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ザ・バンド (The Band)の映画「かつて僕らは兄弟だった (Once Were Brothers)」を立川のシネマシティに観に行った。この日は上映後には映画評論家のピーター・バラカンさんと立川直樹さんのトークショーも開催され、軽快ながらも含蓄あるやり取りを堪能させて頂いた。

この映画はザ・バンドの歴史を俯瞰するドキュメンタリーである。ロニー・ホーキンスとの下積み時代やボブ・ディランとの出会い、ビッグピンクでの音楽制作など経緯は良く知っているが、それでも見た事なかった画像や映像、幅広い関係者のインタビューが収録されていて見応えがあった。

この映画はロビー・ロバートソンの自伝を元に制作されているので、彼の回想インタビューを骨子に彼の視点でストーリーは進んでいる。だからなのだろう、リヴォン・ヘルム&ホークス時代や、彼の参加しなかった再結成時代のことには全く触れられていない。そもそもこの映画のタイトルには"Robbie Robertson and The Band"となっている。そしてリヴォンとの確執はリヴォンのドラッグの影響が大きかったとしていた。

トークショーの中で、バラカンさんが仰っていた。私達バンドファンは先にリヴォンの自伝を読んでいるので、この映画でロビーの見解を聞き、なるほどと思ったと。また立川さんは当時のミュージシャンがなぜ皆ドラッグをやっていたのかということも解説してくれていた。

しかし仮にリヴォンがドラッグをやっていなかったとしたら、確執は生まれなかっただろうか。確かにロビーは素晴らしい作曲家だが、作曲に他のメンバーの貢献はそんなになかっただろうか。バンドを兄弟だと思っていたのなら、再結成に参加しなかったのはなぜだろうか。

映画を観て素晴らしいバンドだったと再認識したと同時に、色んな疑問も抱かざるを得なかった。私はロビーの自伝を読んでいないが、この疑問はむしろ今は亡きリヴォンに尋ねてみたい。