南野陽子 「GLOBAL」 (1988)



1. Hello! Goodmorning
2. 月のファウンテン
3. マイ・ファニー・IVY
4. 土曜日3時ステラ・ホテル
5. カリブヘ行きたい
6. どうやって愛したらいいの?
7. 眠り姫の不幸
8. あなたを愛したい
9. SPLASH
10. さよならにマティーニは禁物
11. マイ・ハート・バラード

懐メロ特集最後は、正真正銘のアイドルものを一つ。これは私が一番最初に買ったアルバムでもある。幼少の頃から家の中では親がThe BeatlesやSimon & Garfunkel、クラシックなんかのレコードをよくかけていて、それらは当時私自身も好きだった。しかし自発的に聴くようになった音楽は、恥ずかしながらこんなアイドルものだった。

当時のアイドルは、浅香唯、中山美穂、工藤静香などいたのだが、その中で私は南野陽子だった。なぜ南野陽子だったのかは今となっては定かではない。ただ小学6年~中学1年の当時の私は、あの笑顔とアゴのエクボにヤラれていたようだ。23歳の誕生日にプロポーズしてくれた人と結婚すると公言していた彼女の言葉に、自分の年齢を計算したりしていた。まさか自分の方が先に結婚するとは思いもしなかったが。

当時はまだCDが出始めていた頃で、まだそれほど普及していなかったはずだ。その証拠に私が買ったのもCDではなくカセットテープだったのだ。我が家にもCDプレーヤーはまだなかったし、父親は依然古いレコードプレーヤーで聴いていた。で、そんなテープなどはとっくの大昔に捨てていたわけだが、先日急に懐かしくなってBook Offで探したらCDで250円で売っていた。

このアルバムは彼女の全盛期のものだと思う。なにしろレコーディングを、海外のニューヨークやバハマで行っている。今聴くと音作りもとてもきらびやかで、ホーンセクションやストリングスなどが散りばめられていたり、ちょっとジャジーな曲もあったりする。そうしたところから、この頃それだけの予算があったことが分かる。

そんな環境作りもあってか、彼女自身もイメージチェンジを行っている。それまではスケバン刑事のような少女のイメージだったのが、このアルバムでは大人の女性のイメージへと変化しているのが分かる。歌詞もM3、M4、M5、M10のように、大人指向・海外指向が強く見て取れる。そしてそんなイメージが私にとっての南野陽子のイメージだった。彼女自身は決して上手い歌手とは言えない。声も細いし、表現力もあるわけではない。しかしその舌足らずで甘い声が、むしろアイドル然としていると言えるし、それが当時は好きだったものだ。懐かしい青春の1枚。

★★★


Bangles 「Everything」 (1988)

エブリシング(紙ジャケット仕様)エブリシング(紙ジャケット仕様)
バングルス

SMJ 2009-07-22
売り上げランキング : 120286

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1. In Your Room
2. Complicated Girl
3. Bell Jar
4. Something To Believe In
5. Eternal Flame
6. Be With You
7. Glitter Years
8. I'll Set You Free
9. Watching The Sky
10. Some Dreams Come True
11. Make A Play For Her Now
12. Waiting For You
13. Crash And Burn

次は私の青春のアイドルBangles。昨年末にリリースされた最新作を先日取り上げたが、今日は私の生涯の名盤である3rdアルバムを。

彼女らは80年代に一斉を風靡していた。Susannaを気に入ったかのPrinceが楽曲提供をした゛Manic Monday゛や、コミカルなPVが話題になった゛Walk Like A Egyptian゛などが大ヒットし、2nd「Different Light」で念願の成功を手にしていた。それに続くのが88年リリースのこの「Everything」。しかしこのアルバムは彼女らにとってラストアルバムとなってしまう。

彼女らは60年代、特に初級~中期のBeatlesの影響が顕著である。楽曲自体の影響ももちろんだが、それ以外にも多くの影響が見てとれる。4人全員が歌うことができ、そのためボーカルハーモニーが素晴らしいこと。そのボーカルハーモニーを活かしたメロディアスな曲作りが特徴であること。メンバー全員が曲を書くことができ、それぞれが自分の書いてきた曲でリードボーカルを取っていること、などなど。

実際このアルバムのクレジットは4人平等だ。まずSusannaの曲は、最大のヒットとなったM5。これは聴く度に幸福感に満たされる絶世の名バラード。またM1を歌うSusannaにも当時の少年達は大いにドキドキさせられたものだった。またMicheal Steele(B)も名曲を書いている。古き良き70年代に思いを馳せるM7はノスタルジーに溢れ、M4の静かなマイナーコードには胸が締め付けられる。Vicki(G)とDebbi(Ds)の姉妹も良い曲を書いており、特に綺麗なハーモニーに包まれつつ流れるような疾走感のあるM3とM6は素晴らしい。全編を通して捨て曲がないどころか傑作揃いで、前作までと比べて曲質が格段に飛躍している。また特徴的なのは、アップテンポな曲からスローな曲までどれもどこか明るくなりきれない切なさや哀愁に満ちている点である。無邪気な明るさに溢れていた前作までとはカラーが異なり、成長した大人の雰囲気が漂っている。ちょうどこれからの秋空にピッタリなアルバムである。

しかしこのアルバムからシングルカットされヒットしたのは、ほとんどがSusannaの曲だった。確かに彼女の甘い歌声は個性的であり、魅力的である。またそのルックスとも相まって、世の男性の心を鷲掴みにした。私もその中の1人である。しかしそうした露出と脚光の不公平感がバンドに不必要な緊張をもたらし、解散への道を辿ることになってしまったのだった。だが前述の通りこのバンドは決してSusanna1人のバンドではない。このアルバムを聴けばよく分かる。繰り返しになるが、またバンドとしての来日を期待したい。

★★★★★


Cyndi Lauper 「A Night To Remember」 (1989)

ア・ナイト・トゥ・リメンバー(紙ジャケット仕様)ア・ナイト・トゥ・リメンバー(紙ジャケット仕様)
シンディ・ローパー

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2008-06-18
売り上げランキング : 244459

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1. Intro
2. I Drove All Night
3. Primitive
4. My First Night Without You
5. Like A Cat
6. Heading West
7. A Night To Remember
8. Unconditional Love
9. Insecurious
10. Dancing With A Stranger
11. I Don't Want To Be Your Friend
12. Kindred Spirit
13. Hole In My Heart (Bonus Track)

今なお現役で活躍している80年代の女性シンガーとして、次に取り上げたいのがCyndi Lauperだ。

彼女は80年代シーンの象徴的な存在だった。レインボーヴォイスと言われた彼女の歌声は、一聴して彼女と分かる強烈な個性を持っていた。Madonnaのライバルとも目され、世界的に数々のヒットを放った。ただ90年代以降は現役を続けるものの、常にシーンのトップに君臨したMadonnaと比べるとだいぶ水を空けられた印象があった。しかし2010年に発表した「Memphis Blues」で彼女は再び名声を取り戻す。自身のルーツであるブルースを唄ったのが、グラミーを始め各方面から絶賛を浴びたのだった。

彼女のアルバムで一番好きなのは、1989年の本作である。前2作に比べるとそれほど大きなヒット曲がないので、多少地味な印象が持たれがちだが、私にはこれがリアムタイムだったので一番想い出深い。前年に米歌手代表として参加した米ソ・ソングライターサミットに刺激を受けたCyndiが、制作途中だったのを一から作り直したのがこのアルバムらしい。これまでで初めて全曲ラブソングとなっており、楽曲も傑作揃いだ。

まず冒頭に、古いラジオから聴こえてくるかのように雑音混じりで歌声が聴こえてくる。古い伝承歌かと思っていたが、彼女の自作だったようだ。これは本編ラストのM12にもリプライズとして再度流れ、このアルバムを統一感のあるものとしている。そして名曲M2に雪崩れ込む。この曲の高揚感は特別で、若かりし私をいつも深夜の暴走へといざなってくれたものだ。M12から続くM13も同様のアッパーなナンバーで、この2曲がアルバムをロックな印象にしている。ただM13はもともとボーナストラックで、彼女が主演した映画「バイブス秘宝の謎」の主題歌である。

中盤はじっくりと聴かせる名曲が並んでいる。特にバラッドM4はサビの歌い上げの絶唱が素晴らしい。M6やM7も思わず聴き惚れる傑作。M8もSusanna Hoffsをはじめ多く歌い手がカヴァーしている。全体的に硬質でシリアスな雰囲気があり、それまで2作にあったポップでファンなイメージとは少し方向性が異なるかもしれない。しかし彼女が真剣にソングライティングに取り組んだ本気度の感じられる力作だと私は思う。

昨年今年と震災後に来日して日本を勇気づけてくれたことも記憶に新しい。また一昨年にはアルゼンチンの空港で、フライト欠航になり騒然となったところを、「Girl Just Wanna Have Fun」を歌い事態を収束させたというニュースもあった。彼女の歌声は本当に人の心に訴えるものがあると思う。いつまでも歌い続けて世界の人々に笑顔を届けていってほしい。

★★★★


Belinda Carlisle 「Runaway Live」 (1990)

Belinda Carlisle: Runaway Live [DVD] [Import]Belinda Carlisle: Runaway Live [DVD] [Import]
Duncan Smith

Sanctuary 2001-04-23
売り上げランキング : 176035

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1 Runaway Horses
2 Summer Rain
3 (We Want) The Same Thing
4 Whatever It Takes
5 Mad About You
6 Circle In The Sand
7 Nobody Owns Me
8 I Get Weak
9 Valentine
10 La Luna
11 Vision Of You
12 Leave A Light On
13 Heaven Is A Place On Earth
14 Our Lips Are Sealed
15 We Got The Beat
16 World Without You
17 Shades Of Michaelangelo

先日のWilson Phillipsからの流れで、またしても懐メロモードに突入。ということで、私の青春のアイドルBelinda Carlisleのこのアイテム。

「Heaven On Earth」の再発で当時のライブDVDが収録されていたが、どうせなら一番好きなアルバム「Runaway Horses」の頃のライブが見たかった。そこで見つけたのがこのタイトルだ。既に絶版となっているのだが、Amazonでギリギリ在庫が残っていた。クレジットがないので正確な日にちや会場が分からないのだが、1990年のライブらしいのでBelindaの髪もバッサリと短い。

バンド編成はギター、ベース、ドラム、キーボードに、チェロ、女性コーラス隊、というラインナップ。Belindaは最初上下白のパンツスーツで登場。綺麗なお姉さんというイメージそのまま。ただアップになるとこの頃すでに30過ぎということあり、流石に顔のシワは見てとれた。歌唱では綺麗な高音と、ロックな曲ではドスのきいたシャウトなどで聴かせてくれた。逆に低音が少し弱いかなと感じたが。

M6からは胸元の広く開いた黒のワンピースに着替えてきた。大人っぽい衣装だったが、足元は裸足でより躍り回っていた。M10からM11ではフラメンコギターを交えながら、しっとりと聴かせる。その後大ヒット曲M12とM13で大盛り上がりで本編終了。1度目のアンコールはGo-Go'sの曲を2曲。2度目のアンコールでは、キラキラのワンピースに、今度はヒールをちゃんと履いて登場。最後は自身の曲M17でしっとりと聴かせて締めた。

「Runaway Horses」発表後ということで、セットリストはそこからが中心となり9曲も入れていたが、M13などの前作までのヒット曲も全て網羅していた。観客も終始盛り上がっており、全盛期の勢いを感じられるライブだった。

あれから20年余り経つが、未だに現役で頑張っているのが頼もしい。一昨年Billboard Liveに来日していた時に見にいけなかったのを改めて悔やんだ。


The Chieftains 来日



先日のBeach Boysを始め色んな大御所たちが今年はこぞって50周年を迎えているが、ここにもう1つ50周年を迎えたグループがいる。アイルランドのThe Chieftainsである。

イーリアンパイプとティンウィッスルというアイルランド伝統楽器を操るPaddy Moloneyが中心となり、彼らは1962年にアイルランドのダブリンにて結成された。それまでパブなどでしか演奏されなかった庶民的なアイルランド伝統音楽/ケルト音楽を、初めてステージで演奏される芸術の水準まで高めたのが彼らである。

これまで半世紀に渡る活動の中で、40枚のアルバムを発表し、7回もグラミーを授賞している。またアメリカカントリー・フランスガルシア・メキシコ・中国・日本などの世界中の民族音楽や、ロックでもRolling Stones・Van Morrison・Stingなどそうそうたるメンツとコラボレートしてきている。これはひとえにアイルランド音楽の持つ普遍性と彼ら自身の柔軟性によるところであろう。

そんなChieftainsであるが、今年は50周年を記念してワールドツアーを行っている。そしてそのツアーの最終公演地が年末にここ日本で予定されているのだ。そのプロモーションとして、先日リーダーのPaddyが来日した。8/28に渋谷でピーター・バラカン氏とトークショーを行ったのだが、私は残念ながら見に行けなかった。

しかし8/29に生出演したNHK BS1の番組「地球テレビ エル・ムンド」は見ることができた。73歳になるというがまだまだ健在で、日本人女性のハープ奏者を従えて、Paddyの奏でるイーリアンパイプとティンウィッスルの音色にうっとりされられた。そしてアイリッシュパブさながらのバーカウンターに座り、Paddyが音楽とギネスビールについて語るのを聞き、無性にアイルランドに行きたくなってしまった。ひとまず年末の来日でアイルランドを体験してみたいところだ。

11月22日(木) 渋谷 Bunkamuraオーチャードホール
11月23日(金・祝)焼津文化会館
11月24日(土)滋賀県立劇場びわ湖ホール
11月25日(日)アルカスSASEBO
11月27日(火)北九州芸術劇場
11月30日(金)すみだトリフォニーホール<with 新日本フィル>
12月1日(土)オリンパスホール八王子
12月2日(日)兵庫県立芸術文化センター
12月4日(火)愛知県芸術劇場コンサートホール
12月7日(金)まつもと市民芸術館


Wilson Phillips 「Wilson Phillips」 (1990)

ウィルソン・フィリップスウィルソン・フィリップス
ウィルソン・フィリップス

EMIミュージック・ジャパン 1995-11-08
売り上げランキング : 172287

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1. Hold On
2. Release Me
3. Impulsive
4. Next to You (Someday I'll Be)
5. You're In Love
6. Over And Over
7. A Reason to Believe
8. Ooh You're Gold
9. Eyes Like Twins
10. The Dream is Still Alive

Beach Boysつながりで今週も1つ。50周年でBeach Boysが注目を集めている今年、それに合わせるような形で活動をまた活発化させているグループがある。それがWilson Phillipsだ。

私くらいの世代の人だと懐かしい名前だ。Wilson Phillipsは1990年にデビューし、大ヒットしていた。Beach BoysのBrian Wilsonの娘であるCarnieとWendy、そしてMamas & PapasのJohn & Michelle Phillipsの娘Chynnaの3人によるグループである。当時中学生だった私は毎週末ラジオのヒットチャート番組を聴いていたが、彼女らの曲がどれかが常にチャートの上位にランクインしていたのをよく覚えている。

懐かしくなってBook Offで探してみたら、やはり250円で売っていた(笑)。改めて聴いてみたが、非常に良く出来たポップアルバムだ。素直でキャッチーなメロディライン、今となっては恥ずかしくなるくらいのポジティブなリリック、そして3人の綺麗なボーカルハーモニー。加えて彼女らのこの美貌だ。これは売れるはずだ。実際M1、M2、M5が全米No.1、M3は4位、M10が12位、アルバムはこれまでで800万枚を売り上げている。ちなみにJoe WalshがM3とM7で、Bill PayneがM3とM10で、さらにSteve LukatherがM7とM9でゲスト参加している。

ただ二世ミュージシャンの常なのだが、彼女らもやはり親の七光りみたいに言われることもあった。しかしクレジットを見て初めて知ったのだが、10曲中6曲は彼女ら自身のオリジナルだったのだ。てっきり他人の曲を歌っているだけのアイドル的なグループだとばかり思っていたので驚いた。なるほど、天才と言われた人の娘たちだ、やはり二世には遺伝するものがあるのだろう。

1992年に2ndアルバムを出した後は、Chynnaがソロとして少し活動した以外はめっきり音沙汰がなかったが、2004年に3rdを出していたようだ。今年は親のバンド復帰に合わせてか、Beach Boysのカヴァーアルバムをリリースしたり、他の子供世代と一緒にBeach Boysのステージに上がったりしている。あやかっていると言ってしまえばそれまでだが、親にとってもこれは最初で最後の祭りみたいなものだ。綺麗な花が添えられていた方が映えるというものだろう。

★★★☆



Beach Boys Live Report 2012



Beach Boys
2012.8.16 (Thu) @ 千葉マリンスタジアム

Beach Boysの来日公演に行ってきた。会場は千葉マリンスタジアム。野外の野球スタジアムだが、幸いにも雨も降ることもなかった。また夕方には辺りは涼しくなり、暑い野外で熱中症を心配していたのも杞憂に終わった。

前座は1組目が星野源という日本人のソロアーティスト。しかしツアーパンフを買うためにグッズコーナーに並んだらひどい行列で、40分も待たされたので、1組目は結局見られず。

前座2組目はAmerica。70年代に活躍していたベテラン選手。"A Horse Without Name"しか知らなかったのだが、演奏された楽曲はどれも素晴らしかった。ゲストでChristpher Crossも登場していた。

会場内は年輩の人ばかりかと思っていたが、意外に若い人も多く、年齢層は幅広かった。私の席はA15ブロックで、前の方だが右端。ステージの右側は残念ながら全く見えない上に、前の人の背も高い。しかし出来るだけモニタースクリーンではなくステージを目で追っていた。ちなみにアリーナは満席で12000人いたらしいが、スタンドは残念ながらガラガラだった。

Beach Boysが登場したのは19:00。メンバーの名前を呼び込んで一人ずつ順番にステージに登場する。Bruce Johnston、David Marks、Al Jardine、Mike Love。そして最後に大歓声の中Brian Wilsonが登場し、ステージ左手のキーボードの椅子によろめきながら座り込んだ。後ろにはBrianバンドのメンバー、ギター、ベース、ドラム、パーカッション、キーボード、サックスと大所帯だ。

Do It Againでスタート。そしてCatch A Wave、Hawaii、Don't Back Down、Surfin' Safariと冒頭数曲はメドレー形式で畳み掛ける。さっきのAmericaでは最後までほとんど誰も立たなかったが、今度は最初からオールスタンディングで場内早くも大盛り上がり。ノリの良い楽曲の数々が、予想以上に素晴らしいハーモニーに彩られ、一気に引き込まれた。

一旦クールダウンして、Surfer Girlでしっとりと聴かせる。続いて私の大好きなDon't Worry Baby。高いファルセットのリードボーカルで魅了してくれたのはBrianバンドのJeffrey。ある意味彼がいなければ彼らのハーモニーは完成しなかっただろう。そして冒頭のサーフィンコーナーに続いて、今度はホットロッドコーナーに突入。バックスクリーンにクラシックカーが映され、またアップテンポに攻め立てる。

Mikeは予想以上に声が出ていた。長年に渡ってバンドを存続させてきた自負か貫禄のある歌いっぷりで、歌に合わせて踊ったりターンしてみせたり、堂々としたフロントマンだった。またDavidは毎曲ギターソロを聴かせてくれたが、これもなかなか良かった。Al Jardineは終始笑顔でギターを弾き良い味を出していた。Cottonfeildでの歌唱が特に印象的だった。Bruceも終始ニコニコしていたが、あまりキーボードは弾いていなかった気がする。そのかわり時折ステージの前方まで出てきて観客を煽っていた。

メンバーが皆ノリノリな中でBrianは一人浮いていた。終始うつろな表情で心ここにあらずという感じ。自分の出番以外は基本的に微動だにせず、キーボードに座っているだけだった。キーボードの前には歌詞が出るモニターも取り付けられている。今日は結局立ち上がってベースを持つこともなかった。

Sail On SailorからようやくBrianのコーナーが来ると、待ってましたと歓声があがった。リズムを取るように手のひらを上下させながら、絞り出すようにしわがれた声で歌うBrianを、周りのメンバーがしっかりコーラスと演奏でサポートしていた。続くHeros & Villiansは正にBrianの世界。次から次へめくるめく展開する曲構成は、改めてプログレだなと感じた。ライブでは若干ノリ辛いが、これを完璧にこなす演奏力に感嘆した。

「今から50年前にBrian、Dennis、Carlの3兄弟と従兄弟の私、そしてAlでスタートしたんだ。Brian、兄弟の紹介をしたいかい?」とMikeがBrianに振ったのだが、Brianはそれにほとんど対応できず、曲名だけ紹介した。Dennisの画像をバックにForeverが歌われる。その後今度はBrianはちゃんとCarlの紹介してGod Only Knows。Brianに苦笑しつつも、この2曲は感動的だった。

新作からはGod MadeとIsn't It Timeの2曲。観客の反応も悪くなかった。そして「Pet Sounds」からSloop John BとWouldn't It Be Nice。上がったテンションはそのままGood VibrationやCalifornia Girls、Help Me, Rhondaといったキラーソングで最高潮に。Surfin' USAで本編が終了。

2部構成かと思ったが、結局間を空けずに本編最後までぶっ通しで行った。そして本編終了後もほとんど休憩もないままアンコールに突入。彼らのタフさに驚いた。アンコール1曲目はKokomo。ここでまたChristpher Crossがゲストで登場し、サビのハイトーンで聴かせてくれた。バンドメンバーの紹介を経てBarbara Annへ。ここでAmericaの2人も登場した。そして最後はFun, Fun, Funで大団円のうちに終了した。

結局終わったのは20:40、セットリストは全部で33曲だった。45曲も演っていた本国でのセットリストに比べるとさすがに少し少なく感じたが、前座も長かったので仕方ない。見る前は、こんなメンバーで見られるのは最後だからと、正直それほど内容に期待はしていなかった。しかし実際名曲・ヒット曲のオンパレードだった上に、演奏やハーモニーも素晴らしかった。バックバンドのサポートも大きかったと思うが、フロントのメンバーたちも十分元気だった。Brianに関しては生で見られただけで満足だ。

もう1つ今回のライブを見ながら痛感したことがある。それは、あぁこれがアメリカなのだ、ということだ。50年の歴史の中で、良い時代も悪い時代もあった。バンドの歴史においても、ロックの歴史においても、アメリカの歴史においても。止まることなく半世紀を歩み続けてきた。そして今、これだけのポジティブなバイブレーションをもって、これだけ最高のエンターテインメントと芸術を提示していた。この強さ、偉大さが、Beach Boysであり、アメリカなのだなと痛感したのだった。

01. Do It Again
02. Little Honda
03. Catch A Wave
04. Hawaii
05. Don't Back Down
06. Surfin' Safar
07. Surfer Girl
08. Don't Worry Baby
09. Little Deuce Coupe
10. 409
11. Shut Down
12. I Get Around
13. That's Why God Made The Radio
14. Sail On Sailor
15. Heroes And Villains
16. Isn't It Time
17. Why Do Fools Fall In Love
18. When I Grow Up (To Be A Man)
19. Cotton Fields
20. Forever
21. God Only Knows
22. All This Is That
23. Sloop John B
24. Wouldn't It Be Nice
25. Then I Kissed Her
26. Good Vibrations
27. California Girls
28. Help Me, Rhonda
29. Rock & Roll Music
30. Surfin' USA
Encore
31. Kokomo
32. Barbara Ann
33. Fun, Fun, Fun


「ペット・サウンズ」 ジム・フリーリ著

ペット・サウンズ (新潮文庫)ペット・サウンズ (新潮文庫)
ジム フジーリ Jim Fusilli

新潮社 2011-11-28
売り上げランキング : 8372

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


第1章 「ときにはとても悲しくなる」
第2章 「僕らが二人で口にできる言葉がいくつかある」
第3章 「キスがどれも終わることがなければいいのに」
第4章 「ひとりでそれができることを、僕は証明しなくちゃならなかった」
第5章 「しばらくどこかに消えたいね」
第6章 「自分にぴったりの場所を僕は探している」
第7章 「でもときどき僕はしくじってしまうんだ」
第8章 「答えがあることはわかっているんだ」
第9章 「この世界が僕に示せるものなど何ひとつない」
第10章「美しいものが死んでいくのを見るのはとてもつらい」
エピローグ 「もし僕らが真剣に考え、望み、祈るなら、それは実現するかもしれないよ」

Beach Boysのライブがいよいよ今週となった。例によって気分を盛り上げるために彼らに関する書籍を漁っていたところ、軽く読めそうな本書を見つけた。「Pet Sounds」は言わずと知れた彼らの名盤であるし、個人的に最も好きなアルバムである。

「Pet Sounds」に関わる様々なストーリーはよく語られるところであるし、私もおおまかには知っていたが、本書はBrianの活動や情緒を時系列で詳細に説明している。1964年末、Brianはツアーから離脱し、音楽製作に専念するようになった。しかしこの時彼は、成功から来る様々なストレスや父親との確執、The Beatlesに対するプレッシャーなどから、統合失調症と鬱病を患っていた。逃げ込んだドラッグは彼を助けるよりもむしろそうした症状を増長した。そんな状態にも関わらず彼はこの名盤を作り上げた。むしろそんな状態だからこの作品ができたという方が正しいかもしれない。

このアルバムに収録された楽曲はどれも神々しさをたたえている。瑞々しいメロディと極上のハーモニー、大仰なインストと斬新な展開、様々な楽器を用いた分厚いアレンジ、どれを取っても他の作品とは異なっていた。筆者は音楽的理論からその斬新さを解説してくれており参考になる。これが作りながら試行錯誤したのではなく、最初からBrianの頭の中にあったというから恐れ入る。

またこのアルバムを特徴づけている要素として、BrianとTony Asherの内省的な歌詞がある。ここでは大人へと成長する過程での無拓の喪失感や孤独感が綴られているが、それはそれまでのサーフィンやホットロッド・女の子を題材にした享楽的な路線とは全く違う方向を向いている。当時の時代を考えてもこれはかなり早い。Mike Loveでなくとも違和感を覚えるのは当然かもしれない。

実際当時はあまり売れなかった。しかし時代を超えて、後に多くの人々に再評価をされることになる。またこの本の著者は冒頭に自身の生い立ちを書いているが、中流階級に生まれながらも心に闇を抱えていた。そんな若者にもこのアルバムは訴えたのだった。

長い年月を超えてBrianがBeach Boysとしてやってくる。こんな日が来るとは思わなかった。 このアルバムの曲も何曲か披露されるはずだろう。私は"Here Today"が一番聴いてみたい。


「The Lady - アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」



私は普段仕事上東南アジアの諸国とやりとりをすることが非常に多い。シンガポール、タイ、マレーシアは特に重要な取引先であり、インドネシアやフィリピン、ベトナムから仕事をもらうことも少なくない。しかしそうした東南アジアにおいて、1カ国だけうちがこれまでビジネスの実績が全くない国がある。それがビルマだ。

現在のビルマの正式名称はミャンマーである。89年に軍事政権が支配して以来、国名をビルマからミャンマーに変えてしまった。同時に民主主義も剥奪され、経済発展からも取り残された。しかし国民民主連盟(NLD)の指導者アウンサンスーチー氏は、これを認めず旧表記を用いているので、私もそれにならうことにする。

そのスーチー氏を描いた映画「The Lady」がようやく上映された。監督はリュック・ベンソン、主演はミシェル・ヨー。この映画が描いているのは、彼女と家族の絆である。彼女にイギリス人の夫とその間に生まれた息子たちがおり、夫とは再会することも叶わぬまま死別したことは有名だ。しかしその夫が、妻のノーベル賞の推薦やビルマへの経済制裁を働きかけるなど、妻の政治活動を裏で支えていたことは初めて知った。そしてやはり、ごく普通の家庭を引き裂いた数奇な運命を受け入れ、国民のために戦い続けた彼女の強さは尊敬に値する。

この映画の撮影後にビルマの情勢は大きく変化した。テインセイン大統領が民政移管を推進し、スーチー氏をはじめ多くの政治犯が開放された。そして2012年4月の選挙ではNLDが大勝(ここを映画のクライマックスにしたかった)。今や世界経済界が開放されたビルマ市場に大挙している。大統領の目的が経済制裁解除とはいえ、これは大きな変化である。

毎日新聞にはスーチー氏の手記が毎月掲載されていた。他国の指導者や自身の部下の死を悼みながら改革への気持ちを新たにする彼女の手記を読むと、彼女の温かい人柄と鋼鉄の意思に触れることができた。彼女のそうした積年の想いが、今ようやく実現への歩みを進めているのを見ると、他国ながらも非常に喜ばしい限りである。

民族融和や憲法改正など、まだまだこの国には課題が山積している。しかしきっとThe Ladyとビルマ国民はそれらを乗り越えてゆくことと信じている。この映画の本当の意味でのハッピーエンドを見届けたい。


北の国



先週一足早い夏休みを取り、家族と北海道に旅行に行ってきた。4日間で旭川から登別まで南下する行程だった。登別では雨に降られたが、私にとって一番の目的だった富良野・美瑛は晴天だった。

私が富良野・美瑛に惚れ込むようになったのは、ドラマ「北の国から」がきっかけだ。今月も旅行気分を盛り上げる目的もあり、ずっと借りて見ていた。(先日俳優の地井武男さんが亡くなったというのもある。) 私はもともとこのドラマはスペシャル編以降しか見ていなかったのだが、この機会に連続ドラマの方も見てみた。そして改めて名作だと感じさせられた。こんなに見る度に泣かされるドラマは他にないと思う。五郎さんを始めとする登場人物たちの温かい人情味。さだまさし氏による音楽。そして雄大な富良野・美瑛の情景。



私も以前北海道に住んでいたことがある。当時札幌にいる大学時代の友人に、一緒にベンチャーをやらないかと誘われたからだった。今からちょうど10年前、2002年6月のことだ。結局1年半北海道にいたが、仕事はうまく行かず、金もなく、この頃は私にとって青の時代と呼ばれている。

「北の国から」を初めて見たのもその頃だった。向こうの人達との会話の中で、ことあるごとに話題にのぼっていたので、これは道民として見とかなければいけないのだろうと思ったのだ。そしてそれは乾いていた私の心に染みた。特にスペシャル編の中で大人になる純が人生にもがく姿が印象的だった。

その後私はドラマの舞台となっていた富良野・美瑛を訪れた。1年半の間、夏に1回、冬に1回。真っ青な大空の下に、夏は緑、冬は真っ白の景色がどこまでも広がっていた。それまで私は、なぜ北海道に来たんだろう、ここで一体何をしているんだろうと、ずっと自問自答していた。それがその雄大な景色を目にした時に、初めて北海道に来て良かったと思えたのだった。

富良野・美瑛を訪れたのは、今回の旅行で4度目になる。1・2度目は1人で、3度目は結婚直前に2人で、そして今回は娘も連れて。次に来た時には、娘と同じ感動を共有できたらこれ以上嬉しいことはない。


Gallery
  • Therapy? 「Internal Love」 (1995)
  • Therapy? 「Internal Love」 (1995)
  • オンラインツアー③ - アイルランド編
  • オンラインツアー③ - アイルランド編
  • オンラインツアー③ - アイルランド編
  • オンラインツアー③ - アイルランド編
  • オンラインツアー③ - アイルランド編
  • オンラインツアー③ - アイルランド編
  • オンラインツアー③ - アイルランド編
Access
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Categories
Comments