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千住博さんは、ニューヨークを拠点に活躍する現代日本画の巨匠である。2月に日本橋三越で「画業40年 千住博展」、3-4月には横浜そごう美術館で「高野山金剛峰寺襖絵完成記念 千住博展」が相次いで開催され、多くの作品を目にすることが出来た。自然風景の中から各要素に焦点を当て、極限まで突き詰める独特な画風は世界的に評価も高い。今回特に感銘を受けたものを挙げてみる。

①「ウォーターフォール」シリーズ
千住博と言えば滝。ヴェネチアビエンナーレ受賞以来、代名詞的テーマ。昨年NHKのドキュメンタリーでその制作風景を目にし、垂らしこみという手法を知った。斬新ながらも水の動きが見事に表現されていた。

②「断崖」「地の果て」シリーズ
捨てようと思った和紙の皺から着想したとは恐れ入った。細かい岩肌を見ていると、クライマーではないが、思わずどうやって登ろうかと考えながら見入ってしまった。

③「水の記憶」シリーズ
最終的に辿り着いたという水墨画表現。墨の滲みを活かした曇り空は、観る者の心も吸い込むような不思議な表現だった。

④「四季屏風・春、夏、秋、冬」
日本橋三越での目玉展示。全長30mにもなる大作。どれも素晴らしかったが、特にストラヴィンスキー「春の祭典」に触発されたという春の夜桜が見事だった。黒い下地にまず黒い幹から描いているのを見て感心した。

⑤ 金剛峰寺襖絵「瀧図」「断崖図」
横浜そごう美術館での目玉展示。金剛峰寺1200年を記念し制作され、来年奉納される前に今回一般公開された。空海に捧げられた本作は集大成とも言える大作だった。

映像の中で語っていた、芸術とは国境や時代を越えて人々に感動や共感・癒しを与える現代の宗教であるべきだ、という言葉もとても深かった。今度軽井沢にある千住博美術館にも行ってみたい。

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