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Ozzy Osbourne

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私がギターを初めて弾き始めたのは、今から20年以上前、中学3年の頃だった。親父が持っていたクラシックギターの弦を、アコースティックギターの弦に張り替えて練習を始めた。既に結構な腕前だった友人に習って、音階を覚え、指の痛みと戦いながらコードを覚えていった。その後、友人からいくつかスコアを借りて、知っている曲を弾いてみることにした。その中の1曲が、Randy Rhoadsの"Dee"だった。

はっきり言ってこの曲は、ギターを覚えたばかりの少年にとっては、死にそうになるほどに難しかった。早いスピードのコードチェンジ、アルペジオ、ハンマリングとプリング、ハーモニクス、等々。いきなり高度なテクニックの連続に、速攻で挫折しかけた。結局まぁこんなもんかなと、ある程度納得できるレベルに弾けるようになるまでは、かなりの時間を要したのだった。

この後、高校に上がり、新しい友人から譲り受けて、エレキギターやアンプ、エフェクターを揃えたりした。しかし大して上達もせずバンドを組むまでも至らないまま、高校卒業までにはエレキはもう既に別の友人に売り払ってしまっていた。しかしクラシックギターだけはいつまでも私の手元に残り、気が向いた時に手を伸ばすと、苦労して覚えた"Dee"を奏でては悦に入っていたものだった。

この曲は私にとってそんな思い出深い1曲である。初めて聴いた時以来、聴く度、弾く度に感じることだが、本当に美しいクラシックギターの名曲である。まるで美術工芸品のような小曲だ。Randy Rhoadsはワイルドかつテクニカルなプレイで、後世の多くのギタリストに影響を与えたわけだが、同時に繊細でメロディアスな面も持っていた。その背景にあるのは、彼のクラシックのバックグラウンドなのである。

Ozzy Osbourneの自伝の中に、Randyとの思い出が綴られていた。そこにはRandyが事故の前日にOzzyのところへ来てバンドを辞めたいと打ち明けたというくだりがあった。ロックヒーローにはなりたくない、バンドを辞めてクラシックの道へ進みたいと進言したらしいのだ。そしてその翌日、飛行機事故によってRandyは帰らぬ人となってしまった。

結果的に死して彼はロックギターのヒーローとして永遠に名を刻むこととなった。それは彼が望んだものではなかったのなら、皮肉なものである。では彼は生きていたら、どうなっていたのだろう。惜しまれつつもバンドを辞めて、クラシックアルバムを作っていたとしたら、きっとこの"Dee"のような素晴らしい曲をもっと聴くことができたのかもしれない。恐らくそれは世のロックファンが期待したものとは全くかけ離れたものであっただろう。ひょっとしたら今あるこの彼の名声にすら影響を与えていただろうか。それでも私は聴いてみたかったと願ってやまない。この小曲の続きを。