FrancisDunerry

Francis Dunnery(フランシス・ダナリー)の来日公演に行ってきた。彼は80年代に活躍したイギリスのプログレバンドIt Bitesのオリジナルフロントマン。バンド脱退後、再結成にも絡んでいないので、彼の来日は89年の初来日以来となる。

会場は渋谷O-West。場内は一杯で、やはり30~50代の男性が多かった。暗転し歓声の中4人のメンバーが登場し、最後にFrancisが現れた。そしてオープニングは1stの1曲目”I Got You Eating Out Of My Hand”。

ハンチング帽を被って少し丸くなったFrancisは、かつての爽やかなロングヘアだった頃のイメージとは別人のようで、どこか少し前のPhil Collinsに似ていた。しかしハスキーがかった張りのある声と、高い位置で黒いストラトを抱えて弾く滑らかなギタープレイは間違いなく彼だった。

「25年振りだね。僕の髪もなくなっちゃったし、おっぱいも大きくなっちゃったよ。次に来る時はまた25年後だから、その時は杖をついているかもしれないね。まぁそれは君達も同じだけどね」と楽しいMCで場内を笑いを包む。”Yellow Christian”の後「一緒に歌ってよ。歌ってくれないと演奏やめちゃうからね」と言いながら、今度は”Underneath Your Pillow”へ。

今回は彼のデビュー30周年ということで、It Bitesの楽曲ばかりを演奏することになっており、長年親しんだ楽曲が次々と披露されていく。基本的にどれもポップで歌いやすいのだが、動と静のコントラストや、さりげないテクニカルプレイなど各楽曲の魅力を再発見することができた。

1曲だけ聴いたことがない曲が演奏されていた。”Feels Like Summertime”という曲で、当時未発表だった曲らしい。ソフトな感じだったが、後半でのFrancisのライトハンドプレイが凄かった。それは他の曲でもそうなのだが、とにかくFrancisのギタープレイは素晴らしいの一言。あれを弾きながら歌っているのだから、やはり彼は稀代のフロントマンであると痛感する。

またバックバンドも良かった。メンバーは皆Francisと同年代位のベテランさん達。往年のIt Bitesと比べると1人多いのだが、5人目のGregはフロントの右手に立ち、コーラス、ギター、キーボード、パソコン操作と何役もこなし、このステージでのキーマンだった。特にFrancisと一緒に弾くツインリードと、漫才の相方役が良い味を出していた。後ろにいるベースとドラムのリズム隊も、一聴単純なようで実はかなり複雑なリズムをきっちりと刻んでいる。左手のキーボードも良かったのだが、やはりここにJon Beckがいたらなぁと感じた。

長くドラマティックな”Old Man And The Angel”を演奏し終え、FrancisのMC。「今の曲は男性向きの曲だよね。そして次の曲は女性向けだな」と言って始まったのは”Still Too Young To Remember”。天まで伸びるようなイントロのギタートーンを聴いた瞬間、この名曲を生で聴けることに深い感慨を覚えた。

アップテンポな”Screaming On The Beaches”で最後を盛り上げて本編終了し、一旦下がる。アンコールで再登場し、始まったのは”Once Around The World”。この15分もある大作は以前の来日時にも演らなかった待望のセット。静かに始まり、徐々に盛り上がりストーリーが進んでいく。コーラスの後も次々と曲調とリズムが展開していき、プログレッシヴロックバンドIt Bitesの正に真骨頂という感じだった。

正直ライブを観るまでは少し懸念があった。過去のリメイクアルバムにも疑問を感じてしまったし。しかし実際にこれだけのものを見せてくれたら、彼が今のIt Bitesに無理に復帰する必要性を感じないのもよく分かった。でもいつか再びオリジナルメンバーが揃う日が来ればいいのにとも思う。

1. I Got You Eating Out Of My Hand
2. Yellow Christian
3. Underneath Your Pillow
4. Ice Melts Into Water
5. Feels Like Summertime
6. Vampires
7. Calling All The Heroes
8. You Never Go To Heaven
9. Old Man And The Angel
10. Still Too Young To Remember
11. Screaming On The Beaches
encore
12. Once Around The World

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