1.東洋の第一日目
2.盆踊り
3.神々の国の首都
4.杵築―日本最古の神社
5.子供たちの死霊の岩屋で―加賀の潜戸
6.日本海に沿って
7.日本の庭にて
8.英語教師の日記から
9.日本人の微笑
10.さようなら
最近は仕事でもっぱら毎日のように人材採用の面接をしている。そんな中で先日はスペイン人の男性に内定を出した。これまでアジア系女性がいたことはあったが、西欧人は初だ。彼は元々日本の漫画やアニメが好きで来日したが、より深く日本文化を知り長く住むことになったらしい。最近はこういう西欧人は多い。
明治の開国当時も多くの外国人が日本にやって来たが、この人ほど日本を愛した人はいないだろう。ラフカディオ・ハーン。1890年(明治23年)に来日したイギリス人で、帰化してからは小泉八雲と改名している。
彼は古事記の英訳を読み、日本の神道に強い興味を抱いていた。日本で最古の神社のある出雲国の松江に英語教師として赴任し、尋常中学校と師範学校で教える傍ら、日本の地方の人々の生活や文化に深く傾倒していく。
日本に古くから残る伝承や昔話を興味深く集め、町並みや生活雑貨の造形美に感嘆し、自然や死者に対する信仰心に感銘を受ける。そうした日本の素晴らしさを諸手を上げて賛美する様子は、読んでいてむず痒いくらいだが、一方で流入してくる外国の影響で失われていく様子を嘆くのには共感した。
一つ目のハイライトは、彼が出雲大社に詣でる箇所だろう。悠久の歴史の中で、初めて外国人として昇殿拝礼を許され、宮司に歓待を受ける様子は興味深い。同時に神道がどういうものなのかを、外国人である彼に教えてもらうこととなる。
二つ目のハイライトは、彼が松江から旅立つ場面。結局松江には1年7ヶ月しか滞在しなかったのだが、何百人という教え子や街の人々が、別れを惜しんで船で離れる彼を見送った。松江という街を愛し、街に愛された彼の感動的なラストシーンた。
古き良き時代を知るほどに、色々と取り返しのつかなくなったこの現代ではなく、昔を生きたかったという想いが募るのをどうしたものだろうか。