Alternative Rock

The Smashing Pumpkins 「Mellon Collie and the Infinite Sadness」 (1995)

メロンコリーそして終りのない悲しみ(通常盤)
ザ・スマッシング・パンプキンズ
ユニバーサルミュージック
2012-12-19


<Dawn to Dusk>
1. Mellon Collie And The Infinite Sadness
2. Tonight, Tonight
3. Jellybelly
4. Zero
5. Here Is No Why
6. Bullet With Butterfly Wings
7. To Forgive
8. Fuck You (An Ode To No One)
9. Love
10. Cupid De Locke
11. Galapogos
12. Muzzle
13. Porcelina Of The Vast Oceans
14. Take Me Down

<Twilight to Starlight>
1. Where Boys Fear To Tread
2. Bodies
3. Thirty-Three
4. In The Arms Of Sleep
5. 1979
6. Tales Of Scorched Earth
7. Thru The Eyes Of Ruby
8. Stumbleine
9. X.Y.U.
10. We Only Come Out At Night
11. Beautiful
12. Lily (My One And Only)
13. By Starlight
14. Farewell And Goodnight

先週の中からこのアルバムだけは取り上げておきたい。Smashing Pumpkinsは、デビューが1991年だったこともあり、グランジ組に数えられることも多いが、音楽的にはかなり異色だった。当時私が最もハマっていたのが、1995年にリリースされたこの3rdアルバム。2枚組28曲というスゴいボリュームにも関わらず全世界で1200万枚以上というモンスターヒットになった作品だ。

中心人物はボーカル・ギターのBilly Corgan。当時読んだ彼のインタビューが非常に印象に残っている。歌詞の内容についての質問に対して、Billyはふざけるばかりで全く答えようとせず、完全にインタビューとして破綻していた。その理由はアルバムの中で余りにも自己の内面を吐露し過ぎたため、これ以上話すことなどないということだった。

無駄なほどに背が高く、声も変で…etc。家庭環境の悪さから異様な程に自己肯定感が低いBilly。そんな自己を投影した主人公が、それを打開するために自身の変革を叫ぶというのが、この作品の大きなテーマとしてある。そうした中で、怒り・悲しみ・喜びという様々な感情が曲毎に爆発する。そのため必然的に各曲の表現の振幅というのが余りにも広いのだ。

ピアノの調べが美しいイントロ①から大仰なオーケストレーションをバックにした高揚感のある②、そしてハードなギターで疾走する③へ。まずこの冒頭3曲で完全に持って行かれる。その後⑨まではかなり歪んでヘヴィな楽曲が並ぶ一方で、⑩から⑬まではポジティブで感動的な楽曲が並ぶ。最後に至っては⑭ではまるで子守唄のように優しく囁く。2枚目の冒頭①と②は、また一転して完全に自暴自棄レベルにヘヴィ。シングルヒットした⑤も名曲だ。これだけの楽曲がありながら捨て曲もなく、驚くほどの完成度を誇っている。それもそのはずで、後にシングルのカップリングやデラックスエディションの膨大な未発表曲で明らかにされたように、この時期Billyは恐ろしいほどの創作意欲に溢れており、ここに収録された何倍もの楽曲を作り上げていたのだった。

ちなみにこのバンドはメンバーも個性的で、日系人ギタリストJames Iha、可愛い顔して歪んだベース音を鳴らすD'arcy、手数の多いドラマーJimmy Chamberlinとキャラが立っていた。後にメンバーの脱退、解散、再結成をする中で、日系ギタリストや女性ベーシストに固執するように、Billy自身この黄金期のメンバーに思い入れが強かったようだ。

1998年の来日公演も観に行ったのだが、それについて書くとまた長くなるので、またの機会に。


グランジ傑作10選

今日は90年代初頭にアメリカで隆盛したグランジを特集してみます。
それまでの華美なハードロックに対するカウンターカルチャーとして生まれたグランジムーブメント。当時HR/HMファンだった私にとって、ダーク&ヘヴィというイメージで当初は忌避していましたが、一旦聴きだしたら実は結構キャッチーなメロディにハマってしまいました。
そんな当時のグランジシーンで最も好きだった傑作10枚を選んでみました。

 ① Smashing Pumpkins 「Mellon Collie and the Infinite Sadness」 (1995)
mellon
Billy Corganの表現の振幅があまりにも大きすぎる2枚組名盤。グランジの中でも特異な存在でした。

 ② Pearl Jam 「Vs」 (1993)
pearl
色々とセンセーションを巻き起こしました。シーンが消えてもずっと現役であり続けたのも頼もしい。

 ③ Nirvana 「Neverland」 (1991)
nirvana
時代の象徴的な存在。1994年にKurt Cobainが拳銃自殺し解散。以降Dave GrohlはFoo Fightersとして活動。

 ④ Alice In Chains 「Dirt」 (1992)
alice
陰鬱なヘヴィさと、ネバりつくようなメロディがクセになる。2002年にボーカルLayne Staleyが自殺し他界。

 ⑤ Soundgarden 「Badmotorfinger」 (1991)
sound
とにかく”Jesus Christ Pose”のカッコ良さにヤラれました。2017年にボーカルChris Cornellが自殺し他界。

 ⑥ Therapy? 「Troublegum」 (1994)
therapy
アイルランド出身でイギリスで活動。直接グランジではないですが共鳴するものはありました。

 ⑦ Bush 「Sixteen Stone」 (1994)
bush
批判もありましたが純粋に良い曲を書いていたと思います。解散するも2011年に再結成。

 ⑧ Stone Temple Pilots 「Core」 (1992)
stone
ボーカルのScott Weilandは後年Velvet Revolver等で活動するも、ドラッグ問題もあり2015年に他界。

 ⑨ The Presidents Of United States Of America 「The Presidents Of United States Of America」  (1995)
pusa
シアトルの3人組。3弦ギターに2弦ベースで変な歌ばかり歌うアメリカ大統領達には笑わせてもらいました。

 ⑩ Live 「Throwing Copper」 (1994)
live
日本では知名度低いが、向こうでこのアルバムは400万枚も売れ人気がありました。

Chris Cornell 急逝

chris

Chris Cornell (クリス・コーネル)が他界してしまいました。死因は自殺とのこと。享年52歳でした。

Chris Cornellと言えば、やはりSoundgarden。グランジシーンのオリジネイターであり、後続に与えた影響も大。また彼はそれ以外にも、Temple Of The  DogやAudioslave、そしてソロと、幅広い活動をしていました。ファンや他の多くのミュージシャンにも慕われていたのも、彼のフロントマンとしての魅力と人柄によるところだったのだと思います。

一昨年にStone Temple PilotsのScott Weilandが亡くなった時は、ドラッグ問題を抱えていたので理解できましたが、Chrisに関してはなぜという感じ。グランジシーンのフロントマンはどうしてこう皆不遇の死を遂げてしまうのだろう。

RIP


Saigon Kick 「Devils In The Details」 (1995)

Devil in the Details
Saigon Kick
Sanctuary
2002-05-13


1. Intro
2. Russian Girl
3. Killing Ground
4. Eden
5. Going On
6. Everybody
7. Spanish Rain
8. Flesh And Bone
9. Sunshine
10. Victoria
11. Afraid
12. So Painfully
13. Edgar
14. All Around

変わり行く時代の狭間にいたもう1つのバンドを紹介したいと思います。Saigon Kick。これも当時好きでした。

ギターのJason BielerとボーカルのMatt Kramerを中心にアメリカのフロリダで結成され90年にデビュー。このオルタナティヴな香りのするハードロックバンドはデビュー時には話題になり、2nd「Lizard」からは”Love Is On The Way”というアコースティックバラードもヒットしました。

しかしこの後にボーカルのMattが脱退。残ったJasonが自らボーカルを取り、作曲・プロデュースまで1人で4役をこなし3rdアルバム「Water」をリリースします。これも傑作だったのだがなぜか売れず、結局アメリカのアトランティックから契約を切られてしまいます。しかしJasonは諦めず、アジアでの根強い人気を足掛かりにして新たなレコード契約を獲得しこの4thを制作。これが彼らのキャリアで頂点となる名盤でした。

このバンドの魅力はヘヴィなギターの上に乗る粘り着くようなボーカルメロディで、②や④、⑧あたりは癖になります。ここら辺はAlice In Chainsに近いものもあるが、彼らの場合はもっとポップでキャッチー。また今作は跳ねるようなトライバルリズムも特徴的で、そこに突き抜けるようなボーカルコーラスが乗る⑨や⑪も堪らない。さらに今作では多国籍な魅力にも溢れており、①はアフリカ民族風なチャントだし、⑦ではスパニッシュなアコースティック、⑩のピアノはジャジーで高いセンスが光る。驚くほどに幅広い音楽性を驚くほどの完成度で提示してみせたのが今作でした。

私にはなぜこれが当時売れなかったのか分からなかったのですが、つまりオルタナティヴ界からはHR/HMだと思われ、HR/HM界からはオルタナティヴだと思われていたわけです。結局その広い音楽性が結果的に仇となってしまったのでした。


Galactic Cowboys 「Galactic Cowboys」 (1991)

Galactic Cowboys
Galactic Cowboys
Geffen Gold Line Sp.
1996-03-19


1. I'm Not Amused
2. My School
3. Why Can't You Believe In Me
4. Kaptain Krude
5. Someone For Everyone
6. Sea Of Tranquility
7. Kill Floor
8. Pump Up The Space Suit
9. Ranch On Mars Reprise
10. Speak To Me

先週のThe Wildheartsのデビューと同じ頃に、同様にMetallica meets The Beatlesと称されたバンドがアメリカにもいました。それが今週ご紹介するGalactic Cowboysです。

出身はアメリカの中西部ミズーリ・テキサス。1991年にセルフタイトルの今作でデビューした時は衝撃的でした。スラッシュメタル並みにヘヴィで分厚いギターリフで攻め立ててきたと思ったら、サビは見事なコーラスハーモニーで極上のポップメロディを歌い上げる。その変化の幅は先週のThe Wildhearts以上でしょう。プロデューサーはKing's Xを手掛けたSam Taylorで、そのサウンドに通じるものもありました。

彼らが面白い存在だった理由はサウンドだけではなくコンセプトにもあります。バンド名やジャケットにも現れている通り、彼らは出身である米片田舎と宇宙の融合を目指していました。オープニングは牛の鳴き声で、馬の蹄鉄職人だったボーカルはハーモニカも吹きます。一方で歌詞は宇宙などを舞台にした意味深い物語になっており、さらにはM11の大作を始め複雑な曲展開もみせ、プログレッシブな面も持っています。とにかくいい曲が多いのですが、歌メロが極上なM5だけでも聴いてほしいと思います。

93年のセカンドではそのサウンドの個性をさらに磨きをかけ、日本ではより知名度を上げます。が、本国では成功を収めるまでは至らず。レーベルを変え何枚かリリースした後に解散してしまいます。今聴いても充分カッコいいのですが、これが売れなかったのはHR/HMとオルタナティヴの中間という立ち位置のせいでしょうか。非常に勿体無いですね。


The Wildhearts 「P.H.U.Q」 (1995)

P.H.U.Q
ワイルドハーツ
イーストウエスト・ジャパン
1995-06-10


1. I Wanna Go Where The People Go
2. V-Day
3. Just In Lust
4. Baby Strange
5. Nita Nitro
6. Jonesing For Jones
7. Woah Shit, You Got Through
8. Cold Patootie Tango
9. Caprice
10. Be My Drug
11. Naievety Play
12. In Lilly's Garden
13. Getting In
14. If Life Is Like A Love Bank I Want An Overdraft (Japan only)
15. Do The Channel Bop (Japan only)

昨年11月にThe Wildheartsがまた来日していました。私は以前The Wildheartsは本当に好きで、2003年にも一度だけだがライブ参戦したことがありますが、それ以降しばらく離れていました。今回は名盤「PHUQ」の再現ライブだったということで気になっていたが、結局行けなかったのが悔やまれました。

彼らのデビューは1992年。Quireboysを脱退したGingerを中心に結成。初めて”Turning American”を聴いた時は衝撃的でした。ヘヴィなギターリフに乗るポップなメロディはThe Beatles meets Metallicaとも言われ、また皮肉一杯の歌詞も強烈でした。ただ93年の1stフルアルバム「Earth Vs The Wildhearts」はRock & Rollとしては最高でしたが、思っていたよりもストレートになってしまった印象でした。

この「PHUQ」はそれに続く2ndになります。シングルカットされた冒頭M1は最高にポップでご機嫌なナンバー。その後も比較的ミドルテンポで気持ち良いギターリフとキャッチーな歌メロの楽曲が並びます。

しかしこのアルバムの真骨頂はM7以降のいわゆるB面。やけくそ気味に突進するM7から、破壊的なM8、不穏なM9という3曲が組曲になった後に、心洗われるようなM10のイントロが流れます。その後もとてつもないヘヴィさと、極上のメロディが、皮肉とユーモアをもって分裂症的に展開。このRock & Roll、ポップ、パンク、ハードコア、あらゆるものを消化して吐き出すカルタシスは、なかなか他では味わえないでしょう。

当時のGingerは創作意欲に溢れていて、このアルバムも本当は2枚組にしたかったらしいが、レコード会社の反対で実現できず。漏れた楽曲はシングルB面や後の「Fishing For Luckies」等に収録されていますが、聴けばそのレベルの高さが分かります。

その後Devin Townsendに刺激されたGingerは続く97年の3rd「Endless, Nameless」でインダストリアルハードコアばりのノイズにまみれた作品を発表し酷評されることになりますが、あの破壊力が私にとっては快感だったものでした。

昔非公式ファンサイトを始め多くのサイト管理人さん達と一緒にThe Wildheartsをヘッドライナーに据えたRock & Rollフェスティバル開催のための署名活動なんてことをしたこともありました。数々のレコード会社やドラッグのトラブル、メンバー交代、解散と再結成もありながら、日本のファンは根強く支援し続けました。それもGingerの人間性と彼の書く音楽の賜物でしょう。

 

Faith No More Live Report 2015

faithnomore2

90年代後半から2000年代中盤くらいまで、ヘヴィロック・ミクスチャーロックは世界的なムーブメントとなっていた。それの直接的なルーツにあたるのがFaith No Moreだったのだが、彼らはちょうどその時代には活動をしていなかった。彼らの2009年の再結成以来、来日の発表をずっと期待していたが、全く来る気配はなく諦めていた。しかしここへ来て18年振りの新作の制作を始め、これに伴いワールドツアーを再開。そしてようやく来日公演が実現した。

今回の日本公演は東京の2回のみ。会場は新木場Studio Coast。私は2日目に参戦した。当日職場から凍えるような寒さと雨の中、強風に傘も壊れ散々な思いで会場入りした。場内にはガタイのいい外国人の率が高かった。

前座は2組。Le Butcherettesは急遽開演時間前に追加されていた。女性のボーカルとドラムに男性ベースの3人組。ボーカル女性が暴れたり金切り声を上げたり倒れたりする、かなりエキセントリックなバンドで、Mike Pattonが好きそうな感じだ。

もう1組はOmarとCedricのアフロ2人組を擁するAntemasque。2人のことはデビュー時のMars Voltaだけ聴いたことがあったので知っていた。テクニックは折り紙付きだが、猛烈なアグレッションで駆け抜けていく様は見応えがあった。

どんでんではローディーに交じってギターのJonが自身の機材のセッティングをしていた。ステージには沢山の観葉植物が飾られる。「Angel Dust」でカヴァーしていたMidnight Cowboyの原曲がSEで流れると場内歓声。そして20:15頃に大歓声の中、真打Faith No Moreが登場。中央にMike Pattonが立ち、左手にキーボードRoddy Bottum、左手後方にベースBilly Gould、右手にギターJon Hudson、中央後方ドラムMike Bordin。全員真っ白の衣装で、Mikeは赤いマスクをしている。オープニングは新曲”Cone Of Shame”だった。

曲後Mikeの「ハイ、ドーモ」に場内笑い。そして2曲目でいきなり名曲”Epic”がスタートすると場内のボルテージは一気に上がり合唱。そのまま3曲目”Ricochet”へ。Mikeは拡声器を持ってきて絶叫する。MikeのMC、「昨日のショーを見た奴はいるか?昨日と今日とどちらが良かったか後で投票しようか。最低のショーと最高のショーでな」前日キーボードがトラブルでほとんど音が出ていなかったらしいが、これは彼ら自身も相当悔しかったようだ。

今日はキーボードはしっかり音が出ており、Roddyは正に水を得た魚のよう。昨日の鬱憤を晴らすかのように気合いの入ったプレイを見せていた。彼のピアノやシンセサウンドを生で聴くと、それがどれだけFNMサウンドの大事な要素であるかを実感する。これがなかったという前日のステージは想像出来なかった。

バンド全体もとにかく貫禄溢れ現役感バリバリだ。Mike Bordinはかつてのドレッドは白髪交じりのグレーになってしまったが、その重くタメを効かせたグルーヴィなプレイは変わらない。彼がOzzy Osbourneバンドで活躍していた時のことは知らないが、バークレイ音楽院でアフリカンリズムを専攻していたという彼のトライバルなスタイルはFaith No Moreにこそ相応しいと思う。Billyのベキベキ響く低音ベースも耳に嬉しい。彼ももういいおっさんだが、ノリノリで楽しそうに動きながら弾いているのが印象的だった。

そして何よりもMike Pattonだ。昔に比べて少しだけ丸くはなったが、今でも変わらずカッコ良く、そのボーカルは凄まじいの一言。ずっと現役でやってきたというのもあるが、歌い上げもスクリームも文句の付けようがないし、ステージングの一挙手一投足が様になる。この人はロックボーカリストとして最高峰の1人だと思う。

ちなみに私はステージの右手にいたので、ギターのJonのプレイが一番良く見えた。定位置から動かなかったが、ヘヴィリフでもソロでも非常に良い仕事をしていた。またRoddyと2人スキンヘッドでステージ両脇を固めていたのも、なかなか何気にイカついものがあった。

MikeはMCで色々話していた。「昨日オンセンに行ってきたんだ。オエドオンセンモノガタリ」とか「花見はないのか?」などなかなか日本を楽しんでいるようだった。また嬉しそうに「Eat the poop!」(とても日本語には出来ない) と連呼しているあたり、歳取っても悪ふざけっぷりは変わらないなと思った。

個人的なハイライトは”Everything's Ruined”。この曲が一番好きなので、これが聴けたのは嬉しかった。また”Easy”では会場の天井にあった巨大なミラーボールが回り、Mikeが「見ろ、まるでディスコだろ」と嬉しそうに、浪々と歌い上げていた。一方続く”Cuckoo For Caca”は正に破壊衝動そのもので、このバンドの尋常でない振幅の広さを見せつけていた。

新曲”Superhero”で本編終了。アンコールを呼ぶコールの熱さが半端ない。アンコールでは日本人が登場し、和風な感じのグロウルボイスを聞かせた。ヒカシューの巻上公一という方らしく、モンゴルのホーミーという歌唱法らしい。そのまま新曲”Spirit”を共演していた。アンコール2曲目も新曲で”Matador”。最後はやはり”We Care A Lot”あたりで締めて欲しいと思っていたが、残念ながらこのまま終了してしまった。「次はまた20年後かな、それはないか」とMikeは言っていたが、本当にまた次回があるなら期待したい。

1. Cone Of Shame
2. Epic
3. Ricochet
4. Get Out
5. Last Cup of Sorrow
6. Evidence
7. Midlife Crisis
8. Everything's Ruined
9. The Gentle Art of Making Enemies
10.Easy
11.Cuckoo for Caca
12.King for a Day
13.Ashes to Ashes
14.Superhero

Encore
15.Spirit
16.Matador 

 

Faith No More 「Angel Dust」 (1992)

Angel Dust
Faith No More
Reprise / Wea
1992-06-16


1. Land Of Sunshine
2. Caffeine
3. Midlife Crisis
4. RV
5. Smaller And Smaller
6. Everything's Ruined
7. Malpractice
8. Kindergarten
9. Be Aggressive
10. A Small Victory
11. Crack Hitler
12. Jizzlobber
13. Midnight Cowboy
14. Easy
15. As The Worm Turns

待望の来日公演をあと3日後に控えたFaith No More。2009年の再結成に喜んだものの、
その後ずっと待ちぼうけで、諦めていた末の念願の来日発表だった。今予習のためヘヴィローテーションになっているのは数年前のライブブートとこの名盤である。

前作「The Real Thing」の成功を牽引したのは”Epic”のシングルヒットだったが、これはヒップホップとファンクをヘヴィメタルに大胆に導入したミクスチャーの先駆けとなった名曲だった。しかしこれに続く「Angel Dust」ではそうした単純なミクスチャーは見られず、もっと混沌としている。

一本ブチ切れたようなカオティックハードコア、アヴァンギャルド、M7ではショスタコーヴィチ弦楽四重奏8番、M9ではカレッジチアリーダー達の掛け声、M10にはオリエンタルな中国音階、M13は1963年Ferrante & Teicherのイージーリスニング、M14はR&BグループThe Commodoresの77年のカヴァー、もはやジャンルなどどうでもよくなるレベルだ。あらゆる音楽要素がまるでプログレのように曲毎・曲中変化していく。恐ろしい程のヘヴィさと爽快な程のキャッチーさが同居しているのもこの作品のスゴいところだ。

Mike BordinのタイトなトライバルドラムとベキベキいうBill Gouldのベースの上に、ヘヴィに刻むJim Martinのギターと荘厳なRoddy Bottumのキーボードが被さる。バンドサウンドだけでも強力だが、この上に乗るMike Pattonのボーカルが凄まじい。天も引き裂くような断末魔、オペラ歌手のような歌い上げ、気が狂ったような高笑い、渋い低音の囁き。まるで多重人格者のように目まぐるしく表情を変え続けるその表現力は筆舌に尽くし難い。楽曲の幅が最大限に広がったのはこのボーカルに呼応した部分が大きい。

それにしても前作でのMikeは妙にミャーミャーした声だったのに、どうしてこうも急に声変わりしたのかが不思議だ。出来るならこの声でもう一度前作を再録して欲しい位だ。

この後ギターのJim Martinが解雇された際には当時のメタルファンはかなり落胆していた。バンドの中で唯一ヘヴィメタルな要素を持ち、バンドのスポークスマン的な存在だっただけにショックは大きかった。しかし今思えば時代も変わりつつある中で、音楽的にもファッション的にもJimがバンド内で浮いていたのは明らかだった。まぁそれで嫌がらせをするというバンド側も大人気ないのだが。

98年に解散。この後本国でヘヴィロックが隆盛を極めるわけだが、これに与えていたFaith No MoreそしてMike Pattonの影響は絶大だった。にも関わらずここ日本では同時代のミクスチャーの先駆けだったRed Hot Chili Peppersと比べると、その扱いは不当と言わざる得ない。この偉大なバンドをようやくまた国内で目にすることが出来る。

★★★★★

 

Probot 「Probot」 (2004)

プロボット
プロボット
BMG JAPAN
2004-03-24


1. Centuries of Sin w/ Cronos (Venom) 
2. Red War w/ Max Cavalera (Sepultra, Soulfly)
3. Shake Your Blood w/ Lemmy (Motorhead)
4. Access Babylon w/ Mike Dean (COC)
5. Silent Spring w/ Kurt Brecht (DRI)
6. Ice Cold Man w/ Lee Dorrian (Cathedral)
7. The Emerald Law w/ Wino (Saint Vitus, The Obsessed, ect)
8. Big Sky w/ Tom G Warrior (Celtic Frost)
9. Dictatorsaurus w/ Snake (Voivod)
10. My Tortured Soul w/ Eric Wagner (Trouble)
11. Sweet Dreams w/ King Diamond (Mercyful Fate) 

活動休止していたFoo Fightersが昨年末に新作を出すのに伴い制作したというドキュメンタリーがWOWOWで放映されていたので見ていた。色々アメリカ音楽の歴史を俯瞰する内容で興味深かった。

私はそれほど熱心なFoo Fightersのファンではないが、Dave Grohlのことはスゴいと思っている。それは単に彼の演奏能力の高さとか、Nirvanaの消滅後にFoo Fightersでこれほど成功を収めたからというだけでなく、様々なサイドプロジェクトや映画の制作などにも見られるように音楽に対して常に純粋かつ誠実に向かい合い、それを持ち前のバイタリティによって見事に形にしてきたからである。

そんな彼の偉業の1つがこのProbotである。これは彼が4年がかりで制作したアンダーグラウンドメタル・ハードコアプロジェクトである。元々彼は80年代にScreamやMission Impossibleといったハードコアバンドで活動していた。その頃に彼が影響を受けた偉大な先達に対して敬意を表明するためにこのアルバムは作られている。

まずこれに参加している面子がスゴい。VenomのCronosをはじめ、MotorheadのLemmy、Celtic FrostのTom Warrior、Mercyful FateのKing Diamondなど、暗黒系メタルの重鎮たちが一同に介している。TroubleやSaint Vitus、Cathedralといったドゥーム勢の名前にも唸らされる。COCやDRIあたりのハードコア系はむしろ納得する一方で、それと一緒にメタル/ドゥーム系の大御所がこれだけ列挙したことは驚きだったが、そうしたクロスオーバーは80年代中期頃には自然なことだったのだろう。

そして並んでいる楽曲がまたスゴい。どれも各バンドの往年を彷彿とさせる傑作揃いなのだが、これらは全てDaveが1人で書いたものなのだ。単に昔好きでしたというレベルで書いたものでは全くなく、各バンド最盛期の未発表曲と言って通用するレベルである。しかも演奏もほとんど全て1人で全パートをやってしまっている。ドラムなんて曲によって叩き方も全く変えている。

特にお気に入りはM1、M2、M3、M4、M8。どれもブチ切れていて最高だ。また最後にシークレットトラックで暗黒系のトラックが入っているが、このボーカルは例のメタルコメディ俳優Jack Black。言われないと分からないが、これもカッコいい。またジャケットのアートワークを手掛けたのはVoivodのAway。

とにかくDaveとこのプロジェクトのために色んな面子が一肌脱いでいる。こんな夢のような宅録、楽しすぎだろう。願わくは全員集めて恐山あたりでフェスでもやってほしかったものだ。

★★★★☆

 

Pantera 「Vulgar Display Of Power」 (1992)

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1. Mouth For War
2. A New Level
3. Walk
4. Fucking Hostile
5. This Love
6. Rise
7. No Good (Attack The Radical)
8. Live In A Hole
9. Regular People (Conceit)
10. By Demons Be Driven
11. Hollow

先週のBlack Albumと同様に90年代のヘヴィロックシーンに大きな影響を与えたのが、Panteraのこのアルバムである。

彼らも出自はヘヴィメタルだ。ギターのDiamond DarrellとドラムのVinnie Paulの兄弟によって結成された当初は、いわゆる正統派HMを標榜していた。しかしボーカルのPhil Anselmoに交替し、前作「Cowboys From Hell」から彼らはサウンドを大きく転換する。

今作はその方向性をより強化している。ソロもほとんどなくアグレッシヴに切り刻むDarrellの乾いたギターリフと、その上に乗る怒りの猛を吐き捨てるPhilのボーカル。それらが重くグルーヴィなリズムと渾然一体となって突進していく。このサウンドが鬱積していた当時のアメリカの若者達を大いに刺激したのだった。

そしてHM界に与えた影響も大きかった。触発されたRob HalfordはJudas Priestから脱退してしまい、多くのHMバンドも皆こぞってダーク&ヘヴィに方向転換した。変わらなかったバンドは急速に時代遅れのレッテルを貼られ過去のものとされた。

当時BURRN!の表紙にも柔道着を着たPhilが掲載されたが、これに反対していた酒井康氏は編集長を辞任した。坊主に短パンで俺たちはヘヴィメタルだと答えていたインタヴューには私も違和感を感じていた。その違和感は的中し、結果的に彼らは図らずも自らの手でヘヴィメタルを叩き壊してしまったのだった。

彼らは次作「Far Beyond Driven」で全米初登場No.1となり時代の頂点に君臨する。しかし2003年に解散。DarrellはDimebag Darrellと名前を変え、VinnieとDamage Planを組んで活動していたが、2004年に盲信ファンにステージ上で射殺されて他界してしまった。

★★★★



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