二人の唄い方は対照的だ。Artはあまり動かずに原曲通りに歌うのに対して、Paulはかなり原曲からアレンジを変えて歌う。また動作についても、Paulはギターを弾かなくていい曲の時は、曲に合わせてずっと両手を動かし続けていた。それはまるで演技をしている役者のようだった。

 "名曲"Scarborough Fair"をしっとりと聴かせた後は、"Homeward Bound"。個人的に昔からギターで練習し、長年親しんできた曲。さらに突如スクリーンに「卒業」の映像が流れ、アップテンポの曲が続く。"Mrs. Robinson"だ。何と名曲揃いであることか。大してファンでもない嫁さんでも大抵の曲を知っている。40年間世界中で流れ続け、多くのアーチストにカバーされてきた楽曲の数々は、すべて彼らのオリジナルであるという事実をまざまざと見せつけられる。今彼らはともに67歳。しかし全くもって現役だ。こんなスダンダードな名曲がオリジナルの二人によって演奏され、しかもそれが今目の前で繰り広げられている。この事実が未だに認識しきれていない自分がいるが、これを楽しむことの方が優先だ。

 しかし観客の年齢によるところなのだろうか。The Policeのコンサートの時はオールスタンディングとなった東京ドームのアリーナも、今日の観客は誰一人立ち上がりやしない。見る限りリズムに乗って動いている人も、ほとんど見当たらない。主役と同様に観客も若くはないのだ、無理もないのかもしれない。しかしちょっとこれでは淋しい。手拍子は曲によっては叩いている人は多かったのだが、いかんせんリズムがずれる。さらに悪いことに、東京ドームの音響は残響が出るため、会場内の拍手の音がすべて一拍遅れて轟く。これでは皆の拍手が揃うわけがない。

 PaulがArtを紹介して立ち去るとArtのソロコーナーが始まった。これは「Old Friendツアー」ではなかった流れだ。Artがしっとりと3曲聞かせてくれた後は、今度はPaulの出番。グラミー賞を受賞した「Graceland」から"The Boys In The Bubble"や"Graceland"などを、とてもパーカッシブに聞かせ、これも対照的だった。彼らのセットリストは基本的には固定のようだったが、今日のPaulのソロコーナーは嬉しいサプライズだった。

 バックバンドもベテラン揃いだ。2人のギター、ベース、ドラム、パーカッション、サックス、さらには時折楽器を持ち替えて、"Scarborough Fair"ではビオラ、"The Boxer"ではテルミン、"The Boys In The Bubble"ではアコーディオン、"Graceland"ではスライドギター、"El Condor Pasa"では縦笛など、様々な楽器を披露してくれていた。