ウォルター・ウェストン(Walter Weston, 1860-1940)。日本アルプスの父であり、日本近代登山史のルーツ的存在である。今日は彼の名著「日本アルプスの登山と探検」を取り上げる。

先日取り上げた新田次郎の「槍ヶ岳開山」にもあったように、江戸時代までは登山というものは修験者、祈祷者もしくは猟師だけのものだった。明治時代になってから初めて純粋にスポーツや観光目的が取り入れられることになった。それをもたらしたのが、開国後に来日した外国人達であり、その内の一人がイギリス人牧師のウェストンだった。

本著は彼が1891年から1894年にかけて中部地方の山々を登り続けた際の探検記である。機関車はまだあまり発達しておらず、移動は人力車か川下り。行く先々で登山したいと言ってもなかなか理解を得られない中、何とか賛同者を得ながら猟師や人夫を伴って各地の山頂を目指す。幾多の困難を乗り越えながら、浅間山に始まり、木曽駒、乗鞍、槍、立山、富士山、白馬といった名山を次々と踏破し続ける様子は痛快だ。

また本著が面白いのは、明治初期の国内の様子が外国人の視点で綴られているところ。まだ西洋文化に触れたことのない地方の村々では歓待と奇異の目で迎えられる。彼自身も外国人としてはかなり日本の文化に精通しているが、それでも様々な違いを痛感する。そしてそれは私達現代人にも通じるものがある。特に彼が見た山岳信仰の様子については興味深い。

山好きのみならず、古き良き日本を知りたい人にもお勧めの一冊。