Static & Silence by DGC 【並行輸入品】
The Sundays
DGC
1997-09-23


1. Summertime
2. Homeward
3. Folk Song
4. She
5. When I'm Thinking About You
6. I Can't Wait
7. Cry
8. Another Flavour
9. Leave This City
10. Your Eyes
11. So Much
12. Monochrome

1990年、ラジオから甘く澄んだハイトーンボーカルが流れてきて、思わず耳を奪われた。どこまでも透明感に溢れているが、どこか明るくなりきらない陰もある。ずっとこの曲を忘れられずにいたのだが、誰が歌っているのかはずっと分からなかった。

何年も後に分かった声の主は、The Sundaysというイギリスのバンドの紅一点ボーカルHarriet Wheelerで、曲は”Can’t Be Sure”。デビューアルバム「Reading, Writing and Arithmetic」の邦題は「天使の囁き」と付けられていたが、そう形容したくなる気持ちもよく分かった。

Harriet嬢はルックスも非常に端麗なのだが、彼女らはそれを武器にしようとはせず、ジャケットにも一切写真を載せなかった。そしてシングルやアルバムが売れ始めたら、周囲が落ち着くまであえてメディアに出ることを控えたという。その理由は、不必要に売れて自分達のコントロールが及ばなくなることが嫌だったらしい。何と堅実なバンドだろうか。

2ndを出した後、彼女らは姿を消した。そして5年後の1997年に突然復活をする。MTVでM1が流れていたのだが、この歌声を聴いてすぐに彼女だと分かった。どうやらその間にHarrietはギターのDavidと結婚し子供をもうけていたらしい。その2人の共同作業でこのアルバムは制作されている。

ディストーションをかけない澄んだ音色のDavidのギターサウンドの上を、さらに透き通るHarrietの声が浮遊する。以前はThe Smithの影響の強いイギリス的でメランコリックな作風だったのが、M1あたりでもう少し明るくポジティブな雰囲気が感じられるのは、彼女らの私生活を反映しているのだろう。小川のように流れるM4も名曲。また子供の頃に白黒テレビで見たアポロ月面着陸を歌った幻想的なM12も印象的で、この曲のノスタルジーが美しいジャケットとタイトルに反映されている。

結局それからまた音沙汰がなくなってしまって久しい。きっと子沢山になり忙しいのかもしれない。しかしまた唐突に復活する日が来るんじゃないかと願っている。

★★★