Metallica

オリオン

orion

歳を取るにつれ寒い冬が苦手になりつつあるが、そんな冬にも楽しみはある。星空を眺めることはその1つで、澄んだ夜空を見上げるたびに冬の大三角や大六角をなぞっている。その中央にあるオリオン座は最も好きな星座である。

砂時計のような形の左上の赤いベテルギウスと右下の青白いリゲルは共に一等星だが、それぞれ異なる色を放ち主張し合う。対角線上の2つの星と、中央に横並びになる三つ星は二等星。さらにその下にはM42星雲。ここまで明るい星々が集まり均整の取れた配列をしている星座はなかなかない。

もっともパソコン仕事ばかりしているとどうにも目が悪くなり、最近は裸眼だと一等星しか見えなくなってしまった。しかもリゲルは見えるのに、ベテルギウスが見えないのは何故だろう。そう思っていたら、今冬のベテルギウスは過去100年で最も暗く、超新星爆発が近づいている前兆だということを知って驚いた。爆発すると半月の明るさが数ヶ月近く続いた後に消えてしまうという。

オリオンを見ると思い出すのが、Metallicaの"Orion"だ。今は亡きCliff Burtonが1986年に作曲したインストで、数あるHR/HMインストの中でも最もドラマティックな名曲である。ギターリフやツインリードも聴きものだが、特に印象的なのは静かな中間部で聴こえる知的で穏やかなベースの音色だ。彼が冬の夜空を見上げて作ったというこの曲の持つ寂寥感が胸に迫る。

永遠と思われた宇宙の時間の中で、ベテルギウスの終焉を見ることになるとは思わなかったが、もしCliffも生きていてこれを知ったらきっと驚くことだろう。


Metallica 「Metallica」 (1991)

METALLICAMETALLICA
メタリカ

ソニー・ミュージックレコーズ 1991-08-29
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1.Enter Sandman
2.Sad But True
3.Holier Than Thou
4.The Unforgiven
5.Wherever I May Roam
6.Don't Tread On Me
7.Through The Never
8.Nothing Else Matters
9.Of Wolf And Man
10.The God That Failed
11.My Friend Of Misery
12.The Struggle Within

先日Metallicaの映画「Through The Never」が国内でも公開されていた。なかなか好評のようで追加上映もされていたようだ。私がMetallicaを好きだったのはもうだいぶ昔のことなので、映画も観には行かなかったが、彼らが今でもこうして人気を持続しながら第一線で頑張っている姿を見るのは嬉しいものである。

ということで、今日は彼らの昔のアルバムでも取り上げてみる。私がリアルタイムで聴いた最後のアルバムが、1991年のセルフタイトルアルバム、通称Black Albumである。先の映画のタイトルも、このアルバムの楽曲から付けられている。

周知のように彼らは80年代前半に登場し、それまでになかったような速くてアグレッシヴなサウンドが爆発的な人気を集めた。やがてそれはスラッシュメタルとして認知され、熱狂的なファンによってアンダーグラウンドからメジャーシーンへと押し上げられていく。そして彼らを時代の頂点へと君臨させたのが、全米初登場No.1となり世界で3000万枚のモンスターヒットとなったこのアルバムだった。

ただこの作品の方向性はそれまでのスラッシュメタルとは一線を画していた。それまでのトレードマークであった疾走感は影を潜め、ミドルテンポで重くグルーヴィなサウンドに変化を遂げていた。ギターリフもそれまでは鋭い切れ味の日本刀から、ここでは重厚な薙刀のようである。この背景には当時シーンを席巻し始めたグランジ・オルタナティブの影響が多分にあり、過去のファンには賛否両論だった。

しかしここでは彼らの新たな魅力が発揮されている。一つはLars Ulrichのドラムであり、力強くタメの効いたドラミングはこれまでなかったもので、小さな巨人として彼の存在感の大きさを再認識させられる。次にJames Hetfieldのボーカルもこれまで以上に歌っており、初バラードM8に聴かれるような低音での歌い上げは魅力的だ。そしてそれを促進したのがこのメロディアスな楽曲群であり、単なるハード&ヘヴィへの方向転換にならずに高い楽曲の質を実現したことも成功の要因であったと言える。

1993年に彼らが来日した時も、当時高校生だった私は代々木オリンピックプールまで観に行った。2階席の後ろの方で、ステージの彼らは親指くらいの大きさにしか見えなかったが、終始怒涛の勢いに圧倒された。この時のライブレポートが確か実家のどこかにあったはずである。今思えばまだ彼らの髪が長かったこの頃が一番カッコ良かった気がする。

★★★★☆


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