プロローグ 死の時間
1 ターキー・スクラッチからの道
2 ホークとの出会い(成功に血眼になって)
3 敵をみなごろしにする男、ホーク
4 さらなる上昇を求めて
5 ディラン、エレクトリックに転向
6 感じるべきほんとうのもの
7 ザ・バンド
8 分断と征服
9 ラスト・ワルツ
10 ネクスト・ワルツ

長いこと捜し続けていた。絶版になって久しい本書は、どこの中古本屋にもネットオークションにも見当たらなかった。何年もの捜索の末、ようやくお茶の水のDisc Unionで発見した。\4,900とプレミアが付いていたがもはや金額は問題ではなかった。The Bandの伝記本としてはもう一冊「流れ者のブルース」があるが、あちらはあくまでも第三者が書いたものであるだけでなく、著書の批判的論調があまり気に入らなかった。しかしこちらはLevon自身の自伝である。その価値は雲泥の差だ。

Levonは南部の生き証人だ。1940年にArkansas州の綿畑の農家の長男として生まれた。9歳から家業を手伝い、給水係やトラクターの運転をしていた。正に南部ミシシッピデルタの生活を体現しており、厳しい自然環境の中で貧しいながらも逞しく生きる当時の様子が興味深く描かれている。音楽好きな両親のもと、Levonも様々な音楽に触れた。ラジオから聞こえるGrand Ol Opryやブルース、一家で見に行ったBill MonroeやFS Walscot、Sonny Boy Williamson。素晴らしい時代である。やがて自分でもギターを演奏するようになり、妹と組んだコンビでは地区コンテストの優勝を総なめするようになる。そして1958年にドラマーとしてRonnie Hawkinsのバンドに招かれてから、彼のプロとしてのキャリアがスタートするのだった。

その後のあらましは周知の通りだが、The HawksにRobbie、Rickと一人ずつ加入してくる過程はやはり読んでいてワクワクさせられる。そしてこの若いバンドの力量が当時でもどれだけ高かったかが分かる。晩年のSonny Boy Williamsとのジャム、詐欺契約、マリファナによる逮捕、Bob Dylanのバンドを一人抜けたLevonが南部に帰り何をしていたか、 などデビュー前の数々のエピソードも興味深い。

しかしデビュー後は成功とは裏腹にむしろ暗い話題の方が多い。特に著作権などを巡るRobbieとの確執が顕在化していく。そしてこれが最も深刻な状況となるのが「ラストワルツ」である。もうツアーをすることにうんざりし、バンドの解散を華々しく飾ろうとしたRobbie。それに対しあくまでもバンドを続けていきたかったLevon。ここではそんな彼の行動と心情が赤裸々につづられている。 また85年のツアー中にRichardがアルコールで自殺するくだりも壮絶だ。

この著書を書いたのは1995年。再結成したThe Bandはまだ活動していたが、当時は全く売れていなかった。しかしこの時の彼もまだ知らない。自分が晩年グラミーを獲るほどに再び成功を収めることを。そして旅立つ数日前にRobbieと和解することも。

この著書を読んで彼が人生の中で大事にしていたものも分かった気がする。文化や農業といった南部の伝統。関わった人達との友情。そして最後まで音楽を演奏し続けることである。大統領をはじめとする多くの人に愛されたLevon Helm。彼は真のミュージシャンであり、アメリカの心であったと思う。改めてご冥福を祈りたい。