先月の石川直樹さんの写真展を見て、植村直己を思い出した。その冒険の功績はよく似ており、きっと多大な影響を受けたと思われた。そこで未読だった植村直己の著書を読んでみた。

植村直己は1941年兵庫県の生まれ。元々山には興味がなかったが、たまたま入部した明大山岳部でしごかれ、体力と山への意欲を持つようになる。やがて海外の山へ強い憧れを抱くようになり、卒業後から地球を股にかけた冒険が始まる。

彼には金も語学力もなかったが、持ち前のバイタリティと熱意だけがあった。アメリカの農場で不法就労で捕まった際には、山に賭ける熱意が伝わり強制帰国を免れた。フランスのスキー場で職を得た後は、一切の遊びを控え資金を貯めることに専念した。

そんな折、明治大学山岳部のヒマラヤ遠征隊に参加することになる。現地で合流し、アタック隊に選ばれて、ゴジュンバカンの登頂を成功させるが、自分の力ではなかったと喜びもせず、以降単独行にこだわるようになる。

その後の軌跡が凄い。ヨーロッパのモンブラン、アフリカのキリマンジャロ、南米のアコンカグア、ヒマラヤのエベレスト、そして北米のマッキンリー。世界初の五大陸最高峰登頂。しかもエベレスト以外は単独登頂。その途中では60日間かけてアマゾンのイカダ下りまでやっている。

本書にはないが、彼は後年史上初となる犬ゾリによる北極点単独行なども成し遂げる。しかし84年にマッキンリー冬季登頂の直後に音信普通になり、帰らぬ人となった。くしくも登頂日は彼の43歳の誕生日であったが、同時にそれが彼の命日にもなってしまった。今の私と同じ年齢だ。

東京板橋に植村冒険館があることを知り行ってみた。ちょうどメモリアル展をやっていて、マッキンリーに残された日の丸国旗や装備などの遺品が展示されており、彼の偉業と見果てぬ夢に想いを馳せることができた。彼こそは日本が誇る真の探検家だったと痛感した。

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