メロンコリーそして終りのない悲しみ(通常盤)
ザ・スマッシング・パンプキンズ
ユニバーサルミュージック
2012-12-19


<Dawn to Dusk>
1. Mellon Collie And The Infinite Sadness
2. Tonight, Tonight
3. Jellybelly
4. Zero
5. Here Is No Why
6. Bullet With Butterfly Wings
7. To Forgive
8. Fuck You (An Ode To No One)
9. Love
10. Cupid De Locke
11. Galapogos
12. Muzzle
13. Porcelina Of The Vast Oceans
14. Take Me Down

<Twilight to Starlight>
1. Where Boys Fear To Tread
2. Bodies
3. Thirty-Three
4. In The Arms Of Sleep
5. 1979
6. Tales Of Scorched Earth
7. Thru The Eyes Of Ruby
8. Stumbleine
9. X.Y.U.
10. We Only Come Out At Night
11. Beautiful
12. Lily (My One And Only)
13. By Starlight
14. Farewell And Goodnight

先週の中からこのアルバムだけは取り上げておきたい。Smashing Pumpkinsは、デビューが1991年だったこともあり、グランジ組に数えられることも多いが、音楽的にはかなり異色だった。当時私が最もハマっていたのが、1995年にリリースされたこの3rdアルバム。2枚組28曲というスゴいボリュームにも関わらず全世界で1200万枚以上というモンスターヒットになった作品だ。

中心人物はボーカル・ギターのBilly Corgan。当時読んだ彼のインタビューが非常に印象に残っている。歌詞の内容についての質問に対して、Billyはふざけるばかりで全く答えようとせず、完全にインタビューとして破綻していた。その理由はアルバムの中で余りにも自己の内面を吐露し過ぎたため、これ以上話すことなどないということだった。

無駄なほどに背が高く、声も変で…etc。家庭環境の悪さから異様な程に自己肯定感が低いBilly。そんな自己を投影した主人公が、それを打開するために自身の変革を叫ぶというのが、この作品の大きなテーマとしてある。そうした中で、怒り・悲しみ・喜びという様々な感情が曲毎に爆発する。そのため必然的に各曲の表現の振幅というのが余りにも広いのだ。

ピアノの調べが美しいイントロ①から大仰なオーケストレーションをバックにした高揚感のある②、そしてハードなギターで疾走する③へ。まずこの冒頭3曲で完全に持って行かれる。その後⑨まではかなり歪んでヘヴィな楽曲が並ぶ一方で、⑩から⑬まではポジティブで感動的な楽曲が並ぶ。最後に至っては⑭ではまるで子守唄のように優しく囁く。2枚目の冒頭①と②は、また一転して完全に自暴自棄レベルにヘヴィ。シングルヒットした⑤も名曲だ。これだけの楽曲がありながら捨て曲もなく、驚くほどの完成度を誇っている。それもそのはずで、後にシングルのカップリングやデラックスエディションの膨大な未発表曲で明らかにされたように、この時期Billyは恐ろしいほどの創作意欲に溢れており、ここに収録された何倍もの楽曲を作り上げていたのだった。

ちなみにこのバンドはメンバーも個性的で、日系人ギタリストJames Iha、可愛い顔して歪んだベース音を鳴らすD'arcy、手数の多いドラマーJimmy Chamberlinとキャラが立っていた。後にメンバーの脱退、解散、再結成をする中で、日系ギタリストや女性ベーシストに固執するように、Billy自身この黄金期のメンバーに思い入れが強かったようだ。

1998年の来日公演も観に行ったのだが、それについて書くとまた長くなるので、またの機会に。