Angel Dust
Faith No More
Reprise / Wea
1992-06-16


1. Land Of Sunshine
2. Caffeine
3. Midlife Crisis
4. RV
5. Smaller And Smaller
6. Everything's Ruined
7. Malpractice
8. Kindergarten
9. Be Aggressive
10. A Small Victory
11. Crack Hitler
12. Jizzlobber
13. Midnight Cowboy
14. Easy
15. As The Worm Turns

待望の来日公演をあと3日後に控えたFaith No More。2009年の再結成に喜んだものの、
その後ずっと待ちぼうけで、諦めていた末の念願の来日発表だった。今予習のためヘヴィローテーションになっているのは数年前のライブブートとこの名盤である。

前作「The Real Thing」の成功を牽引したのは”Epic”のシングルヒットだったが、これはヒップホップとファンクをヘヴィメタルに大胆に導入したミクスチャーの先駆けとなった名曲だった。しかしこれに続く「Angel Dust」ではそうした単純なミクスチャーは見られず、もっと混沌としている。

一本ブチ切れたようなカオティックハードコア、アヴァンギャルド、M7ではショスタコーヴィチ弦楽四重奏8番、M9ではカレッジチアリーダー達の掛け声、M10にはオリエンタルな中国音階、M13は1963年Ferrante & Teicherのイージーリスニング、M14はR&BグループThe Commodoresの77年のカヴァー、もはやジャンルなどどうでもよくなるレベルだ。あらゆる音楽要素がまるでプログレのように曲毎・曲中変化していく。恐ろしい程のヘヴィさと爽快な程のキャッチーさが同居しているのもこの作品のスゴいところだ。

Mike BordinのタイトなトライバルドラムとベキベキいうBill Gouldのベースの上に、ヘヴィに刻むJim Martinのギターと荘厳なRoddy Bottumのキーボードが被さる。バンドサウンドだけでも強力だが、この上に乗るMike Pattonのボーカルが凄まじい。天も引き裂くような断末魔、オペラ歌手のような歌い上げ、気が狂ったような高笑い、渋い低音の囁き。まるで多重人格者のように目まぐるしく表情を変え続けるその表現力は筆舌に尽くし難い。楽曲の幅が最大限に広がったのはこのボーカルに呼応した部分が大きい。

それにしても前作でのMikeは妙にミャーミャーした声だったのに、どうしてこうも急に声変わりしたのかが不思議だ。出来るならこの声でもう一度前作を再録して欲しい位だ。

この後ギターのJim Martinが解雇された際には当時のメタルファンはかなり落胆していた。バンドの中で唯一ヘヴィメタルな要素を持ち、バンドのスポークスマン的な存在だっただけにショックは大きかった。しかし今思えば時代も変わりつつある中で、音楽的にもファッション的にもJimがバンド内で浮いていたのは明らかだった。まぁそれで嫌がらせをするというバンド側も大人気ないのだが。

98年に解散。この後本国でヘヴィロックが隆盛を極めるわけだが、これに与えていたFaith No MoreそしてMike Pattonの影響は絶大だった。にも関わらずここ日本では同時代のミクスチャーの先駆けだったRed Hot Chili Peppersと比べると、その扱いは不当と言わざる得ない。この偉大なバンドをようやくまた国内で目にすることが出来る。

★★★★★