Willie Nelson 「Country Music」

Country MusicCountry Music
Willie Nelson

Rounder / Umgd 2010-04-20
売り上げランキング : 36289

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1. Man With The Blues
2. Seaman's Blues
3. Dark as a Dungeon
4. Gotta Walk Alone
5. Satan Your Kingdom Must Come Down
6. My Baby's Gone
7. Freight Train Boogie
8. Satisfied Mind
9. You Done Me Wrong
10. Pistol Packin' Mama
11. Ocean of Diamonds
12. Drinking Champagne
13. I Am a Pilgrim
14. House of Gold
15. Nobody's Fault But Mine

 この人はアメリカ人にとって生きた国宝みたいな人である。しかしそれは何も伝統的なカントリーを長くやっているからというのでない。かつて保守的なカントリーにあって、後ろ指差されながら様々なジャンルとコラボレーションをし続けたことから、異端やアウトローとも呼ばれた。しかしその結果あらゆるジャンルのアーチストから尊敬の念を得ている。Eric Claptonが主催しているCrossroads Guitar Festivalでも、ブルースディではB.B. Kingがトリを努める一方で、カントリーディのトリはやはりこの人だった。

 1933年生まれだから齢77歳になるのだが、未だに毎年のように作品をリリースし続けているその創作意欲には恐れ入る。これまでスウィングやスタンダードナンバーなど他ジャンルに手を出してきたが、今作はそのタイトルの通り直球である。カントリーの聖地Nashvilleで録音し、オリジナルの新曲を1曲、トラッド3曲、定番のブルーグラス/フォーク・ソング、Ernest TubbのM2, Merle TravisのM3, Doc WatsonのM7のカバーを収録している。

 プロデューサーのT-Bone Burnetはルーツ系作品で引っ張りだこのベテランであり、生音を活かしたオーガニックなサウンド作りが非常に巧い人だ。そのつながりでグラミー賞も獲ったRobert Plant & Allison Clauseの「Raising Sand」の熟練の演者たちがバックを固めている。バンジョーやマンドリン、ペダルスティール、フィドルの響きが、Willieの持つ優しく暖かな歌声と相成って、この上なく味わい深い音世界を構築している。また思わずジャケ買いをしてしまう、このジャケットも良い。

 不謹慎かもしれないが、この人には長生きしてほしいと思ってしまう。

★★★★


ROM 「ROM」

ROMROM
ロム

インディーズ・メーカー 2005-12-14
売り上げランキング : 163967

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


最近休みの日で嫁も子供もおらず1人の時間が取れた時には、隣街に新しくオープンしたスタジオに通っている。目的はドラムの練習。前職で軽音楽部の顧問みたいなことをやっていたが、エイトビートしか叩けないくせにドラムも生徒に教え、しかも教えた生徒が皆自分よりも巧くなっていくのが悔しかったものである。

 ようやく自分の時間が少し取れるようになったため、かねてよりやりたかったドラムを叩き始めたわけだが、これが楽しい。やればやるだけ上達していくのが自分で分かる。前は単純にエイトビートを叩くだけで精一杯だったのだが、徐々にオカズを入れたり、少しアレンジして自分なりのリズムを叩いてみたりできるようになってきた。

 こうなると以前から叩いてみたかったリズムに手を出してみたくなった。それがこのROMというユニットの"Into The Clouds"という曲である。以前CDショップで流れているのを聞いて、一目惚れならぬ一聴惚れをした曲だ。正直言ってこのユニットのことは、Miami出身の2人組のポストロックユニットらしいという以外はよく分からない。ただこのインスト曲のドラムを聞いた瞬間に持っていかれてしまった。ギターとドラムだけのシンプルなインストなのだが、流麗なギターと激しいドラムのコントラストが絶妙だ。何よりもドラムの手数が多いだけでなく、押しと引きを心得たリズムキーピングが素晴らしく、そのフレーズはまるで唄っているかのようである。

 さてこれを叩きたいわけなのだが、そんな始めたばかりの素人に簡単にマスターできるはずもない。ただ人間目標があるのは励みになる。いつかこれを叩ききった時はさぞ気持ちがいいことだろう。

http://www.warszawa.jp/cgi-bin/user/detail/detail.cgi?GID=32450

オジー・オズボーン 「アイ・アム・オジー」

アイ・アム・オジー オジー・オズボーン自伝アイ・アム・オジー オジー・オズボーン自伝
オジー・オズボーン クリス・エアーズ 迫田はつみ

シンコーミュージック・エンタテイメント 2010-08-02
売り上げランキング : 8181

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 今年は新作も発表しラウドパークにも来日と、ソロデビュー30周年を迎え国内でも話題のOzzy Osbourneだが、昨年本国で出版されベストセラーになった自伝書の訳本もようやく出た。私は彼のことはBlack Sabbath時代からソロの「No More Tears」あたりまでしか知らないが、特にSabbath時代を読めることを楽しみにしていた。毎度のことだが、以下に内容に関することを多々書いているので、これから本書を読む予定の方は見ないで下さい。

  これまで多くのミュージシャンの伝記を読んできたが、大抵少年時代にギターの練習に没頭し努力の先に成功を夢見たというものがほとんどである。しかしこの人の若い頃は本当にどうしようもない。労働者階級の貧困家庭に生まれ育ち、読み書きが出来ないため学校でも落ちこぼれ、仕事も長く続かず、挙げ句の果てにはつまらない窃盗の罪で刑務所に入れられてしまう。出所した後に新しいことを始めるために、経験豊かなフロントマンという嘘の広告を楽器屋に出したところから、ようやく彼の人生は動き始めるわけだ。

 むしろ凄いのはTony Iommiだ。元々彼は巧いギタリストだったが、工場の機械に指を切断されてしまう。にもかかわらず、義指でそれまで以上に弾けるまでに乗り越えたという。またその腕前を買われJethro Tullに引き抜かれるものの、あくまでもSabbathでの成功に拘り、3日でバンドに戻ってきたという。この事実はこれまで知らなかった。

  デビュー後バンドは突如降ってわいた大成功にそれまでの生活は贅沢三昧に一変する。それに伴い、アルコールやコカインなどのドラッグに溺れることになる。また黒魔術信者であるとの誤解から様々なトラブルにも遭ったようだ。

 Sabbath時代の酷い日々と比べると、ソロでスタート直後の彼は全く別人のようだ。それは一重にRandy RhoadsとSharonの存在によるところが大きかったと思われる。ここら辺の時期は、以前Rudy Sarzoの伝記本もあったが、それとも重なっており、読み比べると興味深い。そしてもちろんRandyの飛行機事故についても触れられている。

 その後もアルコールやドラッグへの依存症は続き様々な問題を引き起こすことになるが、それは彼のLDによる劣等感や、ADHDによる自己制御不能、精神不安や脅迫概念など、先天的に彼が持っている性質によるところが大きかったことも分かる。しかしそんな彼が八方塞がりの少年時代から、最終的には「The Osbournes」という番組出演により世界的な人気者となり、イギリス女王やアメリカ大統領に接見するまでになるのだから、ドラマティックな人生である。


Sheryl Crow 「100 Miles From Memphis」

100 マイルズ・フロム・メンフィス100 マイルズ・フロム・メンフィス
シェリル・クロウ

ユニバーサル インターナショナル 2010-07-14
売り上げランキング : 3468

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1. Our Love Is Fading
2. Eye to Eye (feat. Keith Richards)
3. Sign Your Name (feat. Justin Timberlake)
4. Summer Day
5. Long Road Home
6. Say What You Want
7. Peaceful Feeling
8. Stop
9. Sideways (feat. Citizen Cope)
10. 100 Miles From Memphis
11. Roses and Moonlight
12. I Want You Back (Bonus Track)

 しばらく私はSheryl Crowから離れていたため、彼女の新作に触れるのは久しぶりだった。しかし最初に一聴した時は、これまで私が知っているSheryl Crowとはかけ離れていたため、一瞬誰だか分からなかった。今回はタイトルにもあるように、60~70年代のStaxレーベルのソウル・R&Bへのオマージュ志向の強い作品となっている。毎回同じことを繰り返すことなく常に新しいことへと挑戦する姿勢や、最近流行りのカヴァー集で済まさなかったのは評価されるべきだろう。

 バックのホーンセクションやオーケストレーション、ファルセットの男女コーラスやレゲエなギターなど、これまであまり聞かれなかったような新鮮な要素が爽やかなメロディに乗っている。彼女自身も楽しんで演っているようだし、さすが一つ一つの楽曲の出来も秀逸だ。彼女はこれまでも夏のイメージではあったが、文字通り荒野(カントリー)の夏だったのが都会(アーバン)の夏のイメージに変わったといったところだ。

 またM2にはKeith Richards、M3のTerence Trent D’ArbyのカヴァーにはJustin Timberlakeが、そしてM9のCitizen Copeが以前Santanaに提供した曲のカヴァーには本人がゲスト参加をしている。何よりも話題はM12のJackson 5のカバーで本人の声と間違うほどに完コピをしており、これがやりたかったための企画なのかと思ってしまうほど。

 ただこのスタイルとこれまでのスタイルとどちらか好きかと問われれば、個人的には土臭いカントリーフレイバー溢れる後者の方が好みであると言わざるを得ない。次回の単独来日は見に行ってみようかとも思っていたのだが、バンドメンバーもソウル系ミュージシャンに一新したということで、過去の楽曲がどうなるのか一抹の不安もある。

★★★☆


Richie Hayward (Little Feat) 死去

Skin It Back (Dol Dts) [DVD] [Import]Skin It Back (Dol Dts) [DVD] [Import]
Little Feat

Eagle Rock Ent 2009-09-22
売り上げランキング : 13035

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1 Skin It Back
2 Fat Man In A Bathtub
3 Oh Atlanta
4 Day At The Dog Races
5 All That You Dream
6 Old Folks Boogie
7 Dixie Chicken
8 Tripe Face Boogie
9 Feats Don't Fail Me Now
10 Willin'
11 Rocket In My Pocket

 先日流れた悲しいニュース。「Richie Haywardがガンのため死去、享年64歳。」 Little Featのオリジナルメンバーであり、ニューオーリンズのファンキーなセカンドラインリズムを担ったバンドの屋台骨。Lowell George亡き後もずっとバンドを支えてきたものの、昨年からは闘病のため一線を退いていたようだ。合掌。

 今回は追悼の意をこめて昨年リリースされたLittle Featの往年のライブDVDを取り上げたい。私は彼らの映像をブートレッグで1本だけ持っていたが、オフィシャルのものを見るのはこれが初めてである。1977年のドイツの音楽番組Rockpalastで放映されたライブであるが、これは絶版になっていた2000年のDVDに6曲のリハーサルシーンを追加した復刻デラックス版である。

 まずはRichieのドラムに目と耳をやる。冒頭から力強いドラミングを聴かせ、M2のかの名曲ではLowellのカウベルと一緒になって例の独特なリズムを刻む。コーラスではLowellよりも大きな声でサビを叫んでいる。M4のインストのフュージョン曲でも器用な巧さを存分に見せてくれる。彼のバンドにおける存在感の大きさが分かる。

 しかしここで今一つ気になったのはLowellの露出の低さである。冒頭のM1はギターPaul Barrereのボーカルで始まり、続くM2でようやく真打Lowellがスライドギターを操りながらボーカルを取ったと思ったら、M3ではキーボードBill Payneがボーカルを取る。さらにM4では各メンバーの熱いインタープレイが光る一方で、Lowellの姿はどこへやら消えてしまう。

 メンバー一人一人の演奏技術の高さやボーカルを取れることがこのバンドの強みでもあるが、前半はどうもLowell一人だけがここでは浮いてしまっている印象が強い。メンバーの技術力の高さがこうした幅広い音楽に対する雑食性を強めていったのだろうが、私が個人的にこのバンドに求めるのは南部的な土臭さであり、やはりそれはLowellの持っていたものなのである。トレードマークである白いオーバーオールを着てステージに立つLowellの体格は初期に比べずいぶん横に大きくなってしまっているが、その存在感は体格に反比例して小さく見える。恐らくドラッグの影響もあるのだろう。代わりに一番目立っているのはPaulであり、MCまで全て取る彼はLowellに代わり後期のバンドを乗っ取ってしまったかのようである。それが淋しく感じられた。

 M7で見られるPaulとLowellのギターの掛け合いでは、思わず「負けるなLowell」と応援したくなってしまった。後半Lowellの本調子が戻ってきた場面が特に見どころであり、M8で渾然一体となった演奏は圧巻である。アンコールのM9で楽器を置いたメンバー全員がLowellのもとに集まりアカペラを決める場面も素晴らしいし、静かな名曲M10での歌唱も胸を熱くさせてくれた。

 79年にLowellが心臓発作により他界した後も、バンドはずっとこれまで活動を続けてきたわけだが、今回Richieも他界してしまった。個人的にはやはりLowellもRichieもいないLittle Featは、Little Featではもうないと思うのだが、どうだろうか。

★★★★


奥田民生 「OTRL」 (2010)

OTRL(初回生産限定盤)(DVD付)OTRL(初回生産限定盤)(DVD付)
奥田民生

KRE 2010-08-04
売り上げランキング : 30

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1.最強のこれから
2.わかります
3.えんえんととんでいく
4.RL
5.音のない音
6.たびゆけばあたる
7.ひとりカンタビレのテーマ
8.かたちごっこ
9.Room 503
10.解体ショー
11.暗黒の闇

 元々私もUnicorn世代だったが、うちの嫁さんがそれ以上に結構な民生ファンだったため、バンド時代からソロまでの全ディスコグラフィがうちには揃っている。彼の持ついい感じに気の抜けたアメリカンなロックサウンドはシンプルながらも味わい深く、私もいつしか結構ハマってしまっていた。

 昨年はUnicornの再結成に沸いた1年間だったが、今年はもう新たなソロ作品の発表である。今の彼は本当に創作意欲に溢れているようだ。しかも今回の作品は一味違う。先立って「ひとりカンタビレ」というツアーが敢行されたのだが、これは全楽器を彼が1人でPro Toolsを使いながら観客の前で録音する公開レコーディングライブであり、毎ステージで1曲ずつ完成させ、翌日には配信するという画期的なものだった。それをまとめたのが今作品なわけである。

 このツアーは私も見に行きたかったのだが、DVDを見る限りはやはりかなり興味深いものだった。ダラダラな雰囲気でとぼけた笑いを取りながらも、目の前で次々とリズムを作り上げ、ギターとボーカルを乗せ、最後にコーラスをかぶせる。その手際の良さは流石の一言であり、やはり一流のプロデューサーであることを証明している。

 実際こうして出来上がった作品群をアルバムとして聴いてみても、普通にバンドとしてスタジオ録音されたようにしか聞こえない水準の高さである。制作の都合上シンプルな音作りではあるが、随所に光るメロディも散りばめられている。もし実際にこれらの曲が目の前で出来上がる過程を見ていたら、愛着もひとしおだろう。私も出来ることなら、こんな風にひとりカンタビりたいものだ。

 また先日聞いたところによると、彼は今度来日するThe Verbsにギター・ボーカルとして加入するらしい。これはかの名ドラマーSteve Jordan夫妻によるバンドであり、ベースもPino Paradinoだ。SteveとPinoと言えば、最近ではJohn Mayerのバックも努めた名リズム隊である。そんな2人相手でも、きっと彼はマイペースを貫くのだろう。

 つくづく彼は面白い人である。

★★★☆


暑い夏はロックTシャツ

夏である。連日本当に暑いである。平日は仕事だからYシャツを着なきゃいけないが、週末はやっぱりカジュアルにTシャツである。で、せっかくTシャツを着るなら、そこら辺のよく分からんサーフブランドとかではなく、やはりそこはロックTシャツである。で、最近街中でそういうTシャツ屋さんを見かけたら、色々物色していたのだが、なかなか気に入るのが見つからないのである。で、ネットで色々物色していたのだが、やっといいのが見つかったのである。


これである。分かる人が見たらすぐにZeppelinだと分かってしまうだろうが、あえてバンド名が入っていないとこがポイントである。
Rudy http://www.the-rudy.com/


物色していた中でこれも気になったヤツである。分かる人が見たらClaptonとDuane Allmanだと分かってしまうだろうが、分からない人にはよく分からないだろうところがポイントである。ちなみにこのショップは他にも、Leon RussellやLittle FeatのLowell George、Johnny CashやFacesなど、ちょっとB級のオリジナルTシャツを取り揃えているところが、さらにポイントである。でもカラーバリエーションがないのが、ちょっと残念なところである。
No More Tears http://www.nmt-tokyo.jp/


ついでだから、他にも私が所有しているTシャツも少し並べてみるのである。これは先日来日して日本中を沸かせてくれたBob Dylan御大である。ちょっとデザイン的にはあまり面白くはないし、作りもいい加減なのだが、とりあえず記念なのである。


これは昔ライブに行ったWeezerのTシャツである。あまりメジャーなバンドの名前入りシャツは、今となってはちょっと恥ずかしかったりするのである。


これも数年前に来日したCakeのTシャツである。日本人にはほとんど分かってもらえないが、カントリー系のイベントなんかに着ていくとアメリカ人には話しかけてもらえるところがポイントである。


これは去年の再結成ツアーを見に行きたかったのだが行けず、代わりに行った知り合いが買ってきてくれたUnicornのTシャツである。ライブに行ってないのにTシャツを着ているというのが、悲しいところである。でもなんか投げやりな感じのバンド名は逆にポイントである。

まぁ要するに結論としては、暑い夏はあまり好きじゃないので、早く涼しくなってほしいなぁということである。

遊佐未森 「HOPE」 (1990)

HOPEHOPE
遊佐未森

Sony Music Direct 2006-12-13
売り上げランキング : 7985

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


1. Forest Notes
2. 雨あがりの観覧車
3. いつの日も
4. 雪溶けの前に
5. Holiday Of Planet Earth
6. 夢をみた
7. 午前10時 午後3時
8. 君のてのひらから
9. 夏草の線路
10. Echo of Hope
11. 野の花

 80年代末にデビューし、“地図をください”や“暮れてゆく空は”、“0の丘∞の空”や“僕の森”など、いくつものシングルをヒットさせた彼女。決して派手に売れたわけではないが、その独特な世界観が個人的には強く印象に残り、今でも時々聴きたくなる。特徴的なのはそのボーカルで、ファルセットを交えた汚れなくどこまでも透明感のあるハイトーンボイスは、陳腐な表現だが、本当に天使を思わせたものだった。Kate Bushを思わせる声質であるが、小悪魔的なKate Bushに対して、遊佐未森はどこまでも純粋なイメージを持っているのが特徴だ。

 2nd「空耳の丘」からの3作は初期の全盛期だろう。これは90年の4枚目のアルバムにあたる。ここからはM9がシングルヒットしたが、それ以外にもとにかく楽曲が佳曲揃いだ。またそれまでの作品でもそうだったが、彼女の音楽の歌詞は自然志向が強く、木、森、丘、空など常に自然物が丁寧に描かれている。ジャケットのイメージもあってか、個人的には彼女の音楽を聴くと、大好きな北海道の美瑛の景色を想起させられる。どこまでも続く大地と大空の中で流れてゆく、どこまでも優しさに溢れたメロディが、疲れた心を癒してくれる。

 プログレロック好きに彼女のファンも多い。派手なプレイはないが、特に今作での凝ったアレンジの中で、熟練のミュージシャンが管楽器やハモンドオルガンやマンドリンなど様々な楽器を用いて構築している透明感のある音世界は、難しい音楽ファンも納得させるだけの説得力があるだろう。ストーリー性のある歌詞や作品毎に挿入された短編小説とも関連するコンセプトなども、プログレ好きならくすぐられる要素も多い。

 時代性もありファッションやステージアクションなどは今見ると若干恥ずかしい気もするし、オーバープロデュースな気がしないでもない。しかし決して彼女はアイドルなどではなく、音大のクラシック畑出身で自らも作詞・作曲も手がけ、ボーカル以外にピアノも弾いていた。今もなお精力的に活動を続けているという事実も、彼女は一過性のタレントなどではなく、純然たるアーチストであったということを証明しているだろう。

 日々の生活に疲れた心身に染みわたる清涼飲料水である。

★★★★☆


ザ・バンド 「流れ者のブルース」



 どうしても読みたかったにもかかわらず絶版になっていたために、中古本屋を散々探してようやく見つけた1冊。都心のDisc Unionで見つけた時は、思わず声を上げてしまった。

 この伝記本は、なかなか知りえなかったThe Bandの歴史の全てを事細かに描写してくれている。カナダで生まれ育った少年たちが、本場アメリカ南部出身のロックンローラーRonnie Hawkinsのバンドに加入し、ライブ演奏を学習していった頃。フォークファンを裏切って激しい非難の嵐を浴びるBob Dylanとともに、狂った車輪となって転がり続けた頃。狂騒を離れ、WoodstockのBig PinkでDylanとともに隠遁生活をしながら、自らの音楽を醸成していった頃。デビューするまでにおよそ10年近くを要したわけである。

 そしてようやくThe Bandとしてデビューを果たすわけだが、そのアメリカンルーツに足をつけた1st「Music From Big Pink」が話題になる一方で、あえて人前に出ないようにしていたというあたりは、やはり当時のバンド群とは変わっていた存在であった。アルバムを作ってそのプロモーションツアーをすることへの違和感や、Woodstockなどのフェスティバルでの場違い感など、常にショービジネスに対して一歩引いた姿勢を持っていたのが興味深い。

 また本書を読んでバンドの一人一人のメンバーのキャラクターがよく見えてくる。実質的なリーダーRobbie、人情派南部人Levon、陽気なRick、学及肌の博士Garth、ナイーブなRichard。それぞれが様々な楽器を操る技巧派なわけだが、こうした一人一人の愛すべきキャラクターを知ることで、より一層このバンドの魅力が大きなものとなった。

 しかし一つ気になるのは、筆者のこの伝記を執筆するスタンスである。初期の作品こそ高く評価しているものの、それ以降の作品やショーについてはほとんど酷評を繰り返している。世間で絶賛された「The Last Waltz」ですら、わざわざ当時の評価の低いレビューを引用してきてくれる。確かにそれらは事実なのかもしれないが、これを読むファンとしては残念であった。

 さて次は是非ともLevon Helmが自ら記した「ザ・バンド 軌跡」を読みたいところだが、こちらも絶版のようだ。果たして見つかるだろうか。



Gipsy Kings 「Live At Kenwood House In London」(2007)

ライブ・アット・ケンウッド・ハウス・イン・ロンドン [DVD]ライブ・アット・ケンウッド・ハウス・イン・ロンドン [DVD]
ジプシー・キングス

トランスフォーマー 2007-07-06
売り上げランキング : 13592

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


01. Rítmico
02. Rumba Tech
03. Lleve Me El Compas
04. Tristessa
05. Amigo
06. Petite Noya
07. Como Siento Yo
08. Sabroso
09. Como Ayer
10. A Mi Mora
11. Djobi Djoba
12. Boleria
13. Fandangos
14. Legende
15. Quiero Saber
16. Tampa
17. Poquito a Poco
18. Baila Me
19. Todos Todos
20. Bamboleo
21. Volare

 先日サッカーワールドカップにおいて、スペインが見事オランダを延長戦の末下し、初優勝を果たした。選手たちも素晴らしかったと思うが、それ以上に素晴らしかったのは、これまでの予想的中率100%だったドイツの水族館のタコのパウル君かもしれない。ここまで結果を出したなら、きっと焼きダコにされることもないだろう。

 さて普段大してサッカーに興味のない私は、日本戦が終わった後はあまり関心はなかったのだが、スペインが優勝したというのは、個人的にオランダやドイツよりも嬉しかった。なぜならスペインと言えば、フラメンコ。生のフラメンコを見にスペインの片田舎へ旅をするのが私の夢だからだ。ということで今日はワールドカップにちなんで、スペイン音楽をご紹介したい。

 で、Gipsy Kingsである。日本でも「ボーラーレ!オーオー!」というビールのCMで有名なあのグループである。爽やかなギターと歌メロが、夏にピッタリだ。流浪の民ジプシーの子孫として南フランスから80年代に登場し、伝統的なフラメンコに現代的なアレンジを加えて大衆化し、世界中にワールドミュージックの旋風を巻き起こしたという功績を持つ。私はこれまで彼らのことをフラメンコと理解していたが、実は違うのだということを最近知った。フラメンコとはギターとカンテ(歌)とパルマ(手拍子)のみで構成されるシンプルなものでなければならなく、Gipsy Kingsのようにベースやドラム、パーカッションやキーボードなどのアレンジが加わっているものは、ジプシー・ルンバというジャンルに分類されるのだという。要するに純粋なものしかフラメンコとは認めないということなのだろう。なかなか難しい。

 で、今回は2007年に出た彼らのライブDVD。客席との間に池を挟んでいる変わったステージのLondonのケンウッド・ハウスで演奏している。彼らもさすがに年を取った。髪にも白いものが混じり、体格も皆立派になっている。しかし演奏は流石に熟練の味わいだ。熱くフラメンコギターをかき鳴らし若い女性たちを躍らせ、代表曲M11では観客全員が立ち上がって踊っていた。

 これは先のアルバム「Roots」に伴うツアーだが、最初からリズム隊やキーボードもいるフルメンバーのバンド編成のため、シンプルだったアルバムの方向性とは大きくアレンジを変えている。これはこれで良いのだが、やはりアルバム通りのギター・カンテ・パルマのみのアレンジも聴いてみたい。と思いきや、小休止の後にギター2人とカホンとベースのみの少人数でしっとりと演奏を始めた。このパートはデビュー当時からずっと続いていたようだ。ここでの調べの美しさは聴きほれさせてくれ、特にToninoの美しいソロの調べはやはり絶品だった。

 クライマックスはインストの名曲M16と、代表曲M20、そしてアンコールでの名曲M21。興奮に湧き上がる観衆の中に自分がいないことが悔しくさえ感じられる。彼らは2000年と2001年にこっそり来日していたが、ちっとも情報が入って来ず、気づいた時には既に時遅しであった。死ぬまでに一度生で見たいので、もう一度来日を切に願うばかりである。

★★★★☆


Gallery
  • Isis 「Oceanic」 (2002)
  • Cave In 「White Silence」 (2011)
  • 「Re 又造 MATAZO KAYAMA」展
  • 「Re 又造 MATAZO KAYAMA」展
  • 「Re 又造 MATAZO KAYAMA」展
  • 「Re 又造 MATAZO KAYAMA」展
  • 「Re 又造 MATAZO KAYAMA」展
  • 「Re 又造 MATAZO KAYAMA」展
  • 「Re 又造 MATAZO KAYAMA」展
Access
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Categories
Comments