Devil in the Details
Saigon Kick
Sanctuary
2002-05-13


1. Intro
2. Russian Girl
3. Killing Ground
4. Eden
5. Going On
6. Everybody
7. Spanish Rain
8. Flesh And Bone
9. Sunshine
10. Victoria
11. Afraid
12. So Painfully
13. Edgar
14. All Around

変わり行く時代の狭間にいたもう1つのバンドを紹介したいと思います。Saigon Kick。これも当時好きでした。

ギターのJason BielerとボーカルのMatt Kramerを中心にアメリカのフロリダで結成され90年にデビュー。このオルタナティヴな香りのするハードロックバンドはデビュー時には話題になり、2nd「Lizard」からは”Love Is On The Way”というアコースティックバラードもヒットしました。

しかしこの後にボーカルのMattが脱退。残ったJasonが自らボーカルを取り、作曲・プロデュースまで1人で4役をこなし3rdアルバム「Water」をリリースします。これも傑作だったのだがなぜか売れず、結局アメリカのアトランティックから契約を切られてしまいます。しかしJasonは諦めず、アジアでの根強い人気を足掛かりにして新たなレコード契約を獲得しこの4thを制作。これが彼らのキャリアで頂点となる名盤でした。

このバンドの魅力はヘヴィなギターの上に乗る粘り着くようなボーカルメロディで、②や④、⑧あたりは癖になります。ここら辺はAlice In Chainsに近いものもあるが、彼らの場合はもっとポップでキャッチー。また今作は跳ねるようなトライバルリズムも特徴的で、そこに突き抜けるようなボーカルコーラスが乗る⑨や⑪も堪らない。さらに今作では多国籍な魅力にも溢れており、①はアフリカ民族風なチャントだし、⑦ではスパニッシュなアコースティック、⑩のピアノはジャジーで高いセンスが光る。驚くほどに幅広い音楽性を驚くほどの完成度で提示してみせたのが今作でした。

私にはなぜこれが当時売れなかったのか分からなかったのですが、つまりオルタナティヴ界からはHR/HMだと思われ、HR/HM界からはオルタナティヴだと思われていたわけです。結局その広い音楽性が結果的に仇となってしまったのでした。