hokusai

今年は葛飾北斎の没後170年に当たるということで、『新・北斎展 HOKUSAI UPDATED』が六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されていたので観に行って来た。前後期合わせて479点という予想以上の展示数で、日曜に行ったこともあり予想以上の混雑具合でもあった。

葛飾北斎(1760-1849)は恐らく世界で最も有名な日本の画家である。20歳で本格的に画業を始め90歳で亡くなるまで、70年という長きに渡り描き続けた北斎は、何度も画号を改名し、その度に画風を更新していった。その全軌跡を俯瞰することが出来る大規模な展覧会だった。

年代毎に各章分かれていたが、また例によってそれぞれで特に印象に残った作品を挙げてみる。

1. 春朗期 ~ 「鐘馗図」 1795
画業初期の作品。浮世絵のイメージが強い北斎だが、肉筆画も少なくない。最小限の筆で鬼気迫るような迫力を放っている
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2. 宗理期 ~ 「くだんうしがふち」 1804
西洋画法を意識したと言われる作品。同時期の司馬江漢によく似た洋風風景画で、どこか北斎らしくない不思議さがある。
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3. 葛飾北斎期 ~ 「しん板くミあけとうろふゆあしんミセのづ」 1807
最も浸透したこの画名を名乗っていたのは実は4年ほどしかない。これは風呂屋の組立て模型図なのだが、こんな代物がこの時代に存在していたことを初めて知ったし、これを実現する設計力に驚いた。
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4. 戴斗期 ~ 「冨嶽百景」 1834
絵手本を多く発表するようになり「北斎漫画」もこの時期。「冨嶽百景」がここで展示されていたが本当は次の為一期である。冊本のため数点しか見られなかったのが残念。
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5. 為一期 ~ 「琉球八景」 1832
最も充実していた時期。「冨嶽三十六景」や「諸国瀧回り」など多くのシリーズを短期間で次々と発表しているが、「琉球八景」というのは初めて知った。ただ実際に琉球に行ったという記録はなく、雪まで描かれているのが面白い。
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6. 画狂老人卍期 ~ 「富士越龍図」 1849
老いても尚挑戦し続ける様は圧巻。これは絶筆、つまり90歳で他界する直前の最後の作品と言われている。富士を超えて天に登る龍は正に北斎自身だったのだろう。これを生で見られただけで満足だった。
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ちなみに今回は北斎の好きな従弟夫婦と一緒に行ったのだが、入場して10分で子供がむずがり出し、結局彼らはほとんど観ることができなかった。図録を買っておいたので、彼らが帰る日にプレゼントしようと思う。