キープ・ミー・ハンギング・オン
ヴァニラ・ファッジ
ダブリューイーエー・ジャパン
1988-08-25


A1. Ticket to Ride 
A2. People Get Ready
A3. She's Not There 
A4. Bang Bang 
B1. Illusions of My Childhood - Part One 
B2. You Keep Me Hanging On 
B3. Illusions of My Childhood - Part Two 
B4. Take Me for a Little While 
B5. Illusions of My Childhood - Part Three 
B6. Eleanor Rigby

先日Deep Purpleも来日していて気になってはいたのですが、最近ライブ続きで金銭的に余裕がなく行けませんでした。で、今日はそのDeep Purpleではなく、DPに多大な影響を与えたVanilla Fudgeを取り上げたいと思います。

Vanilla Fudgeは一般的にアートロックとかサイケデリックとか呼ばれています。同時代のCreamやJimi Hendrixと並んで語られるべき存在であり、DPやUriah Heepなどへの影響の大きさを考えれば彼らはハードロックの原点の1つだとも思っていますが、どうも不当に評価が低い気がします。

彼らのデビューは1967年。重厚なオルガンとエキセントリックなギター、ヘヴィなリズムで彩られたファーストアルバムは当時相当なインパクトがあったと思います。曲間をつなぐ挿入曲以外は全てThe BeatlesやR&Bのカヴァーばかりでしたが、原曲も分からないほどに徹底的に叩き壊しています。またこのバンドはメンバー全員が歌えてハイトーンのコーラスが綺麗なのですが、不穏な曲調の中でそれが逆に不気味さを増しています。特にシングルとなったSupremesのB2は必聴です。

映像で観ると良く分かりますが、彼らは非常に高い演奏力を持っていたと同時に、とにかくパフォーマンスが激しかった。やたらとオーバーアクションなオルガンのMark Stein、まるで千手観音のようなドラムCarmine Appice、ベースのTim Bogertも激しい (実はギターVince Martelが一番地味ですが)。後のハードロック勢への影響も納得です。

彼らの音楽性の頂点は68年の3rd「Renaissance」。もうカヴァーではなくオリジナル曲ばかりとなり、美しくも狂気をはらんだダークさで、まるでホラー映画のような傑作です。

バンドは3年という短い活動期間に5枚のアルバムを残して1969年に解散。CarmineとTimのリズム隊2人は、この後Cactusとして活動した後に、Jeff Beckと合流してBeck, Bogert & Appiceを組みます。個人的にこのリズム隊は、CreamのJack Bruce & Ginger Baker、Jimi Hendrix ExperienceのNoel Redding & Mitch Michelleと並ぶ最強のコンビだったと思います。