先日Chico & The Gypsiesの公演を見に行ってきた。会場となったBlue Note東京はその名の通りNYにある由緒正しいジャズクラブの国内店舗。先日Matthew Sweet & Susanna Hoffsを見に行ったBillboard Liveと同じような小さなステージをテーブルが囲むようなスタイルは似ているが、受付をすると一人一人テーブルまでエスコートがつくあたり、少しこちらの方が格調が高い感じか。

 今回の彼らの来日は4日間に1日2回ずつここで公演する予定だが、今日はその初日の1stステージとなる。18:00ちょうどに暗転し拍手の中メンバーが登場。横一列に7人の男達がフラメンコギターを持って並んだ。左からBabato、Joseph、Mounin、Kema、Manolo、Chico、Tane、そしてその後ろには右手にベース、左手にパーカッション。私はちょうどChicoの前から3つ目のテーブルだ。



 オープニングはインストの“Liberte”から。中央に白いギターを持ったKemaが座り、他は3人ずつ両サイドに立ってリズムを刻む。ソロのKemaは新加入だが、Manitas De Plataという巨匠の孫らしく、噂に違わぬ名手ぶりであった。私も以前ある知り合いにフラメンコギターの弾き方を少し教わったことがあるが、1弦に親指を置きながら他の指で爪弾く例の奏法で、絶品の指さばきを披露してくれていた。また他の6人のリズムギターも、それぞれ違うコードを弾きながらも、右手は全員一糸乱れず刻んでいる様子に見とれてしまった。

 2曲目は“Baila Me”。陽気なこの曲を小太りで愛嬌のあるManoloがカンテ(ボーカル)を取り盛り上がった。3曲目では今度はBabatoがカンテを取った。当初カンテは常にManoloがメインだと思っていたが、どうやら曲毎に交代するようだ。サビまで聴いてEaglesの“Hotel California”だと分かった。この曲を演るのは珍しい。インストを挟み、5曲目はJoseph、6曲目はMouninがカンテを取った。Josephは拳を入れて歌い上げるタイプで、Mouninは観客とからむのが好きなタイプ。それぞれ個性があるが、皆なかなか上手い。こんなに皆が歌えるグループだったとは知らなかった。

 一方リーダーのChicoは、特にボーカルもソロも取るわけでもないため、実際あまり目立たない。みんなが黒いシャツを着て木目調のギターを持っている中で、1人だけ白シャツと黒いギターを持っているくらいか。ただ曲が終わるたびにそれぞれのメンバーの紹介はしていた。演奏中はあくまでも他のメンバーと一緒にひたすらリズムギターに徹している、縁の下の力持ち的な存在であった。

 また彼らはさすがライブで慣らしてきただけあって客の煽り方が上手い。Chicoの誘いによって、途中から会場内はオールスタンディングとなり、“Todos Todos”ではMouninが観客に「Ole!」の掛け声をかけるように煽り、最高も盛り上がりを見せた。しかし気になったのは観客の手拍子。みんなでリズムに合わせて手を叩くのは楽しいのだが、やはり日本人の手拍子は4拍子になってしまうのである。一方フラメンコのパルマ(手拍子)は8拍子でかなり速く打たなければいけない。(実際はこれだけではなく、もっと複雑なリズムもからんでくるのだが。) 曲によっては、ここぞという時に、ChicoとTaneが8拍子のパルマを先導して一時的に観客もスピードアップする場面もあったが、やはりその後息切れしてしまっていたようだった。

続いて“Inspiration”のイントロが奏でられ歓声が上がった。日本ではNHKの鬼平犯科帳のエンディングテーマ曲に使われたことで非常に人気の高い曲。個人的には鬼平を観ていなかったため、あまり思い入れはないのだが、これも哀愁に満ちた非常に美しい一曲だった。

 本編ラストは“Bamboleo”、GKの代名詞的な名曲に喜んでいたところ、1番が終わったところで“Djobi Djoba”のサビへとなだれこんだ。今年はメドレーで来たのかと思っていたら、今度は“Volare”のサビへと続いた。正直これはメドレーにはしてほしくなかったところだ。恐らく他にもそう思った人は多かったのではないだろうか。そしてメドレーのラストは“Marina”。最後に自分たちのオリジナルを持ってきたのは自信の表れだろう。オリジナル曲の中では私も好きな曲だが、GKの曲ほど知名度はなかったかもしれない。

 終了後鳴りやまぬ拍手の渦に対して、彼らはステージから降りることもなく、そのままアンコールに突入した。1発目は“Allegria”、初期GKのインストの名曲。数多くGKのインストの中で私が最も好きな曲である。そしてラストは“A Mi Manera”。Frank Sinatraの“My Way”のカバーだが、これはもう原曲以上に素晴らしい。カンテは交代で、1番をManolo、2番はMounin、3番をJosephが歌った。Chicoが最後に「ドモアリガトー!See you soon!」と言い残して、メンバーはステージを後にした。

さて今回は本当に素晴らしいライブであった。本場の妙技により名曲の数々を味わうことができたのだから。しかし死ぬまでにGKのライブを見るというのが私の夢だったわけだが、その夢がこれで叶ったかというと少し違う。今回予想以上にオリジナル曲を多く演奏してくれて、それはそれで良かったのだが、本当に聴きたかった3曲がメドレーであったことには、やはり思いが少し残ってしまった。こうなればやはり今度は本家GKのフルセットのライブを見てみたいところである。

Setlist
1.Liberte
2.Baila Me
3.Hotel California
4.Moorea
5.?
6.Madre Mia
7.Todos Todos
8.Inspiration
9.?
10.?
11.Buona Sera
12.?
13.Bambo~Djobi~Volare~Marina
14.Allegria
15.A Mi Manera