ザ・シー・オブ・メモリーズザ・シー・オブ・メモリーズ
ブッシュ

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7. Red Light
8. She's A Stallion
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10.Stand Up
11.The Heart of the Matter
12.Be Still My Love

90年代に活躍したグランジロックバンドBushの復活作。解散、再結成を経て、ちょうど10年ぶりとなる5枚目のアルバムである。先週のショートレビューで済ますつもりだったのだが、気が変わってちゃんと書きたくなった。

彼らはもともとイギリスのバンドなのだが、当時のブリットポップに嫌気がさし、アメリカに渡った。そして94年にリリースしたデビューアルバム「Sixteen Stone」でいきなり全米600万枚というビッグセールスを収めた。96年の2枚目の「Razorblade Suitcase」もBillboard初登場No.1を記録した。ボーカルのGavin Rossdaleの甘いルックスもあいまって、一気に注目を集めることとなった。

しかし一方で批判も集まった。Nirvanaにあまりにも似ているというのがその理由だった。確かにGavinがNirvanaの影響を受けたのは事実である。彼らのシンプルで骨太で、少し陰りのあるロックは、当時のグランジの時代も多分に反映しており、確かに個性的とは言えなかったかもしれない。しかしGavinが非常に優れたソングライターでもあったことも忘れてはいけない事実だ。"Comedown", "Machinehead", "Alien", "Swallowed"など数々の名曲を書き、それらがシングルヒットした。単にNirvanaに似ているだけで600万枚も売れはしない。

だが90年代が終わると時代が変わってしまう。グランジの時代が終焉を迎え、アメリカはヘヴィロックの時代に入る。99年の「The Science Of Things」まではそこそこだったが、レーベルを移籍し心機一転を図った2001年の4th「Golden State」は燦々たる結果に終わってしまった。そして彼らはそのまま解散への道を辿った。

2002年にGavinはNo DoubtのボーカルだったGwen Stefaniと結婚し家庭を持つ。Gwenは2000年代の間ソロで随分活躍していたので、恐らくGavin はずっと主夫でもしていたのだろう。ただいい加減飽き足りなくなったのか、05年に別バンド、08年にはソロアルバムを発表。そして遂に11年に念願のBush再結成へと至った。Gavinはオリジナルメンバーでの再結成を望んでいたが叶わなかったようで、新たにギターとベースの2人が入っている。

聴けば一聴して分かる懐かしいあのBushサウンドだ。メランコリックでどこか少し陰のあるメロディライン、ハスキーがかったGavinのボーカル、最近は聞けなくなったストレートなロックだ。全体的に以前よりもグランジっぽさが薄れた一方やや歌メロが増量されているようだ。ソロなどの影響だろうか、明るい曲調のものや、ピアノの弾き語りもあったりと、曲作りも少し多彩になった感がある。待った甲斐のある力作だ。

ちなみにボーナストラックに「Golden State」の最後に収められていた名曲"Float"のアコースティックバージョンが入っていた。私は解散を惜しみながらこの曲を10年間聞き続けていたので感慨深い。国内盤が出たのは驚きだったが、恐らく来日は期待できないだろう。とにかく今は彼らが改めてこの時代に正当な評価を受けることができればと願っている。

★★★☆