スルー・ア・クルキッド・サンスルー・ア・クルキッド・サン
リッチ・ロビンソン

SMJ 2011-12-21
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1. Gone Away
2. It's Not Easy
3. Lost And Found
4. I Don't Hear the Sound of You
5. Hey Fear
6. All Along the Way
7. Follow You Forever
8. Standing on the Surface of the Sun
9. Bye Bye Baby
10. Falling Again
11. Station Man
12. Fire Around
13. By the Light of the Sunset Moon
14. Look Through My Window
15. Broken Stick Crown
16. Run Run

先週に引き続いて、今週は弟Rich Robinsonを取り上げる。Richのアルバム「Through A Crooked Sun」は、兄Chrisよりも先に2011年の末にリリースされている。The Black Crowesが活動を停止した後、割りと早い段階でRichは動き出していた。そして、まず結論から言ってしまいたい。この作品は本当に素晴らしい。

一聴すると全体的に肩の力が抜けて、良い感じにリラックスしている。ソロは以前にも出しているが、その時は他のボーカルに書いたものを想定外に自分で歌うことになったものだった。しかし今回は最初から自分が歌うつもりで書いている。彼の声はChrisに比べて低めであり、その暖かみのある歌声は聴いていて安心する。むしろChrisの声よりも好きかもしれない。

そして楽曲がとにかく粒揃いだ。グルーヴィーなRock & Rollから静かな曲まで、しっかりとしたフックのあるキャッチーなメロディで彩られていて、捨て曲がない。特にM4やM5は名曲。またここで聴けるジャンルも様々で、M10はカントリー、M11はFleetwood Macの隠れたスワンプロックの傑作のカヴァー。さらには国内盤にはボーナストラックとして、先立って限定販売されていたEP「Llama Blues」からの4曲がM13以降に収録されているが、これが思いきり南部ブルース。スライドなども聞かせながら泥臭いサウンドとなっており、ボーカルにもディストーションをかかっていて、一聴してRichとは分からないくらい。本当に引き出しが多い人だ。

インストも聞き応えがあり、全編を通して感じるのはやはりギタリストの作品だなということ。Mark FordやLuther Dickinsonのように決して目立つタイプのギタリストではないが、1つ1つのツボを抑えた味のあるギタープレイの音が聴いていて気持ち良い。またバンドとのアンサンブルも絶妙であり、特にM4の後半やM7ではフュージョンぽい展開では、立体的でスケールの大きな音像が幽玄な新境地を見せてくれる。

ゲストとしてはAllman Brothers のWarren HaynesがスライドでM9に、Larry CampbellがペダルスティールでM9とM10に参加している。LarryはThe Black Crowesの前作「Before The Flood」で故Levon Helmを通してつながったルーツ系マルチプレイヤー/プロデューサーだ。

ジャケットにはうちと同じくらいの娘を自然の中で肩車しているRichの姿がある。大地に生きる力強さと守るものに与える愛情の深さが、このアルバムには溢れている。近年稀にみる傑作だろう。The Black Crowesファンのみならず、幅広いアメリカンロックファンに聴いてほしい1枚だ。

★★★★☆