Paul McCartney @ Tokyo Dome, 18 Nov 2013

Paul McCartneyの来日公演に行ってきた。Paulを見るのは今回初。実際これまでもチャンスはあったのだがそれを逃してきていた。何度もここには書いてきたが、私はThe Beatles世代の両親のもとで幼少からレコードを聴かされて育ったので、The Beatlesは私にとって原点であり先生だった。あれから長い年月が経ったがこんな日が来るとは思わなかった。

追加公演も出た東京の初日だけあって会場は満員御礼。5万人いたらしい。外のグッズ売り場も大変なことになっていた。私の席は1階席の中段あたり。19時過ぎに暗転。SEで”The End”のコーラスが聴こえた後にメンバー登場し、”Eight Days A Week”でスタートした。

Paulはステージ中央に立ち、あのヘフナーベースを左利きで弾いている。声量のある力強いボーカルで、キーも高い原曲のまま。すらっとスリムな体型も昔から変わらず、とても71歳には見えない。その右側にはギターのBrian、左側には同じくギターRusty、後方中央にドラムAbe、左手キーボードWix。続いて2曲目には新作からのハードなナンバー”Save Us”で畳み掛ける。

「コンバンワ、トウキョウ!タダイマ!」に大歓声。「キョウハニホンゴガンバリマス。デモエイゴノホウガトクイデス」の西日本と同じMCで笑わせてくれる。またステージの両端にはスクリーンがあり、そこにPaulの話す英語の日本語訳が表示されているが、表示が遅いのと「ありがとう東京」とかまで訳す律儀さがまた笑いを誘う。

今日のPaulは白いシャツに黒のロングジャケットを着ていたが、途中でジャケットを脱いだ後はサスペンダーで何度もおどけてみせていた。その後エピフォンカジノに持ち替えたと思ったら、”Let Me Roll It”へ。ヘヴィなグルーヴが心地良く、それがそのまま違和感なくJimi Hendrixの”Foxy Lady”につなげられていた。

今度はステージの右上段に上がりピアノに座る。本当にマルチプレイヤーだ。「Nancyのために書いた」と言いつつ、”My Valentine”。Wingsファンにと”1985”。続いた”The Long & Winding Road”も感動的だった。Lindaに書いたという”Maybe I'm Amazed”のバックスクリーンにLindaは出てこなかったが、映っていた子供について「彼女は今4人も子供がいるんだよ」と言っていた。

次はまたステージ中央に出てきてマーティンD-28を手にし、ここからはアコギコーナー。”I've Just Seen A Face”は特に嬉しかった。とにかく名曲の多いこと。それぞれ曲が短いからすぐ終わるのだが、その分多くの曲を聴くことができお得感も満載だ。

アコギを持ちながら1人ステージ前方に出てきた。60年代に公民権運動で苦しんでいた人達を応援するために書いた曲だと、静かに”Blackbird”を歌う。いつの間にPaulのいるステージがせり上がり、その側面には大きな地球が映し出されている。その後、Johnに捧げると歌い出したのは”Here Today”。君が今日ここにいればという歌詞は聴く者を思わず感傷的にさせてくれた。また後のほうでGeorgeに対しても”Something”を歌い、こちらでは2人がレコーディングしている映像も見せてくれた。

今度はステージ中央に派手なサイケデリック色のピアノが登場し、”New”や”Queenie Eye”の新曲を披露。新曲もこの名曲揃いのセットリストの中でも聴き劣りしていない。”Everybody Out There”の後には観客とのコール&レスポンスが物足りなかったのか、もう一度煽っていたが、その時はドーム内が地鳴りのような反響がするほどのレスポンスだった。

驚きだったのは”Live And Let Die”。日本では消防法の関係でダメだろうと思っていたパイロが派手に上がったのにはビックリした。本編最後は”Hey Jude”。会場内が大合唱と笑顔で包まれた。

アンコール一部では、Paulともう1人が日本とイギリスの国旗を掲げながら登場。そして"Day Tripper", "Hi Hi Hi", "Get Back"の3曲立て続けのR&Rでノリノリに。アンコール二部では、フクシマに捧げると”Yesterday”をしっとりと歌う。その後一転しヘヴィに”Helter Skelter”。

最後は”Golden Slumbers~Carry That Way~The End”。The Beatlesの作品中Abbey RoadのB面のメドレーが最も好きな私にとっては、考えうる限り最高のエンディングだ。Paulのピアノから始まり大合唱。ドラムソロの後に、Paul、Rusty、Brianの3人が並んでギターソロ回し。左利きのPaulだけギターのネックの向きが逆になっている。そして最初のオープニングSEに戻るかのように、And in the end the love you take is equal to the love you make ♪ の一節を合唱して、3時間弱にも及ぶ夢のひとときは終了した。

全部で39曲という膨大な数の楽曲を通して聴いてみて感じたのは、Paulの音楽がいかにジャンルを超越しているかということだった。ロックにポップ、R&R、R&B、カントリー、ゴスペル、サイケデリック、ハードロック、プログレ、クラシック、ワールドミュージックなど、ありとあらゆるジャンルを取り入れているのが良く分かった。50年以上の永い年月に渡る創作活動の中で、それぞれの時代の常に新しいものを吸収し続け、結果時代を超える名曲の数々を残した彼の功績の大きさは図り知れないものがあるだろう。

またその年齢を全く感じさせない姿勢とバイタリティを見せられ、もはや年齢や固定概念を押し付けることすら失礼なのだと感じた。今回の来日が最後になるなどということも全く言われていないわけで、これは間違いなく次回があるだろうと思われる。いやはや脱帽である。

1. Eight Days a Week
2. Save Us
3. All My Loving
4. Listen to What the Man Said
5. Let Me Roll It / Foxy Lady
6. Paperback Writer
7. My Valentine
8. Nineteen Hundred and Eighty-Five
9. The Long and Winding Road
10. Maybe I'm Amazed
11. I've Just Seen a Face
12. We Can Work It Out
13. Another Day
14. And I Love Her
15. Blackbird
16. Here Today
17. New
18. Queenie Eye
19. Lady Madonna
20. All Together Now
21. Lovely Rita
22. Everybody Out There
23. Eleanor Rigby
24. Being for the Benefit of Mr. Kite
25. Something
26. Ob-La-Di Ob-La-Da
27. Band on the Run
28. Back in the U.S.S.R.
29. Let It Be
30. Live and Let Die
31. Hey Jude
Encore:
32. Day Tripper
33. Hi Hi Hi
34. Get Back
Encore 2:
35. Yesterday
36. Helter Skelter
37. Golden Slumbers
38. Carry That Weight
39. The End