージが届いた。そこには余命宣告を受けた彼からの別れと感謝が綴られていた。変わらぬ彼の優しさに深い悲しみを覚えるとともに、今はこんな形の別れがあるのだと不思議な感覚もあった。

病院からの退院も見舞いも叶わない彼のために、一族一同から一斉に画像が送られた。各地に咲いた様々な花々の写真だった。しかしそうした祈りも虚しく、彼の容体は急変し4月を待たずして旅立って行ってしまった。

娘と参列した葬儀には一族が集まっていた。こうして皆で集まることが彼の望みでもあった。きっと今後も彼の墓前に集うことだろう。

Jeff Beck 急逝

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年始早々の訃報に驚いた。去る1月10日にJeff Beckが細菌性髄膜炎のため他界した。享年78歳だった。

Jimmy Page、Eric Claptonとともに世界三大ギタリストと称された名プレイヤー。正直言うと私は彼のソロ以降の作品はあまり聴いていなかったのだが、60年代末から70年代前半のバンド時代の作品は愛聴していた。Yardbirdsを抜けた後にRod StewartやRon Woodらと結成した自身のバンドJeff Beck Group。そしてTim Bogert、Carmine Appiceと結成したBBA (Beck, Bogert & Appice)。どちらも高いプレイヤビリティを誇るメンバーが集合しスリリングな演奏を聴かせつつ、素晴らしい楽曲揃いだった。

2006年に富士スピードウェイで開催されたウドーロックフェスティバルに出演した時のステージも拝んだ。"Beck's Bolero"の勇壮なプレイが夕方の夏空に響き渡っていた光景が思い出される。しかしこの時私はパフォーマンスの途中で他のステージに移動してしまった。今思えば最後まで観ておくんだったと後悔している。

ロックに留まらずフュージョンやジャズなどにもジャンルを超越し、どうやって弾いているんだか分からないようなトリッキーなプレイは誰にも真似出来ない強烈な個性を放っていた。

RIP


パディ・モロニー他界

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去る10月12日、アイルランド伝統音楽の至宝チーフタンズ(The Cheiftains)のリーダーであるパディ・モロニー(Paddy Moloney, 1938-2021)が他界してしまった。享年83歳だった。

イーリアンパイプとティンホイッスルというアイルランドの伝統楽器を操るパディは、1962年にチーフタンズを結成する。以降、アイルランド音楽を継承するのみならず、多くのポップ・ロック勢とのコラボ等を通してワールドミュージックの拡大に貢献し続けた。発表したアルバムは40枚以上、グラミーなど多くの賞も受けている。

私は2012年に50周年記念のワールドツアーの最終を観に行った。大盛り上がりの公演だったが、中でもパディは気さくでユーモアのあるMCと熟練の演奏で満員の観客を魅了していた。温かみがありながらも、どこか寂しさも漂うその名演は、アイルランドの曇天を思わせた。

愛すべき御大よ、RIP


チャーリー・ワッツ他界

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これはもっと早く上げたかったのだが遅くなってしまった。去る8月24日にローリングストーンズのチャーリー・ワッツ(Charlie Watts, 1941-2021)が他界してしまった。享年80歳だった。

かつてロックは若者の音楽だった。セックス・ドラッグ・ロックンロールで生きていれば早死にするのが当たり前だった。そんなロックが歴史を重ねていく中で、一体ロックスターは何歳まで現役でいられるのかという議論が酒の肴になると、決まって誰かがこう言った。「ストーンズのチャーリーを見ろよ。還暦を超えてもまだ現役なんだぞ」と。思えばそれももう20年も前の話だ。

ロックが誕生してから半世紀を超え、還暦を過ぎてもロックし続けることが当たり前になった。そんな中でもチャーリーはやっぱり特別だった。私が最初で最後に観たストーンズ公演は2014年の東京ドーム。若々しい赤いTシャツを着てジャズスタイルで正確でタイトなリズムを刻み、紹介の時には背中を押されて照れながら花道を少しだけ歩いてきてくれた。

皆に愛されたチャーリー。同業アーティストからの追悼メッセージも膨大な数だった。

RIP


ロビー・スタインハート他界

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先月7月17日、親父が他界したのと同じ日に、私の好きだったミュージシャンも他界していたのを後で知った。Kansasのロビー・スタインハート(Robby Steinhardt, 1950-2021)、享年72歳だった。

個人的にはKansas=ロビーのイメージが強かった。ステージの中央に仁王立ちするあの巨漢と見事な髪型、低く響く歌声、そしてあのバイオリンの音色だ。巨漢の肩で弾くバイオリンがあまりにも小さく見え、また巨体に似合わずクルクルと回るステップも軽やかだった。

アメリカではフィドルとカントリーの土着音楽文化が根付いているので、バイオリンをロックに取り入れることもアメリカならではの発想だった。またロビーの父親は大学の音楽教授だったこともあり、クラシックの影響もあった。アメリカンプログレッシブロックバンドKansasを音楽的にも特徴付けていたのがロビーだったと思っていた。一度生で見たかった。

RIP


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