Going BackGoing Back
Phil Collins

Atlantic / Wea 2010-09-28
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1. Girl (Why You Wanna Make Me Blue) (The Temptations)
2. (Love Is Like A) Heatwave (Martha & The Vandellas)
3. Uptight (Everything's Alright) (Stevie Wonder)
4. Some Of Your Lovin' (Dusty Springfield)
5. In My Lonely Room (Martha & The Vandellas)
6. Take Me In Your Arms (Rock Me For A Little While) (Kim Weston)
7. Blame It On The Sun (Stevie Wonder)
8. Papa Was A Rolling Stone (The Temptations)
9. Never Dreamed You'd Leave In Summer (Stevie Wonder)
10. Standing In The Shadows Of Love (The Four Tops)
11. Do I Love You (The Ronettes)
12. Jimmy Mack (Martha & The Vandellas)
13. Something About You (The Four Tops)
14. Love Is Here And Now You're Gone (The Supremes)
15. Loving You Is Sweeter Than Ever (The Four Tops)
16. Going To A Go-Go (Smokey Robinson & The Miracles)
17. Talkin About My Baby (Curtis Mayfield & The Impressions)
18. Going Back  (Dusty Springfield)

 Phil Collinsを初めて聴いたのは私が中学生の頃。ちょうどアルバム「...But Seriously」から、"Another Day In Papadise"や"Something Happened On The Way To Heaven "など切られるシングルが次々とBillboardのチャートの上位へ駆け上がって行っていた頃だった。失礼ながら見た目は単なるハゲたおっさんだと思ったが、素晴らしい楽曲と歌声がそれ以上に印象に残ったものだった。

 そして彼が実はその昔GenesisやWeather Reportといったプログレ・フュージョンバンドに在籍した超絶ドラマーだったり、俳優として映画に主演したり、というマルチな才能の持ち主であったことは、それからしばらくしてから知った。

 そんな彼に悲劇が襲った。右耳の聴力の低下、さらに脊髄の手術によりもうドラムも叩けなくなってしまったのである。そして失意のうちに音楽業界から引退表明。かつての全盛期を知っていた分、これは悲しかった。しかしここへ来て突然の新譜リリースのニュース。もう彼の新作が出ることがないだろうと諦めていただけに、これは嬉しいニュースだった。

 今回は彼のルーツである60~70年代のMotownのカバー集ということだが、過去に"You Can`t Hurry Love"をカバーした経緯もあり、全く違和感はなく聞くことができる。Stevie WonderやSupremesなど有名どころばかりで、基本的には原曲通りの完コピである。通常なら、どうせカバーするならアレンジを変えてなんてことを言いたくなるところだが、もう彼の場合はリハビリとしての復帰作ということで、温かく迎えたいと思う。むしろ完全版に収録されている25曲もよくレコーディングしたものだと感心してしまった。

バックの演奏陣には、Motownの伝説的な無名バンドFunk Brothersのリズム隊が参加している。そのフロントで、まだ歌うことができるのだとあくまでも前向きにマイクを持って歌っているPhilの姿が頼もしい。さらに彼は今回握力のない手にスティックをテーピングし数曲でドラム叩いているというから恐れ入る。

 このアルバムはイギリスでNo.1に輝いたらしい。彼の復帰がどれだけ多くの人に待たれていたかの証だろう。私としては、とにかく彼が体に無理しない範囲で今後も活動してくれていれば、それで満足である。

★★★☆