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Faith No Moreの2日後にすぐ今度はUli Jon Rothの来日公演に行ってきた。余韻に浸る間もなく、ジャンルも全く違うので、頭を切り替えるのが大変だった。

Uli Jon Rothは70年代にScorpionsに加入し頭角を現したギタリストである。この頃はUlrich Rothという名だった。Jimi Hendrixの影響を強く受けており、冗舌で表現豊かなギタープレイでScorpionsを成功へと導いた。78年に脱退後はElectric Sunを始めとするソロ活動を行ってきた。

今回の公演は彼がScorpionsへ加入して40周年を記念して、70年代のScorpionsの楽曲を演奏してくれるということで思わず参戦した。公演会場は名ライブ盤「Tokyo Tapes」が収録された37年前の初来日公演と同じ中野サンプラザホール。ここも近いうち取り壊し予定とのことなのでこれが見納めになる。

会場に着くとビル内ではちょうどベースのUle Ritgenの絵画展をやっていたので覗いてみた。Uliの「Under A Dark Sky」のジャケットを描いたのが彼であり、その幻想的で写実的な絵画の数々は感嘆ものだった。ただどれも20万前後の値段がついており、画商の人達が営業を頑張っていた。

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開場し7時過ぎに暗転した。ゼロコーポレーションの橋本社長が前説で出てきた後、メンバーが登場すると早くも場内皆立ち上がりオールスタンディングに。フロント中央にボーカルのNathan James、その左手にUliとギターNiklas Turmann。右手にはベースのUleともう1人のギターDavid Klosinski。バックにドラムJamie LittleとキーボードCorvin Bahnが並び、全部で6人編成。ギターはUliを含めて3人もいる。

オープニングは”All Night Long”で勢いよくスタートした。これも「Tokyo Tapes」と同じだ。そして2曲目は「In Trance」から”Longing For Fire”、3曲目は「Virgin Killer」から”Crying Days”。こういうマイナーな選曲も絶妙で最高である。

曲後UliのMC「37年前に初めて日本に来た時に演ったのがこの中野サンプラザだった。その時にいた人はいるかい?」パラパラとだけ手が挙がったのを見て「あまり多くないね」と言っていた。御大は明るい色のストレートの長い髪は昔のまま変わっておらず、顔のシワと口髭が正にギター仙人といった風貌である。頭に巻いた水色の鉢巻も粋だが、実はあれは禿げ上がった額を隠すためであることは見れば分かる(笑) 

ボーカルのNathanは大柄な体躯で、Klaus Meineとはまた違ったタイプだが、低音から高音域まで非常にパワフルた。今回のツアーでUliは彼を連れていくのを楽しみにしていたようだったが、それも納得のボーカルである。しかしボーカルを取ったのは彼だけでなく、ギターのNiklasも何曲か歌っていたし、Uli自身も原曲通り何曲かではボーカルを披露していた。

ベースのUleはUliとはElectric Sunから長い付き合いだ。彼はUliの弟が結成したZenoに参加した後、その後継Fair Warningを率いてきた人物でもある。ただこの日のステージではほとんど目立たなかったが、地味ながらも堅実なプレイでバンドを下支えしていた。

兎にも角にも驚嘆するのはUliのスカイギターの凄まじさである。各曲のソロや後半のインプロで魅せるピッキング、カッティング、タッピング、アーミング、どれも見事の一言。奏でる音もメロディアスだったりアグレッシブだったり様々な表情をみせる。後日「スカイアカデミー」という仙人自らによるギター講座も開催されていたらしいが、いくら教えてもらってもあんなギターは弾けないだろう。この日はツインリードも楽しみにしていたのだが、3人いるので豪華なトリプルリードだったのは期待以上だった。

もう一つ痛感したのは楽曲の素晴らしさだ。とにかく70年代の楽曲を次から次へと演ってくれたが、どれも本当に名曲だった。特に”We'll Burn The Sky”や”In Trance”、”Fly To The Rainbow”あたりの静と動のコントラストのある曲は聴いていて引き込まれた。

「1978年にここで演った時私達は何かスペシャルなことをやりたいと思ったんだ。一緒に歌ってほしい」と言って始まったのは何と”荒城の月”。ここまで「Tokyo Tapes」を再現してくれたことに感動しつつも、当時の観客と同じように私はあまり歌詞が分からず歌えなかった。

NiklasのMC「次はUliがクラシックギターを弾くけど、これは完全にインプロだから毎晩違うんだ。タイトルは”Rainbow Dream Prelude”」Uliが1人椅子に座り指弾きで奏で始め、美しい調べを聴かせる。途中で弾き方を替えてドラムをバックにフラメンコギターまで聴かせてくれたのには感嘆させられた。

”Fly To The Rainbow”の後半で強烈なアーミングのソロを弾いていたのだが、その時に弦を壊してしまったらしくギターを替えていた。しかしその後”Top Of The Bill”を弾き始めた途端演奏を中断。長いことチューニングしていたがダメだったのか、またギターを交換。「いつも自動チューニングだからやり方を忘れちゃったんだよ」と言っていた。その後「弦が壊れることなんてないんだけどね。Scorpionsソングを演ったからこうなったのかな」と。今のScorpionsとの関係は良く知らないが少し皮肉が感じられた気がする。

”Dark Lady”後半で演奏しながらのメンバー紹介があり、最後に並んで手を振り本編終了。アンコールで戻ってきて”Pictured Life”。2曲目の”Catch Your Train”の後でUliが「日本では9時を過ぎると電車に飛び乗って帰らなきゃいけないんだろう?違うのかい?」なかなかお茶目なことを言ってくれる。

「次は歌詞はBob Dylanが書いてJimi Hendrixがアレンジした曲だよ」と言って始まったのはUli自身がボーカルを取っての”All Along The Watchtower”。後半は彼なりのアレンジも加えて弾きまくる。終わった後にNathanが歌いたそうにステージに戻ってきたが、そのままUliボーカルでまたJimiの”Little Wing”へ。正直最後は場内少しクールダウンしてしまった感は否めず、NathanボーカルでScorpionsソングで締めてほしかった。

終わったのは9時半、トータル2時間半の熱演だった。インタビューで今回の来日公演は映像化する予定だと言っていたし、場内でも撮影している様子を目にしたが、Uli仙人の弾きまくる素晴らしいステージが収録されることだろう。きっとギタートラブルのところは上手く編集されるだろうけど(笑)

1. All Night Long
2. Longing For Fire
3. Crying Days
4. The Sails Of Charon
5. Sun In My Head
6. Virgin Killer
7. 荒城の月
8. We'll Burn The Sky
9. In Trance
10.Raibow Dream Prelude
11.Fly To The Rainbow
12.Top Of The Bill
13.I've Got To Be Free
14.Polar Night
15.Dark Lady
Encore
16.Pictured Life
17.Catch Your Train
18.All Along The Watchtower
19.Little Wing