マジカル・ミステリー・ツアー [DVD]マジカル・ミステリー・ツアー [DVD]

EMI MUSIC JAPAN 2012-10-10
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1. Magical Mystery Tour
2. The Fool On The Hill
3. Flying
4. I Am The Walrus
5. Blue Jay Way
6. Your Mother Should Know
7. Magical Mystery Tour

今年何らかの50周年を迎えているミュージシャンは多い。The Beatlesもその1組だ。ただPaulは今年特に50周年関連のイベントは何もしないと公言している。オリジナルメンバーがいないなら、やるべきではないというのも確かにもっともだ。またリリース関係でも、数年前にモノリマスターを出してしまっているので、もうネタがないのが実情だ。しかしやはりBeach Boysに比べるとずいぶんとひっそりしている感が否めない。

そんな中で唯一リリースされたのが、この映画「Magical Mystery Tour」のリマスター版。私は同名のアルバムは大好きだ。1967年当時のサイケデリックの影響下での実験精神と音楽性の拡散が高次元で結実した名盤である。またその曲質の高さは歴史的名盤「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」も凌ぐと思っている。ただ前半がサントラで、後半がシングル寄せ集めという中途半端な構成が、このアルバムを過小評価させている。

で、映画の方なのだが、私は今まで見たことがなかった。巷では随分低い評価を受けているが、きっとこれも過小評価なはずと思って期待していた。しかし実際見てみた感想は、…微妙だった。やはり大してストーリーもなく、行き当たりばったりの撮影が、完全に裏目に出てしまっている。Paulは音楽的には天才だが、映画監督・脚本家としては専門ではなかったわけだ。こうしたものを作らせてしまったのは、きっと当時のサイケデリックな時代性もあったと思う。

しかしちょっと見方を変えて、これを映画ではなくPV集として捉えてみたら、また違う評価ができるのではないだろうか。それぞれ独立したPVが存在し、それらが1つのストーリーを通して連続した映像として完成しているわけである。またそもそもこの時代にPVというものは存在しなかった。そう考えるとこの作品は、かなら先時代的であり完成度も高いと思う。

また今回収録されているメンバーや関係者のインタビューや解説によっても、この作品をより多面的に捉えることができる。つまりこの作品を酷評した当時の世の中の人々は、彼らのことを勘違いしていたのだ。彼らはそれまで国民的アイドルとして捉えられていた。だからこそクリスマスのゴールデンタイムにテレビ放送され、各家庭では一家で視聴されたわけだ。しかしこの当時の彼らは、反体制的な精神を持った先鋭的なアート集団であった。そんな彼らの作品を、勝手にクリスマスに放映し酷評されてもお門違いというものだ。こうした本質を理解していれば、この作品も全く違った見方ができたかもしれない。

★★★★