ここ最近相次いで有名人が亡くなっているが、その中で一番ショックだったのがこの方だった。音楽評論家の中村とうよう氏、自宅のマンションで飛び降り自殺をされたとのこと。享年79歳。この年で自殺をした理由は何だったのかが様々な憶測を呼んでいた。

氏は1969年にニューミュージックマガジンを創刊してから1989年まで編集長を努めていた。また他にも執筆した音楽著書は数多く、音楽評論を読むのが好きな私は、頻繁にあちこちで氏の評論を読んでいた。もともとワールドミュージックが専門のようだが、フォーク、ロック、ルーツミュージックなど幅広い音楽に精通し、その造脂が深く強いこだわりを感じさせる文体が結構好きだった。

今回追悼の意を込めて、武蔵野美術大学で開催されている中村とうようコレクション展を見に行ってきた。会場に入ると思いの外こじんまりした展示室内に、民族楽器やレコードが並んでいた。壁には氏自身の言葉でそうした展示物全ての説明が詳細に書かれていた。レコードは氏がライナーノーツを執筆したBob Dylanのファーストに始まり、やはり氏が編修したブラックミュージックやインドネシア音楽などまで幅広いジャンルのレコードが並んでおり、氏がこれまでいかに日本国内に多くの音楽を紹介してきたかを物語っていた。

また民族楽器はアラブのウードやアフリカの親指ピアノなど世界各国の様々な楽器が並んでおり、中には子供の頭蓋骨と皮膚で作られたチベットのダマルなんていう恐ろしい楽器まで陳列されていた。また興味深かったのはアフリカのコラや木琴のルーツがインドネシアにあるという説で、氏が後年インドネシア音楽に傾倒していた理由がよく分かった気がした。

氏が同大学に寄贈したコレクションは、実際にはLP30000枚、楽器300点以上と聞いていたので、展示されていたのがあまりにも少なかったのはやや残念であった。それでも氏の生前の功績を垣間見る貴重な機会になったと思う。

改めてご冥福をお祈りしたい。