ペット・サウンズ (新潮文庫)ペット・サウンズ (新潮文庫)
ジム フジーリ Jim Fusilli

新潮社 2011-11-28
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第1章 「ときにはとても悲しくなる」
第2章 「僕らが二人で口にできる言葉がいくつかある」
第3章 「キスがどれも終わることがなければいいのに」
第4章 「ひとりでそれができることを、僕は証明しなくちゃならなかった」
第5章 「しばらくどこかに消えたいね」
第6章 「自分にぴったりの場所を僕は探している」
第7章 「でもときどき僕はしくじってしまうんだ」
第8章 「答えがあることはわかっているんだ」
第9章 「この世界が僕に示せるものなど何ひとつない」
第10章「美しいものが死んでいくのを見るのはとてもつらい」
エピローグ 「もし僕らが真剣に考え、望み、祈るなら、それは実現するかもしれないよ」

Beach Boysのライブがいよいよ今週となった。例によって気分を盛り上げるために彼らに関する書籍を漁っていたところ、軽く読めそうな本書を見つけた。「Pet Sounds」は言わずと知れた彼らの名盤であるし、個人的に最も好きなアルバムである。

「Pet Sounds」に関わる様々なストーリーはよく語られるところであるし、私もおおまかには知っていたが、本書はBrianの活動や情緒を時系列で詳細に説明している。1964年末、Brianはツアーから離脱し、音楽製作に専念するようになった。しかしこの時彼は、成功から来る様々なストレスや父親との確執、The Beatlesに対するプレッシャーなどから、統合失調症と鬱病を患っていた。逃げ込んだドラッグは彼を助けるよりもむしろそうした症状を増長した。そんな状態にも関わらず彼はこの名盤を作り上げた。むしろそんな状態だからこの作品ができたという方が正しいかもしれない。

このアルバムに収録された楽曲はどれも神々しさをたたえている。瑞々しいメロディと極上のハーモニー、大仰なインストと斬新な展開、様々な楽器を用いた分厚いアレンジ、どれを取っても他の作品とは異なっていた。筆者は音楽的理論からその斬新さを解説してくれており参考になる。これが作りながら試行錯誤したのではなく、最初からBrianの頭の中にあったというから恐れ入る。

またこのアルバムを特徴づけている要素として、BrianとTony Asherの内省的な歌詞がある。ここでは大人へと成長する過程での無拓の喪失感や孤独感が綴られているが、それはそれまでのサーフィンやホットロッド・女の子を題材にした享楽的な路線とは全く違う方向を向いている。当時の時代を考えてもこれはかなり早い。Mike Loveでなくとも違和感を覚えるのは当然かもしれない。

実際当時はあまり売れなかった。しかし時代を超えて、後に多くの人々に再評価をされることになる。またこの本の著者は冒頭に自身の生い立ちを書いているが、中流階級に生まれながらも心に闇を抱えていた。そんな若者にもこのアルバムは訴えたのだった。

長い年月を超えてBrianがBeach Boysとしてやってくる。こんな日が来るとは思わなかった。 このアルバムの曲も何曲か披露されるはずだろう。私は"Here Today"が一番聴いてみたい。