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東日本大震災から10年が経った。

あの時私は都内の会社で仕事をしていた。激しい揺れの中、向かいのビルから煙が上がっているのが見えた。家族となかなか連絡が取れず無事を確認できたのは夜だった。ほとんどの社員は帰したが、私は各地から入り続けるトラブル連絡の対応に追われ、結局帰れたのは翌日の夕方だった。

その後仕事のほとんどは消し飛んだ。一方で海外メディアからの問い合わせが入り、被災地に向かう撮影クルーのための手配などもした。海外で放送された映像は本当に痛ましいものだったようで、世界中の顧客から沢山の祈りのメールが届いた。しかし国内ではそうした映像は一切放送されていなかったので、私達は本当の被災地の様子を知らなかった。

被災地への支援をするために食糧や生活用品なども買い集めたが、様々な物資がなかなか集まらず探し回った。ただこれを通常ルートで送ることもできなかったので、別途届けられる車両を手配したりした。

その後私も会社の者達と支援のつもりで福島へ行った。海岸沿いのかつての町には、瓦礫の山と家の土台、押し潰された車、重なり合った漁船。あまりの光景に言葉を失った。

僅かな時間で多くの町と人命と生活が失われた。自然は美しい一方で、時に恐ろしい災いももたらす。東南海地震も周期からいつ起きてもおかしくないと言われて久しい。人間に、自分に一体何が出来るのだろうと考え続けている。

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