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山アートの旅(長野編)

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昨年の流行語大賞トップテンにはソロキャンプも選ばれていた。昨年夏に娘とキャンプをした時に味をしめ、同じ月に長野へもソロキャンプに行っていた。長野の安曇野から大町のエリアには、山に関する美術館や博物館がずらりと並んでいて、以前から行きたいと思っていた。

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安曇野山岳美術館。足立源一郎をはじめ、吉田博・原田達也氏などの素晴らしい山岳画を所蔵。熊谷榧さんの個展も開催していた。

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常念岳山麓にある須砂渡キャンプ場。素泊まり900円。蝶ヶ岳温泉も徒歩圏内。涼しくてセミも蚊もいない。花はサワギキョウ。

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烏川沿いに立つウエストン像。上高地のレリーフは有名だが、こちらは全く知られていない。

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田淵行男記念館。山岳写真家であり高山蝶研究家である氏の写真やスケッチが展示されている。槍ヶ岳山荘の穂刈氏らの写真展も開催されていた。

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大町山岳博物館。北アルプスの成り立ちや膨大な山岳生物の剥製、登山史の展示、飼育されているライチョウなど、予想以上に広くて午後一杯かけても全部見切れなかった。

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木崎湖キャンプ場。クマ出没警戒警報が出ていたり、夜雨が降ったりと大変だったが、翌朝は気持ち良く晴れトビが囀っていた。

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北アルプス展望美術館。ここで日本山岳画協会の史上最大規模の展覧会が開催されていた。F100号以上の作品がずらりと並び圧巻だった。

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北アルプスの山稜はずっと雲がかかっていて見えなかったが、代わりに緑の田の向こうに聳える有明山が印象的だった。また今年の夏もソロキャンプに行きたいがどうだろう。

富嶽図10選

2月23日は富士山の日である。昨年は私がそれまで撮影してきた富士山の写真を10枚選んでみたのだが、今年は趣向を変えてみたい。

私は山の美術を眺めるのも好きなのだが、日本で最も多く描かれてきた山が富士山である。恐らく世界中でもここまで美術の対象となってきた山はないだろう。このことは富士山が世界文化遺産に登録された理由の1つでもある。

ということで、今日は私が最も素晴らしいと思う富嶽図を10枚挙げてみたい。

①15c_伝雪舟等楊『富士三保清見寺図』
① 伝雪舟 「富士三保清見寺図」15c
雪舟は日本の水墨画を完成させた巨匠。この三保松原からの遠景は富嶽図のプロトタイプとして後世に影響を与え続けた。

②16c_狩野元信_絹本着色富士曼荼羅図
② 狩野元信 「富士参詣曼荼羅図」16c
修験道として富士参詣は人気を集める。山麓の浅間神社から山頂の如来三尊までの山行が細かく描かれている。

③1799 司馬江漢〈駿河湾富士遠望図〉
③ 司馬江漢 「駿河湾富士遠望図」1799
いち早く洋画の手法を取り入れた司馬江漢の作品には江戸時代中期とは思えない写実性がある。医学や地図制作にも通じた奇才。

④1801_小泉檀山_富嶽写真
④ 小泉斐 「富士登岳図巻」1801
実際に自身で富士に登った上で制作した長大な図巻。大胆な構図と臨場感で、同時代の谷文晁もこれを模写している。

⑤1832_葛飾北斎_山下白雨 冨嶽三十六景
⑤ 葛飾北斎 「富嶽三十六景 山下白雨」 1832
間違いなく世界で最も有名な富嶽の巨匠。「富嶽三十六景」以外にも「富嶽百景」や肉筆画なども多数あり。

⑥18_歌川広重_隷書版東海道五十三次_原
⑥ 歌川広重 「隷書版東海道五十三次 原」1849
「東海道五十三次」が有名だが、広重も「不二三十六景」を描いている。画面からはみ出すほどの迫力。

⑦1896_富岡鉄斎_富士山図屏風
⑦ 富岡鉄斎 「富士山図」1898
文人画・南画の奇才。彼も富士に登頂しており、その経験を元に見事な六曲一双屏風に描いている。

⑧1918和田英作「富士」
⑧ 和田英作 「富士」1918
洋画の富士山なら和田英作は外せない。山麓に移住し後半生はひたすら富士に向き合った。穏やかな写実が特徴的。

⑨1925_不染鉄《山海図絵(伊豆の追憶)
⑨ 不染鉄 「山海図絵」1925
不思議な魅力の日本画家。伊豆諸島に暮らしたこともあり、伊豆の海中から日本海まで俯瞰する大胆な構図で描かれている。

⑩1942_横山大観_正気放光
⑩ 横山大観 「正気放光」1942
富士山で有名な近代日本画の巨匠。迫力のある見事な富士を描き続けたが、戦時中は国粋主義が色濃かった。

古来より現代まで富士の美術作品はとにかく膨大にあるため、たった10点を選ぶのには難儀した。もし好きな人がいれば、河口湖美術館やフジヤマミュージアムをお勧めしたい。

オリンピックミュージアム

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新型コロナウィルスの第3波の猛威は留まるところを知らない。先日また1都3県に緊急事態宣言が発令され陰鬱な年明けとなった。昨夏から今夏に延期となった東京オリンピック・パラリンピックの開催もより遠ざかった感がある。

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そんなオリンピックであるが、昨秋に聖火が日本オリンピックミュージアムで公開されていた。これを観に行った時の様子も一応書いておこうと思う。ミュージアムは完成した新国立競技場の隣にある。

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館内に入ると、古代ギリシアのオリンピックの起源や、クーベルタンによる近代オリンピックの創設など、長い歴史が貴重な資料とともに紹介されていた。

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これまでの各大会で使用された聖火リレートーチ。1964年の東京オリンピックのものもあった。

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1964年東京大会、1972年札幌大会、1998年長野大会の各大会のメダル。札幌大会だけ銀がなかった。

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色々な競技での選手の身体能力を実感できるような体験もあったのだが、あいにく感染防止のために休止中だった。

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これがギリシアから特別機で運ばれてきたという東京2020の聖火。金色のランタンの中で小さな炎が揺れていた。

実は私も仕事の関係で何年も前からオリンピックの開催に向けてかなりの時間と労力を費やしてきた。そこで関わった多くの世界中の関係組織や企業の苦労も知っている。それだけに今のこの日本と世界の状況がやるせない。経済も大事だが、この負のスパイラルを終わらせるために今が正念場だろう。このトンネルの先の晴れた夏空が見たい。

日野春アルプ美術館

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かつて「アルプ」という文芸雑誌が存在した。串田孫一が発行人となり1958年から1983年までの25年間にわたって刊行された山の文芸誌である。深田久弥や田淵行男など、多くの著名な作家・学者達が寄稿していた。

これを見つけたのは神田神保町の「悠久堂」だった。山の本で有名なこの古本屋の2階にアルプのバックナンバーが大量に積み重なっており、試しに3冊だけ購入してみた。これが小冊子ながら非常に読み応えのあるものだった。

このアルプの美術館が山梨にあるということを山と渓谷誌で知り行ってみた。緑に囲まれた木造ロッジ風の素敵な建物だった。1階には坂本直行 (通称ちょっこうさん)の山岳画がずらりと展示されていた。北海道で開拓農民をしていたこともあり、遠景の日高山脈の絵が多い。実は坂本龍馬の長兄の孫にあたるのだということを、館長さんが教えてくれた。2階は畦地梅太郎の他、多くの現役画家さんの作品が並ぶ。栗田政裕氏の木口版画と中村好至惠氏の水彩画が特に素晴らしかった。

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この美術館のもう1つの目玉は「山の文庫」コーナー。館長さんがライフワークにされている古本屋巡りで集められた山に関する書籍が山のように並んでいる。他ではお目にかかれないような貴重な名著の数々に圧倒された。

館長さんが気さくな方で、画家や古本屋、登山などについて色々教えて下さった。実はこの美術館はあと3年で閉館されるのだという。アルプの発行期間が25年間だったのに合わせ、美術館も25年間で閉じると決めてらっしゃったとのこと。既に本棚の整理を始めてるらしい。

そして最後にとんでもないお土産を頂いた。被っているアルプのバックナンバーを段ボール一杯に下さったのだ。何と有難い、館長さんのご厚意に感謝。当分の間暇することはないだろう。閉館までに通い続けたい。

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山アートの旅(山梨編)

少し前になるがぶらりと山梨へ旅をしてきた。旅のテーマは山アート。

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まず最初に山梨県立美術館へ。ここはミレーを始めフランス風景画を多く所蔵している。また企画展「コレクションに見る山」では伊藤孝之と高野史静が良かった。

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午後は昇仙峡を訪れた。足早に渓谷に沿って歩いていく。覚円峰と仙娥滝はさすが迫力があった。

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ロープウェイで渓谷の上に出る。そこから20分ほど登って羅漢寺山(弥三郎岳)(1,058m)の山頂に到着。金峰山、茅ヶ岳、南アルプス、富士山と全方位のパノラマは絶景だった。

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この日泊まったのは日本山岳画協会の先生方に教えて頂いた「画家の宿 志満屋」。昭和初期からの多くの画家達の山の絵が無数に飾られており、まるで美術館のようだった。

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この宿が画家の先生方に人気があるのは、甲斐駒ヶ岳と鳳凰三山を真正面に見えるアトリエがあるから。この日は少し雲がかかっていた。

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翌日にまず向かったのは日野春アルプ美術館。昔の山岳文芸誌「アルプ」に関する美術館なのだが、こちらについては来週改めて書きたい。

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そこから足を延ばして早川渓谷の奈良田へ向かった。古民家カフェ鍵屋でビーフシチューを頂く。

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最後の目的地は南アルプス山岳写真館。ここは昨年末に亡くなった山岳写真家・白旗史郎さんの記念館でもあり、見事な作品の数々を堪能した。

富士山、南アルプス、八ヶ岳、秩父山系など数多の名山に囲まれた山梨県。いつか移住したいものだ。

峠の小さな美術館

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わりと近所に峠の小さな美術館という素敵なギャラリーがある。都立長沼公園上の尾根沿いにあり、長沼公園をハイキングがてら行ってみた。

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公園の麓には六社宮という小さな神社がひっそりと立っていた。

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長沼公園は多摩丘陵の一角で、平山城祉公園の隣に位置している。広大な園内には沢と尾根が何本も入り組んでおり、公園というよりも完全に山だ。

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しばらく登ると尾根に出る。広い頂上園地は休憩にちょうど良い。

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展望園地からは日野と八王子の街並みが見渡せる。左手には奥多摩の山々が連なる。

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緑の木立にたたずむ峠の小さな美術館に到着。所属する作家さん達の作品展が毎月開催されていて、自然と美術が溶け合う様が素晴らしい。

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隣には歴史のある鎌田鳥山。囲炉裏が並ぶ雰囲気のある店内で、夜は炭火焼、昼はカフェが楽しめる。

「バンクシー展 天才か反逆者か」

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横浜アソビルで開催されていた「バンクシー展 天才か反逆者か」を観に行ってきた。日時指定の事前予約だったが、閉展間近ということもありそこそこ混んでいた。

バンクシー(Banksy)は今や現代アートを象徴するアーティストである。政治的メッセージの強いストリートアートを世界各地に神出鬼没させ名を轟かせたが、その素性は明かされていない。

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場内に入るとまず最初に再現されたスタジオに座った彼が出迎えてくれた。ドキュメンタリー「Exit Through The Gift Shop」で観た彼とスタジオを目の前にして引き込まれた。

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本来彼の作品を観るべき場所はストリートなのだろうが、それが難しい私達にとってこうした展覧会は有難い。ストリートのステンシル技術で版画も制作しており、どれも版数番号が記載されていた。

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「Love Is In The Air」
世界中の暴力連鎖に一石ならぬ花束を投じる彼の代表作であり、本展の扉絵にもなっている。

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「Girl With Baloon」
サザビーズで104万ポンドで落札された直後、額縁に仕掛けられたシュレッダーで裁断された作品。

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「Flag」
場内には計70点以上の作品が展示されていたが、どれも軍国主義や資本主義などに対する痛烈な皮肉が表現されていた。私が個人的に最も気に入ったのがこの作品。「硫黄島の星条旗」が元になっているが、描かれているのは兵士ではなく、ディストピアの少年少女である。


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「The Walled Off Hotel」
彼が2017年にベツレヘムに開業したホテル。パレスチナ・イスラエル間の分離壁の目の前に建てられ「世界で一番眺めが悪い」が、館内では彼やパレスチナ人芸術家の作品を鑑賞できる。

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「Dismaland」
彼が2015年に期間限定でイギリスの地元で開園した。私はディズニーランドには全く興味がないが、このとびきりダークなサイコホラーテーマパークには是非行きたかった。巡回展希望。

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今年彼から英南部サウサンプトンの病院に1枚の作品が贈られた。作品中には捨てられたヒーローの代わりに女性看護師の玩具で遊ぶ少年が描かれていた。"Thanks for all you're doing. I hope this brightens the place up a bit, even if its only black and white."というメモも添えられていたという。


「芸術は政治とは無縁であるべきだ」というニュアンスの言葉を時折目耳にする。要は美しいものや万人受けするものだけを表現していれば良いのだというのだろう。しかし歴史を顧みれば、これまで芸術は政治と密接に関わってきた。何かを表現し訴えたいという動機は、美しいものだけなはずがない。今世界中の独裁国家や右傾化する国々で脅かされている表現や言論の自由が保障されるようになる日は来るのだろうか。

「たゆたえども沈まず」

たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫)
原田マハ
幻冬舎
2020-04-08


私は読書においては完全に文庫本派だ。持ち運びに便利だし、本棚でも場所を取らない。美術小説の第一人者 原田マハさんの本書は2017年の発刊以来ずっと待っていたのだが、この度ようやく文庫本化された。

表紙絵の通りこれはゴッホにまつわる小説である。19世紀のパリ美術界におけるジャポニズム旋風の一翼を担った日本美術商「若井・林商会」で働く加納重吉が1人目の主人公だ。彼は架空の人物だが、社長の林忠正は実在の人物であり、林の存在がこの小説執筆の動機となっている。

もう1人の主人公がグーピル商会の支配人としてブルジョワジー相手に美術商をしているテオドルス・ファン・ゴッホ。林忠正と重吉がこのテオに出会い、さらにそこに画家の兄フィンセントが登場し、4人が密接に絡みながら浮世絵や印象派という新しい時代の到来の中で奮闘する。

才能がありながらも売れない兄フィンセントと、それを献身的に支える弟テオ。悲劇的結末は不可避ながらも、そこに至る過程で林の助言や重吉の精神的支えがどれだけ大きかったかということをこの物語は描いている。

実際にはゴッホ兄弟と林商会との接点を示す証拠は存在しないのだが、つながりがあったはずだという推測のもとに小説は展開していく。そのリアリティ溢れる描写に読み手も引き込まれ、いつしか事実はきっとこうだったはずだと思わせる説得力がある。

もし悲劇が避けられたならどうなっていただろう。そんな物語も読んでみたいと思った。

コロナ禍と美術

先週は音楽の今について少し書いたが、今日は美術について書きたい。
当然ながら現在は全国というか全世界のあらゆる美術館が休館されており、開催予定だった全ての美術展が休止・延期もしくは中止されている。ここへ来てゴールデンウィークまでだった緊急事態宣言の延長が決定した。今春は観たかった美術展が非常に多くあったのだが、もはや絶望的な状況である。これもまるでこの世から美術が消えて行くような錯覚すら覚える。

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「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」
3/3-6/14 @ 国立西洋美術館
今春注目されていた美術展。ゴッホやターナー等のそうそうたる作品が展示される予定だった。このレベルの作品を数多く借りて来るには莫大な費用がかかり、これをペイ出来るだけの来場者数かける会期日数を見込んでいたはずである。仮に6月のみ開幕出来たとしても甚大な赤字が出ることは避けられないだろう。

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「バンクシー展 天才か反逆者か」
3/15-9/27 @ 横浜アソビル
こちらは3月に短期間だけ開幕した後に休止となった。行った方に伺うと、かなり充実した展示内容だったとのこと。期間は9月まであるので、それまでに再開を期待する。

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「白川義員写真展 永遠の日本/天地創造」
3/20-5/17 @ 東京都写真美術館
世界百名山などで著名な山岳写真家の大規模展覧会。予定では5/17までだったが、中止ではなく休止となっているので、果たしてリスケしてくれるのだろうか。

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「川瀬巴水展」
4/18-6/7 @ 平塚市美術館
昭和初期の人気版画家。緊急事態宣言の延長に伴い、こちらは残念ながら中止となった。人気作家だから、またいつかどこかで観る機会もあるかもしれない。

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「ショパン - 200年の肖像」
4/26-6/28 @ 練馬区立美術館
日本ポーランド国交樹立100周年の記念企画。こちらは巡回展なので、もし練馬会場でダメなら次の静岡会場まで行くしかない。

この他にも断念したものや、今後危ぶまれるものも色々ある。毎回同じことを言ってるが早く終息して下さい。

TAKAO 599 MUSEUM

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東京多摩にある高尾山は人気の高い山である。京王線でアクセスしやすく、599mと低山ながらも登山ルートもバリエーションに富み、薬王院など見所も多い。最近はミシュランガイドにも紹介されたことで、外国人旅行者も増えた。

その高尾山でもみじ祭りがあるというので週末に試しに行ってみたのだが、案の定スゴい人混み。登る気を失くして、ケーブルカー麓駅前で団子を食べながらイベントを少し見た後、TAKAO 599 MUSEUMに寄ってみた。ここは最近出来た所で、高尾山の自然を紹介しているのだが、単なるビジターセンターとは趣向が異なる。

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白を基調にした館内にはショーケースが整然と並んでいる。

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ショーケースの中には様々な自然の生物が飾られているが、真空保存した花々が美術品のようだった。

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木の葉も非常に分かりやすく展示されている。

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動物の剥製たちも沢山いるが、いちいち名前を付けていないところもアートっぽい。

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時折バックの白壁にプロジェクションマッピングの映像も流れる。前説では英語も交え、インバウンド対応もされていた。

地元のスイーツを堪能できるカフェや、木工クラフトの体験の他、様々なイベントもやっていた。高尾山に登らなくても楽しめるが、登りたいという気にもさせてくれるMUSEUMだった。
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