マルコムX [DVD]
デンゼル・ワシントン
パラマウント ジャパン
2005-03-01





私は大学時代に「黒人英語」を研究していた。英語学を専攻していて、卒論のテーマとして選んだのだった。元々は英語を話せるようになりたいという浅はかな考えで入った私にとって、学問としての英語学はやりたいこととはちょっと違った。だが入ったからには卒業しなければいけないので、バスケや音楽などで興味を持った黒人の英語について取り組むことにした。統計のために色々データを取る必要があり、多くの黒人映画や音楽を漁ったのだが、その中で最も印象に残ったものの1つがこの映画だった。

監督はスパイク・リー。初めて黒人の映画監督として成功し、それまでストリートにおける黒人の生活や社会問題を描いてきた彼が手掛けた一世一代の大仕事がこの「マルコムX」だった。彼得意の黒人文化の映像描写の中で繰り広げられる、人種差別問題に対して過激に挑んでいく一人の黒人青年の伝記。ここで演じている デンゼル・ワシントンの熱演は見物で、立ち振る舞いや話口調は本物としか思えないほどだ。

「400 hundred years is long enough. I think it’s time to stand up ! I think it’s time to stand up !!」 私はデータ取りのために彼のセリフを書きとめ続けていたので、今でも多くのセリフを覚えている。アメリカの黒人は16世紀の建国後にアフリカから奴隷として連行されてきた。その後400年もの間彼らに人権は与えられなかった。1960年代の公民権運動の高まりの中で、あくまでも平和的に訴えたキング牧師とは対照的に、マルコムXは過激な思想を説いて抑圧されてきた黒人達の熱狂的な支持を集めた。そうならざるを得ない時代背景があったわけだが、結局彼も銃弾に倒れたのだった。

私はその後大学を1年休学してアメリカに留学した。向こうで実際に黒人達と触れ合い一緒にバスケをしたりした一方で、色んな文献を読み漁りデータも取った。そして帰国後英語で論文をまとめ、最終的に次のように結論した。「黒人英語における簡略化はルーツであるアフリカ言語に起因する。従ってそれが彼らの言語能力の低さや唇の厚さであるとする見方は全く根拠のない偏見である」

先月アメリカでまた差別主義の若い白人が南部の黒人教会で銃を乱射したというニュースが流れた。また昨年から警察による暴力も取り沙汰され、大規模なデモに発展するなど社会問題となっている。マルコムXやキング牧師など多くの偉人が戦い続けてきた人種差別問題が未だになくならないのは本当に悲しいことである。