先週ジャケット展覧会として風景画・動物画・人工物画を取り上げたが、今週は人物画に焦点を絞って取り上げてみたい。人物画のジャケットというのも非常に多いのだが、その中で3ジャンルに分けてご紹介していく。


① <Artists>
まず多いのはアーティスト自身がジャケットに登場するパターン。今回はなぜか4~5人のバンドグループの画像ばかりになってしまった。


The Beatles 「Abbey Road」 (1969)

グループジャケットとしては、恐らく最も有名なものの1つだろう。構図や4人のポーズ、Paulが裸足なところまで文句のつけようがない一葉。もちろん中身も含め歴史的名盤。


Deep Purple 「In Rock」 (1970)

アメリカ歴代大統領の顔が掘られたマウント・ラシュモアをモチーフにしたジャケットで有名な第2期Deep Purpleの名盤。ハードロックに変貌を遂げた当時の彼らの信条をタイトルとともにストレートに表現している。


The Band 「Northern Lights – Southern Cross」 (1975)

The Bandの最終作。ウッドストックから移住したマリブのビーチで撮影した一葉。既にバラバラだったはずの彼らの関係も、夕暮れと焚火に美しく映えて強固なものに見える。


② <Woman>
女性アーティスト自身の写真でなくとも、ジャケットに女性が使われたものは数多い。容姿や造形の美しさが表現の手法として求められることが多いのだろう。


Derek & The Dominos 「Layla」 (1971)

Eric ClaptonがDelanie & Bonnieのバンド陣と組んで作った名盤。イラストだが女性の美しさを表現した画としては最高峰。これもアナログで部屋に飾ってある。


Arrested Development 「Zingalamaduni」 (1994)

アフリカ回帰のメッセージを強く打ち出した、Speech率いるHip Hopグループの2nd。内容とともにアフリカの気高さと力強さを感じさせる一葉。


NOFX 「Punk In Drublic」 (1994)

メロコアパンクバンドの代表格。疾走感が気持ち良い傑作。いかにもパンクな感じのジャケットだが、カウボーイスタイルの少女たちがキュートなのと、下にいる小僧もなぜか好きな1枚。


③ <People>
人々の様子というのも時には絵になるもので、Robert Doisneauあたりの写真集も好きだった。その土地の背景の中に、集まる理由があったり、熱気があったり。またその人々のファッションが時代性や地域性を反映したものであれば尚更だ。そんなジャケットを3枚。


Gipsy Kings 「Roots」 (2004)

Gipsy Kingsが装飾を一切そぎ落としルーツ回帰した2004年の作品。スペインの片田舎で踊る少年少女とそれを見守るジプシーの人々。フラメンコの原点。


Lynyrd Skynyrd 「Southern By The Grace Of God」 (1988)

サザンロックの雄Lynyrd Skynyrdの88年のライブ。アメリカ南部の熱気が如実に伝わってくる一葉。


鼓童 「Tataku Best Of Kodo Ⅱ 1994-1999」 (2000)

世界に誇る日本の佐渡島出身の和太鼓集団の2枚目のベストアルバム。躍動感と日本の素晴らしさが溢れている一葉。


ここまで様々な素晴らしいジャケットを並べてみて改めて気づくことは、ジャケットが素晴らしい作品はどれも音楽も素晴らしい名盤揃いであるということだ。もちろん必ずしもそうとは言えないかもしれないが、その傾向は確実にあると思う。素晴らしい音楽が出来た時には、アーティストはジャケットにも気合を入れるということもあるだろう。聴き手にとっても、素晴らしい音楽を聴きながら、素晴らしいジャケットを眺めることは至福の時であると思う。いつかダウンロードによってCDの存在が完全に駆逐されてしまったら、なんと無味乾燥とした音楽体験となることだろう。そんな時代にはなって欲しくないものだ。