T-Bone Burnet

T-Bone Burnett プロデュース傑作10選

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今日はプロデューサーT-Bone Burnettが手掛けた作品を色々取り上げてみたいと思います。彼はアメリカンルーツミュージックに造詣が深く、オーガニックな音作りを得意としていますが、ひねくれたポップセンスや実験精神も持ち合わせています。彼の作品全部を聴いたわけではないですが、特に好きなものを10枚選んでみました。

Los Lobos 「How Will The Wolves Survive」(1984)
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今やベテランとなったチカーノバンドの初期の傑作。Rock & Rollとメキシコ音楽が見事に融合しています。

Counting Crows 「August And Everything After」(1993)
crows
吟遊詩人・稀代のボーカリストAdam Duritz率いる大陸的バンドのデビュー作。全米で800万枚の大成功を収めました。

The Wallflowers 「Bringing Down The Horse」(1996)
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Bob Dylanの息子Jacob率いるバンドのセカンド。気持ち良いアメリカンロックでシングル”One Headlight”が大ヒットしてました。

OST 「O Brother, Where Art Thou ?」(2000)
brother
南部ルーツミュージックを総括してみせたサントラ。グラミー賞を総ナメし、プロデューサーT Bone Burnettの名を知らしめました。

Ollabelle 「Ollabelle」(2004)
Ollabelle
Levon Helmの娘Amyが在籍していたグループのデビュー作。見事なゴスペルを始め、様々なルーツミュージックを消化しています。

OST 「Walk The Line」(2005)
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Johnny Cashの伝記的映画のサントラ。1950年代のRock & Rollが生き生きと再現されており、主演Joaquin Phoenixが熱演してます。

Robert Plant & Alison Krauss 「Raising Sand」(2007)
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Led Zeppelinのボーカリストとブルーグラスの歌姫のコラボ作。意外な組み合わせに驚きましたが、聴いて納得。

B.B. King 「One Kind Favor」(2008)
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昨年他界してしまったB.B.の遺作となった作品。落ち着いた雰囲気の中にも彼の熱い想いが伝わってきます。

Willie Nelson 「Country Music」(2010)
nelson
タイトル通りストレートで素朴なカントリー音楽。オーガニックな音作りと老成した味わいが堪能できます。ジャケットも◯。

OST 「Inside Llewyn Davis」(2013)
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60年代ニューヨークのフォークシーンを描いた映画のサントラ。主演Oscar Isaccを始め、若手の好演が光ります。

R&R、カントリー、ブルーグラス、フォーク、ブルース、ロック、ラテンなど守備範囲はかなり広いですが、この多様なアメリカ音楽はみんな根っこではつながっているということなんですね。これ以外では最近の若手ミュージシャン達の作品は未聴なので、今後聴いてみたいと思います。

「Another Day, Another Time: Celebrating the Music of 'Inside Llewyn Davis'」 (2015)

Another Day, Another Time: Cel
Various Artists
Nonesuch
2015-01-20





Disc 1
1. Tumbling Tumbleweed - Punch Brothers
2. Rye Whiskey - Punch Brothers
3. Will the Circle Be Unbroken? - Gillian Welch
4. The Way It Goes - Gillian Welch & David Rawlings
5. The Midnight Special - Willie Watson
6. I Hear Them All | This Land Is Your Land - Dave Rawlings Machine
7. New York - The Milk Carton Kids
8. Tomorrow Will Be Kinder - Secret Sisters
9. You Go Down Smooth - Lake Street Dive
10. Please Mr. Kennedy - Elvis Costello, Oscar Isaac & Adam Driver
11. Four Strong Winds - Conor Oberst
12. Man Named Truth - Conor Oberst
13. Blues Run the Game - Colin Meloy
14. Joe Hill - Joan Baez, Colin Meloy & Gillian Welch
15. All My Mistakes - The Avett Brothers
16. That’s How I Got to Memphis - The Avett Brothers
17. Head Full of Doubt/Road Full of Promise - The Avett Brothers

Disc 2
1. Mama’s Angel Child - Jack White
2. Did You Hear John Hurt? - Jack White
3. We’re Going to Be Friends - Jack White
4. Waterboy - Rhiannon Giddens
5. ’S iomadh rud tha dhìth orm - Ciamar a nì mi ’n dannsa dìreach - Rhiannon Giddens
6. Hang Me, Oh Hang Me - Oscar Isaac
7. Green, Green Rocky Road - Oscar Isaac
8. Tomorrow Is a Long Time - Keb’ Mo’
9. Rock Salt and Nails - Bob Neuwirth
10. The Auld Triangle -- Chris Thile, Chris Eldridge, Paul Kowert, Marcus Mumford, Noam Pikelny & Gabe Witcher
11. Didn’t Leave Nobody but the Baby - Gillian Welch, Rhiannon Giddens & Carey Mulligan
12. Which Side Are You On? - Elvis Costello & Joan Baez
13. House of the Rising Sun - Joan Baez
14. Give Me Cornbread When I’m Hungry - Marcus Mumford & Joan Baez
15. I Was Young When I Left Home - Marcus Mumford
16. Fare Thee Well(Dink’s Song)- Oscar Isaac & Marcus Mumford
17.Farewell - Marcus Mumford & Punch Brothers

先日の「Inside Llewyn Davis」は1960年代初頭のニューヨークのフォークシーンを見事に描いた映画でした。その映画の音楽を再現したコンサートがにニューヨークで開催されていたのですが、この様子が以前WOWOWで放映されていました。

登場するのは主演したOscar Isaacを始め、Marcus MumfordやPunch Brothersなど映画にも出演していた若手たち。またそれ以外にも、Joan Baez、Jack White、Patti Smith、Gillian Welchなど豪華なベテラン勢も登場していました。こうした面子が皆昔のトラッドやフォーク、カントリーやアイルランド音楽などを演奏するのですが、これが本当に素晴らしい。アコギにフィドル、ウッドベースにビオラ。シンプルな編成のアコースティック楽器に乗る見事な歌声とハーモニーに聴き惚れます。このステージで演奏された音楽は、上のCDとなってリリースされています。

ただ映像で面白かったのは、裏手の楽屋の様子がたっぷりと映されていたこと。ここで中心になっていたのが、やはり音楽プロデューサーのT Bone Burnett。アーティスト達の間を歩き回って、優しくも的確なアドバイスを与えていて、アーティスト達から信頼されているのも分かります。

あと、これを見て一番印象的だったのは若いアーティスト達の存在。Mumford & SonsのMarcus Mumford、Punch BrothersのChris Thile、Carolina Chocolate DropsのRhiannon Giddens、等々。最近のシーンは全く知りませんでしたが、昔の音楽がこうした才能のある若い人達に歌い継がれているのを見るのは良いものです。しかも彼らが売れているというのは何とも良い時代になりました。


「O Brother, Where Art Thou?」 Original Soundtrack (2000)

オー・ブラザー! オリジナル・サウンドトラックオー・ブラザー! オリジナル・サウンドトラック
サントラ エミルー・ハリス サラ ザ・コックス・ファミリー ジョン・ハートフォード ラルフ・スタンレー ずぶ濡れボーイズ フェアフィールド・フォー スタンレー・ブラザーズ ジェイムス・カーター&ザ・プリズナーズ ハリー・マックリントック

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1. Po' Lazarus - James Carter & the Prisoners
2. Big Rock Candy Mountain* - Harry McClintock
3. You Are My Sunshine - Norman Blake
4. Down To The River To Pray - Alison Krauss
5. I Am A Man Of Constant Sorrow - The Soggy Bottom Boys
6. Hard Time Killing Floor Blues - Chris Thomas King
7. I Am A Man Of Constant Sorrow - Norman Blake
8. Keep On The Sunny Side - The Whites
9. I'll Fly Away - Alison Krauss and Gillian Welch
10. Didn't Leave Nobody But The Baby - Emmylou Harris, Alison Krauss and Gillian Welch
11. In The Highways - Sarah, Hannah and Leah Peasall
12. I Am Weary (Let Me Rest) - The Cox Family
13. I Am A Man Of Constant Sorrow - John Hartford
14. O Death - Ralph Stanley
15. In The Jailhouse Now - The Soggy Bottom Boys
16. I Am A Man of Constant Sorrow - The Soggy Bottom Boys
17. Indian War Whoop - John Hartford
18. Lonesome Valley - Fairfield Four
19. Angel Band - The Stanley Brothers

先週の著書の中で重要な資料の1つとして扱われていたのがこの映画だった。今週はこれを取り上げてみたい。

舞台は1930年代アメリカミシシッピ州。刑務所を脱獄した白人男3人組が、埋蔵金を探すために逃走の旅を繰り広げる。まぁストーリー自体はよくあるロードムービーだが、ひとクセある3人のキャラクターと、道中出会う破天荒な銀行強盗や、選挙に苦戦する州知事、別れたカミさんなど、様々な登場人物たちが楽しませてくれる。

しかしこの映画の最大の魅力は全編に散りばめられた音楽にある。囚人たちが降り下ろすハンマーの音をリズムに唄うワークソング、クロスロードで悪魔に魂を売ったという黒人のギターをバックに歌う3人組のヨーデル、湖の水で洗礼を受ける信徒たちが唄う霊歌、選挙演説の前後に登場するカントリーグループなど、随所に音楽が登場する。それもミュージカルのような無理矢理感がなく、ストーリーの自然な流れの中で、当時の文化背景に基づいて折り込んでいるのが巧い。

多くの曲はアメリカのトラディショナルソング。M6はSkip James、M8とM11はCarter Family、M15はJimmie Rodgersがオリジナルだ。ここで演奏しているミュージシャンとしてはAlison Krauss、Gillian Welch、Emmylou Harrisといった有名シンガーが名を連ねているが、注目すべきはブルーグラスの大御所Stanley BrothersのRalph Stanleyが参加していることだろう。再ヒットしたM5も彼のレパートリーだ。結果的にこのサントラはグラミー賞を授賞し、500万枚以上のセールスをあげ、全米にルーツミュージックブームを起こした。立役者であるプロデューサーT Bone Burnetは、これで名を上げたのだった。今年になってこれのデラックスエディションもリリースされている。

戦前の南部アメリカのルーツミュージックとその文化背景を知る上で、この映画とサントラは正に分かりやすい教科書である。願わくば、私もこんな南部の音楽を辿る旅をしてみたいものだ。

★★★★☆


Willie Nelson 「Country Music」

Country MusicCountry Music
Willie Nelson

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1. Man With The Blues
2. Seaman's Blues
3. Dark as a Dungeon
4. Gotta Walk Alone
5. Satan Your Kingdom Must Come Down
6. My Baby's Gone
7. Freight Train Boogie
8. Satisfied Mind
9. You Done Me Wrong
10. Pistol Packin' Mama
11. Ocean of Diamonds
12. Drinking Champagne
13. I Am a Pilgrim
14. House of Gold
15. Nobody's Fault But Mine

 この人はアメリカ人にとって生きた国宝みたいな人である。しかしそれは何も伝統的なカントリーを長くやっているからというのでない。かつて保守的なカントリーにあって、後ろ指差されながら様々なジャンルとコラボレーションをし続けたことから、異端やアウトローとも呼ばれた。しかしその結果あらゆるジャンルのアーチストから尊敬の念を得ている。Eric Claptonが主催しているCrossroads Guitar Festivalでも、ブルースディではB.B. Kingがトリを努める一方で、カントリーディのトリはやはりこの人だった。

 1933年生まれだから齢77歳になるのだが、未だに毎年のように作品をリリースし続けているその創作意欲には恐れ入る。これまでスウィングやスタンダードナンバーなど他ジャンルに手を出してきたが、今作はそのタイトルの通り直球である。カントリーの聖地Nashvilleで録音し、オリジナルの新曲を1曲、トラッド3曲、定番のブルーグラス/フォーク・ソング、Ernest TubbのM2, Merle TravisのM3, Doc WatsonのM7のカバーを収録している。

 プロデューサーのT-Bone Burnetはルーツ系作品で引っ張りだこのベテランであり、生音を活かしたオーガニックなサウンド作りが非常に巧い人だ。そのつながりでグラミー賞も獲ったRobert Plant & Allison Clauseの「Raising Sand」の熟練の演者たちがバックを固めている。バンジョーやマンドリン、ペダルスティール、フィドルの響きが、Willieの持つ優しく暖かな歌声と相成って、この上なく味わい深い音世界を構築している。また思わずジャケ買いをしてしまう、このジャケットも良い。

 不謹慎かもしれないが、この人には長生きしてほしいと思ってしまう。

★★★★


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