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私が子供の頃、実家にはいつも永谷園のお茶漬けがあった。それには1枚ずつ広重の東海道五十三次の小さなカードを付いていて、私はそれを集めるのが楽しみだったものだ。

今年はその広重の没後160年にあたるため、太田記念美術館で広重展が開催されていた。太田記念美術館は浮世絵専門に12,000枚も所蔵している美術館。原宿にあるが中に入ると畳座敷や中庭もあり趣深い。

2Fから地下まで100点以上の作品が並んでいた。「名所江戸百景」「木曽街道六拾九次」「六十余州名所図会」「富士三十六景」etc。保永堂版東海道で売れっ子になった後多くの版元に請われ、日本各地を旅しながら凄い勢いで多くのシリーズ作品を描いている。絶妙な構図の風景、生き生きと描かれる人物、藍色などの鮮やかな色遣い、などどれも見事。観ていると江戸時代にタイムスリップしている感覚を味わう。今回はダイジェスト的展示構成だったが、一度シリーズをコンプリートした形で観てみたいものだ。

また風景画以外にも花鳥画や美人画、武者絵や戯画まで様々なモチーフの作品も多く並んでいた。中には歌川国貞との合作まであった。個人的に最も印象深かったのは、畳座敷に飾られていた肉筆の掛軸で、実際に広重の筆遣いを目の当たりにすることが出来て良かった。

有名な「月に雁」や「蒲原 夜之雪」も拝みたかったが、前後期展示総入れ替えで後期にはなかった。まぁこの美術館が広重だけでも2600点も所蔵していることを考えれば仕方ないだろう。