歳を取るにつれ寒い冬が苦手になりつつあるが、そんな冬にも楽しみはある。星空を眺めることはその1つで、澄んだ夜空を見上げるたびに冬の大三角や大六角をなぞっている。その中央にあるオリオン座は最も好きな星座である。
砂時計のような形の左上の赤いベテルギウスと右下の青白いリゲルは共に一等星だが、それぞれ異なる色を放ち主張し合う。対角線上の2つの星と、中央に横並びになる三つ星は二等星。さらにその下にはM42星雲。ここまで明るい星々が集まり均整の取れた配列をしている星座はなかなかない。
もっともパソコン仕事ばかりしているとどうにも目が悪くなり、最近は裸眼だと一等星しか見えなくなってしまった。しかもリゲルは見えるのに、ベテルギウスが見えないのは何故だろう。そう思っていたら、今冬のベテルギウスは過去100年で最も暗く、超新星爆発が近づいている前兆だということを知って驚いた。爆発すると半月の明るさが数ヶ月近く続いた後に消えてしまうという。
オリオンを見ると思い出すのが、Metallicaの"Orion"だ。今は亡きCliff Burtonが1986年に作曲したインストで、数あるHR/HMインストの中でも最もドラマティックな名曲である。ギターリフやツインリードも聴きものだが、特に印象的なのは静かな中間部で聴こえる知的で穏やかなベースの音色だ。彼が冬の夜空を見上げて作ったというこの曲の持つ寂寥感が胸に迫る。
永遠と思われた宇宙の時間の中で、ベテルギウスの終焉を見ることになるとは思わなかったが、もしCliffも生きていてこれを知ったらきっと驚くことだろう。