Thin Lizzy

Phil Lynottとアイルランド

lynott

今日は私の好きなアイルランドの英雄Phil Lynott(フィル・ライノット)について取り上げてみます。

彼は1949年8月20日イギリスのバーミンガム近郊で、アイルランド人の母親とブラジル人兵士の父親の間に生まれました。しかしすぐに帰国してしまった父親の顔を見ることはなく、肌の色の違いから差別も受けます。その後祖父母のいるアイルランドのダブリンに移り、そこでアイルランド人としてのアイデンティティを強く持つに至ります。

ダブリンで彼は伝承曲を始めとする様々な音楽的影響を受けるとともに、詩作にも目覚めます。それらを元に自己表現として自身のバンドThin Lizzyを結成するに至ります。

彼の作る音楽は、フォークロック、ファンク、ハードロック、エレクトロポップなど、時代とともに様々に変化しましたが、そうした中でアイルランドの伝承曲のメロディを取り入れたものが多くありました。また詩作の面でも、祖国への想いを編んだものも少なくありません。今日はそんな彼のアイルランドに因んだ曲を10曲取り上げてみます。

Whiskey In The Jar (1972)
アイルランド伝承歌をアレンジした曲。バンドとして初めてのシングルヒット

Eire (1971)
中世の頃に侵略してきたイギリス軍と戦ったアイルランドのオドネル卿について綴った叙事詩

Dublin (1971)
故郷ダブリンを離れる時の寂寥の想いを綴った短い叙情詩

The Rise and Dear Demise of the Funky Nomadic Tribes (1972)
タイトル通り中世にアイルランドに侵略したノルマン民族の興亡を綴った長尺ファンク曲

Sarah - version 1 (1972)
祖母に宛てた曲で、後年のものとは同名異曲。美しいピアノは同郷のClodagh Simonds。

Philomena (1974)
こちらは母親に宛てた曲で、タイトルは母親の名前。ギターリフはケルト旋律を奏でている。

Emerald (1976)
エメラルドとはアイルランドのこと。これも中世における英軍侵略の様子が描かれ、このギターリフもケルト音階

Fools Gold (1976)
19世紀半ばのアイルランド大飢饉についての曲。この時に餓死や国外流出で国民の2/3を失った

Roisin Dubh (Black Rose) A Rock Legend (1979)
代表曲の1つ。Danny BoyやShenandoahなどの伝承曲を交えながら、祖国の歴史を俯瞰する一大絵巻

Cathleen (1982)
愛娘に向けて歌った曲。美しいアイルランドの少女という副題が付いている

 

温かみが感じられる曲調や歌詞、そして低い歌声が好きでした。1986年1月4日、ドラッグのオーバードーズにより他界。ダブリン郊外に埋葬され、街の中心部には彼の銅像が建てられています。いつか墓参りにダブリンに行きたいと思っています。

Thin Lizzy 「Jailbreak」 (1976)

脱獄
シン・リジィ
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
1997-09-26





A1. Jailbreak
A2. Angel From the Coast
A3. Running Back
A4. Romeo and the Lonely Girl
A5. Warrior
B1. The Boys Are Back in Town
B2. Fight or Fall
B3. Cowboy Song
B4. Emerald

ゴールデンウイークが終わってしまいますね。今年は芝桜でも見せたいと思っていたんですが、娘がずっと高熱を出していたおかげで外に出られませんでした。。

代わりにGW中ずっと聴いていたのがThin Lizzy。私が最も愛するハードロックバンドの1つです。最初に彼らを知ったきっかけはツインリードギターで、先日のIron MaidenやJudas Priestから遡っていったら辿り着き、結果的にPhil Lynottの魅力にハマりました。

初期から後期まで全て好きなのですが、あえて選ぶなら中期のこのアルバム「Jailbreak」。76年に発表され大成功した彼らの6枚目にあたります。

とにかく名曲だらけ。まずは”The Boys Are Back In Town”。勢いと男らしさに溢れ、中間部のScott GorhamとBrian Robertsonのツインリードも最高です。アメリカでも大ヒットし、Huey Lewis & The News、Bon Jovi、Everclearなど様々なバンドにカヴァーされ愛されています。

また”Cowboy Song”も大名曲。Philの西部志向が最高の形で結実した作品で、乾いた米西部を駆けるカウボーイのロマンティシズムに溢れています。やはりライブ版の"Cowgirl Song"ではなくフルで聴きたいもの。これはAnthraxがカヴァーしてましたね。

そしてラストの”Emerald”。中世ゲール人の闘いをケルト音階のリフでハードに表現した名曲です。Philは常に祖国アイルランドへの想いを強く抱いていましたが、これについては長くなるのでまたの機会に。

冒頭”Jailbreak”も代表曲で、抑圧から自由への脱走というのはこのアルバムのテーマにもなっています。

こうしたハードな曲ばかりが注目されがちですが、"Running Back"や"Fight or Fall"のような穏やかな曲も忘れてはいけません。Philのボーカルは非常に温かみと哀愁に溢れた低音が魅力的です。また他のハードロックボーカリストと違いハードな曲でも決して高音シャウトをしませんでした。声域のせいもあるのでしょうが、そんな彼のスタイルも好きでした。

もう1つこのバンドサウンドの魅力はリズム隊にもあります。このアルバムでは希薄ですが、Brian Downeyのドラムは本来非常にファンキーで、それがPhilのベースと重なった時のリズム感覚はとても個性的でした。

一度でいいから生で見たかったものです。


Gary Moore 「Spanish Guitar」 (1979)

スパニッシュ・ギター~ベスト(紙ジャケット仕様)
ゲイリー・ムーア
USMジャパン
2011-04-13


1.Back On The Streets
2.Fanatical Fascists
3.Don't Believe A Word
4.Spanish Guitar (P. Lynnot vocal)
5.Parisienne Walkways
6.Put It This Way
7.Desperado
8.Castles
9.Fighting Talk
10.The Scorch
11.Spanish Guitar (G. Moore vocal)
12.Spanish Guitar (Instrumental)

先日ギターインストを特集したが、その中で何人かのギタリストについては語り足りないので、もう少し掘り下げておきたいと思う。まず今週はGary Mooreから。

昨年フィギュアスケートの羽生選手がショートプログラム曲に”Parisenne Walkway”を使用したことで、にわかに注目が集まっていた。Garyの泣きのギターが堪能できる名曲で、若いのになかなかニクい選曲をしてくれたと思った。

しかしあまり知られていないが、これと同じ位かそれ以上の名曲が”Spanish Guitar”である。これは当時シングルのみでリリースされていたのだが、オリジナルアルバムやベストなどにも収録されていないため、知名度もマイナーなままなのが非常にもったいない隠れた名曲だ。これを収録しているのが上のアルバムである。

これはベストではなく当時の音源を横断的に集めた変則的な編集版であるが、彼の幅広い活動と音楽性を垣間見ることができる。前半M1, M2, M3, M5の4曲は1978年の1stソロ「Back On The Street」からの選曲で、熱いハードロックと哀愁のバラードという彼の両面を堪能できる。また後半M6~M10は同時期に在籍していたColloseum Ⅱの「Electric Savage」と「War Dance」からで、ジャズロックという全く異なるジャンルの中で柔軟に適応しながら弾き倒している様子が聴ける。

で、目玉は”Spanish Guitar”である。実際タイトル通りのフラメンコギターが聴けるのは冒頭だけなのだが、曲調や歌詞にスパニッシュな雰囲気はよく表れている。そしてとにかくGaryのエレクトリックギターによる哀愁溢れる調べが最高だ。全部で3曲のバージョンを収録しており、GaryボーカルM11、インストバージョンM12、どれも優劣付け難い。しかしあえて選ぶならやはり共作した故Phil Lynottの味わい深いボーカルが聴けるM4だろう。

 images

ちなみにこのアルバム、表ジャケはいいのだが、裏ジャケがちょっと恥ずかしいことになっている。銃や弾丸ベルトを持っているのはまだ理解できるのだが、なぜムチを持っているのかが甚だ疑問で、完全に痛いSMな人になってしまっている…。そんな意味でもこれは貴重なアルバムだろう。


 
 

Gary Moore 急逝

Wild FrontierWild Frontier
Gary Moore

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Gary Mooreがスペインのホテルで急逝した。享年58歳という若さだった。昨年も来日しいたって健康だったはずなのに、泥酔後睡眠中に心臓発作で亡くなったとのこと。

Gary Mooreと聞いてまず思い出すのは、個人的にはあの泣きのギターである。当初は早弾ロックギタリストとして名声を集めていたが、やがてブルースに傾倒するようになりテクニックのみならず情感を込めたプレイを極め、いつしか人間国宝とまで呼ばれるに至った。例のいかつい顔で“Still Got The Blues”を弾く時の、琴線に触れるというよりも、聞き手の心に突き刺すような鋭く伸びるあの音色が印象的だった。

また同郷アイルランドのPhil Lynottとの友情も印象深い。Thin Lizzyでともに「Black Rose」という名盤を残してくれたものの、個性の強すぎる彼はバンドにも長居することもなかったが、Philとはそれぞれの運命が交差することが幾度となくあった。後年Philへのトリビュートライヴを主催したのも、やはり並々ならぬ思いがあったからだろう。

お互い早すぎた他界であったが、二人の冥福と再会を祈りたいと思う。


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