先日、埼玉スーパーアリーナにあるジョン・レノンミュージアムに行ってきた。ここは前から気になっていたのだが、今年の9月に閉館されてしまうということで、今回急いで足を運ぶことにした。別に閉館しなくてもいいのではないかと思っていたが、なんでもここはOno Yokoの許可のもと2000年より開設されたが、Johnの魂はより多くの人に共有されるべきであるため、また違う場所に移すのだという。

 ここにはJohnの生誕から少年時代、ハンブルグでの修行期、The Beatles活動期、解散後のソロ期など、年代順に展示がされており非常に見やすかった。そして何よりもその予想以上の展示物の数々に驚かされた。愛用のリッケンバッカーや、実際に着ていた初期の革ジャン、「Sgt. Pepper」の黄色い軍服、あの印象的な丸眼鏡、アビーロードスタジオにあったミキサー、本人のクレジットカードなどまで置いてあり、終始目を奪われっぱなしだった。何よりも感動したのは、私の大好きな“In My Life”や、“Nowhere Man”、“If I Fell”、さらには“Starting Over”といった名曲の数々の歌詞の生原稿が鎮座していたことである。完成形の歌詞もあれば、その後手直しを入れたであろうものもあり、長年親しんだ名曲の誕生が目の前にあることに、深い感慨を抱かずにはいられなかった。きっとNew Yorkのダコタハウスなどから運ばれたのであろうこうした遺品の数々は、一つでもオークションにかけた日には即座に億単位の値がつくだろうなんて、考えるべきではないのだが思わず考えてしまうのだった。


  
 1980年の晩年に関しては、5年の沈黙の末に再び創作意欲を取り戻し「Double Fantasy」のレコーディングに取り組んでいく様子が日付を追って展示されていき、12月8日で終わっていた。これで順路は終了かと思いながら廊下を曲がった先に、広くて真っ白い部屋に一面に生前のJohnの歌詞からの言葉がびっしりと書き連ねられていた。これには思わず引き込まれてしまい、一つ一つの言葉を目で追った。こうした演出にこのミュージアムの意図と工夫が表れていた。

 ただ展示の中で気になったのは、60年代末のコーナーにおいてThe Beatlesの活動に関するものはほとんどなく、Ono Yokoの前衛アートや2人の平和活動ばかりが取り上げられていたことである。確かにこの時期のJohnの意識はThe Beatlesの外に向いていたし、このミュージアムに寄贈しているのはOno Yokoであるわけなので仕方ないのだろうが、「Abbey Road」やホワイトアルバムなどJohnとしてもグループとしても素晴らしい作品を作っていた時期であっただけに少し残念だった。

 またいくつか触れていない事柄も多く、暗殺されたということに関してはどこにも記載されていなかった。また大量摂取し作品にも影響を与えていたドラッグに関してや、失われた週末にはMay Pangという愛人がいたこと、主夫時代も夫婦仲は悪くかなり自堕落な生活だったことなども勿論カットされており、綺麗にまとまっているという印象だった。これはこのミュージアムに限らず、死後彼に関する多くの記述について言えることではある。子供たちへの影響もあるため仕方ないのかもしれないが、個人的には「John LennonはLove & Peaceの偉人なんです」と言われると違和感を感じてしまうのである。

 しかし何だかんだ言いながら、結局この日隅から隅まで解説を読みながら回り、気づいたら4時間も経っていた。彼のあらゆる音源や映像、書籍などを自由に楽しめるラウンジなんてのもあり非常に楽しめた。いずれ我が子にも見せたいくらいだが、今回の閉館はつくづく残念である。もしファンであれば是非閉館までに行ってみることをお勧めする。