グリンプス (ちくま文庫)
ルイス シャイナー
筑摩書房
2014-01-08


1. 帰還(ゲット・バック)
2. 蜥蜴の祝祭(セレブレーション・オブ・ザ・リザード)
3. スマイル
4. ブライアン
5. 移行中
6. 新しい日の出
7. ジミ
8. ヴ―ドゥー・チャイルド(つかのまの帰還)
9. 天国
10.レイ

普段読む本というのは大抵ミュージシャンの伝記物が多いのだが、最近は珍しく小説を読んでいた。もっともこれも音楽に関わるものなのだが。1960年代のロック好きには有名な小説、ルイス・シャイナーの「グリンプス」である。

60年代には幻の名盤と呼ばれたものがいくつか存在した。The Beatlesの「Get Back」、The Doorsの"Celebration Of The Lizard"、Beach Boysの「Smile」、Jimi Hendrixの「First Rays Of The Rising Sun」。これらの作品は後の90~00年代に当事者や関係者によって完成されたわけだが、この小説の舞台となる1989年の段階ではまだ幻だった。これはその幻を追いかけるというロック好きのロマン溢れる一冊だ。

ステレオ修理工の主人公Rayは、父親の死後のある日、思い描いた「Get Back」のセッションがステレオから流れてきたことに驚く。自分に不思議な能力があることに気付いた彼は、海賊盤レーベルのグレアムに促されながら、次々と幻の名盤に携わっていくことになる。

その過程の中で、実際に1966年のLAにタイムスリップしBrian WilsonにSmileを完成させるように促したり、1970年のロンドンに行ってはJimi Hendrixの死を止めようと奔走をする場面がハイライトだが、実在する当時の人物や情景が現実のものとして描写され、ロック好きな読み手をワクワクさせてくれる。

また同時にRayは崩壊していた父親や妻との関係にも悩み傷つき清算しようともがき続けるのだが、そんな彼に対してBrianやJimiがアドバイスを与えるというように、単に過去の人物としていないのも物語を興味深いものにしている。

秋の夜長にお勧めの1冊。